246.奴隷のお披露目(46)

「若い男の子のお尻の穴って初めて見るけど、なかなか可愛いものね」
「お尻も丸くて形が良いし、こうやって見ていると女の子と変わらないわね」
 和枝と葉子はそんなことを言ってキャッ、キャッと笑い合っている。
「でも、股の間から銚子をぶら下げたおチンチンが覗いてるのが見えるじゃない。やっぱり紛れもなく男だわ」
 和枝がそう言うと葉子がさらに甲高い声を上げて笑うのだった。
(ああ……文夫……)
 文夫の悲惨な姿を眺める美紀夫人は堪えかねて、とめどなく涙が流し始める。
「ねえ、何をそんなに悲しんでいるの。村瀬の奥様」
 千代が美紀夫人の耳元に囁きかける。悪魔的な笑みを浮かべている千代と目を合わせた美紀夫人は、恐ろしいものを見たかのように顔を背ける。
 男の身で素っ裸に剥かれて舞台に立たされ、秘められた排泄器官を見世物にされている汚辱――このような非道な責めを受け続けると、文夫の精神はいずれ崩壊してしまうのではないか。
 それを思うと美紀夫人は恐怖と絶望、そして耐え難いほどの悲しみで身も心も押しつぶされるような気持ちのなるのだ。
「息子さんのことなら心配ないわよ。これくらいのことでおかしくなったりはしないから」
 千代がまるで美紀夫人の思考を読んだようにそんなことを口にしたので、夫人はハッとした表情になる。
「私、静子を責めていて思ったの。世の中には責められれば責められるほど、それを強さに変えていく人間がいるってことを」
 そんなことを口にする千代を、美紀夫人はまるで悪魔に魅入られたような表情で見つめている。
「こんな人里離れた屋敷の地下室に閉じ込められて、繰る日も繰る日も責め立てられていれば普通の人間ならとっくにおかしくなっているわ。でも、いわゆるマゾヒストって言うのかしら。そういった人種はいつか責めそのものを快感に変えていけるようになるのよ。奥様のお嬢さんとお坊ちゃんも静子と同じマゾヒストよ」
「だから決して心配はいらないわ。お嬢さんもお坊ちゃんもこういった責めを受けて、耐え難いほどの羞恥と屈辱に苦しみ悶えているように見えるけれど、その一方で悦んでもいるのよ」
「そんな……」
 美紀夫人は凍り付いたような表情になる。
「その証拠にご覧なさい。お尻の穴を私たちにじっと見られているうちに、お坊ちゃんのおチンチンが逞しくなってきたじゃない」
 千代は文夫の両肢の間から覗いている、銚子をぶら下げられた肉塊を指さす。
 確かに千代が指摘したとおり、文夫の肉棒は徐々にその屹立の角度を増し、酒の入った銚子をぐいぐいと持ち上げ始めているのだ。
「わあ、見てよ。あれ。素晴らしいじゃない」
 文夫の変化を目にした和枝が頓狂な声を上げて、葉子と手を叩いて笑い合っている。
「あれが何よりの証拠じゃない。あなたの息子は恥ずかしいことをさせられて悦ぶマゾなのよ」
 美紀夫人は千代の言葉を愕然とする思いで聞いている。
 町子もまたそんな千代の言葉を聞きながら、月影荘の地下室に幽閉されている雪路と雅子のことを考えている。
(あの二人も千代という女が言うようにいずれ自らの境遇を受け入れ、責めを快感に転化できるようになるのだろうか)
 姉の雪路の方はすでに千代が言うところのマゾヒストへと変身を始めているように見える。じゃじゃ馬で手を焼かされた雅子さえも最近は時折、三郎や岡田たちが施す淫虐な責めを積極的に受容するような態度を示して町子を驚かせることもある。
(そうなったら私も、枕を高くして眠ることが出来るってものだけど)
 町子がそんなことを考えていると、千代が再び美紀夫人に話しかける。
「マゾヒストの娘や息子を産んだ奥様も十分その素質はあるわね」
「そんな、そんなことはありません」
 美紀夫人は首を振る。
 文夫は自らの身体に生じた変化を恥じるかのように下半身をしきりに捩らせているが、それがまるで羞恥に身を揉む乙女のような鮮烈な色気を感じさせ、見物する女たちの官能を高ぶらせる。文夫もまた、さらけ出したその部分に女たちの視線をまるで火のように感じて屈辱と羞恥、そしてさらには奇妙な露出の快感に全身を熱くさせているのだ。
「そこにいる姉の方と比べてみたいんだけど」
 大塚順子がそんなことを言い出したので、春太郎と夏次郎は一瞬顔を見合わせるが、吉沢が「姉と弟で穴比べって訳か。面白えじゃねえか」というと頷き合って、小夜子の両脇に立つ。
「あたしたちはどっちかというと、そっちのお坊ちゃんを担当する方が良いんだけど」
 そう言ってぼやく夏次郎を吉沢は「つべこべ言わずにさっさとやらねえか」と催促する。
「しかたないね」
 夏次郎は春太郎と顔を見合わせると「さ、あんたも観客席にお尻を向けなさい」と小夜子の尻をピシャリと叩く。
「許して……」
 小夜子は悲痛な表情を夏次郎に向けるが、夏次郎は非情に首を振る。
「駄目よ。弟さんがもうああやって素直にお尻の穴を見せているじゃない。お姉さんの癖に、弟だけに恥をかかせるつもりなの」
 そう決めつけられた小夜子は諦めたように首を垂れ、くるりと身体を回転させる。文夫と並んで観客席に背を向ける格好になった小夜子の尻を今度は春太郎がぽんと叩く。
「足を大きく広げなさい」
 小夜子は命じられるままのびやかな両肢を扇のように開く。夏次郎が「もっと景気よく開くのよ」と小夜子の尻を叩く。限界まで開脚した小夜子の尻たぼを、春太郎と夏次郎は両方から掴むと、「せーの」と呼吸を合わせてぐっと拡げる。
「ああっ」
 文夫と同様、小夜子の秘められた菊蕾が露わになる。観客席の前の方に陣取っていた熊沢組の大沼と平田、そして南原組の木村といった男たちが歓声を上げながら一斉に小夜子の前に集まる。
「さあ、姉と弟の尻の穴比べでござい。こんな見物はめったにお目にかかれませんよ」
 吉沢がそんなふざけて口上めいた台詞を述べると、詰めかけた一〇人近い男女はどっと笑い声を上げるのだ。
「どう、奥様。可愛いお嬢ちゃんとお坊ちゃんが仲良く並んで、下品な人間の笑いものになっているのを見る気分は」
 千代はそう言って笑いながら美紀夫人の脇腹をつつくのだった。
 千代の言うとおり、小夜子と文夫は一段高い舞台の上で揃って観客席に尻を向け、肛門を丸出しにした姿を晒し合っている。羞恥だとか、屈辱だとかいった決まり切った言葉では表現できないほどの究極の恥辱に身を浸している姉と弟は、隠微な部分に浴びせられた観客の視線の熱さを感じているかのように、形の良い尻を時折ブルッ、ブルッと震わせているのだ。
「お客様にただお尻を向けているだけじゃ脳がないよ。こんな風に言ってお客様を良い気持ちにしてあげるんだ」
 春太郎が小夜子の耳元に何ごとか囁きかけると、小夜子は嫌々と首を振る。
「そ、そんなこと……とても言えません」
 小夜子は真っ赤に染めた顔を振る。
「それに、こんなことをさせるなんて聞いていません」
「何を寝ぼけたことを言っているんだい」
 春太郎と夏次郎は顔を見合わせて笑い合う。

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