お小夜がはっきりと頷くのを確かめたお春は、お小夜が身につけていた最後の衣類である湯文字をゆっくりと取り去る。神々しいまでに白いお小夜の全裸が露わになり、観客席から再び嘆声のような声が湧き起こる。
「おお……何と美しい」
 土蔵の外で壁にしっかりと眼を当てている津村も興奮した声を上げる。
「旦那、お小夜は旦那を敵と狙っている女ですよ。その女にそんなに見とれるなんて、どういう訳ですか」
 お桂が呆れたようにそう言う。
「敵だろうが何だろうが、美しいものは美しいのだ」
 津村はそう言うとお桂に向かって「いつになったらお小夜に手を出せるのだ。こうやってずっと覗いているだけなんて、拷問にあっているようなもんだ」と訊く。
「あたしの前で良くそんなことを平気で尋ねますね」
 お桂は呆れながらも「何でも森田組の親分は、お小夜の水揚げを旦那にお願いするつもりらしいですよ」と答える。
「何だと、それは本当か」
「大きな声を出しちゃ駄目だって何度言わせるんですか」
「すまん」
 津村は声を潜める。
「ということはやはりお小夜を女郎にするつもりか」
「もちろんですよ。金の成る木が向こうから転がり込んだようなものですからね。拾わない手はありませんよ」
「しかし武家の娘であの美しさだ。水揚げには相当金を積まないと無理だろう。そんな金は俺にはないぞ」
「大丈夫ですよ。水揚げって言っても、ただの水揚げじゃありませんから」
「ただの水揚げじゃないだと?」
「親分は武家娘の水揚げを見世物にするつもりですよ。旦那がその見世物に出てくれるのなら、揚げ代はいらないって訳です」
「なに。侍に向かって、色見世の余興に出よと言うのか」
「お嫌ですか。お嫌なら良いです。お桂も旦那が他の女を抱くところなんか見たかありませんからね。この話はあたしからお断りしておきます。確かに旦那も痩せても枯れてもお侍の端くれだ。矢っ張り無理がありますよね」
「待て待て。何も嫌とは言っておらん」
「あら、お出になるんですか。こりゃ驚いた」
 お桂が目を丸くする。
「据え膳食わぬは男の恥と言うからな」
「旦那がそのつもりなら、あたしも文之助の初物をいただこうかな」
「何だと、お桂。お前、浮気をするつもりか」
「女郎に向かって浮気もないでしょう。あたしだってたまにはあんな綺麗なお稚児さんと寝てみたいんですよ」
「ふん、勝手にせい」
「それはこっちの台詞ですよ」
 津村とお桂がそんな会話を交わしている間に、お小夜と文之助は密着した身体をいったん離され、五、六尺の距離を置いて向かい合わせにさせられる。
「そこで二人で睨めっこをするのよ」
 お春に命じられ、素っ裸の姉弟は互いに向かい合うが、互いの恥ずかしい姿を眼にしてハッとして視線を逸らす。
「何をやっているのよ。睨めっこしなさいって言ったでしょう」
 お春は手に持った青竹でお小夜の尻を苛立たしげに打つ。お夏もまた文之助の肉棒を無造作に掴むと、ゴシゴシと扱き始める。
「あっ、あっ、おやめ下さいっ」
 狼狽した文之助が思わず女のような高い悲鳴を上げたので、お春とお夏は思わず顔を見合わせて笑い合う。
「このお坊ちゃん、なかなか色っぽい声を出すじゃない」
「そうね。これなら陰間女郎としても十分使えそうだわ」
 そうな風に笑い合うお春とお夏に、お小夜は「お、おやめ下さいっ。ふ、文之助は武士の子なのですっ」と抗議の声を上げる。
「そんなことはわかっているわよ。武士の家に生まれたお坊ちゃんを虐めるのが面白いのじゃないの」
 お夏は文之助の反り返った肉塊を乱暴に愛撫しながらせせら笑う。
「お坊ちゃんが虐められるのを見るのが嫌なら、言われたとおり睨めっこをするのよ」
「わ、わかりました」
 お小夜はお春に言われるまま再び文之助に眼を向ける。股間の肉塊を浅ましく勃起させて、お夏の責めを受けながらすすり泣いている哀れな弟の姿を改めて眼にしたお小夜は、胸が衝かれるような思いになる。
 しかし、この辱めを何としても耐えなければ、念願の仇討ちを果たすことは出来ない。そう思い詰めたお小夜は、文之助に呼びかけるのだ。
「ふ、文之助。姉の、姉の身体を見て下さい」
 そんなとんでもない言葉を口にしたお小夜は、激烈な羞恥が込み上げてくるのをぐっと耐え、強いられた台詞を続ける。
「よ、良く見るのです、文之助。ちゃんと顔を上げなさい。恥ずかしいのはこの姉も同じです」
 お小夜に叱咤された文之助は、お夏に顎を持ち上げられるようにして無理矢理前を向かされる。
 文之助の視界に全裸の姉が飛び込んで来る。ベソをかきそうな表情の文之助に、お小夜は続けて語りかける。
「良く見て、姉の乳房、臍、ふ、太腿、それに……」
 お小夜はそこで一瞬口ごもるが、お春に「どうしたのよ。さっさと続けなさい」とピシャリと尻を叩かれ、再び口を開く。
「それに、股の間の女陰《ほと》……文之助はお、女の裸をはっきりと見るのは初めてでしょう。よ、良くその眼で見るのです」
「ほらほら、姉上がああ言ってくれているのだから、ちゃんと見ておやりなさい」
 お夏が文之助の頭を押さえるようにしてお小夜の方に向ける。
「そ、そうです。眼を逸らしてはなりませぬ。そうやってじっと見るのです。姉弟なのですから、恥ずかしがることはないのです」
 そこまで口にしたお小夜にお春が続けて何ごとか囁きかける。
「ああ……そ、そんなことまで……」
「毒食らわば皿までっていうじゃない。ここまで来れば思い切って言うのよ」
「わ、わかりました……」
 お小夜は頷くと改めて文之助の顔を向け、ゆっくりと身体を揺らせ始める。
 姉のそんな淫らな行為から文之助は反射的に眼を背けようとするが、その途端、お夏が文之助の股間から手をくぐらせ、睾丸を思い切り握り締める。
 激烈な痛みに耐えかねて、文之助は再びお小夜に眼を向ける。
「あ、ああ……文之助」
 お小夜は文之助にじっと視線を注ぎながら、溜息をつくように弟の名を口にする。その途端文之助は電流に触れたような衝撃を覚え、思わずブルッと裸身を震わせる。
「見て、良く見て……お小夜の裸を……美しいと思いますか」
 お小夜は熱っぽい息を吐きながら、強いられた台詞を口にし続ける。まるで人が変わったような淫奔な姉の姿から、文之助はいつしか眼が離せなくなっていくのだ。
 お小夜もまた恥ずかしい箇所に弟の熱い視線を感じ、身体の最奥から被虐的な性感が込み上げるのを抑えきれなくなっていくのだ。