35.美少年散華(1)

 田代屋敷の二階、津村義雄に割り当てられた部屋では、裸の男同士の異様な愛欲図が繰り広げられていた。
 ベッドに腰掛けた津村の上に膝を割って抱き取られているのは村瀬文夫である。なんと文夫は狭溢な菊座を津村の怒張した肉棒によって陵辱されているのだった。
「僕はこのベッドで君の姉さんの小夜子の処女を奪ったんだよ。姉と弟、両方の処女を奪った男は世間広しといえども僕くらいかもしれないね」
 津村は満足そうにそういってクスクス笑いながら文夫の緊縛された裸身を抱き取ると、片手を前にまわし文夫の肉棒をさすりあげる。
「ううっ!」
 文夫はさも苦しげに眉をしかめるが、その表情とは裏腹に津村にいたぶられる肉棒はくっきりと静脈を浮き立たせながら、隆々と屹立を見せている。包皮を弾かせたその先端の鈴口からは、先走りの液がだらだらと流れ始めているのだ。
「ほう、もうこんなになっているじゃないか」
 津村はわざと驚いたような声を上げ、耳元に囁きかける。
「文夫君、君も意外とこんなことが嫌いじゃないみたいだね。高校の先輩にときどきお尻を貸して上げていたんじゃないのかい」
 津村の意地悪いからかいに、文夫は赤らめた顔をまるで嫌々をするように左右に振る。姉の小夜子にそっくりの美少年のそういった風情は、まるで少女が恥じらっているような清冽な色気が匂ってくるのだ。
「ふふ……そうだったね、ごめんごめん。文夫君にとっては僕が始めての男だったよね。処女じゃないんじゃないかなんて疑って悪かったね」
 津村はそういうと文夫の滑らかなうなじに接吻を降り注ぎ、大きく膨らんだ肉塊を優しくさすり上げる。すると文夫は再びああっと切なげな悲鳴を上げるのだ。
「さあ、ぼやっとしていないでケツを振るんだ」
 津村が文夫の引き締まった双臀をパシンと叩くと、文夫はこっくりとうなずいて、津村の上に乗せ上げた腰をくなくなとうねらせる。可憐さまで感じさせるその仕草が姉の小夜子に似ているようで、津村はまるで美しい姉と弟を同時に凌辱しているような気分になるのだ。
(これで俺の村瀬宝石店に対する復讐は完結した)
 少しばかりの宝石を横領しただけで馘首にしやがって。それまでの自分の会社に対する貢献を考えれば、その程度のことは何程のことではないではないか。
「刑事事件にしないことがせめてもの情けだと思え」
 津村は自分に対してそう言い放った、かつての雇い主である村瀬宝石店社長、村瀬善吉の厳格な顔つきを思い出す。
(これからは、あの村瀬善吉が目の中に入れても痛くないほど可愛がっていたこの姉弟を使って、徹底的に稼いでやる。ざまを見やがれ)
 そう考えた津村は急に凶暴な発作が込み上げ、文夫の尻をずんと突き上げる。すると文夫は「ああっ」と悲鳴に似た声を上げながらも、まるで津村のそんな激情を受け止めるかのように柔美に腰をくねらせるのだ。
 最初津村が自分の双臀を割って侵入してきたときの火箸で肉体を貫かれるような激痛はかなりやわらぎ、今はその部分が妖しく痺れるような感覚に変わってきている。
 文夫はこの地獄屋敷にとらわれてから数々の汚辱の行為を強制されてきたが、同性の肉を受け入れるなど極めつけといって良い。しかしその屈辱感が、隠微な蕾に加えられる淫らな刺激とあいまって、文夫の頭はすっかり痺れきっている。
「どう、津村さん、調子は?」
 いきなり寝室の扉が開かれ、葉桜団の義子とマリが入ってきた。
「ひゃー。お坊ちゃん、とうとうオカマを掘られたわけやね」
 義子が素っ頓狂な声を出すと、文夫は、はっと腰の動きを止め、津村の身体の上から逃れようと必死でもがく。
