10.母親二人(1)

 事務所の応接セットで、山崎は二人の美女と向かい合っている。一人は村瀬宝石店社長夫人、村瀬美紀。もう一人は千原流華道家元夫人、千原絹代である。
 それぞれの娘である村瀬小夜子が22歳、千原美沙江が19歳ということから考えて、いずれも40代にはなっているはずだが、二人とも全くそんな年齢を感じさせない。
 上質のスーツを着こなした美紀は、まるで宝塚のスターを思わせる艶麗な美女であり、一方の和服の似合う絹代はいかにも淑やかな京美人といった趣である。
「どうぞ」
 久美子がお湯を沸かし、紅茶をいれて二人に出す。
「ありがとうございます」
 美紀が礼を言うとカップに口をつける。絹代も同様に紅茶を一口飲むと「おいしですわ」とほほ笑む。
「千原流華道家元夫人にそう言っていただけると光栄ですわ」
 久美子がほほ笑み、その場の空気が少し和む。
「久美子様の腕前ももちろんですが、良い葉を使っておられますわ」
 絹代の言葉に美紀が頷く。
「本当にそうですわ。失礼ですが、山崎先生がお選びになったのですか?」
「いえ――」
 山崎は首を振る。
「助手の京子が選んだものです」
「その方は、今日はいらっしゃらないようですね」
 絹代は改めて事務所の中を見回す。
「ええ、遠山夫人と令嬢の捜査をしている最中に、消息を絶ってしまいました。おそらく誘拐犯の手に落ちたのだと思います」
「京子さんって、ひょっとして野島京子さんのことですか?」
 美紀が山崎に尋ねる。
「ご存じですか?」
「ええ、文夫がお付き合いしていた野島美津子さんというお嬢様のお姉様が、確か京子さんといって探偵助手の仕事をしていると聞いたことがあります。その時は、女性がそんな危ない仕事に就くなんて時代も変わったものだと驚いたのですが」
「文夫さんと美津ちゃんが?」
 山崎は美紀の言葉に驚く。美紀は山崎の反応にいぶかしげな視線を向ける。
「失礼、京子がよく妹のことを話していたものですから、ついその呼び名が身についてしまって」
 山崎は村瀬姉弟の誘拐は当初、静子夫人や桂子とは違い、身の代金目当てのものだと考えていた。実際、一千万円という多額の金を要求して来たことから、誘拐目的の一つがそれであったことは間違いない。犯人たちは身代金の奪取に失敗すると、それをまるで村瀬姉弟の肉体で支払わせようとでもするかのように、二人の卑猥な写真をばらまき始めたのだ。
 それらのうち山崎が入手したものの中には、文夫と美津子がからんでいる物もあった。そこで山崎は村瀬姉弟の誘拐犯と、静子夫人や京子を拉致している犯人が同一のものであることを確認したのだ。
 山崎が分からなかったのは、どうして村瀬姉弟が簡単に誘拐犯の運転する車に乗ったのかである。しかし、文夫と美津子が恋人同士であったなら、それを利用して村瀬姉弟を騙したことも考えられる。
「村瀬社長は、息子さんが美津ちゃん――野島美津子さんとお付き合いしていることを知っていたのですか?」
「いえ、知らなかったと思います」
 美紀は首を振る。
「どうしてですか?」
「美津子さんには両親がいません」
「しかし、とても気立てが良く、素直な良い娘です」
「もちろんわかっております。私も何度かお会いしましたし、小夜子も同じ意見です」
 美紀は頷く。
「しかし村瀬はいつも仕事で忙しく、文夫とあまり話す時間がありません。文夫の気持ちを聞く前に、親がいないということだけで反対する恐れがあります。このままお付き合いが続き二人の気持ちが確かなら、しかるべき時にきちんと話をすれば良いと考えていました。それまでは母親の私と姉の小夜子が承知していれば良いことです」
「失礼ですが村瀬の奥様は……」
「美紀と呼んでいただいて結構です」
 美紀がそう言うと絹代も「私も絹代でかまいませんわ」とほほ笑む。
「そうですか、では失礼して」
 山崎は改めて口を開く。
「美紀さんは、事件のことについてどれだけ聞いておられるのですか?」
「ほとんど何も」
 美紀は首を振る。
「私がどんなに尋ねても、村瀬は詳しいことは一切教えてくれません。村瀬の秘書のものにも聞いたのですが、社長から口止めされていると言って――」
 美紀の表情が愁いに沈む。
「ところが村瀬が日に日にやつれていき、四ツ谷の店もめっきりお客様が減ってしまいました。それで私もとうとう我慢できなくなって、こちらの絹代様をお誘いして、山崎先生をお訪ねすることにしたのです」
