「お、お父さん、仕事が忙しいなんて言っているけど、本当のところはどうなのか、あ、怪しいものだわ。わ、若い秘書と浮気をしているかも知れないじゃない」
 美紀夫人が続けてそんな台詞まで口にすると、和枝たちはさらに甲高い声で笑いこけるのだ。
(ああ……息子に対してなんてことを……し、死んでしまいたい)
 美紀夫人はそんな風にまで思い詰めるのだったが、シスターボーイたちの要求を拒絶すれば、自分の苦悩は小夜子が背負うことになるのだと考えると、従わざるを得ないのだ。
「ふ、文夫さん、あなたならどうかしら。母さんの裸……ま、まだ、若い女の子と比べても魅力的かしら。か、感想を聞かせて欲しいわ」
 美紀夫人は文夫をじっと見つめながら、もどかしげに裸身をくねらせる。文夫もまた美紀夫人に哀しげな視線を注いでいたが、その悲痛な表情とは裏腹に、股間の逸物はますます力を帯びて高々と屹立を示しているのだ。
「あれだけ見事な身体だと、母親だと言うよりも女だっていう感覚が勝るみたいね」
「男の哀しい本能ってところね。でも、なんだか可愛いわ」
 葉子と和枝は、獣欲に破れた文夫の姿を指さしながら、ケラケラと笑い合っている。
 美紀夫人は、そんな文夫の姿に痛ましげな視線を向けていたが、やがて顔を逸らし、春太郎に呼びかける。
「春太郎さん、お願い」
「何かしら、奥様」
「美紀の……も、ものを開いて欲しいの」
「あら、奥様のものって何のことかしら」
「い、意地悪……お、お分かりでしょう」
 美紀夫人は顔を赤らめる。そんな夫人の表情や仕草からは、母親としてではなく、一人の女として若い男の前に立つ含羞が窺え、二人のシスターボーイはこの上流の母と息子が、徐々に思うつぼには待って来たことを察知するのだった。
「さあ、何のことかしら。はっきり言ってもらわないと分からないわ」
「酷いわ、息子の前で美紀にそんなことまで言わせようというのね」
 美紀夫人はさも切なげな声でそう言うと、「み、美紀のおマンコよ。美紀のおマンコを開いて欲しいの」とあからさまな言葉を口にする。
 それを聞いた和枝や葉子はキャーッと黄色い声を上げてばやし立てる。
「聞いた、葉子。おマンコを開いてだって」
「虫も殺さないような顔をして、よくそんな淫らな言葉を口にするわね。それも息子の前で」
 女たちは美紀夫人にそんな揶揄の言葉をいっせいに浴びせるのだった。
「ご婦人たちは聞こえたみたいだけど、私にはよく聞こえなかったわ」
 春太郎はけろりとした顔つきでそう言うと、美紀夫人に向かって「何を開いて欲しいの、奥様。もう一度言いなさい」と命じる。
 美紀夫人は恨みがましい表情を春太郎に向けながら「……お、おマンコです」と答える。
「声が小さいわ。もう一度言いなさい」
「おマンコよ、おマンコを開いて欲しいの」
 夫人は開き直ったようにそう口にすると、声を忍ばせて悔し泣きを始める。
「そんなに自棄にならなくても良いじゃない。今度はよく聞こえたわ」
 春太郎はわざとらしく優しい声を出しながら、夫人の肩をさする。
「そうやって淫らな言葉を口にする度に、ショーのスターとしての度胸がついて行くのよ。そうすればここでの暮らしも、段々辛くなくなっていくわ」
「そうそう、静子夫人なんか鬼源さんや私たちにみっちりと仕込まれたおかげで、すっかり恥知らずの女になって、お客様の前で排泄することにまで悦びを感じるようになったのよ」
 春太郎と夏次郎は交互に、因果を含めるように美紀夫人に対して囁きかける。
「奥様も一刻も早くそんな境地に達することよ、そうなれば奥様は、小夜子さんや文夫さんの盾になることも出来るのよ」
 春太郎はそれが最後の殺し文句であるかのように夫人の耳元に囁くのだ。
 自分が悪鬼たちの思惑に乗ることで、小夜子や文夫が救われるわけではない。むしろ自分がいることによって二人がより辛い目に遭うことになるともいえるのだ。
「何事も気持ちの持ちようよ。奥様」
 春太郎は夫人の内心を見透かしたかのように囁く。
「二度と会うことも出来なかったかも知れない娘さんに息子さんと、こうやって一緒に暮らすことが出来るのよ。奥様が親しくお付き合いしていた静子夫人や絹代夫人とも一緒に。外の世界でいるよりは、ずっと楽しいじゃない」
 それはそうかも知れない──美紀夫人は悩乱した頭で考える。
 小夜子と文夫が失踪して以来、美紀夫人はそれこそ地獄のような懊悩の中にあった。絹代夫人とともに囮となって、田代屋敷に潜入するなどと言う大胆な行動に夫人を駆り立てたのも、小夜子や文夫と二度と会えないのではないかという身を焼かれるような焦燥からだった。
 その生き地獄のような日々を思うと、少なくとも二人の無事を確認することが出来る今の時間はよりましだとも思えるのだ。
「納得してくれるわね、どうなの。奥様」
 春太郎が念を押すように迫ると、美紀夫人はすすり上げながら「わ、分かりました。ど、努力いたします」と返事をするのだった。
「努力いたします、は良かったわね」
 春太郎と夏次郎は顔を見合わせて苦笑する。
「でもまあ、奥様が納得してくれて良かったわ。それじゃ続きをするわよ」
 春太郎に目配せされた夏次郎は、にやりと笑って頷くと腰を屈め、美紀夫人の秘奥に指をかけるとぐっと割り開く。
「ああっ」
 女の秘められた部分が、血を分けた息子の眼前にあからさまなまでに露呈されたことを知覚した美紀夫人は、悲鳴を上げて裸身を悶えさせる。
「こらこら、そんなに暴れちゃ駄目よ、奥様」
「そうよ、努力するんじゃなかったの」
 春太郎と夏次郎は苦笑しながら、激しく身悶える美紀夫人をたしなめる。やがて諦めたように動きを止めた夫人を、春太郎は背後から抱きしめながらその豊かな乳房をやわやわと揉み上げる。
「そうそう、いい子ね。おとなしくするのよ」
 春太郎はクスクス笑いながら美紀夫人の耳元に、新たな台詞を吹き込む。
「ああ……そ、そんなこと……言えません」
 なよなよと首を振る美紀夫人に春太郎は「言えないじゃすまないわよ。奥様は静子夫人のような淫婦になるよう、努力するんでしょう」
 そんなことが出来るのだろうか──美紀夫人の脳裏に、いつか見せられた静子夫人の淫らな写真を見せられた記憶が蘇る。
 汗みどろの素っ裸で髪を振り乱し、痴呆めいた表情をした大男と激しく絡み合っている静子夫人。屈強な二人の黒人に前後から貫かれ、白磁の裸身を弓なりに反らせている静子夫人。京子という名のグラマラスな美女と双頭の張形でつながり合い、腰を振り立てている静子夫人──。
 どの写真からも窺えるのは、被写体となっている静子夫人の顔に浮かんでいるのは、明らかな歓喜の表情だった。そう、女優のような美貌と日本人離れした見事な肢体、そしてその貞淑と聡明さで知られた静子夫人は、少なくとも写真の中では完全な淫婦に変貌していたのだ。