女たちの甲高い笑い声、それに混じったすすり泣きの声、尻を平手打ちしているのか、ピシャピシャという滑稽味を帯びた音――。
「さあ、到着よ」
 それらの音は静子夫人の牢の前に来ると移動をやめる。おずおずと顔を上げた夫人の前、鉄格子を挟んで立っていたのはやはりフランソワーズ・ダミヤだった。
「シ、シズコっ」
「ダミヤっ」
 ダミヤが顔を上げ、牢の中にいるのが静子夫人であることを認めると、わっと泣き声を上げ、冷たい鉄格子にすがりつくようにする。ダミヤと静子の頬が鉄格子越しに触れ、二人の美女の頬に流れる熱い涙が悲しく混じり合う。
「あらあら、仲がおよろしいこと」
「ちょうどいいわ、これならレズビアンの調教も上手く出来そうね」
 美女二人の愁嘆場を皮肉っぽく眺めていた銀子と朱美がそういうと、夫人ははっとしたように顔を離す。
「そんなにおびえた顔をしなくても大丈夫。冗談よ。腹ボテのあんたにそんなことはやらせないわ」
 銀子はそういうと牢の扉を開け、静子夫人に牢の外に出るよう指図する。夫人は大きく膨らんだ乳房をかばうように鉄格子をくぐると、ダミヤの前に立つ。
「その格好をお友達にじっくり見てもらうのよ」
 朱美がそういうと、静子夫人は乳房と陰部を覆っていた両手を下ろし、全裸をダミヤの前にさらけ出す。
「シ、シズコ……」
「ご、ごめんなさい……ダミヤ。私のせいであなたまで……」
「シズコっ、い、いったいどうなっているのっ。ここはいったいどういうところなのっ」
 ダミヤは興奮して思わずフランス語で静子を問いつめる。
「静かにするのよっ」
 銀子は怒鳴るとダミヤの頬を平手打ちする。
「アッ……」
「日本語以外は使うなと何度も言ったでしょう。今度忘れたらそのデカイお尻にまた浣腸するわよっ」
 銀子はそう言い放つとダミヤの美しいブロンドの髪をつかんでぐいぐいとしごき回す。
「お、お願い……乱暴はやめて……ダミヤさんを許して……」
 激しい痛みにヒイヒイ泣き声を上げるダミヤを見て、静子夫人はおろおろしながら銀子に哀願する。そんな静子夫人に朱美が「奥様には約束通り、この新入りの調教をつけてもらうわよ」と宣告する。
「えっ」
 顔を引きつらせる静子夫人に、朱美は「何をとぼけているのよ。約束したでしょう」と言いながらなにやら書かれた紙を取り出し、夫人の手に押しつける。
「これがダミヤの調教計画よ。奥様の口からお友達によーく言い聞かせなさい」
「そ……そんな」
 その紙に書かれたあまりにもおぞましい内容にさすがに夫人はためらいを見せる。すかさず朱美の平手打ちが夫人の柔らかい頬に飛ぶ。
「あっ!」
 衝撃によろめき、静子夫人は膝をつく。
「ちょっと、朱美。奥様は妊娠中なのよ」
 銀子が苦笑しながら朱美をたしなめる。
「ああ、ごめんごめん。ついいつもの癖が出ちゃったわ」
 朱美は舌を出してそう言うと夫人の顎に手をかける。
「わかったわね? あまり手こずらせるようだと、お腹の赤ちゃんに障るような責めをしなくちゃならなくなるわよ」
「そ……それは……それだけは」
 涙に濡れた瞳を朱美に向ける静子夫人。遂に屈服した夫人は涙を振り払うと、ダミヤに向かい、朱美から渡された紙片をダミヤに突きつける。
「……ダミヤ……こ、この屋敷に来たからには、私や他のご婦人と同じように、女奴隷への道を歩むしかないのよ……」
「な、何を言うの。シズコ。気でも狂ったの? 私はあなたを助けに来たのよ」
 驚きの声を上げるダミヤ、その頬の上を静子夫人の掌が一閃する。
「あっ」
「フランス語は禁止だと言ったでしょう、ダミヤ」
 静子夫人はわざと冷たい声を出す。
「それに、助けに来たなんて言われても迷惑だわ。わ、私はこの屋敷での暮らしに満足しているのよ。ここの来てから私は、遠山との夫婦生活なんてまったく意味のないものだということが分かったのよ」
「シズコ……何て言うことを」
「ダミヤ、あなたにもここでの生活の楽しさをたっぷりと教えて上げるわ。そのためにもあなたは私と同じように、身も心も奴隷にならなければならないのよ」
 静子夫人は口元に微妙な笑みさえ浮かべながらそんな科白を吐く。
 もちろんそれは大筋は銀子や朱美によって教え込まれたものだったが、静子夫人はそんなおぞましい言葉を口にしている自分が、まるで自分ではない別の人間になっていくような錯覚に陥っているのだ。
 それは自分の中に秘められた別の人格、奔放かつ大胆に被虐と嗜虐の悦びを満喫する魔女的な性格が現れたかのようだった。
「ダミヤ……これが貴女を奴隷にするための計画、さあ、よく見て頂戴」
 ダミヤはシズコが差し出した紙片に目を落とすと、さっと頬を赤らめ、顔を逸らす。
「最初に女奴隷の心得が書いてあるでしょう。貴女なら読めるはずだわ。さあ、大きな声を出して読んで頂戴」
「無理よ、シズコ。こ……こんな……こんなこと、ああ……口に出せるはずがないわ」
「甘えないでっ!」
 再び静子夫人の平手打ちがダミヤの頬に飛ぶ。
「お友達をあんまりてこずらせちゃ駄目よ。もう一度捨太郎のところに戻されたいのかしら」
 銀子が冷酷そうに目をすっと細めながらそう言うと、ダミヤはさっと顔色を変える。
「い、嫌……あの男はもう嫌……」
「嫌ならさっさと言われたとおりにするんだよ!」
 朱美が大声で叱咤する。ダミヤは諦めたように静子夫人が差し出した紙に目を落とすのだった。

 ダミヤは地下牢の天井に取り付けられた滑車から垂れ下がった鎖に両手を高々と上げた姿勢で固定され、静子夫人に強いられた誓いの言葉を読み上げている。
「……フランソワーズ・ダミヤ・バルーはこれまでの生活の一切と決別し、森田組お抱えの性の奴隷としてこの身を一生涯捧げることを誓います」
 そんな屈辱的な誓いの言葉を吐くダミヤの輝くような裸身を葉桜団の銀子と朱美が淫靡に責め上げていく。
「あっ、ああっ!」
 朱美の指先が豊満な双臀を割り、奥深く秘められたアヌスを攻撃してきたのにダミヤは悲鳴を上げ、誓いの言葉を中断する。
「ど、どうしたの、ダミヤ。途中でやめては駄目よ」
 親友が目の前で不良少女二人に淫靡に責められている姿から目を背けたくなる思いを必死でこらえる静子夫人は、わざと冷たい声でダミヤを叱咤する。