「すると、今日ここにいらっしゃったのはご主人には内緒のことですか?」
「はい」
 すると村瀬夫人は小夜子の卑猥な写真が、恋人の内村を始めとする小夜子の友人・知人に送られて来たことも知らないのか。山崎は美紀夫人が意外に落ち着いている理由をそこで初めて知る。
 自分の娘や息子が暴力団の手に落ち、性の奴隷にさせられているのだ。それを知れば母親ならば正気ではいられない。それをおもんばかって村瀬社長は、すべて自分のところで情報を止め、妻には一切知らせないでいるのだろう。
 しかし時が経っても一向に小夜子と文夫は帰って来ないし、夫は相変わらず何も教えてくれない。業を煮やした美紀夫人は何か少しでも子供たちについての情報を知りたいと思い、当初事件の捜査にかかわった自分を訪ねて来たと言う訳か。
「そうすると、本日こちらへいらした目的は――」
「先生から、小夜子と文夫の消息について何でもいいからお聞きしたいということと」
 そこで美紀は真剣な視線を山崎に向ける。
「出来るなら、二人を取り戻してほしいということ、その二つをご依頼するためです」
 山崎は美紀から視線を逸らす。
「ご主人も奥様――美紀さんに何も教えないのでしょう。それならお嬢さんとご子息の消息は中途半端に知らない方が良い」
「どうしてですか?」
「それは――」
 辛くなるだけだ、と言いかけて山崎は口をつぐむ。そんなことを言ったらますます美紀の疑心暗鬼を募るだけだろう。山崎はごまかすように、絹代に視線を移す。
「絹代さんがこちらにいらしたのも、美紀さんと同じ理由ですか?」
「はい」
 絹代は頷く。
「ただ、私の場合は夫の元康が身体が弱く、自分で動くことが出来ませんので、代わりに私が参りました。従ってここに参ったのは元康も了解してのことです」
 絹代はそこでちらと美紀の方を見る。
「元々、発表会などには私が娘の美沙江と一緒に出席するべきなのですが、そういった社交の場は後援会長である折原の奥様――珠江様に代わっていただき、これまで私はずっと元康の看病に専念させていただいていたのです」

9.チンピラ部屋(3)

 珠江夫人がチンピラ部屋に漬けられて3日目の朝が明けた。
 夜を徹しての竹田と堀川による激しい同時責めで数え切れないほど絶頂に追い上げられた珠江夫人は、気息奄奄といった状態で汚れた夜具の上に横たわっていた。竹田は夫人が頂上に到達するたびに「珠江っ、○回目、イキますっ!」と叫ぶように強制した。そのため最後には夫人の声は涸れきってしまったほどである。
 夫人は両足をM字型に大きく開かれて寝具の上に縛り付けられたあられもない姿勢のまま目を閉じ、ハア、ハアと息づきながらふくよかな乳房を大きく上下させている。竹田がそんな夫人に寄り添うようにすると、柔らかい耳たぶに接吻する。
「……ああ」
 珠江夫人は気だるそうに目を薄く開けると、竹田に求められるまま唇を預け、熱い接吻を交わすのだ。
「お熱いことだぜ」
 堀川がそんな竹田を冷やかす。
 他の二人のチンピラは部屋の隅で雑魚寝をしている。徹夜で珠江を責め続けた竹田と堀川の身体にはさすがに疲労が蓄積している。
「張り型責めで何回気をやったか覚えているかい、ええ、奥さん」
 竹田が珠江夫人の形の良い乳房をゆっくりと揉み上げながら問い掛けると、夫人は小さく「覚えておりませんせんわ……」と呟く。
「覚えられないほどたくさん気をやったのかい?」
「そ、そんなことございません……」
 夫人は恥ずかしげに頬を染め、ゆっくりと首を振る。
「7回目まではちゃんと数えていたぜ。珠江、7回目、イキますっ、てな。その後からは数えられなくなったみてえだな」
「ああ……意地悪なことをおっしゃらないで」
「そんなら言ってみな。折原珠江は数え切れないほど気をやりました、ってな」
「そんな……そんな事いえません」
 珠江はなよなよと首を振る。そんな仕草には男に対する拒否というよりは、甘えのこもった媚態が伺える。
 竹田はそんな珠江が、森田や鬼源の思惑どおり、3日間のチンピラ部屋暮らしにより確実に成長してきているのを感じるのだ。
「何を言ってるんだ。本当のことじゃねえか──そうだ、いい事を思いついたぜ」
 竹田はふと立ち上がると、部屋の隅に置かれたテープレコーダーを取ってくる。
