アーカイブ: 5月, 2019

新花と蛇

204.奴隷のお披露目(4)

「そいつはちょっと苦しい理屈だな」 「私たちのことはどうでも良いじゃない」  苦笑する関口を遮るように、町子はアルバムのページをめくり、ギリシャ彫刻を思わせる少年の裸像を指さす。 「こっちの男の子は誰なの?」 「それは誰だったかな……男にはあまり興味がないんでな」  関口が首を捻っていると、カウンターの中の五郎というバーテンがグラスを拭きながら「そいつは村瀬文夫といって、四ツ谷の村瀬宝石店の社長の…
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新花と蛇

203.奴隷のお披露目(3)

「こりゃあ、遠山静子夫人じゃない」  岡田とともにアルバムを覗き込んでいた町子が驚きの声を上げる。  遠山財閥のオーナーである遠山隆義の妻、静子はその映画女優顔負けの美貌と、フランス留学で培った知性と教養で並の芸能人をはるかに凌ぐ有名人であり、女性週刊誌のグラビアを何度も飾ったこともある。  その静子夫人が約一カ月前、日本橋の三越前で誘拐された時は新聞の社会面のトップを飾るほどの大ニュースになった…
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新花と蛇

202.奴隷のお披露目(2)

「まあ、あんまり心配してもしょうがないわ。それこそ直江が目を光らしているだろうから」 「いっそ節子もポルノ映画のスターにしてしまうか」 「まさか」  苦笑した町子だったが、ふと真面目な顔になる。 「それも面白いかも知れないわね。といっても節子の絡みを撮っても絵にならないから、雪路と組ませるのが良いんだろうけど」 「帰ったら直江に相談してみよう」  岡田は腕時計を見て「そろそろ行くか」と町子を促す。…
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新花と蛇

201.奴隷のお披露目(1)

「随分大きなお屋敷ね」  車から降り立った町子は三階建ての巨大な屋敷を見上げ、驚きというよりもなかば呆れたような声を出す。 「いくら郊外とは言っても東京都内にこれだけの土地を持っていると、随分税金もかかるでしょうね」 「そりゃあ伊豆とはだいぶ違うだろう」  岡田もまた運転席から降り、要塞を思わせるその屋敷を見上げながら町子に答える。  岡田光三郎が経営する和洋産業は、もっともらしい社名だがその実態…
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新花と蛇

200.肉の狂宴(13)

 山崎は驚いて美津子を見る。美津子は静かに目を閉じると「ねえ、キスして、お兄さん」と囁く。 「何をぼうっとしてるんや。女に恥をかかせる気かっ」  美津子の大胆な行為に戸惑う山崎の背中を義子が思い切り叩く。なおも山崎がためらっていると美津子は目を開き、一瞬悲愴な表情になるとその唇をいきなり山崎の唇にぶつける。 「うっ……」  美津子の唇に口をふさがれた山崎は気圧された表情になる。美津子は山崎の舌を引…
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