「ねえ、ママ、小夜子のクリトリスがわかる? このお屋敷に来てから随分大きくなったのよ。ねえ、こうすればはっきりと見えるでしょう」
 小夜子は夢遊病にかかったように津村から強制された卑猥な科白を次から次へと吐き続ける。
 忘我の境地に浸っている小夜子はいつしか母に対する呼びかけも、あらかじめ教えられた「お母様」ではなく、普段の言葉遣いのように「ママ」になっているのが津村にとっては愉快だった。
 今でこそ「ママ」という呼称はかなり子供っぽいと見做され、特に母親をその呼称で呼びかける男は「マザコン」と決めつけられているが、当時のブルジョア家庭では、米国文化の影響か父親と母親のことを「パパ」、「ママ」と呼ぶことは決して珍しくはなかった。
 村瀬家もまた典型的な西洋かぶれのブルジョアであり、貧しい家庭に育った津村はかつてはそんなことまで苦々しく感じていたものである。
(これで俺の、村瀬家に対する復讐は完成される)
 津村はそんな小夜子の淫らな崩壊図を眺めながら、胸の中で快哉を叫んでいる。
(少しばかりの宝石を横流ししただけで俺を泥棒呼ばわりした村瀬善吉も、今頃自分の女房と可愛い子供たちが素っ裸で対面しているとは夢にも思わないだろう)
 泥棒呼ばわりも何も泥棒そのものなのだが、津村の利己的な思考は持てる者から持たざる者へ多少の富の移動があったとしてそれがどこが悪いのか、というものである。
(小夜子を諦めざるを得なくなった俺に対する慰謝料と考えれば、安いものではないか。そうだ、内村なんて言う薮医者と結婚するよりは、俺を小夜子の婿にして村瀬宝石店を継がせれば、万事上手く行ったのだ。文夫なんて顔ばかり奇麗なボンボンは社長の器じゃない。シスターボーイの春太郎たちに尻を掘られているのがお似合いだ)
 そんなことを考えながら津村は美紀夫人、小夜子、そして文夫の様子を順に伺う。
 夫人は次第に実の娘が発する妖しい色気に魅せられたかのように、小夜子の淫らな姿から目が離せなくなっている。さらに嗜虐者たちにとっては愉快なことに、小夜子の隣に立たされている文夫が、熱の籠った姉の演技にあてられたように顔を紅潮させ、息が荒くなって来ているのだ。
 小夜子の艶技によって引き起こされたそんな美紀夫人と文夫の変化の様子を楽しげに観察していた津村は、小夜子に新たな難題を吹き込む。
「次は、小夜子ーー」
 耳元で津村に何事か囁かれた小夜子は辛そうに眉をしかめる。
「そ、そんなことまでーー」
「ショーの演目に入っていることだ。今更恥ずかしがることでもないだろう」
「でもママの前でそんなーーそれだけは許して」
「駄目だ。小夜子はもう森田組のショーのスターとして生まれ変わったのだろう。そのことをお義母さんにはっきりと教えてあげるんだ」
「あ、あなた……」
 小夜子は悲痛な表情を津村に向ける。
「あなたはいったい、ママをどうするつもりなの?」
「そうだな……」
 津村は意味ありげな笑みを浮かべ、わざと小夜子から目を逸らす。
「お義母さんはもう45歳だそうだが、こうやって素っ裸を見ているとそんな年齢が信じられないほどの若々しさだ。十分森田組のスターとしてやっていけると思うね」
「そ、そんな……」
 小夜子は言葉を失って津村を見つめる。
「お、お願い。ママにまでそんな残酷なことをするのはやめて。そんなことをしたら、ママは気が狂ってしまいます」
「それは小夜子と文夫君の心掛け次第だね」
 津村は顔をそう冷たく言い放つと、再び小夜子に顔を向ける。
「いいかい、実際のショーになるとどんな客がやってくるか分からない。ひょっとして小夜子が顔を知っている人間が来るかもしれないが、そのたびにうろたえていたんではとてもショーのスターなんて勤まらないね」
「……」
「目の前に自分の母親がいようが、父親がいようが、平然とショーのプログラムをこなすことが出来ないとプロとは言えないね。小夜子にそれが出来ないようなら、お義母さんを代役に立てざるを得ないと言っているんだ」
「そんな……」
「何がそんな、だ。静子夫人を見ろ。かつての使用人である川田や千代夫人の調教も悦んで受けているし、顧問弁護士の伊沢先生にだって進んで身を任せているじゃないか。静子夫人に出来て小夜子に出来ないはずはないだろう」
「ーーわ、わかったわ」
 小夜子はがくりとうなだれる。津村は夏次郎に何事か囁くと、夏次郎はニヤリと頬をゆがめる。
「鈴縄ね、了解」
 夏次郎は棚から紅白だんだらの紐を取り出してくると、津村に手渡す。金銀大小の鈴が取り付けられたその奇妙な縄を津村は美紀に見せつける。
「――ママ、ご、ご覧になって。それは鈴縄といって小夜子が大好きなもの」
 小夜子はさすがに震える声で話し出す。
「こ、この金の鈴と銀の鈴は何のためについているのか、ま、ママは分かる? 分からないのなら小夜子がママに教えて上げるわ」
 小夜子はそこまで口にすると、甘えるような声で津村に呼びかける。
「ね、ねえ……あなた、鈴を小夜子の身体に含ませて」
「よしよし」
 津村はほくそ笑みながら小夜子に近づく。
「金と銀、どっちから含ませるんだい?」
「金の鈴から、お願いします……」
「わかった」
 津村は小夜子の前にしゃがみこむと片手で金の鈴を持ち、小夜子の秘奥に押し当てる。
「自分で襞を開いてご覧」
「ああ……」
 小夜子は激しい羞恥に頬を染めながら、頭の後ろで組んだ手を前に降ろす。しかし、両手は花襞に当てるものの、さすがにそこから動けなくなる。
「どうした、さっきお義母さんにはっきりと見せたばかりじゃないか」
「だって、だって……」
「弟と絡む方が良いのか」
 嫌々をする小夜子に、津村は決めつけるように言う。
「わ、わかったわ。もう言わないで……」
 小夜子は諦めたように、自らの白魚のような指で肉襞を開く。再び生々しく開花した愛する娘の女の部分を目にした美紀夫人は、猿轡の下で悲痛なうめき声を漏らすとぐっと目を瞑る。
「目を閉じちゃだめよ。これから小夜子の傑作な芸当が始まるんだから」
 春太郎が太腿を叩いたり、乳首を捩ったりするが、美紀夫人は娘が演じる淫らな地獄図に二度と目を向けまいとするかのように、堅く目を閉じたままである。
「せっかく娘が良いものを見せてあげようというのに、まったく強情な奥様ね」
 春太郎が呆れたようにため息を吐く。津村はそんな美紀の様子をさも面白そうに眺めていたが、やがて春太郎と夏次郎に向かって「奥様の尻の下に枕を敷いて、あそこを良く見えるようにするんだ」と命じる。
「わかったわ」
 春太郎と夏次郎は津村に命じらたとおり、M字開脚の姿勢を取らされている夫人の腰部を持ち上げ、下に大きな枕を敷く。