26.激しい調教(7)

「ところでお嬢様はどうしてお仕置きされることになったの? 詳しく教えてちょうだい」
順子は素っ裸の美沙江につかつかと近寄ると顎に手をかけて顔を上げさせる。美沙江は思わず赤く染まった顔を順子から逸らす。
「あら、目を逸らせちゃ駄目よ。ちゃんとこっちを向きながら教えるのよ」
美沙江は口惜しげな目を順子に向ける。
「み、美沙江の……緊め具合が良くなかったからです」
美沙江は口ごもりながら順子に告げる。
「緊め具合ですって? 何のことかしら? どこの緊め具合が悪かったの」
「美沙江、大塚先生にちゃんと教えるのよ」
マリに尻の肉をつねられ、美沙江は目尻から一筋涙を流す。
「み、美沙江のお、おマンコの緊め具合が――」
「まあ、お嬢さん、なんてはしたない!」
順子がわざとらしく大声を上げる。
「千原流の家元がおマンコやなんて」
「まったく、恥ずかしくないんかいな?」
順子の声に煽られたように、友子と直江がわっとはやしたてる。
あまりの羞恥と屈辱に肩を震わせて鳴咽する素っ裸の美沙江を見ながら順子は恍惚とした快感を覚える。
「そんな卑猥な言葉を平気に口にするなんて、お嬢様は一体どんな躾を受けたのかしら。ぜひ一度親の顔が見てみたいわ」
「……」
順子の言葉のいたぶりに、美沙江は死んだ気になって耐えている。
「そういえば私、お嬢様のお父様の千原元康先生を見たことがないわ。噂ではご病気が重くてお外へ出れないんですってね」
じっと口をつぐんでいる美沙江をよそに、順子はぺらぺらと話し続ける。
「お母様もそんなお父様につきっきりらしいじゃない。お嬢様の躾がおろそかになるのも仕方がないってことかしら」
「ち、父や母を侮辱しないでください」
「あら、全部本当のことよ」
美沙江は思わず反撥するが、順子は一向に気に止める様子もない。
「それで、お嬢様が19歳の若さでで千原流の名代を務め、それを折原珠江夫人が支えて来たってわけね。だけどそのお嬢様も折原夫人も、今や素っ裸の女奴隷。家元のお父様は再起不能。伝統ある千原流もいよいよお嬢様の代でおしまいってことね」
順子の残酷な言葉に美沙江はついに声を上げて泣き出す。そんな美沙江に桂子と美津子が痛ましげな視線を向ける。
大塚順子の珠江や美沙江に対するいたぶりの執拗さには、桂子は病的なものすら感じる。それは千代の静子に対するねちっこい責めと共通するものがある。
桂子は時折、千代の静子に対する感情は屈折した愛情ではないかと思うことがある。千代の指示で酔いどれ医師の山内の手によって人工授精まで施された静子――それは、千代が自らの子供を静子に産ませたかったからではないかとさえ思うのだ。
最近、葉桜団の義子やマリは、銀子や朱美がいない時は桂子に対して話しかけてくることがある。桂子は葉桜団の団長であり、団の掟を破ったことで銀子や朱美に粛正されることになったが、桂子に代わって団長になった銀子や、その片腕の副団長の朱美以外は、もともと桂子に対してそれほど悪感情を抱いていない。
むしろ最近森田組に対して協力的な桂子には、徐々に警戒の目も弱くなっているのが実情である。
義子やマリの話によると、最近の千代は人工授精が成功し、ほぼ確実に妊娠したと思われる静子の元へ毎日のように通い、早々と買い込んだベビー服や玩具を静子の前に並べては長々と話し込んでいるという。
「あの千代夫人が静子と仲良く話し込んでいるんだから驚いたわ」
マリは調教の合間に桂子に対してそんな風に語りかけた。それを聞いた桂子は自分の想像がどうやら正しかったことを知ると共に、なんとも複雑な気分になったものである。
静子夫人はこの地獄屋敷の中で子を宿すことを自分の運命として受け入れ、まだ見ぬ子に愛情を注ごうとしている――。
(やはり私は、あの人にとって娘ではなかったのか)
桂子は、自分の複雑な感情がいずれ産まれてくるであろう静子夫人の子供に対する嫉妬だということまでは、まだ気づいていなかった。

