「綺麗なマンコじゃないか。とても二人の子供を産んだとは思えねえぜ」
 熊沢組の大沼がそう声を上げると、南原組の木村も
「まったく、まるで処女のマンコだぜ。実に美味そうじゃねえか」
 と同意する。
「あっちは大評判ね。こちらも負けていられないわ」
 順子は冷酷そうな笑みを浮かべると、絹代夫人の陰裂をぐっとくつろげる。
「ヒイッ」
 激烈な羞恥に絹代夫人が悲鳴を上げると、それを合図にしたかのように観客たちが夫人の前に群がる。
「こっちも負けてねえぜ。実に品が良さそうなおマンコだ」
 熊沢組の平田がそう感嘆の声を上げると、関口組の石田も
「まったくだ。このまま塩をかけて食っちまいたくなるぜ」
 と言い、他の男たちを笑わせる。
「何をしているの、奥様、そうやって黙ってちゃショーのスターは務まらないわよ」
 羞恥と屈辱に生きた心地もなく、裸身を震わせながら耐えている美紀夫人に春太郎が声をかける。
「スターならスターらしく、奥様の身体を見て褒めてくださるお客様に対して、もっと愛想を振りまかなきゃあ駄目じゃない」
「そ、そう言われても……どうすれば……」
 当惑気に表情を曇らせる美紀夫人に、春太郎はわざと呆れたような顔を向ける。
「奥様ったら、よくそれで宝石店の社長夫人が務まってきたわね。お客様に良い気持ちになっていただくのが接客の基本でしょう」
 いい、こんな風に言うのよ、と春太郎は美紀夫人の耳元に口を寄せる。春太郎が囁きかけるおぞましい言葉を耳にした美紀夫人は、まるで悪魔の囁きを振り払うかのように激しく頭を振る。
「そ、そんなこと、とても言えませんわ」
「言えないじゃ困るのよ」
 春太郎は急に凄んだ声を出す。
「ショーのスターに必要なものは一にお色気、二にお色気よ。こんなことくらいでためらうようじゃ先が思いやられるわ」
 小夜子や文夫との絡みは許してあげようと思ったけれど、奥様がそんなに聞き分けがないようじゃ考え直さなきゃいけないわねと春太郎が吐き捨てるように言う。すると美紀夫人は脅えた表情で「ま、待ってください」と哀願する。
「い、言いますわ……ですから、娘や息子と恐ろしい関係を結ばせるのは許して」
「それならさっさとするのよ。お客様たちはお待ちかねよ」
 春太郎はそう言うと美紀夫人の肉付きの良い太腿をピシャリと叩く。夫人は「うっ」と苦しげに呻くと観客たちの方に気弱な視線を向ける。
「お、お客さま……」
「もっと大きな声で言うのよ。社長夫人の貫禄を見せなさいよ」
 春太郎は怒声をあげると再び美紀夫人の太腿を叩く。白い内腿に赤い手形がくっきりと浮かび上がり、美紀夫人は自棄になったように声を張り上げる。
「お客様、いかがですか。今ご覧いただいているものが村瀬宝石店社長夫人、村瀬美紀のお、おマンコですわっ」
 美紀夫人が開き直ったようにそんな言葉を口にしたので、やくざたちは一瞬呆気にとられたような顔つきになったが、すぐに声を揃えてどっと笑いこける。
「よく見えているぜ、奥さん。立派なマンコだぜ」
「そうそう、社長夫人の貫禄十分だ」
 やくざたちのそんな卑猥なからかいの言葉を浴びた美紀夫人は、激しい羞恥と屈辱に顔を真っ赤に染める。
「ほらほら、そこで黙り込んじゃ駄目じゃショーのスターとは言えないわよ。もっともっとお色気を発揮してお客様を楽しませるのよ」
 春太郎はそう言うと美紀夫人の腰部の辺りをピシャリと叩く。
「自分に暗示をかけるのよ。奥様は私たちの手によってとんでもない淫らな女に改造されたの。もう今までの奥様じゃないのよ」
 春太郎は美紀夫人の耳元に口を寄せて囁きかける。
「以前の奥様ならこんな風に大股を開いて、女の恥ずかしいところを大勢の眼に晒すなんてとても考えられなかったでしょう」
 春太郎の囁きはまるで美紀夫人の脳髄にじわりと染みこんでくるかのようで、夫人は思考にぼんやりと霞のようなものがかかってくるのを感じ始める。
「そればかりか奥様はこの人たちの目の前で気までおやりになったのよ。こうなったらとても元に戻ることなんて出来ないわ」
 奥様はとんでもない淫らな女になったのよ。ね、わかるでしょうと春太郎に囁かれた美紀夫人は思わずこくりと頷く。
「わかったならもっと大胆に肢をお開きになって、奥様のご立派なものをもっと男たちに見せつけるのよ。さあ」
「わ、わかりましたわ」
 春太郎に急かされた美紀夫人は大きく頷くとさっと首を振り、観客たちにはっきりと顔を向けながら、開いた肢をさらに大きく割り開く。美紀夫人の大胆な行為に観客たちから歓声が上がる。
「ねえ、ねえ、お客様……見て……美紀のおマンコをはっきり見て」
 美紀夫人はそんな卑猥な言葉を吐きながら、逞しいばかりに張り出した腰部を蠱惑的にゆらゆらと揺らす。
「美紀のおマンコは上付きですか、それとも下付き? よくお調べになって教えて欲しいわ」
 美紀夫人の思わぬ痴態に有頂天になった男たちは、蟻が砂糖に群がるように夫人の腰部の周りに群がっていく。
「どれどれ」
 夫人の股間に顔を押し付けんばかりの姿勢で覗き込んだ南原組の木村が「上でも下でもねえ。ちょうど真ん中ぐらいだぜ」と言って笑う。
 血も凍るような羞恥をじっと耐えていた美紀夫人の太腿を春太郎がぴしゃりと叩き、「そこで黙り込んじゃ駄目じゃないの。もっと続けてお客様をモリモリ喜ばせるのよ」と催促する。
「は、はい」
 美紀夫人は再び頷くと、大きく開いた二肢の間に群がるように集まっている男たちにおずおずと顔を向ける。欲情にギラギラと光っている男たちの視線と美紀夫人の視線が交錯する。
(ああ……どうして……)
 男たちは自分のこんな醜い姿にギラギラと動物的な視線を向けてくるのだろう、と美紀夫人は思う。
 美紀夫人が夫の村瀬善吉と結婚したばかりの頃は、夫人も村瀬宝石店の四谷の本店で接客することも多かった。当時はその清楚な美貌が、売り物である宝石よりも輝いていると言われたもののである。
 美紀夫人の娘の小夜子が「ミス宝石」で一位になったのは名門、村瀬宝石店の令嬢であることによるものではなく、青葉学院に在学中の小夜子が父親の求めに応じて時折店頭に立つ姿が、往年の美紀夫人の艶姿を想起させるからと言われたこともある。
 そんな美紀夫人も近年は、夫が出席する政財界人が集う夫人同伴のパーティや海外からの賓客を接待する際に時たま同席するしか表に出る機会はなかった。
 美紀夫人を初めて見るものは、その年齢が信じられないほど若々しく美しいと賞賛してくれたり、時には娘の小夜子とは姉妹にしか見えないとまで言われることもあった。
 しかしながら自己評価が高くない美紀夫人はそれらが単なるお世辞に過ぎないと考えており、不惑の年を越えた自分が今さら男性を引きつけるなどと、考えたことがなかったのである。