「家元令嬢は時造の花嫁になったのだからな。その母親は時造にとっては間違いなく義理の母親だ」
「おっしゃるとおりです」
 川田は追従的に笑う。
「まてよ。それなら岩崎一家と千原流は親戚ってことになるな」
 岩崎はそう言うと「関西一の暴力団と京都の名門華道の家元が親戚とは、こりゃあ愉快だ」と再び笑う。
 川田と鬼源は気遣わしげに視線を交わし合う。ひょっとして岩崎は、身内とも言える絹代をこのような晒し者にしていることに対して不服を言い出すのではないかと不安に思えてきたのだ。
「この奥さんたちの出番はあるのか」
「さっきの鈴縄踊りが不出来だった罰として、ショーの最後に浣腸責めにかけることになってますが」
 鬼源がおずおずとそう言うと、岩崎はうん、うんと頷いている。
「それまでは身体が空いているってことだな。それじゃあここで一緒にショーを見物していくと良い」
 美紀夫人と絹代夫人の顔色がさっと変わる。
 二人の夫人と同様、新入り奴隷である久美子とダミヤは次のショーに出演するための準備として、激しい調教を受けている。ショーの終幕まで出演を免除された美紀夫人と絹代夫人は、死刑の執行が延期された死刑囚のように、絶望の中にも微かな安堵を知覚したのも事実だった。
 しかし、この場でショーを見物させられると言うことは、自らの息子や娘たちが衆人環視の前で責め立てられる姿を目撃しなければならないと言うことである。その際の懊悩を想像すると、むしろ久美子やダミヤのように悪鬼たちの責めに身を任せる方がよほどましであると夫人たちには思えたのだ。
 川田と鬼源は、岩崎の要求がきわめて穏当なものだったことに、内心でほっと胸をなで下ろす。
「岩崎親分と同席できるなんて、女奴隷たちにとっては実に光栄なことで」
 川田は再び追従の笑みを浮かべる。
「さ、二人ともお礼を言わないか」
 戸惑いの表情を露わにしている美紀夫人は、川田からパシッと尻を叩かれおずおずと岩崎を見る。
「お、親分様。お誘い頂いてありがとうございます」
 美紀夫人がそう言って深々と頭を下げると、鬼源が「お前もだ」と絹代夫人の柳腰を平手打ちする。
「あ、有り難うございます」
 絹代夫人もまた深々と頭を下げる。岩崎はそんな二人の美夫人の様子をニヤニヤ笑いながら眺めている。
「さあ、行きな」
 川田が催促するように二人の美夫人の尻を交互に叩く。美紀夫人と絹代夫人は屠殺場に引き立てられるような思いで岩崎の身内が集う席へと歩を進めていく。
「し、失礼します」
 美紀夫人が少し空いた場所に腰を下ろそうとしたとき、岩崎が中腰になって夫人の手をぐいと引く。
「おっと、奥さんはこっちだ」
「で、でも」
「かまわん。ちょっとそこ、少し場所を空けろ」
 岩崎は二人の妾である葉子と和枝の肩を押すようにする。
「まあ、随分ね」
 葉子と和枝は不平そうに口を尖らせながらも尻をずらし、岩崎の隣に美紀夫人が座る場所を空ける。
「家元夫人は時造の隣だ」
 岩崎が顎で弟の時造の方を示す。
 絹代夫人が恐怖に足をもつれさせながらも、命じられるまま時造の隣に腰を下ろそうとした時、時造が突然夫人の手を取って引き寄せる。
「あっ」
 絹代夫人は重心を崩し、時造の膝の上に腰を下ろす格好になる。
「す、すみません」
 絹代夫人が慌てて腰を上げようとしたとき、時造はいきなり夫人の肩を抱き寄せて唇を奪う。
「う、ううっ」
 突然の時造の行為に、絹代夫人は目を白黒させる。ひとしきり夫人の唇を吸うと、時造はようやく夫人の唇から口を離す。
 苦しげに息を吐いている絹代夫人を楽しげに眺めながら、岩崎はニヤニヤしながら時造に声をかける。
「お前にしては珍しく熱烈な歓迎じゃねえか」
「だって兄貴。この女、美沙江にそっくりじゃねえですか」
 時造は赤ら顔をニヤリと歪める。
「そりゃ当たり前だろう。母娘なんだから」
「そうなんですが、美沙江を抱けるだけでも夢みてえなのに、今夜はその母親まで自分のものに出来るなんて。岩崎大五郎の弟に生まれたことがこれほど良かったと思ったことは、これまでにありませんや」
「そいつは良かったな」
 岩崎は思わず苦笑する。
「それにこの女の、褌に締め上げられたケツの色っぽさっていったら、もうたまらんですぜ」
 時造はそう言うと絹代の尻を撫で上げる。その瞬間、絹代は全身に悪寒が走るのを知覚し、ブルッと裸身を震わせる。
「美沙江のピチピチしたケツも良いですが、母親の脂の乗りきったケツも実に美味そうで、さっきから股の辺りがむずむずして我慢出来ませんや」
「まあ、随分露骨ねえ」
 大塚順子がわざとらしく顔をしかめる。
「でも良かったじゃない、家元夫人。時造さんに気に入ってもらえて。何しろ可愛い娘さんのお婿様なんですものね」
 順子はそんな風に絹代をからかう。
「今夜は美沙江お嬢さん二人で時造さんにたっぷり可愛がってもらえるのでしょう。これで奥様とお嬢様は親娘でありながら一人の殿方を共有する、何とか姉妹の間柄になれるって訳よ。母と娘の絆もぐっと深まるはずだわ」
(そうだ、今夜私は美沙江と一緒にこの男と……)
 順子の揶揄を浴びた絹代は、あまりの恐ろしさにガタガタと裸身を震わせる。血を分けた娘とまさに畜生にも似た関係となることに対する恐怖が、身体の奥から込み上げてきたのだ。
「どうした、奥さん。随分震えているじゃねえか」
 時造がへらへら笑いながら絹代の肩を抱く。
「やくざがそんなに怖いのかい」
「い、いえ……そんなことは」
 首を振る絹代に葉子と和枝が口々に「大丈夫よ、奥様」とか「そうよ、時造さんは見かけは怖いけど、女に対しては滅法優しいんだから」と声をかける。
「そうさ、何も怖がることはねえぜ。美沙江だって俺にはすっかり懐いているんだからな」
 時造はそう言うと絹代の滑らかな頬に、自らのごつごつした頬を擦りつけるのだ。