「こらっ。見物人がいるからって慌てるんじゃない」
 津村は膝の上で美悶える文夫の尻を平手打ちする。
「お前はもう実演ポルノのスターなんだぞっ」
「そうよ、文夫さん」
 マリが嘲笑する。
「貴方のお姉さんの小夜子なんか、大勢の人が見ている前で、静子夫人と堂々とレズビアンを演じたのよ。弟の貴方が人前で男とセックスできなくてどうするの」
「そや。男の子らしく堂々とケツをふらんかいっ」
 義子はそういうと、文夫の頭を押さえつけるようにしてぐいぐいと力を入れる。
「鬼源さんはそのケのあるお客ばかりたくさん集めて、実演ホモショーを企画してるんやで。姉の小夜子や恋人の美津子ばっかりショーに出させんと、自分もしっかり森田組のために稼がんかいっ」
 文夫は義子にそう決め付けられると、一切をあきらめたように、津村に抱きとめられた双臀を再びゆるやかに動かせはじめる。
「そうそう、その調子よ」
 マリはそう言うと、義子と顔を見合わせて笑いこける。
「これはええ見物やわ」
「文夫のこの雄姿、お姉さまにもぜひ見せてあげたいわね」
 義子とマリは部屋の隅にあった一升瓶を引き寄せて棚からコップを取り出すと、男たちのそんな愛欲図を酒の肴にしながら、腰を据えて飲み直し始める。冗談ではなく、二人のズベ公がサクラとなって、文夫がショーでホモショーを演じるための予行演習をしようというのだ。
「ところで、今日はもう商売は終わったのかい」
「写真も映画も以前よりさらに勢いがよくなっているから、あっという間に売り切れたわ」
 マリは笑いながらコップの酒をぐいとあおる。
「そういえば、お坊ちゃんと美津子の実演写真もなかなか評判がええで」
 義子もからかうようにそう言うと、文夫の顔を覗き込むようにする。
「あー、このお坊ちゃん、ちょっと苦しそうに眉をしかめたとこなんか、たまらん色っぽさや」
「どれどれ」
 マリもまた文夫の端正な美貌を覗き込み、溜め息に似た声を上げる。
「ほんと、まるで歌舞伎の女形みたいね」
「こりゃ、この手の趣味のある客には馬鹿うけするに違いないわ」
 文夫は不良少女たちのそんなからかいを受け、さも恥ずかしげに顔を左右に振っていたが、やがて官能の高まりとともに、義子とマリに見物されていることなど、すっかり気にならなくなったかのように、津村との倒錯的な性愛に没入していく。
「そういえば、文夫君と実演ショーのコンビを組まされているはずの小夜子は今どうしているんだい」
 津村が文雄を突きあげながらそう尋ねると、マリが、
「鬼源さんが銀子姐さんや朱美姐さんと一緒に、京子とレズビアンの調教を受けさせているはずよ」
「ほう、弟とからまされたり、その恋人の姉とコンビを組まされたり、小夜子もなかなか忙しいな」
「静子夫人が安定期に入るまで他の奴隷で穴埋めをせなあかんから、鬼源さんも真剣や」
「京子と小夜子のプレイは普通のレズじゃつまらないから、一味違ったものにするって鬼源さんが張り切っていたわ。あたいたちも後で覗いてみるつもりだけど」

34.人間花器(2)

「どうしたの、奥様。急に黙り込んじゃって」
 順子がからかうように声をかける。
「おおかたご主人のあそこを、チンピラ部屋で経験した若い男たちと比べていたんじゃないの?」
 順子の言葉に珠江ははっとした表情になる。
「あらあら、適当に言ってみたんだけど、図星だったようね。奥様ったら、お上品そうな顔をして案外隅に置けないわね」
 順子はそう言うと、友子と直江と声を上げて笑い合う。
「よほど若い男たちにはめられるのが気持ち良かったみたいやな」
