64.地獄巡り(2)

 屈強なニグロの男が静子夫人を背後からぐいと抱き締め、豊かな乳房を揉みながら何か声をかける。すると夫人ははっきりと悦楽の表情を浮かべながら「ああ……」とため息のような声を上げるのだ。
「Oh, I love you, Jonny. Squeeze my boobs more, Ah, ah……」
久美子は覗き穴から目を離すとふらふらと膝をつく。誘拐された遠山財閥の静子夫人が現在どんな状態にあるかについては銀子や義子からある程度聞いていたが、現実にその姿を目撃することはいまだ処女の久美子にとってはあまりにも刺激が強く、また大きな衝撃だった。
「どう? ニグロのジョニーと遠山夫人の白黒ショーは。実にぴったりと息の合ったコンビだとは思わない?」
銀子はそろって顔を青ざめさせ、恐怖に裸身をブルブル震わせている久美子と美紀にさも楽しげに声をかける。
あまりにおぞましい、淫らな地獄絵を眼にした二人はショックのあまり口も利けず、ただ赤く柔らかそうな唇を震わせている。
その時、廊下で耳障りな甲高い笑い声が聞こえたかと思うと、ずんぐりした女が入って来る。その顔を見た美紀は訝しげに一瞬眉を顰める。
「村瀬宝石店社長夫人の美紀さんでしたわね。そこでお休みになっているのは確か、千原流家元夫人の絹代さんだったかしら。もう一人の若い方は初めてお目にかかるけれど――」
女がさも楽しげに三人の美女を見回しながらペラペラとしゃべり始める。
「ほらほら、ぼおっとしないで遠山家の女主人様に返事をせんかい」
義子が久美子と美紀の髪を掴んで、無理やり女の方に顔を向けさせる。
「遠山家? 女主人ですって? いったい何のこと――」
美紀はそこではっとした表情になる。
「あ、あなた、千代さん。遠山家の女中の千代さんじゃないっ。どうして千代さんがここに」
「もう女中なんかじゃないわ。失礼ね」
ずんぐりした女――千代が口を尖らせる。
「私は遠山家の女主人、遠山千代。どうぞよろしくね。静子夫人に代わって歓迎の言葉を申し上げますわ。ホホホ」
「い、いったいどういうことなの?」
美紀は小刻みに肩を震わせている久美子の方を見る。
「久美子さん、あなた、このことは――」
「私から説明するわ」
久美子に問いかける美紀に、千代が割って入る。
「隣の部屋でニグロとお尻を振り合っている静子はご存じの通り遠山隆義の妻だったけれど、根っからの淫乱、しかもマゾヒストというどうしようもない変態女でね。男を作って遠山家を飛び出した挙げ句、お座敷ショーやポルノ映画の実演スターになりたいって志願したのよ」
「なんですって? ば、馬鹿なことを言わないでくださいっ!」
「馬鹿なことかどうかあの姿を良く見るのよ」
銀子が美紀の美しい黒髪をつかむと、ぐいっと静子の方を向ける。
(……!)
美紀は黒人の醜悪な肉塊が静子夫人の花園ではなく、双臀の奥に秘められた隠微な肛門に抽送されているのに気づく。夫のものしか目にしたことがない美紀には信じられないほど怒張した黒人のそれも驚異だったが、美紀がより驚いたのは、その巨大な肉塊を受け入れている静子夫人の菊花だった。
それはまるで生き物のような収縮を見せ、節くれだった黒い肉棒を深々と呑み込んでいる。黒人に責められるたびに「あっ、あっ……」という静子夫人の耐え兼ねたような喘ぎ声が聞こえるが、充血した花唇からとめどなく流れ落ちるキラキラと光る愛液は、夫人が決して苦痛のみを知覚しているのでないことをはっきりと示しているのだ。
「ニグロにお尻の穴を犯されてよがり泣きしている女、それが紛れも静子夫人よ」
「そんな……」
美紀は眼前で展開される光景が信じられないといった風に、嫌々と首を振る。
「それと、まだ見た目には分からないけれど、静子夫人は妊娠していらっしゃるのよ」
「妊娠ですって……?」
美紀が失神した絹代を抱きかかえるようにしながら、愕然として顔を上げる。
「もちろんご主人の――いえ、今はもう元のご主人と言った方が良いかしら――遠山隆義の子供ではないわ。この屋敷に来てから静子夫人は人工授精を受け、日本に住んでいる不良のフランス人の種を人工受精させたのよ。どう、おフランスが大好きな静子夫人には絶好のプレゼントでしょう……」
「なんですって……」
美紀が驚きの余り息を呑む。
あの優雅で艶麗な静子夫人が、どこの誰とも分からぬ不良外人の種を植え付けられた腹部を強調するように晒しながら、まるで墨を塗ったような醜悪な黒人に絡み付かれて、いかにも苦しげに腰部をうねらせている。
「安定期に入るまでセックスは控えさせるつもりだったんだけど、静子があまり男が欲しいとせがむものだから、お尻でなら良いだろうと許可したのよ」
美紀はそれ以上千代や銀子のおぞましい言葉を耳にしたくないというように、頬を真っ赤に染めて眼を伏せる。しかしながらそんな美紀の耳に、静子のすすり泣くような声とともに、静子自身と黒人の長大なものから発せられる、ぬかるみを歩くような音が響いて来るのだった。
「まあ、静子ったらあんなにお尻の穴を膨らませて、気持ち良さそうに泣いているわ」
千代は覗き穴に目を当てると、クスクス笑い出す。
「でもあんまり頑張り過ぎてお腹の子供に触るといけないわ。あと一度気をやったら今日のところはお休みさせなきゃ」
千代はそう言うと一人で頷く。
「あらあら、そう言っているうちにそろそろゴールインみたいね」
千代がそう言った途端「I’m coming!」という絶叫が隣の部屋からはっきりと響いてくる。美紀は耳を塞ぎたい思いに耐えながら、身体を強ばらせているのだった。

「静子をしばらく休ませたらお風呂に入れて、檻に連れて行くわ。せっかく種がついたのに流してしまったら、元も子もないからね」
「千代夫人もまるで元の静子夫人の女中に戻ったみたいね」
銀子がからかうようにそう言うと、千代は真面目な顔で「女中だった頃以上に親身に世話をして上げてるわ」と答える。
「それじゃあ、新入り三人の歓迎会を開く時に声をかけますわ」
銀子はそう言うと義子とともに、美紀を追い立てるように部屋から出る。その後を友子と直江が、いまだふらふらしている絹代を両側から支えるようにして続く。
三人が次に連れて行かれたのは、吉沢が私室として使用している一階の洋室である。銀子がドアをノックすると、マリが顔を出して頷く。
「ちょうど良かったわ、銀子姐さん。今始まったところよ」
銀子はニヤリと笑うと、久美子、美紀、絹代の三人に「静かにするのよ」と声をかける。
部屋に備え付けられた浴室の一方の壁面には大きな鏡がはめ込まれているがこれは実はマジックミラーであり、部屋から内部を素通しで見ることが出来るようになっている。暗い部屋の中で丸見えになった浴室がまるでステージのように光っている。
その浴室の中で二人の若い裸の女が、まるでおしくら饅頭をするようにもつれ合っている。部屋に取り付けられたスピーカーから、ぴちゃ、ぴちゃという水音と共に女の声が流れてくる。

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