「うーっ!」
 男の急所を握りつぶされそうになった文之助は苦痛のあまり絶叫する。息子の悲鳴を耳にした美紀夫人は思わず顔を上げる。
 森田組の幹部やくざ、井上が演じる伝助によって睾丸を握られ、脂汗を流しながら苦痛に耐えている息子の姿を目にした美紀夫人は「ふ、文夫っ」と声を上げる。
 客席から突然聞こえた母の声に文夫はハッとした表情になる。美紀夫人と文夫の視線が交錯し、文夫もまた思わず「母さんっ」と声を上げる。
 お春演じる春太郎の表情が一変する。春太郎の平手打ちが文夫の頬に炸裂し、観客は息を呑む。
「芝居以外のことに気を散らすんじゃないわよっ」
 春太郎の怒声が飛び、文夫は顔を歪める。次の瞬間春太郎はさっと表情を元に戻すと、井上演じる伝助に向かって「ちょっと伝助さん、お坊ちゃんの大事なものを握りつぶすつもりなの。あたしはお坊ちゃんを可愛がってって言ったのよ」と言う。
「あ、ああ……」
 井上は毒気を抜かれた顔つきになり文夫の睾丸を握っていた手を離すと、垂れ下がった肉棒を軽く握って扱き始める。
「うっ……」
 井上のごつごつした手で繊細なものを扱かれる苦痛に、文夫は顔をしかめる。それを見た春太郎が、「だめよ、伝助さん。いきなりそんな風に扱いちゃ、痛いだけじゃないの」とたしなめる。
「いちいちうるせえな。こちとら、野郎のものなんて扱いてことはねえんだよ。どうやったら良いかなんて分かるはずがねえだろう」
 井上がそう言って口を尖らせると春太郎は呆れたように「何を言っているのよ。自分のものは扱いたことがあるでしょう」と言う。
「自分と他人とは訳が違わあ」
「しょうがないわね」
 春太郎は井上に油の入った壺を差し出す。
「この壺の中の油をたっぷり手にとって、お坊ちゃんのそれを優しく可愛がってあげるのよ」
「ふん」
 井上は胡散臭そうに壺を覗き込んでいたが「しょうがねえな」と言って両の掌にたっぷりと油を取ると、改めて文夫に向かう。
 井上が再びその部分を扱き始める。今度は手に取った油が潤滑剤の役割を果たしているせいか文夫は先ほどのような痛みは感じない。いや、むしろ身体の裡から込み上げる甘い快感に、下半身が無意識のうちに痙攣を始めるのを止めることが出来なくなっているのだ。
 文夫の垂れ下がった肉棒は井上の愛撫を受けてその屹立の角度を増していく。文夫が次第に方針没我の境地に入ってきたのを認めた、吉沢はニヤリと笑みを浮かべ、春太郎の持つ油壺に指を浸すと、文夫の菊の蕾にぐっと差し入れる。
「ああっ」
 隠微な箇所を吉沢の節くれ立った指で抉られた文夫は、激しい屈辱と羞恥に思わず悲痛な声を上げる。文夫は吉沢の手から逃れようと身を揉むと、井上がそうはさせじと文夫の肉塊を片手でぐっと握り締め、空いた一方の手で睾丸を握る。
「キンタマを握られたっていうのはこういうことを言うのね」
 急所を押さえられて進退窮まったという風情の文夫を見た千代がそう言うと、順子、和枝、そして葉子といった女たちがどっと笑いこける。それを見た吉沢が文夫の、女のように丸みを帯びた尻をパシッと叩く。
「ほらほら、お坊ちゃん。ご婦人のお客様にサービスだ。観客席に向かって尻を向けねえか」
「な、何を……」
「おとなしく言われたとおりにしねえか」
 吉沢に再び尻を叩かれた文夫がおずおずと観客席に尻を向けると、吉沢は文夫の両の尻たぼに手をかけ、ぐっと断ち割る。
「きゃっ」
 和枝と葉子と言った女たちが、文夫の悲鳴をかき消すような甲高い悲鳴を上げる。羞恥の極限とも言えるそんな箇所を剥き出しにさぜられた文夫は女たちの視線を避けようと懸命に下半身を捩らせようとするが、井上にがっちりと急所を押さえられているため、ろくに身動きすることも出来ないでいるのだ。
「さあ、そこのご婦人方、もっと近くに寄って見てくだせえ。こんな綺麗な男の子の肛門を観察する機会なんて滅多にありませんぜ」
「そ、それじゃ」
 文夫がお気に入りの和枝が早速腰を浮かせると、磁石に吸い寄せられるように文夫の足元へと向かう。
「わ、私も」
 葉子もまた文夫の足元へと近づき、和枝の隣に陣取る。
「順子さん、私たちも行きましょうよ」
 千代に声をかけられた大塚順子は「えっ」と戸惑ったような声を上げる。
「この場の恥はかきすてっていうじゃない、さあ」
「しょうがないわね」
 順子は苦笑して腰を上げる。
「奥様、あなたも行くのよ」
 千代が岩崎の隣で身を縮めるようにしている美紀夫人を促すと、夫人は顔を引きつらせて「わ、私は結構です」と首を振る。
「何よ。私の言うことが聞けないというの。ちょっと岩崎親分に気に入られたからといって調子に乗っているんじゃないわよ」
 千代がたちまち眉をつり上げる。
「これも付き合いや。行って来るんや、奥さん」
 岩崎に背中を軽く叩かれた美紀夫人は、恐怖に身体をガタガタと震わせながら腰を上げる。
「あなたも来るのよ。家元夫人」
 順子が時造に抱きかかえられた絹代夫人に声をかける。絹代はある程度覚悟していたのか、それともやくざの男に抱かれながら淫靡な愛撫を受けているよりはましと思ったのか、悲痛な表情で立ち上がると舞台に向かって歩き出す。
 舞台上の吉沢が、町子の方を向いて「そこのご婦人もいかがですか」と声をかける。
「えっ、私?」
 町子は驚いて聞き返す。
「ここじゃ他にご婦人はお一人だけだ。この際、懇親を深めるのも悪くねえと思いますが」
 吉沢がニヤリと笑って頷く。
「せっかくああ言ってくれているんだ。行って来なよ」
 岡田に促された町子が「それじゃ」と腰を上げて舞台の知覚へと向かう。
 文夫の足元に和枝、葉子、千代、順子、町子、そして美紀夫人と絹代夫人と、七人の女が集まって腰を下ろす。美紀夫人は愛する息子の悲惨な姿に目を向ける勇気はなく、必死で顔を逸らしていたが、両隣の千代と葉子から交互に柔らかい脇腹を抓られ、痛みに耐えかねて顔を上げる。
 美紀夫人の目に、極端なまでに広げられた文夫の双臀の谷間に、菊の花のような肛門がはっきりと姿を現しているのが映る。美紀夫人は慌てて顔を逸らせようとするが、すかさず千代が夫人の脇腹を思い切り抓る。美紀夫人は激しい痛みに涙を堪えながら愛する息子のその部分に視線を注ぐのだった。