「三日三晩、女一人で何人もの男を相手にするなんてなかなか出来ることやないで。そう考えるとなんや、うらやましい気持ちにもなるな」
 あまりの屈辱に、珠江の目尻から一筋の涙が伝い落ちる。
「あらあら、ちょっとからかいすぎたかしら。ごめんなさいね、奥様」
 順子は突然気味の悪い猫撫で声を出すと、珠江の頬を伝う涙をハンカチで拭い取る。
「でも奥様にはそろそろ覚悟を決めてもらわなければならないわ。いつまでもご主人のことを思い出してメソメソしていては駄目よ。これからは奥様は森田組の奴隷になるとともに、湖月流華道の人間花器になってもらわなければならないんだから」
 順子の言う「人間花器」というおぞましい言葉に、珠江は思わず裸身をぶるっと震わせる。
「お、お願い、順子さん」
「なんなの、奥様」
「私、順子さんのおっしゃるその人間花器というものに喜んでなりますわ。で、ですからお嬢様には手を出さないで欲しいのです」
「自分の身をお嬢様の純潔と引き換えにしようというの?」
 珠江はすすり上げながら、こくりとうなずく。
「良い心掛けだわ。感心したわ。奥様がそういう気持ちになってくれるのなら、お嬢様には指一本触れないようにするわ」
「ほ、本当ですか?」
「本当よ。いくら何でも千原流華道の家元令嬢を人間花器にするなんて恐れ多いこと、私にだって出来ないわ」
 順子はニヤリと笑うと、珠江の肩を抱くようにする。
「その代わり奥様は心から私に屈服するのよ。反抗は絶対に許さないわ。少しでも逆らったら約束違反と見なして、千原美沙江は奥様と同じ道をたどってもらう。すなわち三日三晩の間チンピラたちのなぶりものにしたあげく。湖月流華道の人間花器とする」
「ああ……」
 順子の言葉に底知れぬ恐怖を感じたのか、珠江夫人は思わず小さく悲鳴を上げる。
「わ、わかりました。絶対に反抗は致しませんわ。ですから、お嬢様だけは……」
「奥様がそこまで誓うなら、私の方も女に二言はないわ」
 順子はそう言いながら心の中でペロリと舌を出す。
 珠江夫人が守ろうとしている美沙江は今夜、関西の身内一千人といわれる暴力団の大親分、岩崎大五郎の弟、時造に水揚げされることになっているのだ。
 そうと知らない珠江はひたすら美沙江の無事を祈り、自らを犠牲にしようとしているのだ。そんな珠江夫人の心情をたまらなく滑稽に感じた順子は、吹き出しそうになるのを堪えながら声をかける。
「それじゃあ早速、調教を始めるわよ」

 千原流華道の後援会長であった折原珠江夫人は、大塚順子が率いる前衛華道「湖月流」に延々と敵対してきたという罪を償うため、ついに湖月流の花器としての調教を受けることになった。
 順子は美沙江のお付き女中であった友子や直江とともに、珠江の身体に見事な華を咲かせていく。
「いかが、奥さま? 湖月流華道の人間花器にされた感想は? どう、幸せ?」
「……え、ええ、幸せですわ。女の肉体を使って花を生けることが出来るなんて、華道を志すものとしてこんな悦びがあるなんて思ってもいませんでしたわ」
 珠江は唇を震わせて、強制された言葉を口にする。その汚辱の言葉はあらかじめ何度も練習させられているため、珠江の意思に反してスラスラと口をついてくるのだ。
「千原流華道とくらべていかが、湖月流の方がずっと素晴らしいでしょ?」
「………」
 流石に口をつぐむ珠江に、苛立った様子で友子が珠江の柔らかい太腿をつねりあげる。
「――こ、湖月流の方が、ず、ずっと素晴らしいですわっ」
 順子と直江、友子の3人は顔を見合わせてどっと笑い合う。珠江夫人は口惜しさに耐え兼ねたのか、ブルッと腰部をふるわせる。その豊満な臀部を順子はパシリと叩く。