「折角だから森田親分や鬼源に俺たちの調教が順調に進んでいる証拠を聞かせてやろうぜ」
「そいつはいいや」
 竹田の言葉に、畳の上に寝転んで二人の様子を面白そうに見ていた堀川が起き上がる。
「ついでだから、これもこの女の亭主への声の便りってことにしようじゃねえか。初日に録ったテープと一緒に渡せば、大塚先生がさぞ喜ぶぜ」
 堀川の残酷な提案に、珠江の表情がさっと一変する。
「どうしたんだい、急に顔色が悪くなったじゃねえか」
 竹田は急におろおろと目を泳がせるようにしだした珠江を面白そうに見ながら尋ねる。
「た、竹田さん、堀川さん……」
「なんでえ? 奥さん」
 二人のチンピラはニヤニヤ笑いながら珠江を眺めている。
「お願いです……これ以上主人を傷つけるようなことはさせないで」
 必死で哀願する珠江を二人のチンピラはさも楽しげに笑いあう。
「どうする? 堀川」
「……そうだな」
 二人はしばらくひそひそと相談をしていたが、やがて意見がまとまったのか竹田がはわざとらしく腕を組んで話し始める。
「まあ、これほど頼んでいるんだ。奥さんの言うことを聞いてやろうじゃねえか」
 竹田が堀川に目配せしながらもったいぶって答えると、珠江は表情を輝かせ、「あ、ありがとうございます」と頭を下げる。
「その代わりといっちゃあ何だが、奥さんには新しい調教を受けてもらうぜ」
 竹田はにやりと笑うと部屋に備え付けられた戸棚の中から、綿棒とベビーオイルを取り出す。珠江夫人は怪訝な顔つきで竹田を見ている。
「大塚先生から、機会があれば是非調教しておいてくれと言われてたんだ」
 竹田は手にとった綿棒をベビーオイルに浸すと、大きく開かれた珠江夫人の両肢の間に座り込む。
「奥さんを人間花器にするとき、もう一つ穴を使えれば何かと便利なんだってよ」
 珠江は脅えたような表情を竹田に向ける。
「さあ、どこを調教されると思う、奥さん。あててみな」
「見事当てたら、調教はやめてやってもいいぜ」
 竹田と堀川はニヤニヤ笑いながら珠江夫人に詰め寄る。珠江は唇を震わせ、頬を朱に染めながら口を開く。
「お、お尻……」
「なんだって?」
 竹田がわざとらしく、手のひらを耳に当てる。
「聞こえねえな、もっと大きな声で言ってみな」
「お尻……お尻の穴でしょう」
 珠江がそんな言葉を口にすると竹田と堀川は顔を見合わせて吹き出す。
「奥さんはお尻の穴を責められたいのかい」
「ち、違いますわ。おからかいにならないで」
 珠江は顔を赤くしながら答える。
「残念だったな、奥さん。外れだぜ。俺達が調教するのはこっちの穴さ」
 竹田はそう言うと綿棒で夫人の尿道口をいきなりさすり上げた。
「あ、ああっ! な、何をするのっ!」
 思いがけないところを触れられた夫人は悲鳴をあげ、裸身を大きく揺すぶらせる。
「おっと……じっとしていないと大事なところに傷がつくぜ」
 竹田は堀川に目で合図する。堀川はうなずくと部屋の隅で鼾をかいているチンピラ二人の脇腹を蹴り上げる。
「おいっ、いつまで寝てるんだっ」
 二人のチンピラは寝ぼけ眼をきょろきょろさせていたが、素っ裸のまま開股の姿勢で縛り付けられた珠江夫人が、竹田の責めを逃れようと必死で裸身をくねらせているのを見て目を丸くする。
「この女が動けないように、しっかりと押さえつけるんだ」
 竹田と堀川に叱咤されたチンピラ二人は、あわてて夫人の身体に取り付き、押さえつけるようにする。
「やめてっ、やめてっ」
「奥さんはケツの穴を調教されたかったみてえだが、残念だったな」
「森田組にはそっちの穴は専門の調教師がいるのさ。楽しみに待ってな」
 竹田は堀川とそんな風に笑い合うと、身動きできなくなった珠江夫人の狭隘な尿道口に綿棒の先端を押し当てる。
「ああっ、そ、そんなっ、ひ、ひどいわっ!」
 綿棒が少しずつ、確実に沈められていく。とんでもないところを責められる恐怖に、珠江夫人は再びつんざくような悲鳴をあげるのだ。

8.チンピラ部屋(2)

 千原流華道後援会長であり、医学博士夫人でもある折原珠江がチンピラ部屋に連れ込まれてからすでに丸一日が経過しようとしていた。全裸のまま縄がけされて部屋に放り込まれた令夫人の熟れた肉体に、若いチンピラたちは飢えた獣のように我れ先にとりついた。
