「あっ……」
 二人の美夫人の乳首と乳首が触れ合う。絹代夫人はその部分から全身に電流が走るような感覚に、優美な裸身を痙攣させる。
 美紀夫人もまた娘の小夜子同様、乳首に鋭敏な感覚を持つのか、上半身がヒク、ヒクと蠢くのを抑えられないでいる。
 やがて美紀夫人の舌と珠江夫人の舌が、まるでそれぞれが一個の生き物であるかのように互いの口中で絡み合い、もつれ合う。同時に二人の美夫人の柔らかな乳房が押し合い、重なり合う。
「絹代様……」
「ああ……美紀様」
 二人の美夫人はどちらともなく、台に敷かれた布団の上に倒れ込む。そしてそれぞれの伸びやかな肢を相手の肢に絡み合わせる。
 上流に育った令夫人たちは、次第に多くの観客たちの視線に晒されていることも忘れ、夢中になって愛撫を交わし合うのだった。
 美しい熟女二人が発する濃厚な色気に、見守るやくざたちは例外なく酔ったような顔つきになっている。千代や順子といった女たちも、宝石店社長夫人と華道家元夫人が演じる卍の艶技に夢中になって見入っているのだ。
 二人の夫人がともに優雅な慎みを保ちながら、躊躇いがちに燃え上がっていくのに目を奪われていた町子は、やがて美紀夫人が絹代夫人を巧みにリードしていることに気づく。二人の官能はほぼ同調しているように見えるが、美紀夫人が半歩崎を進み、絹代夫人を未知の領域へと誘っているのだ。
 一方の絹代夫人は、その幼ささえ感じられる美貌にまるで処女のような恥じらいをうかべながら、美紀夫人に手を取られるようにおずおずと官能の海へと漕ぎ出していくようである。
 そんな二人の様子をじっと眺めていた町子が、隣に座っている和枝に話しかける。
「あの女、かなり経験があるんじゃないかしら」
「どっちの女?」
「宝石店社長夫人の方よ」
「経験があるってレズの? まさかそれはないんじゃないの」
 和枝は苦笑する。
「レズの経験とは言わないけど、少なくとも男性経験は旦那だけっていうただの貞淑な人妻じゃないと思うわ」
「そうかしら。私にはそうは見えないけれど」
 町子の言葉に和枝は首をひねる。
 しかしながら、舞台上で二人の美夫人のプレイを見守っている春太郎と夏次郎は、長年のソープ嬢勤めとレズビアンプレイの経験で得られた町子と同等、またはそれ以上の観察力を有しているのか、何かを気づいたようにニヤリと笑い合うと美紀夫人の耳元にそっと口を寄せる。
「奥様、あなたすました顔をしているけれど、実はご主人以外とも経験があるんじゃない」
 春太郎にそう囁かれた美紀夫人はハッとして顔を上げる。
「図星って顔ね」
 春太郎はやはりという風に笑うと、夏次郎と顔を見合わせる。
 急におろおろした顔になる美紀夫人に春太郎は「駄目よ、顔を上げちゃ。そのまま続けなさい」と言い放つ。
「奥様をいたぶるネタが一つ増えたみたいね。可愛い娘と息子にばらされたくなければ頑張って続けるのよ」
 春太郎はそう言って美紀夫人の豊満な尻をピシャリと平手打ちする。美紀夫人は悲痛に顔を歪めたが、やがて自棄になったように絹代夫人の裸身に自らの裸身を押し付け、一気に愛撫のピッチを上げる。
「あ、ああ、ど、どうなさったの。美紀様」
 春太郎が美紀夫人に何を囁いたのか、絹代夫人には聞こえなかったため、突然の美紀夫人の変化に絹代は狼狽の声を上げる。美紀はそんな絹代の口を塞ごうとするように、接吻を注ぎこむ。
「う、ううっ……」
 躊躇いがちの最初の接吻とは打って変わった濃厚な美紀夫人の口吻に、絹代夫人は当惑して目を白黒させる。そんな夫人の文字通り絹のような舌を美紀夫人は強く吸い上げながら乳房をぐっと押し付ける。
 いきなり深い官能の陶酔を知覚した絹代夫人の裸身がブルッブルッと断続的に痙攣する。美紀夫人もまた自らの官能を絹代夫人のそれに同調させるかのように下半身をヒクヒクと震わせている。
「なかなか調子が出てきたみたいじゃない」
 夏次郎はそう言って春太郎に笑いかける。淫靡な笑みを浮かべながら頷いた春太郎は「次に、シックスナインの体位を取るのよ」と美紀夫人に命じる。
 悲痛な表情を向ける美紀夫人に春太郎は「聞こえなかったの、奥様。シックスナインよ。わかるでしょう」と冷たく言い放つ。
 美紀夫人は今にも泣き出さんような顔で、絹代夫人の上でゆっくりと身体の向きを変えていく。
「あら、シックスナインも分かるのね」
「奥様ってなかなか隅に置けないじゃない」
 ケラケラ笑う春太郎と夏次郎の声を耳から閉め出そうとするかのように、美紀夫人は絹代夫人の下腹部に顔を埋めると、舌先を伸ばす
「あ、ああっ、み、美紀様、な、何をっ」
 いきなり女の羞恥の部分を美紀夫人に攻撃された絹代夫人は甲高い悲鳴を上げる。
 美紀夫人はそれにかまわず、絹代夫人の肉溝にぐっと舌を差し入れる。美紀夫人の舌を火のように感じた絹代夫人は「あっ、あっ、美紀様っ」と切れ切れの悲鳴を上げ続けているのだ。
「絹代様……許して……」
 美紀夫人はそうほざくように言うと、絹代夫人のその部分に濃厚な愛撫を注ぎ込む。二人の人妻は次第に火花が出るようなレズビアンプレイに没入していくのだった。
「そろそろお道具を使った方が良さそうね」
 春太郎はそう言うと巨大な双頭の淫具を取り出し、ハア、ハアと荒い息を吐いている二人の美夫人に見せびらかすようにする。
「これはね、森田組で契約しているジョニーとボブという黒人のペニスで型を取って作ったものよ。どう、凄く立派だとは思わない」
 そのおぞましい筒具を見せつけられた美紀夫人と絹代夫人は、脅えたように顔を背ける。
「あら、そんな風に顔を逸らさなくて良いじゃないの」
 春太郎はわざとその淫具を美紀夫人の顔に押し付ける。
「こっちはボブのペニス。小夜子さんが文夫さんの目の前でこの大きなおチンチンを見事に咥え込んだのは知っているでしょう」
 その言葉を聞いた美紀夫人の顔が、恐ろしいまでに引きつる。
「さ、小夜子が黒人と……」
「あら、知らなかったの。これは意外だわ」
 春太郎と夏次郎は顔を見合わせる。
「そう言えば奥様たちは今回のショーでは顔見せ程度で、演じるもの鈴縄踊りや糸通しと言って簡単なものだから、ずっと地下で静子夫人に調教されていたわね。それで娘がどんな調教を受けているのか知らなかったのね」
 夏次郎はそう言うと納得したように頷く。