「ほらほら、そんなにお尻を振っちゃあ、折角生けた花が落ちるじゃない。さあ、今度はお尻の方よ。春太郎さんと夏次郎さんに多少は広げられたんでしょう? こちらの穴も使えば随分、発想を広げた作品が出来るわ」
 順子はそう言うと、新たな花を手に取り、夫人のたくましいばかりに豊かな双臀に取り付くようにする。

「さあ、出来たわ」
 長い時間をかけて淫靡な生け花がようやく完成し、大塚順子は満足げに腰を上げた。
「まあ、傑作ね」
「さすがは先生やわ」
 直江と友子が手を叩いて笑い出す。
 中腰の姿勢を強制されている珠江夫人の秘唇には赤い薔薇とエニシダが生けられ、その上方の菊花には2本の白リンドウが深々と差し込まれている。
 珠江夫人を千原流華道家元の美沙江とともに地獄に突き落とした張本人、湖月流華道の総帥、大塚順子の手によって夫人は人間花器に仕立て上げられたのだ。
「でも、この奥さん、本当に綺麗な身体をしてるわ」
 シクシクと口惜しげにすすり泣いている珠江夫人を、同性愛の気がある直江と友子はうっとりとした表情で見つめている。夫人の30を過ぎたとは思えない艶やかな白い肌に、赤い薔薇と白リンドウが見事に映えている。
「そうね、まさに人間花器になるために生まれてきたような女だわ」
 順子はそういってせせら笑うと、美沙江の元女中二人に「そこの姿見を持ってきて頂戴」と指示する。
 直江と友子は、部屋の隅にあった大きな鏡を持ってくると、珠江の前の壁に立てかける。
「そら、奥さん。自分の姿をよく見るんや」
 直江が珠江の顎に手をかけ、鏡の方に向ける。珠江は姿見に映った自分の惨めな姿態を見て、あっと小さな声を上げて顔を伏せる。
「どうしたの、奥様。よく自分の姿を見るのよ」
「ゆ、許してください……」
 珠江夫人は気弱な声を上げて嫌々と首を振る。
「こんな惨めな姿を見せないで……お願い」
「甘ったれるんじゃないわよ」
 友子は珠江の形の良い思い切り鼻をつまみ上げる。
「そんな我儘をいうのは、まだ心から大塚先生に屈服していない証拠やないか。しっかりその自分の恥ずかしい姿を見るんや」
 珠江は鼻をねじられる激痛に耐えかねて、鏡に目を向ける。
「ああ──」
 なんという惨めな、恥ずかしい姿だろうか。女の二つの羞恥の部分が、花を生けられたため誇張され、ただの素っ裸よりもはるかに卑猥な趣を見せているではないか。
 人間花器とはよくいったものだ。今の珠江夫人は人間以下の獣ともいえない。花を生けるための肉の器にすぎないのだ。
「その格好のまま、湖月流華道、万歳を三唱するのよ」
 順子の命令に珠江夫人は口惜しげに唇を噛み、下を向く。
「どうしたの、早く言わないと美沙江もあなたと並べて人間花器にしてしまうわよ」
「そ、それだけは……許して」
「なら早く言うのよ」
 珠江夫人はもうどうしようもない、といった風に顔を上げ、「こ、湖月流華道、万歳」と口に出す。
「声が小さいわよ。もっと大きく」
「こ、湖月流華道、万歳」
「もっと大声で!」
「湖月流華道、万歳!」
 珠江夫人は自棄になったようにそういうと、さすがに胸を突き上げるような口惜しさがこみ上げ、わっと号泣する。
「今日はこれから半日、そうやって花を支えているのよ。落としたらたっぷりお仕置きするからね」
 順子は羞恥と屈辱にすすり上げ、小刻みに肩を震わせている珠江夫人にそう言い放つと、直江と友子と笑いあいながら部屋を後にした。

【重要】auスマホのキャリアメールを連絡先にしている会員様へ