 あらかじめ媚薬入りの酒を飲まされ、ずいき縄で股間を長時間縛り上げられていた夫人の媚肉はすでに十分に潤っており、あせりがちに突き立てる若者の肉棒をあっさりと受け入れた。いや、激しい抽送運動により媚肉の痒みがほぐされていくなんともいえぬ快感に、すぐに甘い声まで上げ始めたのである。
 すでに何周目だろうか、六畳の部屋には汗と精液、そして女の愛液が入り混じったむっとするような臭いが立ち込めている。チンピラたちのリーダー格である竹田が、鴨居から垂らした縄で片足吊りにした夫人の背後から抱き締め、激しく突き上げていた。
「あっ、あっ、もう……」
「またイキそうなのかよ、奥さん」
「は、はいっ……」
「まったく、上品な顔をしている癖に助平な奥さんだぜ。これで何回目か覚えているかい?」
「お、覚えていませんわ……」
 珠江夫人はなよなよと首を振る。
「へっ、覚えてないなら教えてやるぜ。これで18回目だよ」
「そ……そんなに……」
 男たちに交互に責められ、欲望の証を注ぎ込まれ、一回りして回復した男たちによって再び責められる。披露困憊した珠江夫人が失神すると男たちは短い仮眠を取り、再び責められる。まだ一日しかたっていないのに、珠江夫人は情事の極限を味合わされたような思いであった。
「た、竹田さん」
「なんだい」
「いっても……いってもいいですか」
 珠江夫人は10歳ほども年下の竹田に哀願する。この部屋ではチンピラたちが主人であり、夫人はチンピラたちの性の奴隷である。奴隷は主人の許可なしでは気をやることもできないのだ。
「こういう風にいったらイってもいいぜ」
 竹田は夫人の耳元になにごとか囁きかける。夫人は顔を赤らめて嫌々と首を振る。
「ちゃんと言わないといつまでもイカせないぞ。勝手にイったらお仕置きだからな」
 竹田が激しく腰を突き上げると、珠江夫人は快感の堰を突き破られ、ひいっと悲鳴をあげる。ついに夫人は強制された言葉をほざくように口にしながら、裸身をブルッ、ブルッと激しく震わせるのだ。
「た、珠江、18回目、イキますっ! あ、あなたっ、ごめんなさいっ」
 夫である源一郎に詫びながら華々しい崩壊を遂げる珠江夫人。竹田はキューンと食い締める夫人の肉襞の感触を思う存分楽しむと、ようやく身体を離す。
 一時の陶酔から我に返った珠江夫人は、足元で堀川が自分の方にマイクを向けながらテープレコーダーを操作しているのに気づく。
「うまく録れたかい」
「バッチリさ」
 竹田と堀川は顔を見合わせて笑い合う。
「な、何を……」
 脅えた表情を見せる珠江に、竹田が言い放つ。
「堀川は、奥さんが絶頂を極める瞬間を録音していたのさ」
「な、なんですって」
「大塚先生の依頼なんだ、悪く思わないでくれよ。奥さんから剃り取ったお毛毛と一緒に、旦那さんに送るんだってさ」
「まったく、悪い趣味だぜ」
 竹田と堀川がさも楽しげに笑い合うのを、珠江は気が遠くなるような思いで聞いている。

 珠江夫人が、森田組のチンピラやくざたちの地獄部屋に連れ込まれて2日目の深夜になる。さすがの性欲旺盛なチンピラたちにも疲れが見え始める。
 しかし、森田と鬼源の命令は、とにかく珠江夫人を三日三晩休むことなく犯し抜き、実演スターとしての貫禄を一気に身につけさせることである。
「兄貴、俺はマンコがこんなに疲れるもんだとは思ってもなかったぜ」
「いくらご馳走だからって、こう休みなく食わされると拷問みたいなもんだ」
 チンピラやくざたちが弱音を吐くのを、リーダー格の竹田と堀川は「何を言ってやがる。しっかりしねえかっ」と叱咤し、だらしなく転がっている彼らの腰のあたりを思い切り蹴飛ばすのだ。
 そういう竹田と堀川も、さすがに腰の蝶番がガタガタするほど疲れきっており、とてもすぐには続けられそうにない。
 珠江夫人は部屋の中央で素っ裸の上半身を緊縛されたまま失神している。この部屋に連れ込まれてから夫人が失神したのはこれで4度目である。
 夫人の裸身をぼんやり眺めている竹田は、4人の若い男たちを相手に奮戦し、何度も気を失いながらもついには男たちを打ち負かした夫人に内心舌を巻いている。上流の奥様然とした珠江夫人のどこにそんな逞しさがあったのか、それとも自分たちが鬼源や川田、そして森田親分に比べるとまだまだ問題にならないほど未熟だということなのか。
「しかし……女ってのは強ええや」
