「嫌っ」
 美紀夫人は恐怖に目を見開き、甲高い悲鳴を上げるのだった。
「今さら何を狼狽えているのよ。奥様たちはこれを使って、静子夫人から尺八の特訓を受けていたのでしょう。銀子さんや朱美さんから聞いているわよ」
「だ、だって。だからと言って、それとこれとは──」
 狼狽して首を振る美紀夫人に夏次郎が「今まで上のお口で加えていたものを下のお口で咥えるだけじゃない。そんなに狼狽えるなんておかしいわよ」とからかう。
「大塚先生もお待ちかねだし、お客様もしびれを切らしているわ。お夏、面倒だから始めましょう」
「了解」
 春太郎の呼びかけに夏次郎はおどけて返事をすると順子に「それじゃ大塚先生、お願いします」と告げる。
「待ちかねたわ」
 順子は腰を上げて床に拡げられた風呂敷の上に置かれた羽根箒を取り上げると、絹代の下半身に近寄る。
「ふふ……いつ見ても可愛いおマンをしていらっしゃるわね。奥様」
 順子はそう言うと羽根箒の先端で絹代の、文字通り絹のような陰毛をそっと摩り上げる。
「あっ」
 その瞬間、絹代の裸身が電流に触れたように震える。順子が戦端を切ったのを確認した夏次郎もまた羽根箒を手に取り、絹代の薄紅色の乳首を撫で上げる。
「ううっ」
 再び絹代の悲鳴。順子は口元に淫靡な微笑を浮かべると、手にした羽根箒を巧みに使いながら絹代を責め上げていく。
「さすがは大塚先生。手慣れたものね」
 春太郎は感心したような声を上げると「こっちも負けていられないわ」と言って、催淫性の潤滑クリームを指先に取ると、美紀夫人の双臀の狭間に秘められた菊花にべっとりと塗りつける。
「い、嫌っ!」
 思わぬ箇所を攻撃された驚きと戸惑い、そして恐怖に美紀夫人は激しく腰部を捩らせる。春太郎はそんな美紀夫人の尻をピシャリと叩くと「静かにしなさいよ」と言い放つ。
「奥様はこっちの本格的な調教はまだだったわね。だけどこっちは、小夜子や文夫の母親ならA感覚だって十分発達しているのは間違いないと見ているのよ」
 春太郎は淫靡な笑みを浮かべながら、クリームに濡れた美紀夫人のその部分の筋肉をゆっくりと揉み立てていく。
「い、嫌……そこは嫌です」
「身体の力を抜いて、あたしたちの責めに身を任せるのよ。いつまでも反抗的な態度を取ると、小夜子と文夫をこの場でつるませるわよ」
「そ、そんな……それだけは……」
 美紀夫人は声を震わせる。
「吉沢さん、井上さん、お願い」
 夫人の抵抗の意思が弱まったのを見て取った春太郎は、待機していた吉沢と井上に合図を送る。二人のやくざはニヤリと笑い、美紀夫人の豊かな乳房を両側から揉み始める。
「あっ、あっ、だ、駄目っ」
 田代屋敷に拉致された静子夫人他の女たちが揃って被虐的な官能に目覚めたのと同様、森田組のやくざたちも彼女たちに煽られるように嗜虐の快感の虜になっている、
 特に吉沢と井上は、一時それぞれ京子と桂子を自分の女として与えられたこともあり、女責めに関してはやくざたちの中でもそれなりの巧者たちと言えた。
 その吉沢と井上が二人がかりで美紀夫人の上半身を責めており、一方の下半身は両性具有の調教師である春太郎が責め立てている。三人の意気の合った技巧に美紀夫人の中で、先ほどの絹代夫人との同性愛行為でかき立てられていた官能の熾火がたちまち再燃し、夫人の肉体を内側から焦がし始めたのである。
「あ、ああ……」
 美紀夫人の拒絶の身悶えが、込み上げる官能を訴えるそれに転化し始めたのを見て取った春太郎が夫人の菊蕾に挿入する指を一本から二本に増やす。同時に吉沢と井上も、指先で行っていた乳房への愛撫を舌や唇をに切り替え、より粘っこく夫人を責め立てていく。
「あっ、ああっ、あっあっ」
 美紀夫人の唇が空気を求める魚のようにぱくぱくと開く。それはまるで官能の海に引きずり込まれるのを懸命に拒む、儚い足掻きのようである。しかしながらそんな夫人の抵抗の砦は三人がかりの攻撃の前に空しくも崩れ去っていくのであった。
(ああ、ど、どうしてそんなところが感じるのっ)
 春太郎によって責められるその部分から湧き上がる鋭い快感は女の部分から得られるものとはまったく異なる種類のもので、文字通り下半身が痺れるような感覚に美紀夫人は次第に自分が自分でなくなったような気持ちに陥っていく。
 麻のように乱れる思考の中、美紀夫人の脳裏にある男に関する記憶が蘇る――。
 先ほど春太郎に看破されたとおり、美紀夫人は一人だけだが夫以外との男との経験がある。
 夫人が青葉学園に在学中、交流のある大学から留学していたヘンリーという米国人がその男である。映画俳優を思わせる彫りの深いハンサムで、女の扱いに慣れたヘンリーは初心な女子大生であった美紀夫人をたちまち籠絡したのである。
 それでもその頃の美紀夫人は結婚までは絶対に処女を守るという、確固たる貞操観念を保有していたため、ヘンリーに対してはキスとに加えて、せいぜいペッティングどまりまでしか許さなかった。
 プレイボーイのヘンリーは身持ちの堅い美紀夫人に失望したのか、二人の関係はいつしか冷めていった。ヘンリーは結局自分と同じ米国人のブロンド娘を新しい恋人に選び、帰国したのである。
 美紀夫人がヘンリーと偶然再会したのは十年前のことである。貿易商として成功したヘンリーは村瀬宝石店の取引先となっており、夫の善吉が出席するパーティに同伴した美紀夫人と顔を合わせたのであった。
 例のブロンドの妻とは数年前に離婚していたヘンリーは美紀が取引先の社長夫人であることを承知の上で積極的なアプローチをかけてきたのである。当初はまったく取り合わなかった美紀夫人だったが、ヘンリーが夫にとって重要な客であることから無碍にも出来ず、一度だけと言う約束でヘンリーと二人だけで食事をすることになったのである――。
「まあ、もうびっしょりじゃないの」
 春太郎のわざとらしい笑い声で美紀夫人の追憶は中断される。
 美紀夫人のその部分に指を浸した春太郎は、それが夫人の愛液によってべっとりと濡れているのを見て大袈裟に驚く。
「嫌だ嫌だなんて言いながら、こっちの方も満更嫌いじゃないのね。奥様ったら隅に置けないわ。本当は誰かにここを可愛がられたことがあるんじゃないの」
 春太郎がそう言って笑いながら美紀夫人の双臀を軽く叩くと、美紀夫人は狼狽に頬を染め、慌てて顔を逸らす。
「まあ、図星みたいね」
 春太郎はニヤリと笑って美紀夫人の頬をつつく。
「まあ、追求するのは後の楽しみにしておくわ。そろそろ我慢できないでしょうから、愛しい息子さんのアレを呑み込ませてあげるわ」
 春太郎は文夫のペニスを型取って作られた張り型を取り上げると、改めて美紀夫人の秘奥に押し当てる。春太郎と吉沢、そして井上の責めによって身体がどろどろに溶かされている美紀夫人は、美麗な花襞を膨らませながらその背徳の責め具をゆっくりと呑み込んでいく。