当サイトは会員申し込みメールに対するお返事はPCから発信させていただいておりますが、連絡先をauのキャリアメールに設定されていると、PCメールが届かない場合があります。

これは、auのスマホを購入した場合、デフォルトの設定ではPCからのメールはメールフィルターによって、インターネットからの受信を拒否する設定になっていることが原因です。

上記に該当する会員の方は、設定で少なくとも当サイトからのメール(アドレスはtanbi@kagoya.netです)の受信は出来るように、設定を変更するようお願いいたします。

33.人間花器(1)

 田代屋敷の二階にある菊の間と呼ばれている八畳の和室では、珠江夫人が「まんぐり返し」の姿で緊縛された裸身を、大塚順子と、美沙江のお付き女中であった友子と直江の目の前に堂々とばかりに晒していた。
 珠江夫人の女の部分を縁取っていた繊毛は、菊門の周囲のあるかなしかといった産毛にいたるまですっかり剃り取られ、まるで童女のような趣きを示している。三人の悪女たちの視線を受けたその部分は、まるでそれ自身が生き物であるかのようにフルフルと息づいているようだ。
 三日三晩にわたってチンピラ部屋に浸けられ、精力の有り余った若い男たちから凌辱の限りを尽くされた珠江夫人の裸身からは、荒淫の果てのやつれとともに、以前は見られなかった一種の貫禄を伴った色気が伺えるのだ。
「素晴らしい格好ね、折原夫人。ご気分はどうかしら」
 順子は満足げな微笑を浮かべながら珠江夫人の太腿をぴしゃぴしゃ叩く。珠江はぐっと唇を噛み、身が焼かれるような羞恥と屈辱に耐えている。
「憎い敵の前におマンコも、お尻の穴も丸出しにした気分はどうなの、と尋ねているのよ」
 順子は急に冷たい声でそう言うと、夫人の羞恥の丘をいきなりぴしゃりと叩く。
「あっ!」
 そんな順子の乱暴な行為に、珠江夫人はさすがに小さな悲鳴を上げる。
「――し、死ぬほどはずかしいですわ」
 順子からしつこく迫られた珠江夫人は声を震わせる。
「そう、こんな大胆なポーズをなさっているから、恥ずかしさなんて感情はもう超越したのかと思っていたのだけれど、まだ羞恥心は残っているのね」
 順子はそう言ってさも楽しげに笑うと、友子と直江の方を見る。
「でもこんなのは序の口やで、奥さん」
「もっともっと、恥ずかしい目に合わせてやるから覚悟しいや」
 不良の本性をすっかりあらわにした二人の少女はそんなことを言いながら、珠江夫人の白く滑らかな内腿や、柔らかな尻の肉を指先でつねる。夫人はそんな淫靡な玩弄を必死で耐えている。
(ああ、いったい、どうしてこんな目に合わなければならないのか)
 湖月流の大塚順子がここまで千原流華道を憎む理由は一体なんなのか。順子は千原流が湖月流を妨害してきたというが、千原流の家元、元康の健康不安や娘である美沙江の後継者としての資質についてことさらに騒ぎ立て、千原流の会員を横取りしようと仕掛けて来たのは湖月流の方である。
 伝統と格式を持ち、関西の富裕階層を中心に多くの会員を有する千原流にとって、前衛華道の一派に過ぎない湖月流など元々眼中にない。しかしながら後援会長である珠江が湖月流の主張を順々に否定して行くと、順子は珠江と元康の根も葉も無い醜聞に言及した怪文書までばらまき出したのだ。
 ここにいたって珠江がついに弁護士を通じ法的措置をとることを通告すると、湖月流側の妨害活動はいったん終息したのである。
 しかしその際の珠江に破れたという口惜しさや、そして千原流に象徴される上流階層に対する恨みが順子の心の中で澱のように沈み、時間をかけて発酵していたのである。