 竹田は煙草に火をつけ、一服くゆらせるとぽつりと呟く。田代屋敷にやってきたときには男を知らなかった美津子や小夜子ですら今ではそれなりの強さを身につけている。珠江夫人も日々繰り返される数々の調教により、奴隷として着実に成長してきているのだろう。
「森田親分と鬼源が、静子夫人の後釜に珠江を据えようとしているのも、分かるような気がするぜ」
 堀川が感心したように呟く。
「しかしここで負けたままでいるわけにはいかないぜ」
 男が4人がかりで新入り奴隷一人調教できないようでは、幹部組員の吉沢や井上からどんな目に合わされるか分かったものではない。
「おい、奥さん、起きな」
 竹田は夫人の頬をパン、パンと叩く。夫人は「ううっ……」とうめくような声をあげて裸身を捩らせていたが、やがて目を開ける。
「ああ……」
 夫人は今だ頭がはっきりしないのか、はっきり焦点の合わない目をぼんやり竹田の方へ向けている。やがて夫人ははっとした表情になると、口を開く。
「また……また、私を抱くのですか?」
「そうしたいところだが、今すぐには煙も出ねえや」
 竹田はそう言うと煙草を灰皿に押し付ける。
「だから、しばらくは道具の力を借りることにするぜ。おい、お前ら、奥さんの足を思い切り開いて縛り付けるんだ」
「へい」
 若いチンピラ二人が腰を上げ、部屋の隅から新しい縄を取り出すと珠江夫人の両足首を縛り始める。
「ああ……嫌……」
 チンピラやくざがぐいと力を入れると、夫人の両肢は扇のように開きだす。夫人は羞恥に頬を染め、抵抗しようとするが足に力が入らない。夫人はとうとう極端なまでの姿勢をとらされる。
「へへ……良い格好じゃねえか」
 珠江夫人は女の羞恥の部分から双臀の狭間に秘められた菊蕾に至るまで堂々とばかりに晒け出している。竹田はそんな珠江夫人を楽しげに見ながら、鬼源から預けられた前後責めの道具を取り出すのだ。
「肉棒の代わりにこれで責め上げてやるぜ」
 細いほうの責め具を堀川に渡した竹田は、男根を模した巨大な責め具で珠江夫人の頬を撫でさする。
「やめて……」
「遠慮することはないじゃないか。男は射精するとおしまいだが、この道具はそんなことはないからな。奥さんが満足するまで可愛がってやるぜ」
「そんな……卑怯ですわ」
「肉棒の方が良いのかい」
「そ、そんなこといってませんわ」
 珠江夫人は顔をそらしその淫具を避けようとしていたが、竹田と堀川がしつこく夫人の頬を突っつくのに焦れたように顔を前に向ける。
「わ、わかったわ。それで私を思い切り責めて頂戴っ」
 珠江夫人は開き直ったようにチンピラたちに向かって言い放つのだった。

7.チンピラ部屋(1)

 京子がシスターボーイ二人の嬲りものになっているちょうど同じ頃、折原珠江は川田と吉沢によって、森田組のチンピラやくざたちの溜まり場である六畳の部屋に連れ込まれていた。
 部屋の中央には天井の梁から垂らされたロープに縄尻をつながれた珠江夫人が素っ裸のままで立たされており、その腰のあたりにチンピラたちの兄貴格でもある竹田がまとわりついている。
 大塚順子、和枝、葉子、そしてチンピラたち数人が珠江を取り囲むように座り込み、朝酒を酌み交わしている。狭い部屋は酒と女の体臭でむっとするような空気に満ちている。
「あっ、ああっ、もう許してっ」
 珠江が耐えかねたように裸身を震わせると、竹田が「もう少しだから静かにしねえかっ」と怒声を上げ、珠江の尻をぴしゃりと叩く。
「おとなしく剃らせるのよ、折原夫人」
 順子は珠江の懊悩を眺めながらさも楽しげに声をかける。
「あなたから剃り取ったものの半分は、愛しいご主人に送ってあげるわ。もちろんお尻の方の縮れ毛も一緒にね」
 順子がそう言うと、和枝と葉子がどっと笑いこける。
「さぞかしびっくりするでしょうね」
「どれがどこの毛か分かるかしら」
 珠江夫人は女たちのそんな恐ろしい言葉を気が遠くなるような思いで聞いている。
 もう自分は終わりだ──仮にここから解放されても、医学博士である夫の顔に泥を塗った私はもう、あわせる顔がない。
 いや、先ほどこの場で、順子たちや川田、吉沢、そしてチンピラたちが見守る中で立小便まで演じた自分は、女としては死んだも同然ではないのか。
(大塚さん、御安心なさって、今日から私、森田組の奴隷として、ここで永久に暮しますわ。そして――大塚さんの湖月流生花が発展する事を、心より祈りますわ)
 順子に対して誓った言葉、あれは自分の本心から出たものかもしれない。もはや自分は、性の奴隷として一生をこの屋敷で暮らすしかないのではないか──。
