一時は静子夫人と京子の救出を諦めかけた山崎だったが、娘の身を案じる美紀夫人と絹代夫人に懇願され、久美子に励まされてようやく再び戦う気力を取り戻したのだ。
 しかしその戦いも森田組と葉桜団が仕掛けた偽装タクシーというトリックにまんまと引っ掛かり、山崎の無残な敗北に終わろうとしていたのである。
「それじゃあそれぞれ、仕事に取り掛かってくれ」
 森田がそう言うと銀子が「ちょっと待ってよ」と口を挟む。
「なんだ、銀子」
「せっかくだからみんなで乾杯しましょうよ。山崎がこっちの手に落ちたことで、これからは枕を高くして寝られるんだから」
「それもそうだな」
 森田が田代と顔を見合わせて頷き会うと、義子とマリがそれぞれに早速コップを配り、日本酒を注いで行く。
「行き渡ったな。それじゃあ社長、乾杯の音頭をお願いします」
 田代は満足げに頷くと「森田組と葉桜団の完全勝利を祝して乾杯!」と大声を上げ、コップを持ち上げる。
「乾杯!」
 全員が唱和すると、銀子が「ヘッポコ探偵と金髪の別嬪さんの、実演スターとしての新たな出発を祝して乾杯!」と声を上げる。
「乾杯!」
 田代や森田、川田に吉沢、銀子と朱美、そして義子とマリといったこれまで山崎と熾烈な戦いを演じてきた男女が嬉々として杯を傾ける。久美子は胸の中に耐え難いほどの敗北感、そしてこれですべてが終わったという絶望感が込み上げてくるのを感じ、激しくすすり泣くのだった。

 マリと義子に逞しいばかりに張り出した豊満な尻を叩かれ、ダミヤは、おぞましい責めを受けた調教室から引き立てられ、優雅な裸身を堅く縛られたまま廊下を歩かせられていく。
「いい身体をしているのに一度や二度、浣腸されたくらいで腰を抜かすなんてだらしがないよ。しっかりしないかっ」
 マリは足元をふらつかせるダミヤの尻を思い切りひっぱたく。悪鬼たちによって徹底した責めを受けたダミヤは、下半身が痺れきったようになっているのだ。
「でも、このフランスの貴婦人、すっかりおしとやかになったみたいや。よっぽど浣腸責めがこたえたようやな」
 義子がぐったりと伏せたダミヤの顔を面白そうに覗き込む。
「それにしても大きなヒップだね。静子夫人よりも一回り大きいんじゃないかしら」
 マリはダミヤの後ろに回るとは美しい白人美女の裸の尻をまるで珍しいものでも見るように撫でさすったり、柔らかな臀肉をつまみあげたり、軽く叩いたりする。
「一メートル近くあるんやない?」
 義子もマリの真似をしてダミヤの尻をピシャピシャ叩く。
「義子、後学のために白人女のケツの穴をじっくり観察させてもらおうよ」
「賛成。さっきはあたいたち、久美子や絹代夫人の担当で良く見えなかったものね」
 マリがダミヤの染み一つない真っ白な双臀の肉を、まるで巨大な桃を断ち割るように、ぐいっと押し開く。
「ああっ、嫌ですっ!」
 あまりのことにダミヤはマリの手を避けるように、腰部を激しく振る。
「動くんやないっ! また浣腸されたいんかいっ」
 義子がダミヤの尻をパシリッ、パシリッと二、三度叩く。
 ダミヤの双臀の奥に秘められた、微妙な縦皺に縁取られたピンク色の菊蕾が露わになる。色素の沈着のない、赤ん坊のそれのような秘孔の周りに金色の繊毛がうっすらと生えているのを見て、義子はぷっと吹き出す。
「金髪女っていうのは、ケツの毛まで金髪なんやな」
 義子はダミヤのそんな箇所の繊毛を二、三本指先でつまむと、いきなりぐいっと引き抜く。
「ひいいっ!」
 身体を引き裂くような鋭い苦痛に悲鳴を上げるダミヤ。その様子にマリと義子は声を上げて笑い出す。
「物好きにも日本までやって来て、つまらないことを詮索したりするから、裸に剥かれてケツの毛まで抜かれるような目に遭うんや」
 義子はケラケラ笑いながらダミヤの敏感な部分の毛を一本一本引き抜いていく。
「ああっ、お、お願いですっ。も、もう堪忍して下さいっ」
「それくらいにしておきなよ、義子。後の楽しみってもんがあるじゃないか」
 マリが義子を止めると、義子は名残惜しそうに腰を上げる。
「まあええわ。毎日少しずつ抜いてあげるからな」
 義子はそう言うとダミヤの肉付きのよい尻を再びパシッと叩くのだった。
(ああ……どうしてこんなことになったのか)
 ダミヤは屈辱に咽びながら記憶を辿っていく。

 遠山静子のフランス留学時代の親友であるフランソワーズ・ダミヤは、スイスで行った結婚式に静子を招待したにもかかわらず、彼女から何の返事もなかったのを不審に思い、単身来日した。
 ダミヤと静子は留学時代に終生の友と誓った仲であり、ダミヤの夫となるドクター・ジャン・バルーは静子の恩師でもある。その二人の結婚式の招待状を静子が無視するなどということは考えられなかった。
 ダミヤの仮説はひとつしかない。静子の身に何か異変が起きているのではないかということである。
 来日したダミヤは早速遠山家を訪れるが、当主である隆義は重い病に臥せっているため会うことも出来ず、さらに静子は義娘の桂子とともに行方不明になっていることを知り、驚愕する。
(いったいどういうことなの?)
 日本語の堪能なダミヤは行方不明となった静子の周辺の調査を独自で開始し、事件発生当初から亡き遠山の依頼で調査を行っていた山崎という探偵の事務所を訪れたのである。
 六本木にある山崎の事務所は乱雑に散らかり、接客用のソファには珈琲をこぼしたような染みがあり、テーブルにはうっすらと埃が積もっているのを見たダミヤは一瞬顔をしかめた。
「お待たせしました」
 所長の山崎が現れた。
 山崎はまだ30代前半だが、年齢のわりに随分生気のない表情をしていた。目元はどんよりと曇り、髪はぼさぼさで頬には無精髭が目立つ。
「先月、事務員に暇をやりましてね。事務所の整理をするものがいなくなってしまいました。随分散らかっていますが、ご容赦下さい」
 山崎は流暢な英語ではあるが、やや自嘲的な口調で話す。
「日本語で大丈夫です」
 ダミヤははっきりした標準語で話しだした。
「山崎さん、貴女はシズコの義理のお兄さまの親友で、彼女の失踪事件をずっと織っていると聞いています。何か手がかりは見つかったのですか?」
「フランソワーズ・ダミヤさんですね? 静子夫人の留学時代のご友人とか」
 山崎は煙草に火をつけた。
「失礼」
 来客の許可を得ないで煙草を吸いだした山崎をとがめるような視線を、一瞬ダミヤが浮かべたのを感じて山崎が言った。