「さすがに三日三晩も若い男にやられっぱなしになったせいか、少し腫れているみたいね」
 順子は珠江の秘奥を楽しげに覗き込む。
「でも、まだまだ綺麗なピンク色だわ。やっぱり子供を産んでいないせいかしら」
 順子はそう言いながら珠江の花びらを指先でつまんでひっぱったり、延ばしたりしている。友子と直江は真剣な顔付きで珠江のその部分を点検する順子の様子と、顔を真っ赤に染めて言語に絶する屈辱に耐えている珠江の様子の対比がおかしいのか、肩を震わせながら笑いをこらえている。
「それとも、ご主人があまりお使いにならなかったのかしら?」
 じっと黙っている珠江の花蕾を順子が指先でつつく。
「あっ!」
 突然敏感な箇所に触れられた珠江夫人はうろたえたような声を出す。
「ご主人とのセックスは週に何度くらいだったの? 言いなさい。珠江夫人」
「そ、そんなことまで答えなければならないのですか」
「何を寝ぼけたことをいっているの」
 順子はくすくす笑い出す。
「奥様はもうみんなの前で、森田組の奴隷として生きて行くことを誓ったのでしょう? 奴隷なら奴隷らしくご主人様の質問には素直に答えるのよ」
 順子はそう言うと夫人の花蕾を指先でつまみ、コリコリと揉みほぐし始める。
「大きなお核ね。ここが奥様の泣き所かしら」
「あ、あっ……ああっ」
「さあ、答えなさい。毎日なの? 2日に一度くらいなの?」
「そ、そんなにはしておりませんわ」
 順子の巧みな責めにたちまち快感をかき立てられた珠江が思わずそんなことを口走ったので、3人の女たちは声を上げて笑い合う。
「そんなにしていないのならどれくらいなんや? 週に一度か?」
「いくら何でもそれより少ないってことはないやろう」
 友子と直江が順子に調子を合わせて、珠江の乳房や太腿のあたりを揉み立てながら尋ねる。
「ひと月か、ふた月に一度くらいです」
「何ですって?」
 順子が思わず手を止める。
「本当にそんなに少ないの?」
「は、はい……」
「ひょっとして新婚のころからずっとそうなの?」
「い、今ほどではありませんが……ひと月に二度を超えることはありませんでした」
「へえ、呆れたわ」
 三人の女はおおげさに驚く。
「こんな美人の奥様をもらいながら、それだけしか愛してあげへんなんて、なんて情けない男やろ」
「珠江夫人にはどうして子供が出来へんのやろと不思議に思てたけど、それやったらも無理ないわ」
「やることやってへんのやからね」
 友子と直江はそんなことを言い合うと顔を見合わせて笑いこける。
 珠江夫人は自分だけでなく、夫までもが嘲弄の対象とされていることに、肩を震わせながら耐えている。
 確かに友子と直江の言う通り、大学教授であり、かつ医師である夫の源一郎はセックスに対して消極的であった。源一郎はそれを多忙のためとしていたが、むしろ仕事をバリバリやる男が性に対しても貪欲なことが多い。
 珠江は性に対しては保守的な考え方を持っており、快楽のためにセックスを楽しむといった欲求は少なかったため、夫が淡泊であるということに対しては特に不満はなかった。しかしながらそのせいで子供がいつまでもできないことは珠江にとって悩みの種だった。
 源一郎は珠江とは一回り以上齢が離れており、70歳を越えた源一郎の母親に早く孫の顔を見せてやりたかった。しかしながらそもそもの回数が少ないし、それがうまく受精のタイミングにぶつかることはさらに少ない。珠江は源一郎に対して、せめて計画的なバースコントロールをするよう提案したのだが、源一郎はあいまいに笑うだけだった。
