「奥さんの身になってみろ。手塩にかけて育てた娘と息子が、やくざが主宰するポルノショーに出演させられているんだ。情けなくて身の置き所もないって気持ちになるのも無理はないだろう」
「親分ったら、随分その奥様には甘いのね」
 和枝がそう言うと葉子も「そうよ、その女だってさっき、他の女たちと一緒に鈴縄踊りの珍芸を披露した立派なポルノスターよ。何も遠慮することはないじゃない」と言い募る。
「なかなか手厳しいな」
 岩崎が苦笑いした時、舞台の上のお春が口を開く。
「さ、お小夜。ここにいる熊造さんと伝助さんにきちんととお詫びをしてから、お二人をお披露目のお客様だと思ってしっかり演じるのよ。わかったわね」
 お春はそう言うと、手に持った青竹でお小夜の太腿を軽く叩く。じっと汚辱に耐えるように顔を伏せていたお小夜は、それを合図にしたかのように顔を上げ、涙に潤んだ瞳を熊造と伝助に向ける。
「……く、熊造様、伝助様」
 そんな風にお小夜に声をかけられた二人の雲助は、お小夜の醸し出す清冽な色気に酔ったかのようにそわそわとし始める。
「女だてらに刀を揮いお身内の方を三人も殺めましたこと、お詫びのしようもございませぬが、本日はせ、せめて弟の文之助とともに、この身体をもちまして出来る限りの珍芸を演じてお二人への謝罪とし、また亡き三人のお身内の方をお慰めしたく思います。ど、どうかよろしくお願いします」
 そこまで口にしたお小夜はさすがに込み上げる屈辱感を堪えかね、声を上げて嗚咽する。
「めそめそするんじゃないわよ。お客様のお酒がまずくなるじゃない」
 お春が苛立った声を上げ、お小夜の尻を青竹で打つ。ピシッという打擲音が響き、お小夜は「も、申し訳ありません」と声を詰まらせる。
「珍芸を演じました後はお小夜と文之助の身体をお楽しみいただきたく思います。あ、合わせてよろしくお願い申し上げます」
「何だって」
 熊造は思わず腰を浮かせる。
「この武家娘を抱いていいっていうのか」
 伝助の問いにお春が「いいけど、お嬢さんの女の道具は使っちゃ駄目よ」
「それじゃ抱くことにならないだろう」
「ふざけているのか」
 熊造と伝助は口を揃えて不平を言う。
「ふざけてなんかいないわよ。武家娘の初物は値打ちがあるのよ。どうしてあんたたちにくれてやらなきゃいけないのよ」
「そんな言い草はねえだろう。この二人には俺たちの身内が二人も斬り殺されたんだぞ。身体を使って詫びさせるくらい、当然のことだ」
 熊造は目を三角にするとお春が二人の雲助の耳元に顔を近づけ、「あんたたち、この二人を百両の金で葉桜屋に売っ払ったのを忘れた訳じゃないだろうね」と低い声で言う。
「……」
 熊造は言葉を詰まらせ、伝助と顔を見合わせる。
「あの時に取引は成立して、この二人を煮て食おうが焼いて食おうがあんたたちには何も口を出す権利はないんだよ。そのあんたたちにこの二人の身体を楽しませてやろうって言うんだ。文句を言ったら罰が当たるってもんだ」
「楽しませるって言うが、女の道具を使わないのならいったいどうやって楽しむんだ」
 伝助が怪訝な顔つきでそう尋ねると、朱美が「女は女陰《ほと》を使わないで男を楽しませることが出来るだろう」と笑う。
「そりゃどうやって?」
「伝助さん、あんたもとことん野暮だねえ。わからないかい、尻の穴を使うんだよ」
「尻の穴?」
 伝助が首を傾げる。
「糞を放り出す穴に突っ込めってえのか」
「この二人はそこでも楽しめるように、腹の中は空っぽにしてるんだ。穴の中も綺麗なもんだよ」
「しかしなあ」
 伝助と熊造は戸惑ったように顔を見合わせる。
「陰間を抱くときはそこを使うのを知らないのかい」
「俺たちは今まで陰間を抱いたことはないんだ」
 そこまで言った熊造はハッと気づいたように「お前たち、さっきから二人って言っているが、それは俺たちにこっちの小僧も抱けっていっているのか」と尋ねる。
「今さら何を言っているんだい。当たり前じゃないか」
「うーむ」
 熊造は腕組みをして考え込む。
「どうする、伝助」
「どうするったって。俺も陰間なんて買ったことはねえから、どうしたらいいかなんてわからねえよ」
「楽しみ方はあたしたちが教えてあげるよ。なにせ、あたしたちは陰間の大先輩だからね」
 お春がそう言ってニヤリと笑う。熊造はその不気味さに寒気を感じて身体をブルッと震わせる。
「それと言っておくけど、二人を楽しませるって言っても弟の方が先だよ」
「何だって?」
「聞こえなかったのかい、弟の方に一発発射しないと姉の方はお預けって言っているんだよ」
「そいつは殺生だぜ」
 伝助は抗議するが、熊造はじっと考え込んだままである。
「何ごとも経験だよ。熊造さん」
「そうだなあ」
 熊造は立ち上がると、思案気な表情のまま文之助の周りを歩き回る。ふと足を止めた熊造は、文之助の後ろ姿をしげしげと眺める。
「なるほど、こっちから見ると、並みの女よりもずっと女らしい気がするな」
 熊造はそう言うと「よし、決めた」と頷く。
「俺はこの小僧から楽しませてもらうことにするぜ」
「熊造、お前、正気か」
 伝助が目を丸くする。
「何ごとも経験だって言うじゃねえか。それに」
「そうそう、その意気だよ」
 お春が茶化すように熊造に声をかけると、お夏が伝助に向かって「それじゃあお床入りの前に二人に瓶吊り踊りの余興を演じさせるから、伝助さんはこのお坊ちゃんが気分が出せるように、前の方を可愛がってあげておくれ」と言う。
「俺がか」
 伝助が顔をしかめるとお春が「いつまでつべこべ言っているのさ。男らしく覚悟を決めないか」と叱咤する。
「ちぇ、しょうがねえなあ」
 伝助はそう言いながら立ち上がると文之助の前に周り、その身体を上から下まで見渡す。文之助の股間にぶらりとぶら下がった肉棒の先端に凧糸で、白い銚子が結びつけられているのを見ると、伝助は口元に嘲笑を浮かべる。
「ちっ、こんなみっともねえ格好にさせられやがって」
 伝助はそう毒づくといきなり文之助の睾丸をぐっと握り締める。」