「まあまあ。乱暴はあかんな」
 珠江の陶器のような白く滑らかな肌に、涎をたらさんばかりの顔つきで見とれていた熊沢が声をかける。
「折角の奇麗な肌に痣がつくやないか」
 熊沢はでっぷり太った体を重そうに起こすと、座敷の中央の珠江が立ち縛りになっている舞台に近づく。
「ちょっと触らせてもらうで、奥さん」
 熊沢は無骨な手で珠江の透き通るようなうなじや滑らかな背筋、形良く実った乳房などをゆっくりと撫で回す。
 熊沢組は暴力団とはいっても、森田と同じように、荒っぽい商売にはいっさい手を出さず、もっぱらポルノ写真や秘密映画を製作しては闇の市場に流すことを生業としている。そんな卑劣なポルノ業者にまるで品定めをするように身体中を触られ、珠江は虫唾が走るような不快感をじっと耐えているのだ。
 しかもそれが、自分が後援してきた千原流華道の家元夫人である絹代がの目の前で行われているということが、なおさら珠江を惨めにさせるのだ。
 しかしその一方で、珠江がそんな風に嬲りものになっているのにもかかわらず、絹代たちがまるで何かに耐えるようにじっと沈黙し、熊沢の行為を止めようともしないことが珠江にある確信を与える。
(絹代さん達は必死で、私と他人のふりをしようとしている。何かの意図がないとそんなことはしないはず。ひょっとして救出が来るまでの時間稼ぎ?)
 珠江の胸の中にふと、微かな希望の火が灯る。
 珠江と絹代の視線がふと交錯する。絹代は何かを訴えるようにじっと珠江を見つめ、こくりと頷く。
(間違いない――絹代さんは体を張って、美沙江さんや私たちを助けにきてくれたのだ。それなら私も死んだ気になって演技をしないと)
 そう思い定めた珠江は、熊沢の弄虐に身を任せるように身体の力を抜く。
「まったく森田さんのところの実演スターはどれもこれも特上で、うらやましい限りや」
 熊沢は珠江のむっちりと実った双臀の溝辺りを淫靡な手つきで撫でさすりながら尋ねる。
「あんた、玄人女やないね。人妻か」
「……は、はい。そうですわ」
 珠江は尻を撫でられるおぞましさをこらえながら答える。
「亭主は何をやっているんや」
「――」
 口をつぐむ珠江に、義子が声を荒げて叱咤する。
「お客様がお尋ねや。ちゃんとお答えせんかい」
 珠江はあきらめたように、口を開く。
「――お、夫は大学病院の、教授で、医学博士です」
「ほう、お偉いこっちゃな。するとあんたは、医学博士さまの奥さまかい」
 嘲るような熊沢のことばに、再び口を閉ざす珠江の双臀の奥に秘められた微妙な菊蕾に熊沢の指が触れる。
「い、嫌っ」
 思いがけない箇所を攻撃されて、珠江は双臀を痙攣したように震わせる。
「ご亭主の名前はなんていうんや」
「許して――」
「言わんつもりならこうするで」
 熊沢はいきなり人差し指の第一間接まで珠江の菊花に侵入させる。
「ここも調教済みのようやな」
「い、嫌っ、そ、そこは堪忍して下さい」
 珠江は肛門を太い指でこねくりまわされる苦痛に、思わず悲鳴を上げる。
「ケツの穴を責めるのをやめてほしければ、亭主の名前を言うんや」
「あっ、や、やめてっ。い、言いますわっ」
 珠江は裸身を悶えさせながら悲鳴のような声を上げる。
「折原、折原源一郎ですわ――」
「ほう、折原博士様か。そうすると奥さんは折原医学博士夫人ということか」
 熊沢はそんなとりとめのないことを言いながら、珠江の菊花をさらに嬲り続ける。
「ここな何て言うところや、ええ、言うてみい」
「そんな――」
「言わんとこうするで」
 熊沢のふしくれだった指が第二間接まで珠江の狭隘な箇所に侵入する。珠江は思わず「い、痛いっ!」という悲鳴を上げる。
「お、お尻の穴です――もう、やめてくださいっ」
「そんな言い方ではまだまだ納得出来んな」
 熊沢はニヤニヤ笑いながらそう言うと、ぎこちない手つきで大沼に酌をしている久美子の方を振り返る。
「そこの久美子ていうお嬢さん、ちょっとこっちへ来んかい」
「えっ……」
 久美子はためらうが、大沼に「ほら、親分のお呼びだ。さっさと行きな」と尻を叩かれ、仕方なく立ち上がる。
「ここへきて、この奥さんの尻の穴をよく見るんや」
「ああ、そ、そんな――」
 珠江は思わず裸身を悶えさせ、熊沢の弄虐から逃れようとするが、熊沢の指はまるで珠江を串刺しにしたかのように固定し、思うように動けない。
「どや、ケツの穴に指が刺さっているのが見えるか」
 熊沢は久美子の肩を無理やり抱き寄せるようにして、その無残な光景を見せつける。
(こんな――こんなことって――)
 久美子にとって同性のそんな箇所をこのように身近に目にするのは生まれて初めての経験である。まして、そこが男の無骨な指を食い込ませているところなど、信じられない光景と言っても大袈裟ではなかった。
 女の排泄器官をいたぶるなど、熊沢という男の淫虐さに久美子は驚きを越えて恐怖を感じるのだ。
(静子夫人や京子さん、小夜子さんは日々こんな恐ろしい責めを受けていたのか)
 自分がこんなことをされたらとても正気を保っていられるとは思えない。久美子の顔は次第に引きつって来るのだった。
 そんな珠江に対する無残な責めを間近で見せつけられている久美子だけでなく、美紀と絹代も恐ろしさのあまり目を伏せ、肩を小刻みに震わせている。
「どうしたんや、ケツの穴を見るのは初めてか? 銀子からは男好きの不良娘と聞いてたが、なかなか純情なところもあるやないか」
 熊沢は脅えたような表情を見せている久美子に、面白そうに声をかける。
「どや、見物人が増えてきたところで、もう一度ここが何というのか奥さんに教えてもらおやないか」
 熊沢が、珠江の耳元に何事か囁きかけると、珠江は嫌々と、首を力なく振る。狭溢な箇所に侵入する指の数が二本に増え、再び珠江は「ひいっ!」と絹を裂くような悲鳴を上げる。
「い、いいますわっ。で、ですから、そこをそんな風にするのはお許しをっ」
 珠江は、熊沢に教え込まれた屈辱の台詞を、涙を流しながら復唱する。
「そ、そこは、医学博士夫人、お、折原珠江、31歳の――」
 珠江はそこでたまらずわっと泣き出す。自分だけでなく夫までも辱めなければならない――それも自分が後援してきた千原流華道の家元夫人である絹代の目の前で――珠江はあまりの情けなさに声を震わせて泣き続けるのだった。