 チンピラたちの疲れを知らぬ肉棒に貫かれながら、幾度も幾度も気をやった珠江。あれは果たして現実の出来事だっただろうか。あれが本当のセックスだとしたら、に比べれば夫との営みは子供の遊びのようなものだったのではないか。
 珠江はふと、チンピラ部屋での若い野獣のような男たちとのセックスと、夫のそれを比較している自分に気づき愕然とする。

32.不良少女たち(4)

「せいぜい30歳そこそこやと思ったわ」
「そやな」
 マリと義子が感心したようにそんなことを言い合っている。久美子は、マリと義子がどうにか話に乗って来た様子にほっと胸を撫で下ろす。
 実際は夏子こと美紀は45歳、冬子こと絹代は42歳だからそれぞれ6つずつさばを読んでいる。二人の貴婦人の若々しさから、義子とマリはすっかり久美子の言うことを信じたようである。
 静子夫人を始めとする美女たちの失踪事件の最大の謎は、彼女たちの監禁場所だった。誘拐されているのは一人や二人ではない、文夫を含め8名もの人数が捕らわれているのである。8名の美男美女がいまだ生かされ、日々性の地獄にのたうち、怪しい写真や映画への出演を強制されているのだ。
 それだけのことを実行するためには、かなり大きな場所が必要なはずである。少なくとも一目につきやすい都心部や住宅密集地では不可能だと山崎は考えていた。
 そこがいったいどこなのかをつきとめれば、その土地建物の所有者や居住者が判明するだろうし、それを手掛かりに事件は一気に解決に向かうに違いない。
 美紀と絹代はそのための囮である。美紀と絹代を久美子とともに静子夫人達の監禁場所に送り込み、久美子が隙を見て抜け出し、山崎にその位置を知らせる。それが山崎の立てた計画だった。
 久美子にはもちろん、美紀と絹代の身にも大きな危険が伴う行為である。しかし今の山崎には久美子と葉桜団の間に生まれたわずかなつてを最大限に生かすしか方法がないのだ。
 美紀も絹代も、むしろ母親の自分たちが愛する息子、娘の身代わりになることが出来るのなら、命を投げ出しても良いとまで思い詰めていたこともあり、囮となることを進んで引き受けてくれた。久美子も兄の名誉を回復するためならと、危険な役割を自ら志願した。それだけに山崎としては今回の作戦では絶対に失敗は許されないのである。
 山崎と久美子、そして美紀や絹代との接点を敵に悟られないよう、山崎が他の3人と接触することは最小限に抑えた。久美子が山崎の妹であることや、美紀や絹代の正体を敵に悟られたらその時点で失敗である。
 かなりきわどい作戦だったが、山崎には勝算があった。その最大のポイントは美紀と絹代の、年齢を感じさせない美貌である。美紀が39歳ということを信じさせれば、少なくとも22歳の小夜子の母親ということは、あり得ない話ではないが不自然である。
 そうは言っても母と娘だから顔立ちは似ているし、いずれ気づかれる可能性は大きい。しかし、このかなり無理のある囮作戦もほんのわずかの間――そう、半日でも機能してくれれば良いのである。それだけの時間があれば、久美子が山崎と連絡をとることは十分可能だろう。
「この写真、預かっていってもええかな?」
「いいわよ。でも、絶対に外には出さないでね」
「わかってるわ」
 義子は写真をカバンの中にしまい込む。
「ところで、今日はまた早くから盛り上がっているのね」
 久美子はテーブルの上に並んだビールの空き瓶に目をやる。
「ああ、仕事が思ったよりも早く片付いたんで、一杯やっていたんや」
「仕事って?」
「久美ちゃんにも前に見せたやろ。写真の販売や」