「静子夫人を何としても妊娠させろ、ってのが遠山夫人の言いつけだ」
 川田は珠江の狂態を楽しげに眺めながら、隣の吉沢に話しかける。
「山内先生に人工授精を受ければ、さすがの静子夫人も妊娠するだろうが、そうなるとあまり無茶をさせるわけにはいかない。このままじゃショーのスターが小夜子や桂子など、どうしても若手中心となってしまう」
「森田組のショーには捨太郎やジョー、ブラウン、そして文夫などの男役者と美女たちの絡み以外にいわゆる白白ショー、つまり美女と美女によるレズビアンプレイが欠かせない。白黒ショーの場合は女が経験不足でも、男役者がリードすればなんとかなるが、タチ役とネコ役に別れるレズビアンの場合は、どちらかが経験豊富でないと成り立たねえ」
「だから京子と美津子を組ませるんじゃないのか」
 吉沢は川田に聞き返す。
「いや、コンビを組ませた上で事前にかなりの訓練を積ませねえと、客の前で演じるのは無理だ。静子と京子のコンビだってそうだっただろう」
「そう言えばそうだな」
 吉沢が頷く。
 川田の言うには森田組の白白ショーで客の前に出せるのは静子対京子、静子対小夜子、それに静子対桂子。いずれも静子夫人絡みのものばかりであり、静子夫人の妊娠によりこれら3組の上演は難しくなり、急遽別の組み合わせを仕上げる必要があるというのだ。
 鬼源は京子対美津子の近親相姦プレイ、京子対小夜子の姉対姉のプレイも期待は出来るものの、どちらも相手に対して相当の抵抗があるため、完成の域に達するには時間がかかりそうだ。
「それに、京子も小夜子も相手が静子夫人でない場合は、どうも精彩に欠けるようだ」
「あの二人は本気で静子夫人に惚れているからな」
 川田と吉沢が顔を見合わせて笑いあう。
「しかし今さらだが、静子夫人の存在は大きいということだ」
 京子も小夜子も、静子夫人に対してレズビアンの恋人に対するような感情を抱いているため、その分プレイが情熱的になる。また、二人ともまだ若く、年長のベテランの静子夫人にリードされてこそその新鮮さが引き立つという面があるようだ。要するに千代の希望通り静子夫人を人工授精させるのは良いが、それが原因でショーへの露出頻度が少なくなるばかりでなく、コンビを組む若い娘たちにも影響するのである。
「それで森田親分と鬼源は、これからのショーのプログラムを珠江夫人中心に組もうと決めたんだ」
 森田と鬼源はそうすれば京子、小夜子、美津子といった若いスターたちも再び輝きだすと考えたのだ。そのためにはいまだ奴隷としての経験が浅い珠江夫人を、短期間で静子夫人に匹敵するくらいのスターに育てる必要がある。珠江夫人をチンピラ部屋に放り込むのも、精力が有り余っている若いやくざたちによって昼夜を問わず犯させることで、実演スターとして一気に開花させようという意図からである。
「鬼源は、これからの同性愛ショーについても珠江と美沙江のコンビを中心に据えようって言うんだ」
「なるほど─二人はどう見ても、姫君と腰元、って感じだからな」
 川田の言葉に吉沢は口元に淫靡な笑みを浮かべる。
 美沙江と珠江は元々千原流華道の後継者とその後援会長という親密な関係にあり、二人が誘拐されてから珠江が美沙江に対して発揮する自己犠牲の精神は、珠江が潜在的に美沙江に対して同性愛めいた感情を抱いているせいとも考えられる。
 そんな恐ろしい会話が川田と吉沢の間で交わされていることも知らず、珠江夫人に対する屈辱の剃毛責めはようやく終わりを告げようとしている。羞恥の丘をすっかり剃りあげられ、幼女のような趣を見せている珠江夫人に、順子たちのからかいが飛ぶ。
「まあ、可愛いわ、折原夫人」
「そこだけ見たら赤ちゃんみたいよ」
 珠江は野卑な女たちのそんな嘲りのこもった声を、屈辱をこらえるように肩先を震わせながら、じっと顔を伏せて聞いている。
「では約束どおり、奥様の身体から剃りとったものは私が有難く頂くわ。半分、ご主人に送っておいてあげるわ」
 順子が追い討ちをかけるようにそう言うと、珠江は弾かれたように顔を上げる。
「ほ、本当に主人にそんなものを送るのですか」
「そうよ、冗談だと思った?」
 順子は珠江夫人の悲痛な表情をさも楽しげに眺める。
