「言っておくけど、やるのは奥様だけじゃないのよ」
千代はそう言うとおろおろしながら成り行きを見守っている絹代夫人に目を向ける。
「そこの家元夫人も付き合って、舞台に上がるのよ」
「な、なんですって」
美紀夫人は愕然と目を見開く。
「ど、どうして千原の奥様まで」
「当然でしょう。ピチピチした若い娘と、思わず食べたくなっちゃうような美少年の代わりを務めようというのよ。一人だけのショーじゃ、お客様はとても納得しないわ。成熟しきった人妻二人が熱烈なオナニーショーを演じてもまだまだ引き合わないわよ」
千代がそう言うと女たちは再びどっと笑いこける。
「今さら恥ずかしがるなんておかしいわ。さっきはダミヤって金髪女や、山崎探偵の妹と一緒に鈴縄踊りを演じた奥様じゃないの。オナニーショーくらい、どうってことはないでしょう」
表情を強ばらせている絹代夫人に、順子が追い打ちをかけるように言う。
「そうそう、ただのオナニーショーじゃ、さっきの鈴縄踊りの二番煎じになってしまうから、奥様方二人は互いに相手を慰めるのよ。そうね、相互オナニーショーとでも言えばいいのかしら。お互いをレズビアンの恋人だと思って演じると良いわ。丁度良い予行演習になるじゃない」
千代がそう言うと美紀夫人はひきつった表情で「ど、どう言う意味ですか」と尋ねる。
「村瀬宝石店の奥様はいずれは娘の小夜子さんと、家元夫人も同じく娘の美沙江さんとレズのコンビを演じてもらわなければならないのよ。その予行演習になるってこと」
千代の言葉に二人の美夫人は雷に打たれたような表情になる。
「そ、そんなっ」
「それだけは許していただけたはずですわ」
久美子が、そして静子夫人がその身を犠牲にして、美紀夫人と絹代夫人が実の娘と畜生の関係を結ぶことだけは回避しようと悪鬼たちからの約束を取り付けたはずである。それなのに今さらそれを反故にしようというのか。
「それならおとなしく舞台に上がりなさい。愚図愚図するんじゃないわよ」
千代に急き立てられた美紀夫人はひきつった表情のままで立ち上がる。
「奥様も立つのよ、さあ、早く」
絹代夫人もまた順子から尻を叩かれて立ち上がる。
「き、絹代様……ごめんなさい」
美紀夫人が悲痛な顔を絹代夫人に向ける。
「良いのです……私も、美沙江を救うためですから」
美紀と絹代は互いにそうやって声を掛け合うと、たまりかねたように嗚咽を始めるのだった。
そんな二人の美夫人を眺めている町子は、納得しがたい思いに駆られている。
(どうしてこの女たちは自分を犠牲にして淫らな責めを受けようとするのか)
二人が今、オナニーショーやレズビアンを演じたからといっても、舞台上の小夜子と文夫に対する辱めは一時中断するだけである。
たとえ大幅な時間稼ぎに成功して、昼の部が終了となっても姉と弟それぞれに対する責めは夜の部に引き継がれるだけである。
もちろん昼と夜では演目は違うだろうから、夜の部では小夜子と文夫がコンビを組まされることはないかも知れない。
しかしながら血の繋がった姉と弟が近親相姦めいたショーを演じるというのはその背徳性において他のものでは代え難い貴重なものである。森田組はそれをショーの目玉として頻繁に再演するに違いない。美紀夫人の犠牲は所詮時間稼ぎに過ぎないのである。
また、二人の美夫人が究極のところで回避しようとしているのはそれぞれの娘たちとの同性愛プレイである。しかしながらこれはもう町子の目から見ても、いずれそうなるのは時間の問題としか言えない。
さきほど京子と美津子の姉妹が観客の前で熱烈なレズビアンの契りを結ばされたことを見ても、田代屋敷の住人たちは血が繋がっている関係だからと言ってそれに対する責めを躊躇することはあり得ない。
(二人ともしっかりとした教育を受けたご婦人なのに、どうしてそれが分からないのか)
私がもし、同じような立場だったらどうするかと町子は考える。
どっちにしても結果が同じなら、自分なら開き直るだろう。自ら自己犠牲の精神を発揮するのは嗜虐者たちに媚びを売るようで、潔しとはしないと考えるのだ。
でも、ここにいる上流のご婦人二人は、舞台上の若い二人の代わりに生け贄になろうとしているのだ。
村瀬宝石店の社長夫人の場合はまだ気持ちは分かる。自分の目の前で娘と息子が辱めを受けているのをこれ以上見ていることが出来なくなったといえば、それは無理もないことである。
しかし、家元夫人の方はどうか。別に今、自分の娘が汚辱の舞台に立たされている訳ではないのだ。なのにどうして村瀬夫人とともに淫らな地獄へと身を投じるのか。
最前列で褌一丁の裸の美熟女二人がいきなり立ち上がったので、観客席の男たちは何ごとかと注目する。
「ちょっと、皆さん。いいかしら」
千代もまた立ち上がって声を上げたので、舞台上の春太郎と夏次郎、そして吉沢と井上も、小夜子と文夫を嬲る手を止める。
「この奥様方が興奮しちゃったので、飛び入りで舞台に上がってぜひ皆さまにオナニーショーをご覧に入れたいというのよ。どう、いかがかしら」
吉沢と井上はどうする、という風に顔を見合わせる。しかしながら観客席からいっせいに拍手が湧き起こったこと、そしてその中には岩崎と時造の姿もあったことから頷き合い、春太郎と夏次郎に目配せする。
春太郎と夏次郎も心得たとばかり頷くと美紀夫人と絹代夫人に手を差し伸べ、舞台上に引っ張り上げるようにする。
「なかなか重いわね」
美紀夫人の手を引いている春太郎がニヤリと笑うと「ちょっとお客様、このご婦人を舞台に上げるのを手伝って下さらない。下からお尻を押して下さればいいわ」と声をかける。
「お安いご用だ」
男たちがいっせいに美紀夫人に群がる。淫靡の極とも言える実演ショーを見せられながら女体に触れることが出来ないため、欲望が極端なまでに高まっていた男たちは競うように美紀夫人の尻に手を伸ばす。
美紀夫人の逞しいばかりに実った双臀に運良く取りつくことが出来たやくざの男は、尻肉に唇をべっとりと押しつける。反対側に取りついたやくざも、それを真似るかのように弾力のある臀肉にかじりつくのだ。
「あっ、あっ、おやめになって」
蛭に吸い付かれたようなおぞましさを知覚した美紀夫人は思わず悲鳴を上げるが、その時は尻に取り付けなかったやくざたちが夫人の太腿、ふくらはぎ、果ては足裏まで手で摩り舌で嘗め上げ始めているのだ。
夏次郎に手を引かれている絹代夫人もまた、美紀夫人と同様野獣と化した男たちの生け贄になっている。二人の美夫人はついに褌まで剥ぎ取られ、全裸の肉体を男たちの集団に弄ばれているのだ。
そんな様子をニヤニヤ笑いながら見守っていた吉沢と井上の顔つきが急に真剣になる。このままでは美紀と絹代が男たちによってたかって輪姦されかねないと、不安になり出したのだ。岩崎を招いた場でそんなことになれば大変である。