 久美子は心臓がドキリと鳴るのを感じる。以前このスナックで見せられた静子夫人が複数の男と絡み合っている写真を思い出したのである。山崎は森田組が売りさばいている写真を一部入手していたが、久美子にはあえて見せていなかったのだ。
「もっとも最近は売れ行きが良くて、あっという間に焼き増ししたものがあっという間に捌けるから、楽をさせてもらっているけどね」
「あれは、売り物だったの?」
「そうや、写真だけやない。映画なんかも随分高い値段で売れるんやで」
「映画――」
「それも普通のからみの映画だけやないで」
 義子はカバンの中からけばけばしいカラーのチラシを取り出す。そこには山崎の助手で恋人でもある野島京子と妹の美津子の緊縛された裸のバストショットが並び、「京子と美津子 姉妹浣腸合戦!」という大きな字が記されていた。
(き、京子さん、美津ちゃん――)
 ピンク映画のポスターを思わせるそんな淫らなチラシの中の、京子と美津子の無残な姿を目にした久美子は一瞬、気が遠くなるのを感じる。
「どう、なかなかお金がかかってるやろ?」
 義子は久美子の顔を伺うように見る。
「え、ええ」
 久美子は必死で動揺を抑えながら頷く。
「これも、あなたたちの斡旋の仕事の一つなの?」
「まさか」
 義子はマリと顔を見合わせて笑い合う。
「この女は以前、あたいたちの葉桜団のメンバーだったんだけど、仲間を裏切ったから妹と一緒にヤキを入れてやったんや」
 義子はチラシの中の京子の顔を指さす。
「その様子を映画に撮ったってわけ。今じゃすっかり素直になって、葉桜団のために汗水流して働いているわ」
「……」
 久美子は改めて「浣腸合戦」という毒々しいまでに鮮やかな文字に目をやる。それがどのような責めなのか、久美子には想像が出来ない。しかし、義子とマリの冷酷な口調から、京子と美津子はとんでもなくおぞましい責め苦にあえいでいるのではないかという思いが、久美子の頭を満たして行くのだ。
(浣腸――まさか――)
 そんなことはありえない。久美子は思わず首を振る。そのような行為を見世物にするなど考えられない。
 久美子には女に浣腸して、強制的に排泄させることを悦ぶ人間がいることなど想像も出来ない。「浣腸合戦」という言葉から、京子と美津子の姉妹を並べて浣腸にかけ、どちらがより排泄を我慢出来るか競争させるというような状況はとても浮かばないのだ。
 しかし何かとても、口に出せないほどのおぞましい手段で責められているのではないかということだけがぼんやりと認識出来るだけなのだ。
(兄さんはこのことを知っているのかしら)
 誘拐犯の手に捕らえられた京子は、すでにその純潔は奪われているのではないかということまでは覚悟していたとしても、いまだ女学生である妹の美津子と共に変質的な責めを加えられていることまでは知らないのではないか。
(もしも知っていたら、到底耐えられないだろう)
 このことは兄には話せないと久美子は思い定める。
「自由恋愛を仲介するのは犯罪でもなんでもないという話をしたやろ、久美ちゃん」
「え、ええ……」
「かといって、甘く見たらあかんで」
「甘く見るって……」
「あたいらを裏切ったり、騙したりしたらあかん、ていう意味や。さもないとこの女みたいな目にあうで」
 義子の目にキラリと冷酷な光が宿る。
「まさか、脅かさないでよ」
 久美子は作り笑いを浮かべる。
「私は仲介料がほしいだけよ。学費をずっと滞納していて、このままじゃ大学を追い出されそうなのよ」
「それならええけど」
 義子はにっこり笑う。
「直江や友子を助けてくれた恩もあるし、もちろんたっぷりお礼をするわ」
 義子がそう言うと、マリが付け加える。
「この話が本当やったらね」