「ここの女奴隷たちで外の世界に恋人や夫がいるものは、みんなそんな風にしているのよ。遠山夫人や村瀬宝石店の令嬢、そして京子さんっていう女探偵は、そこの毛だけじゃなく、浣腸をされてお尻から流し出したものまで送られたのよ」
 珠江夫人の顔は驚愕に歪む。
「いずれ折原夫人のご主人にもそうしてあげるわ。ご主人はお医者様なのでしょう? 奥様の検便や検尿を依頼するにはちょうど良いじゃない」
 順子はそう言うと和枝や葉子と顔を見合わせ、ケラケラと笑いあう。
「せっかく綺麗に剃っていただいたのだから、お礼のキッスをして差し上げたら」
「何をキッスくらいで照れているのよ。折原夫人はこれから三日三晩、このチンピラ部屋で男たちに抱かれなければならないのよ」
 順子に畳み掛けるように決め付けられ、珠江はひきつったような表情になる。
 竹田が「へへっ」と笑いながら珠江に顔を近づける。反射的に顔を逸らそうとする珠江に、川田の罵声が飛ぶ。
「どうして避けやがる。もっと女らしい色気を発揮しろとさっき教えられたばかりだろう。そんな愛想のないことじゃ、美沙江の代わりは無理だな」
「や、やめてっ。お嬢様には手を出さないでっ」
 珠江は悲痛な表情でそう叫ぶと、涙に濡れた目を竹田に向ける。
「た、竹田さん──そ、剃っていただき有難うございました。珠江のお礼の気持ちに、き、キッスをさせてください」
 珠江が死んだ気になってそんなせりふを口にすると、順子たちからいっせいに冷やかしの声が上がる。珠江は硬く目を閉じたまま竹田の接吻を受け入れていくのだ。

6.二人の医師(2)

「大丈夫かい、内村君」
「これくらいどうってことはありません。これでも僕は医者ですよ。ハハハ」
 すっかり酔っ払った内村は折原に支えられながらマンションの玄関に向かう。危うく階段を踏み外しそうになった内村は、折原に抱きとめられる。
「あ、危ない! 気をつけたまえ」
「……すみません、先生。おかしいな、ハハ」
 どうにか二人はマンションの、内村の部屋にたどり着く。
「どうぞ、散らかっていますが」
 内村はおぼつかない手つきで鍵を空けると、折原を部屋に招き入れる。かなりの広さがあるその部屋は内装も、家具・調度類も豪華だが、内村が言うとおり酷く散らかっている。
(無理にでも京都へ帰った方が良かったか……)
 その部屋の荒廃ぶりを見た折原は一瞬後悔する。しかしながら、妻の珠江と千原美沙江の失踪の謎の一端でも聞き出せるのではないかと、つい内村の酒に付き合ってしまったのだ。

 六本木のバーで折原が、遠山静子夫人と親しい仲でもある妻の珠江と、珠江と静子夫人が後援する千原流の家本令嬢が失踪したことを告げると、内村はさすがに驚いた顔つきになったが、すぐに「それは小夜子と同じ筋かもしれませんね」と答えた。
「同じ筋って、どういうことだい? 君は小夜子さんの誘拐について何か知っているのかい?」
「小夜子が誘拐されたとき、僕はもちろん驚きましたが、身代金目的の誘拐なら金を払えば帰ってくるだろうと考えていました。一千万は大金ですが、村瀬宝石店にとってはそれほど痛い金額ではありません」
 内村はそこで急に顔を歪める。
「僕がショックを受けたのは、身代金と小夜子の交換が失敗し、誘拐犯に対して罠を張った村瀬宝石店へ復讐するという宣言が、彼らからなされたことです。村瀬家と山崎探偵は遠縁の関係ですが、村瀬社長は山崎から誘拐犯の元には小夜子や弟の文夫君だけでなく、遠山夫人やその継娘である桂子、そして山崎探偵の助手の京子と妹の美津子まで拉致されている可能性が高いということを聞いていました。だから、身代金と引き換えに小夜子と文夫君だけが帰ってきたのでは十分でない。小夜子の踊りの師匠でもある静子夫人や、他の女性たちも取り返さなければいけないと考えたのでしょうが、それが裏目に出たわけです」
「山崎探偵の助手まで、誘拐犯の手に落ちていたのか──」
 折原は先ほどあったばかりの山崎の様子を思い出す。
(山崎探偵のあの憔悴振りを見ると、京子という女性は、ひょっとして山崎にとってただの助手というだけではなかったのかもしれないな)
「僕も村瀬家とは別に、大金を使って色々な探偵を雇って小夜子の居所を調べましたが、全然駄目でした。どうも『森田組』という暴力団がかかわっていることまではわかったのですが、この『森田組』ってのが、どんなに探しても見つからないんですよ」
「それはいったい、どうしてだい?」
