「黙っていられちゃあ面白くないわね」
 マリもまたそう言いながら久美子に近づき、滑車からぶら下がる縄に手をかけ、ぐいぐいと引き下げる。
「やめてっ! ああっ! やっ! やめてっ!」
 たちまち久美子の喉からつんざくような絶叫が迸り出る。同時に再び田代や川田たちの笑い声。
「ここをこんな風にされるのがそんなに辛いの? ええ、久美子」
「ああ……つ、辛いわっ! お願い、も、もう糸を外してください。気が、気が狂いそうなんですっ!」
「まあ、気が狂っちゃうほど気持ちいいんだって」
 マリと義子は顔を見合わせてどっと笑いこける。
「さすがはマゾ娘、こんな目にあっても気持ち良いなんてたいしたもんや」
 義子もまた久美子の花芯を吊り下げる縄を手に取り、思い切り引く。
「ひっ、ひいっ! だ、駄目っ! ち、千切れちゃうっ!」
 久美子は再び獣が傷ついたような絶叫を張り上げる。
「そんなに辛いの? 久美子」
「ああ……辛いわ、もう、もう許して……お願いです」
 すっかり打ちのめされ、許しを請う久美子の姿に義子とマリは何とも言えぬ痛快な気分を感じている。
「それならそろそろ、私たちに協力して、お兄さんをおびき出す気になった?」
 マリにそう問いかけられた久美子ははっとした表情になり、反射的に首を左右に振る。
 マリが首をすくめて森田の方を見ると、森田はわざと重々しい声で話し始める。
「お嬢さんが協力してくれないと、少々手荒なことをしなくちゃならないな。要するに、お兄さんの事務所を襲って、後腐れないようにバラしてしまおうっていうわけだ」
 森田のそんな恐ろしい言葉を聞いた久美子はぞっとしたような顔付きになるが、必死で気丈さを取り戻し「そ、そんなこと、あなたたちに出来るものですかっ」と言い返す。
「そうさな、お察しの通り森田組はそんな荒業は得意じゃねえ。だがな、これは関西の岩崎一家がやることなんだ」
「い、岩崎一家ですって?」
 久美子は愕然とした顔付きになる。久美子もこれまで探偵業を営む兄の手伝いをしていたことから、身内一千人を超える関西の暴力団、岩崎一家のことは耳にしたことがある。
「俺たちががここんところ、慌ただしくしている理由が分かるかい? 二日後に幹部を連れてこの屋敷にやってくる岩崎大五郎親分を歓迎するためのショーの準備をしているんだ」
 川田がニヤニヤしながら口を挟む。
「岩崎親分はしっとりした人妻がお好みでな、静子夫人が大のお気に入りだ。静子夫人があいにく腹ボテだから今回は代わりに珠江に接待してもらう予定なのさ。それと、親分の弟の時造さんは美沙江の水揚げをしてもらって以来、あの日本人形みたいなお嬢さんにべた惚れよ」
 そんな川田の言葉に久美子の顔色が見る見る青ざめる。
「あ、あなたたち……遠山の奥様や千原流の家元令嬢をやくざのなぶりものにしたというの……」
 あまりのことに唇を震わせる久美子に、マリと義子、田代と鬼源までがどっと笑いこける。
「森田組だってやくざなんだがな」
 そう言う川田に、森田が「うちの組にとっちゃあ女は商品だから、自分たちで手をつけることはあまりないからな」と笑う。
「だがこれでわかったろう、お嬢さんはとんでもない相手を敵にしていた訳よ。森田組の稼業には岩崎一家という強力な後ろ盾がいるってことだ。岩崎一家にとって、しがない探偵を一人ばらすぐらいはどうってことはねえ」
「あ、兄をここにおびき寄せて、いったいどうするつもりなの? 結局ここで、殺すつもりなんじゃないの?」
 久美子は青ざめた表情で森田や川田を見回す。
「そんなことはしねえよ。森田組はそんな荒っぽいことは得意じゃねえと親分が言っただろう」
 震える声で尋ねる久美子に川田がニヤニヤ笑いながら答える。
「お嬢さんが二人も新しい女奴隷を連れてきてくれたおかげでな、相手をする男奴隷が不足しているんだ。お嬢さんのお兄さんには、森田組のポルノ男優になってもらうぜ」
「な、何ですって!」
 あまりのことに久美子は愕然とする。
「山崎といったらちっとは世間に知られた名探偵だ。そんな男を実演ショーや秘密映画専門の役者に仕立てあげりゃあ、それなりに評判を呼ぶんじゃねえかと思ってな」
 川田は動揺する久美子をさも楽しげに眺めながら話し続ける。
「その上こちとらは、山崎には小夜子の身の代金受け渡しの時に煮え湯を飲まされたことがあるんだ。その恨みを晴らすには絶好の方法だとは思わないかい」
「そ、そんなこと、絶対にさせないわっ」
 久美子が思わず反発の声を上げると、すかさずマリが滑車から垂れる縄を引く。
「ひ、ヒイーッ!」
 魂が引き抜かれるような激痛がその部分から全身に走り、久美子は獣のような咆哮を張り上げる。
「生意気なことを言うとこうだからね」
 マリが容赦なく縄を引く。赤く充血した花芯は信じられないほど引き伸ばされ、久美子の喉から絶え間無く悲鳴が迸る。
「ああっ、もう、もう許してっ!」
「許して欲しければ山崎をおびき寄せるのに協力すると誓うんだよ。ほらほら、早く言わないかい」
「あっ、あっ、駄目っ! 千切れちゃうっ」
 久美子はその部分が引き抜かれるような痛みに絶叫しながらも、兄の山崎の誘拐に協力することだけは拒み続ける。
「強情な娘だね。これでも嫌かいっ」
 マリは止めを指すように思い切り縄を引く。「ヒイッ!」という久美子の一段とかん高い絶叫がホームバーに響き渡る。久美子はまるでその部分だけで下半身を吊られたような格好になり、腰部を高々と掲げた姿を田代や森田たちの前に晒している。
「久美子がうんと言わなきゃ、山崎は岩崎一家の手でばらされてしまうんだよ。それでもいいのかい」
「そ、それは……絶対に嫌です」
 久美子はハア、ハアと荒い息を吐きながら首を振る。
「で、でも、だからといって、兄をポルノ俳優にするなんて、そ、そんなことに協力なんか出来ません。そんなことになったら、た、探偵としての兄は……死んだも同然です」
「だからポルノ俳優にするんじゃないか。わからない娘だね」
 マリはそう言って義子と顔を見合わせて笑い合う。
「このお嬢さん、痛みには意外と強いみたいや。このまま続けていても埒があかん。次の責めに移ろやないか」
 ほら、準備は出来てるで、と義子はすり鉢の中の山芋をマリに見せる。
「へえ、見ているだけで痒そうだよ。これを久美子に塗るのかい」
「そや」
 義子は頷くと薄いビニールの手袋を嵌め、擦った山芋を指先ですくい上げる。
「まずは痒みの効果を確かめるために、ここんところから」
 義子はそう言うと、山芋をべっとりと久美子の菊花に塗り付ける。