「私、そんなこと出来ないって断ったんですが、どうしてもって言われたので」
「ぶったのかい」
「はい」
 桂子は頷く。
「最初は軽く叩いていたんですが、もっと強くって言われて、そのうちに私も本気になって、自分の手が痛くなって、ママのお尻も赤く腫れ上がるくらいに……」
 岡田、関口、石田の三人は次第に桂子の話に引き込まれていく。
「気づいたら、ママのあそこが……」
「あそこってどこだい」
 石田が間の抜けた質問をするが、桂子がさほど躊躇いなく「おマンコですわ」と答えたので、毒気を抜かれたような顔になる。
「その……おマンコがじっとりと濡れていたんです」
「そりゃ本当かい」
「はい」
 桂子は再び頷く。
「私がびっくりしていると、ママは静かに微笑みながら私に言いました。分かったでしょう、桂子さん。私はこんな女なのよ。だから、あなたは自分のせいで私が酷い目にあっていると気に病むことはないのよと」
「うーん」
 関口は腕組みをして唸る。
「それはやっぱり、静子夫人がお嬢さんをかばったんじゃないのかい」
「それは多少あると思いますけど、全然その気がない人が、お尻を叩かれただけでその……おマンコを濡らすでしょうか」
「そう言われてみたらそうだな」
 関口は岡田の方を見て「岡田さん、あんたはどう思う」と尋ねる。
「俺はいると思うね。うちにいる二人を見ると分かる」
「二人って、その老舗旅館の美人姉妹かい」
「ああ」
 岡田はグラスに残ったウィスキーの水割りをぐっと飲み干す。すかさず桂子がグラスを取り上げると、おかわりを作る。
「姉の方は目が不自由なんだが、その分他の感覚が鋭くなるみたいで、もともと感受性は抜群で、そっちの素質もあると睨んでいたらこれが大当たりだ。意外だったのは妹の方でね」
「妹というと、海外で美術を学んできたっていう……確か名前は」
「雅子」
 岡田は桂子からグラスを受け取ると、一口飲む。
「こっちが最初のうちは、ちょっと尻を撫でられただけで男を平手打ちにするようなじゃじゃ馬だったんだが、こっちがじっくり時間をかけて調教しているうちに、肌に縄をかけただけでマンコを濡らすようになったんだ」
「そりゃ本当かい」
「本当さ。それをこっちが指摘したら、悔しそうな顔で睨むのがまた堪らなくてね」
 岡田はそう言うと桂子が「京子さんもそうです」と口を挟む。
「京子って、山崎の助手の?」
「はい、京子さんも空手の達人で、そこはその、雅子さんという人と似ています。最初の頃、森田組の人たちに一番反発していたところも同じですし」
「それが今は、縄をかけられただけで身体を濡らすようになったって」
「それは本人が言ったのかい」
「いえ、鬼源さんです」
「鬼源って誰だっけ」
 関口が尋ねると岡田が
「鬼村源造、通称浅草の鬼源って言ったら、有名な女体調教師ですよ。さっきの芝居にも出演していたでしょう」
「ああ、それなら俺も聞いたことがある。あれが有名な鬼源か」
「鬼源がそう言っているのなら確かでしょうね」
 岡田は納得したように頷く。
「静子夫人や京子以外にその、マゾヒストっていうのはいるのかい」
 関口が尋ねる。
「ここにいる女の人は、みんな鬼源さんに調教されてきたので、もともとその気がなかった人も、ある程度はそうなってきているとは思います。でも、その中でも特にそう感じるのは小夜子さんです」
「小夜子ってのは村瀬宝石店の令嬢か」
「ちなみに小夜子さんは鬼源さんが言うには、ママと同じくらいの名器の持ち主だそうです」
「名器って、あそこの具合が良いってことか?」
「なんでも、巾着っていうそうです」
「巾着か、そりゃぜひ一度お相手してもらいたいもんだ」
 関口が興味津々といった風に頷く。
「後は、まだ良くわかりませんが珠江さんがそうかも知れないって、鬼源さんが言っていました」
「お嬢さんはそうじゃないのかい」
 岡田が尋ねる。
「私……ですか」
 桂子はなにか考えこむような風情になる。
「鬼源さんたちのお仕込みのせいか、正直言って私も多少、そういった風になることはあります。今もこうして裸同然の姿で皆さんと一緒にいることを意識すると、不思議に興奮して……」
 桂子はそう言うと恥ずかしげに頬を染める。
「でも、私はどちらかと言うとママとは反対だと思うんです」
「反対って言うと、虐める方かい」
「はい。鬼源さんたちの命令で、他の女の人達を責めることがあるんですが、そんな時、不思議なほど興奮してしまうんです」
「S側ってわけか。それで、お嬢さんと同じようなタイプの女は他にいるのかい」
「美津子さんがそうだと思います。あと、ひょっとしたら美沙江さん」
「美沙江って、千原流華道の家元令嬢だろう。あんなお人形さんみたいなお淑やかな娘がSだっていうのかい」
 関口が信じられないといった顔つきになる。
「まだ良くわかりませんが……珠江さんとコンビになっているところを見ると、そんな気がするんです」
「なるほどな」
 石田が頷く。
「ところでお嬢さん、今、興奮しているって言ったね」
「はい」
「それじゃちょっと、その証拠を見せてもらいたいんだが」
「分かりました」
 岡田の要望に桂子は素直に頷くとその場に立ち上がり、腰に巻かれた赤い褌をくるくると外す。無毛の恥丘が露わになったのを見た関口が「お嬢さんはパイパンなのかい」とからかう。
「いえ、剃っていただいたんです」
「いただいたって……自分からかい」
「はい」