「普通に事務所を構え、縄張りを持っている組なら何がしかわかるはずなんですが、森田組というのはどうもそうじゃないみたいなんです。普通の暴力団とは違うある特殊な商売をしているようで、それなら事務所をおおっぴらに構えないのも分かります」
「特殊な商売とはなんだい?」
「それは……ここじゃ話しにくいな」
 内村はカウンターの向こうのマスターをちらと眺める。
「ただ、もし、森田組が先生や千原流華道家元令嬢の奥様の失踪にもかかわっているのなら、ちょっとまずいことになるかも知れませんね」
「どういうことだ」
 折原は思わず大きな声をあげる。
「珠江の身に危険が迫っているとでも言うのか」
「落ち着いてください、先生。命を取られるようなことはありませんよ、たぶん──そうだ、今晩は僕のマンションに泊まりませんか? 先生に面白いものをお見せしますよ」
 内村はそう言うと、グラスのウィスキーをぐっと飲み干した。

「飲み直しませんか? 先生」
 内村は部屋のホームバーでロックを作っている。
「いや、酒はもういい」
「そうですか……僕は飲みますよ。飲まなければ聞いていられませんからね」
 内村は手に持ったグラスから一口ウィスキーを飲むと、部屋のオーディオ装置のスイッチを入れる。テープレコーダーが回りだし、かすかな雑音が聞こえ出す。
「それじゃ、さっき申し上げた、面白いものをお聞かせします。いいですか、先生」
 内村はそう言うと、ソファに座り込む。折原も釣られて内村から少し離れた位置に座る。やがてスピーカーから、女のすすり泣き交じりの声が聞こえてくる。
(──内村さん、さ、小夜子は、今、とても幸せな毎日を過ごしているの。ですから、お願い、探偵などを使って小夜子の行方を探すような真似は絶対なさらないで下さい。以前、貴方に対し、現在の小夜子の心境と人の眼には見せられない、ああいう羞かしいものまでお送りして、小夜子の覚悟を知って頂こうとしたのに貴方は、やっぱり小夜子の行方を探そうとなさっている)
「これは──」
 折原は驚いて内村の顔を見る。
「確かに小夜子の声です。婚約者の僕が言うんだから間違いありません」
(──はっきりいって、今の小夜子は、貴方なんか大嫌い。小夜子を女にして下さり、日夜、調教して下さる現在の夫を小夜子は死ぬ程、愛してしまっているの。二人がどれ程仲がいいか、これから、貴方にお聞かせするわ。これをお聞きになれば、小夜子が現在、どういう女に変貌してしまっているか、はっきり、おわかりになると思います)
 やがて聞こえ出す村瀬小夜子の甘い泣き声。
(小夜子は、小夜子は、あなたのものよ。お願い、小夜子を捨てないでっ)
(二度と内村春雄のことを思ったりしないだろうね)
(嫌っ、あんな人の名をもういわないで。小夜子は永久にあなたのものですわ)
 ピチャ、ピチャという湿った音に小夜子の切なげな呻き声。明らかに小夜子は、男に責められて性的に興奮している。
 婚約者のそんなあられもない声を聞いている内村の顔は次第に青ざめてくる。
(春雄さんっ。小夜子は今、夫に抱かれて有頂天になっているのよ。おわかりになって。もう私の事など忘れて、早く、新しい恋人を――)
「ハハハ、どうだい、内村君。お嬢さんは、今、僕の愛情で、全身火のように燃えたたせて泣きじゃくっておいでだ。しばらく、聞いて頂こう」
 ああっ、ああっという小夜子の声。
(これはいったいどういうことだ)
 折原は胸の鼓動が高まってくるのを感じる。
(――ねえ、あなた。小夜子がどんなに今、悦んでいるか、それを、春雄さんに教えてあげたいの。ですから、マイクを――)
(よし来た)
 折原の胸の中には失踪した妻がとんでもない運命に陥っているのではないかという予感が込み上げてくる。山崎が折原に対して妙に無愛想で、遠山静子夫人や村瀬家の令嬢など、妻と縁が深い女性たちの現状について何も言わなかったのは、探偵としての守秘義務を守るためだけだはなかったのだ。妻の失踪に取り乱している折原に追い打ちをかけるようなことをしたくなかったのだ。
「どうだい、内村君。レコーダーのマイクは小夜子嬢の臍の上だ。彼女の演奏する素晴らしいセレナードが聞こえるだろう」
「――ああ、は、春雄さんっ。ゆるして!」
 やがて獣が吼えるような小夜子の声。他の男の手によって明らかに性的絶頂に達した婚約者の様子を、内村は氷のような表情で聞いている。