「そりゃまたどうして」
「文夫さんとコンビを組むことになったんで、彼の身体に合わせてもらおうと思ったんです」
「文夫って、例の村瀬宝石店の?」
「はい」
 桂子は恥ずかしげに頷く。
「もうちょっと足を開いてくれ」
「はい」
 岡田の要求に、桂子は素直に伸びやかな両肢を開く。
 岡田は片手を桂子の股間に潜らせ、無毛の秘部をまさぐる。そこが確かにじっとりと潤っているのを確認すると、
「確かにお嬢さんもその気はあるようだな」
 と頷く。
 羞恥に頬を染める桂子に、関口が「俺にも確かめさせてくれよ」と声をかける。
「分かりました、どうぞ」
 関口の前に立ち、従順に腰部を突き出す桂子に岡田が尋ねる。
「ところで、文夫はまたどうしてそこのところを剃られたんだい」
「お姉さんの小夜子さんが剃られていたんで、それに合わせて剃られたって聞いています。でも、ここの人たちが奴隷に何かをするのには、特に理由なんかないんです」
 桂子は、岡田に羞恥の箇所を弄られながら答える。
「お嬢さんは自分から進んでそうされたって言ったよね」
「……文夫さんだけに恥ずかしい思いをさせたくなかったから……あ、そこは駄目」
 関口がぐっと手を伸ばし、桂子の双臀の狭間に秘められた菊蕾を指先で弄り始めたので、桂子は思わず身悶えする。
「いや、悪い、悪い」
 関口は笑いながら手を引っ込める。
「お嬢さんは文夫が好きなんだね」
 岡田の問いに桂子はこくりと頷く。
「それはこの屋敷に連れてこられてからのことかい」
「違います」
 桂子は首を振る。
「随分前から文夫さんは、小夜子さんと一緒に遠山の家に通って来ていたんです。小夜子さんはママから日本舞踊を、文夫さんはフランス語を習うために」
「随分前って、いつ頃だい」
「二年くらい前からです」
「成る程ね。それにしても日本舞踊にフランス語か。静子夫人は聞きしに勝る教養人だな」
 関口が感心したようにうなる。
「それが今じゃ、森田組お抱えの実演スターって訳か」
「そいつは他の女たちも同じようなもんですよ。そこが森田組の強みなんだが」
 岡田がそう応じると桂子が「私は落ちこぼれなんです。ママや小夜子さんみたいな教養はないし。美津子さんみたいに清純でもありません」と自嘲的につぶやく。
「小夜子や文夫と一緒に、静子夫人から色々と教えてもらえば良かったじゃないか。そうすれば文夫と近づくきっかけにもなっただろうし。遠山財閥の令嬢と村瀬宝石店の一人息子、なかなかお似合いだと思うがね」
「そうなんですが、その時はどうしてもママに対してこだわりがあって、素直になれませんでした。それに、仮に私が文夫さんに近づこうとしても、結果的には恥をかいたと思います」
「どうしてだい」
「私、文夫さんより三つも年上ですし」
「それくらいの年の差の姐さん女房は珍しくないぜ」
「でも……文夫さんには当時から、美津子さんという恋人がいましたから」
「ふうん。それじゃどこまでいってもお嬢さんの片思いってやつか」
 関口が納得したように頷く。
「ですけど、この田代屋敷では文夫さんは私の夫なのです」
「夫?」
 関口が訝しげな声を出す。
「はい、鬼源さんがそう決めましたから。文夫さんのコンビの相手は私だと」
「しかし、さっきの舞台では美津子と組まされていたようだが」
「それはお仕事ですから」
 桂子はことさらに冷静さを保ちながら答える。
「文夫さんはこの田代屋敷では数少ない男奴隷なので、実演ショーや映画で他の女優と組むことがあるのは仕方がありません。ですけど、お仕事が終われば私の所に帰ってくるのです。それが決まりです」
 すると桂子は結局、この田代屋敷に連れてこられることで、文夫に対する恋心を成就させたことになる。桂子が他の奴隷たちほどここの生活を嫌がっていないのは、そういった理由からだろうと岡田は考える。
 これまで岡田は、このような境遇に陥れられた女が、そこの生活に悦びを見出すことなど想像もしていなかったので、目から鱗が落ちたような思いになっている。
 月影荘の雪路と雅子も、いずれは奴隷としての生活に慣れ、そこに悦びを見出すようになるのだろうかと岡田は空想する。
「あら、皆さん、まだここで飲んでいたの」
 ホームバーの扉が開き、大塚順子が顔を出す。
「良かったら私の部屋で飲まない」
 順子の誘いに三人の男たちは顔を見合わせる。
「酒の肴は千原流華道の家元夫人と令嬢よ」
「千原流の?」
 関口は思わず椅子から腰を浮かす。
「そうよ。絹代夫人と美沙江」
 順子はニヤリと笑う。
「これから家元夫人と令嬢の断髪式を執り行いたいんだけど、ぜひ立ち合って欲しいの。いかが」
「そういうことなら参加しないわけには行かないな」
 岡田と関口は同時に立ち上がる。
「このお嬢さんはどうします」
 石田が尋ねると桂子は「私、皆さんのお相手をするように申しつかっていますから、もし差し支えなければご一緒させていただきます」と言って、順子の方を見る。
「いいわ。こっちも見物人は多いほど良いから、お嬢さんもいらっっしゃいよ」
「分かりました」
 桂子は頷いて腰を上げるのだった。

 大塚順子にあてがわれている二階の菊の間の床柱には、藤色の湯文字一枚のみを許された絹代夫人と美沙江が、並んで立位で縛り付けられている。
 その前には千原家の女中であった直子と友子が、畳の上に敷いたタオルの上に剃刀や刷毛を並べている。
 部屋に入った岡田たちは、部屋の隅で不動明王の刺青を浮かび上がらせた赤銅色の身体に六尺褌のみを身につけた時造が胡座をかき、茶碗酒を飲んでいるのに気づきぎょっとする。
「こりゃどうも」
 岡田や関口がぺこりと頭を下げると、時造はニヤリと笑って鷹揚に頷く。