「ふ、文之助っ」
 おぞましい陰間女郎によって交互に嬲られる文之助の姿を目の当たりにしたお小夜は、悲痛な声で呼びかける。そんなお小夜もまたお春と持ち場を交代したお夏の手で再び隠微な肉穴を抉られ「あっ、あっ」と苦悶と快感の入り交じった呻き声を上げ始めるのだ。
 お小夜もまた隠微な肉穴を陰間女郎の手で巧みに開発されることで身体が火がついたように熱くなり、前門からは甘い果汁をとめどなくしたたらせるようになっているのだ。
 お小夜と文之助の汚辱のすすり泣き、そして津村と身体を重ね合うお桂の甘美なよがり泣きが響き合う。ようやく本格的な展開を見せ始めたショーに観客たちは陶然とした表情で見入っている。
 お春は片手で文之助の尻を抉り、空いた手で睾丸をやわやわと揉みほぐし、そして舌と唇でそそり立った肉棒を愛撫している。お夏もまたお小夜の肉孔に沈み込ませた細巻きをゆるやかに抽送させながら、すでにぐっしょり濡らしている繊毛をかき分けるようにして、早くも屹立を示している花蕾を巧みに愛撫するのだった。
 姉弟に対する責めが最高潮に達しようとしたとき、マイクを通じて義子のナレーションが響く。
「憎き敵の津村清十郎に覗かれていることも知らず、お春とお夏の手によってすっかり燃え上がっていくお小夜と文之助。さて、哀れな姉弟の運命は、そして仇討ちの結末はいかに。この続きはしばしの休憩の後、次の幕にてたっぷりととお楽しみ下さい」
 音楽が鳴り響き、観客たちの盛大な拍手とともにとともにゆっくり幕がしまっていく。息を凝らして隠微な時代劇ショーに見入っていた客たちは、ほぼ同時に溜息をつくのだった。

「ご鑑賞中失礼いたします」
 突然男の声がすると座敷の扉ががらりと開かれる。町子が思わず振り返ると、舞台衣装のままの川田と鬼源が、後ろ手縛りにされた褌一丁の二人の女を引き立ててくるところだった。
「へへ、ちょっとごめんなさいよ」
 川田が居並ぶ観客たちをかき分けるように、二人の女を先導する。女の後ろでは鬼源が二人の縄尻を持ったまま時折よろけそうになる女たちの尻を叩いている。
 半裸の女たちは部屋の中央に陣取る岩崎大五郎の前まで引き立てられ、そこで直立不動の姿勢と取らされる。
「岩崎親分、新しく入荷した二人の女奴隷が、ぜひ親分に挨拶をしたいと申しますので連れてきました」
「おお、そりゃご丁寧なことだ」
 岩崎は二人の女を見て相好を崩す。
 岩崎たちの前で褌一丁の恥ずかしい姿をさらしている二人の女――赤い褌を締めているのは村瀬宝石店社長夫人の村瀬美紀、紫色の褌姿の女は千原流華道家元夫人の千原絹代だった。
 ちなみに二人の褌は以前、山崎久美子とともにこの屋敷のホームバーに引き立てられてきたときに締めさせられていたものと同じものだった。
 絹代と美紀は素っ裸よりもむしろ恥ずかしい、女の褌姿を衆人環視の前で晒さなければならない汚辱に、ともに優美な肌を小刻みに震わせている。
 二人の美夫人はまた、関西随一と言われる暴力団の親分とその身内の前に引き立てられていると言うことにたまらない恐怖と不安も感じている。それはいわば未開の地でとらえられた文明世界の女が、蕃族の首領の前に立たされたような感覚といえた。
「新しい奴隷はもう二人いるのですが、ショーの準備でちょっと手が離せないのでとりあえずこの二人を連れてきました」
「それがオナニーショーにそろって登場した四人ね」
 岩崎の傍らに座っていた千代が、興味津々といった面持ちで尋ねる。
「どれも静子に何らかの関係がある女たちだわ。さっきのお芝居に出ていた小夜子や桂子といい、この二人といい、静子に縁がある女たちはみんなこうやって奴隷になっていくのね。実に痛快だわ」
 千代がそう言ってけたたましい笑い声を上げると、千代の隣の大塚順子が「あら、静子夫人だけじゃないわよ」と口を挟む。
「美沙江に珠江、それにこの絹代。千原流華道の主立った人間が次々に捕まっていくのも愉快だわ。大塚流華道の実験材料にも当分事欠かないしね」
 順子はそう言うと千代と顔を見合わせ、大口を開けて笑い合う。
 そんな二人の様子を岩崎は気味悪そうに眺めていたが、すぐに目の前に立たされた美紀夫人と絹代夫人に視線を向ける。
 関西最大の暴力団を束ねる岩崎のギラギラした視線に晒され、美紀夫人と絹代夫人は恐ろしさにブルッと裸身を震わせる。
「さ、順に挨拶するんだ」
 川田が美紀夫人の裸の尻をパシッと叩く。美紀夫人はおどおどした視線を岩崎に向けたまま口を開く。
「岩崎親分様……私、このたび森田組お抱えのショーのスターとなりました、む、村瀬美紀と申します。な、なにとぞよろしくお願い申し上げます」
 美紀夫人がハスキーな声でそんな屈辱的な挨拶を始めたので、岩崎はたちまちうっとりした様な顔つきになる。
「この女は、さっきの時代劇に登場したお小夜と文之助の母親なんですよ」
 川田の説明に岩崎はうん、うんと頷くが、その目は美紀の優艶な姿態に釘付けになっている。
 そんな岩崎の様子に川田は一瞬戸惑い、鬼源と顔を見合わせたが、気を取り直して隣の絹代夫人の背中を叩く。
「さ、絹代夫人、お前も挨拶しな」
「は、はい……」
 絹代はおどおどとした顔を上げ、長いまつげを瞬かせながら口を開く。
「岩崎親分様、このたびショーのスターとなりました千原絹代と申します。村瀬美紀ともども、よろしくお引き立てのほどお願い申し上げます」
 岩崎は今度は絹代夫人の繊細な白い肌に目を向け、何度も頷く。
「いかが、家元夫人。娘と一緒にショーのスターにおなりになった気分は?」
 大塚順子が身を乗り出すようにして絹代夫人に話しかけると、絹代夫人はさも哀しげに顔を伏せる。
「大塚先生がお尋ねになっているんだ。ちゃんと答えねえか」
 鬼源が絹代夫人の尻をパシッと叩く。絹代夫人は愁いを帯びた顔を上げ、順子に顔を向ける。
「ど、どのような形でも娘の美沙江や、珠江様と再び巡り会い、手を取り合って生きていくことが出来るのは、し、幸せなことだと思いますわ」
 絹代はそう唇を震わせる。
「それは良い心がけだわ。三人で千原流華道が犯した罪を十分反省しながら、仲良く生きていくことね」
 順子がそう言って楽しげに笑い出すと、絹代は再び気弱に目を伏せ、悲しみを堪えるかのように裸身を小刻みに震えさせる。
 その時、それまで無言で絹代の裸身に見入っていた時造が口を開く。
「このご婦人は美沙江の母親だろう」
「おっしゃる通りですが」
 川田が頷くと、時造は「それなら俺の義理の母親ってことになるな」と言う。
 時造の言葉を聞いた川田と鬼源は時造の言葉に一瞬ぽかんとした顔つきになる。
「なるほど。確かに時造の言うとおりだ」
 岩崎はそう言って笑う。