「なかなか息が合っているじゃない」
 銀子が感心したようにそう言うと、朱美が「案外静子夫人がおフランスへ留学している間、この二人、レズの関係だったのかもね」と答える。
「まさか。あんたとあたしじゃあるまいし」
 銀子と朱美のそんな会話も耳にはいらないかのように、静子夫人は夢中になってダミヤの胸元から乳房、臍から下腹部へとチュッ、チュッと音を立てて接吻を注ぎ込んでいく。
 ダミヤもまた、拒否の気持ちはすっかり消えたように「あっ、ああっ」という甘ったるい喘ぎ声を上げるのみであった。
 いよいよ夫人が腰を据えてダミヤの最も敏感な部分を責めようとしたとき、それまでじっと夫人の調教ぶりを見守っていた銀子が声を掛けた。
「そっちは後回しだよ、奥様」
「えっ?」
 静子夫人はとまどったような顔を銀子に向ける。
「先に後ろのほうを攻めるのよ。どうもこの外人女、そっちがだいぶ感じるみたいなのよ」
 夫人はしばらく躊躇っていたが、やがて意を決したようにダミヤの背後に回り改めて腰を据える。
「ああ……な、なにを」
「ダミヤ、覚悟して。いいわね」
 夫人はおろおろしているダミヤの逞しいばかりに実った純白のヒップに両手を掛けると、桃を断ち割るようにぐいと押し開く。
「あっ!」
 予想もしなかった静子夫人の大胆な行為に悲鳴をあげるダミヤ。夫人は露わになったダミヤのピンク色の菊蕾にぐいと唇を当てる。
「ノ、ノンッ! シッ、シズコッ」
 途端にダミヤは電気に触れたような衝撃を受け、瘧にかかったように腰部を激しく震わせるのだ。
「が、我慢して……ダミヤ」
 夫人は激しくダミヤをなだめるように双臀を軽く叩きながら、舌を伸ばしてダミヤの菊花の襞の一枚一枚を舐め上げる。
「オ、オウッ、ノ……ノ、ノンッ!」
 妖しい被虐性の快感がその部分から湧き上がり、ダミヤは甲高い悲鳴をあげるのだった。

 素っ裸に猿轡をはめられ、堅く後ろ手に縛り上げられた山崎と久美子は川田と吉沢によって階段を地下から二階へと追い上げられて行く。
 久美子の股間は美紀夫人や絹代夫人同様、赤白段だらの股縄で締め上げられており、歩みを進めるたびに大小二つの鈴が久美子の敏感な二つの箇所を責め嬲る。そして久美子の鈴繩につながれた細縄が、山崎のペニスにつながれて、その根元を堅く締め上げている。
 つまり山崎と久美子の兄妹は一本の縄によって互いの性器を連結させられたような格好になっているのだ。
「これが名探偵の成れの果てとはな」
「チンチンまで丸出しにして、まったく良い様だぜ」
 川田と吉沢はそんな罵声を代わる代わる浴びせながら、山崎の筋肉質の尻をパシッと平手打ちする。山崎は苦しげに顔を歪めるが、堅く縄で縛り上げられた上に妹まで人質に取られた身では抵抗することもおぼつかない。
「もうすぐ懐かしい恋人に会わせてやるぜ。ええ、嬉しいか?」
 川田は山崎の髪をぐいと掴むと、憎々しげにそう言う。
「この前も言ったように京子の処女は俺が頂いてやったんだが、なかなか乙な味だったぜ。恋人の処女を敵方に奪われるなんて、まったく間抜けな探偵もいたもんだぜ」
 川田のそんな侮蔑的な言葉を聞いた山崎は怒りと屈辱に顔を歪める。
「そんな顔をしたって無駄だぜ。この負け犬が」
 川田は山崎の後ろに回ると尻を蹴り上げる。山崎は勢い余って前につんのめり、階段の上に倒れ込む。ペニスの根元につながれた紐がピンと張り、山崎はその部分が引き抜かれそうな痛みに呻く。
「おいおい、川やん。あんまり乱暴に扱うなって。川やんらしくねえぜ」
 山崎が倒れた勢いで腰繩を引っぱられ、よろめいた久美子の身体を抱きとめた吉沢が思わずたしなめる。
「吉沢の兄貴は山崎のせいで一度大怪我をしたことがあったろう。恨みはもってないのかい?」
「持ってないと言えば嘘になるが、今はこいつを京子や美津子と対面させる方が先だ。そうしないと今度のショーの進行に差し支えるからな」
「ふん、それこそ吉沢の兄貴らしくねえ科白だな」
 川田は吐き捨てるようにそう言う。
「しかし、確かに兄貴の言う通りだぜ。ショーの準備はまったなしだからな。油を売っている暇はねえや」
 川田はそう言うと「さあ、さっさと歩きなっ」と山崎の背中をどやしつける。
 久美子は山崎の隣りで、絶望に打ちひしがれながら歩いている。すべての望みが消えた今、この地獄屋敷の中でこれからいったいどうやって生きていけば良いのか。
 静子夫人や京子、小夜子といった既にこの屋敷に囚われてからかなりの時間が経過している女達の運命に久美子は思いを馳せる。彼女たちの現在の姿は、久美子にとっての未来像なのだ。
 中でも人工授精という悪魔的な手段によって父親も分からない子供を胎内に植え付けられた静子夫人――もはや永遠の奴隷になるしかない令夫人の転落振りを思うと、久美子は暗澹たる気持ちになるのだった。
 そして兄の恋人であり、久美子自身も実の姉のように慕っていた京子は今どうしているのか。この屋敷に捕らえられた際の地獄巡りで久美子は、京子が妹から淫らな責めを受けている場面を目撃してはいたが、森田組や葉桜団によって本格的な調教を受ける京子の姿はいまだ目にしていない。
 あの気丈で活発な京子が嗜虐者たちの責めに屈してマゾ奴隷への道を一直線に歩んでいるというのは事実なのか。田代屋敷の悪鬼たちにもし京子さえも屈しているのなら自分などとても敵う術もない。久美子の胸は黒い不安で満たされて行く。
「さ、着いたぜ」
 山崎と久美子は二階の奥座敷の前に立たされる。襖の向こうから獣のような男の呻き声と、絹を裂くような女の悲鳴が聞こえてくるのを耳にした二人は思わず足を竦ませる。
「よーく中を見るんだ」
 川田と吉沢はそれぞれ、山崎と久美子の頭を押さえ付けるようにして廊下に引き据える。襖の透き間に目を当てさせられた二人は猿轡の中であっと息を飲む。
 部屋の中では三組の全裸の男女が立位のままで絡み合い、獣を思わせる声を上げ合っていた。うち二組は屈強な黒人男と日本人の美女――京子と小夜子の組み合わせ、残る一組は文夫と美津子のコンビであった。
 三組の男女の周囲を数台のカメラや照明器具、レフ板といった用具、そして数名の男たちが取り囲み、そんな激しい絡み合いの撮影をしているのだ。
 男たちのうち三十歳前後の角刈りがリーダー格らしく、他の男たちを指示しながら時々手に持った一眼レフや三脚で固定したカメラでスチールの撮影を行っている。
 そしてその男の指示に従って葉桜団の義子とマリが忙しそうに走り回り、慣れた調子で機材のセッティングや照明の調整、そして時には男に代わってカメラでスチール撮りまで行っている。