一方、順子たちの言葉責めを受けている美沙江は胸の中で自分の守護神に呼びかけるように、珠江の名を呼ぶ。
(ああ……おば様……美沙江を助けて)
父の元康の介護で手が離せない母に代わって美沙江をまるで年の離れた妹――いや、むしろ母のように愛情を注ぎ、守って来た珠江夫人。珠江が夫の源一郎との間に子供が出来ないことがそんな二人の関係をいっそう強めたのかもしれない。
しかし今、美沙江を常に守ってきた珠江はチンピラ部屋に幽閉され、野蛮な男たちに日夜蹂躙されているという。今や美沙江は孤立無援で順子たちに対峙しなければならなかった。
「それじゃあお嬢様、おマンコの緊まりが悪いお嬢様にたっぷりお仕置きしてあげるわ。いいわね」
「は、はい――」
拒絶すればするほど加えられる責めは大きくなることを美沙江はわかっている。どんなおぞましい責めでも悦んで甘受するほかはないのだ。
「お仕置きは何がいいかしら――そうね、お嬢様のお通じの具合はどうなの?」
「えっ……」
突然順子にそんなことを聞かれた義子は一瞬面食らう。
「そうでんな、少し便秘気味やけど。まあ、普通こんなところへ誘拐されたら多少はそんな風に――」
「それはいけないわ」
順子は大袈裟に驚き、義子の言葉を途中で遮るように声を上げる。
「お嬢様ったら、便秘なの?」
順子が美沙江に尋ねると、美沙江は真っ赤に頬を染めてうつむく。友子と直江がくすくすと声を上げて笑う。
「ちゃんと答えなさい。どうなの、便秘なの?」
「はい……」
蚊の鳴くような声で美沙江が返事をすると、友子と直江の笑い声が一層高まる。
「便秘は健康によくないし、美容の大敵よ。ちょうどいいわ。お仕置きとして浣腸をしてあげるわ。お嬢様の便秘も解消出来るし」
「ああ、そんな……」
顔を上げた美沙江の顔は涙で濡れている。
「そんなに嫌がらんでええのよ、お嬢さん」
「そうや、お付きの女中やった私たちが、優しく浣腸してあげるわ」
友子と直江がそんなからかいの言葉を浴びせながら美沙江の柔らかい内腿を抓ったり、乳首を引っ張ったりする。
上流の世界で育った美沙江にとって最もおぞましい責めを選ぶ順子たちの残酷さ。美沙江はついに根負けしたように、激しくすすり上げながら順子にいう。
「お、大塚先生、み、美沙江のお尻にお浣腸のお仕置きをたっぷりして下さい――」
そんな屈辱の言葉を口にした美沙江は、再びわっと号泣するのだった。

25.激しい調教(6)

「いえ……すみません」
 桂子は首を振る。
 マリの言わんとすることは桂子には分かっている。田代屋敷の奴隷の務めは、秘密ショーや映画に出演したり、卑猥な写真のモデルになったりすることだけではない。それよりも重要な務め――それは、田代や森田のために娼婦として客を取ることである。
 身内一千人と言われる関西の暴力団の大親分、岩崎大五郎がこの田代屋敷を訪れた時は、静子夫人だけでなく桂子、京子も岩崎組の幹部たちを娼婦として接待した。また小夜子も、田代や森田に大きな利益をもたらした津村義雄にその肉体を捧げさせられたし、美津子も京子とともについ最近、義雄の弟の清次や、その仲間の三郎、五郎の嬲りものになったばかりである。
 田代屋敷の賓客にとっては森田組の企画する秘密ショーは、そういった後の楽しみの興奮剤のようなものである。
 そんな娼婦としての務めをこれまでほぼ一手に引き受けて来たのが静子夫人である。しかし夫人は千代のたっての希望もあって人工授精を施され、安定期に入るまでは客を取ることは出来ない。また、これまでのように秘密ショーに出演し、バナナ切りなどの珍芸を披露することも難しくなる。
 そこで静子夫人の穴を生めるために白羽の矢が立ったのがニューフェイスの珠江夫人である。医学博士の妻で京都の千原流華道の後援会長という珠江の経歴は、遠山財閥の社長夫人である静子に決して見劣りのするものではない。また、フランス留学の経験もあり、どちらかというと洋風の華やかさを持つ静子に対して、いかにも淑やかな日本美人といった珠江には別の魅力があった。
 京子も小夜子もそれぞれ魅力はあったが、やはり人妻である静子や珠江に比べるとどこか貫禄のようなものが足りない。そう考えた鬼源は珠江夫人を中心にショーのメニューを組み直し、夫人を賓客への接待の主役にしようとしたのだ。それが今回の人事異動の背景である。
「珠江夫人はこれから、静子夫人に替わってどんどん客を取ってもらうことになるんや。おば様はそのための猛特訓中という訳や。わかったか?」
 マリの言葉を美沙江は怪訝そうな顔付きで聞いている。
「客を取るって……お客様を接待することですか?」
「まったく調子が狂うわ」
 美沙江の問いに義子はマリと顔を見合わせて苦笑する。
「接待と言ったら接待だけど、どう説明したらいいのかしら」
「こういった箱入り娘にははっきり言わんとわからんやろ。おば様は田代社長や森田親分が指定したお客とセックスすることになるんや。わかったか? お嬢さん」
 義子の言葉を聞いた美沙江は心臓が止まるような衝撃を受ける。
「そうは言っても珠江夫人は奴隷の中では唯一の三十代だし、これから森田組のトップスターである静子夫人の域に達するためにはかなり時間がかかると鬼源さんは考えているみたいだわ」
「それを補うためには京子と美津子、そして小夜子と文夫といった近親コンビによってショーを盛り上げ、珠江夫人と同じニューフェイスのお嬢様を早期に戦力化することが重要なんや。わかるか?」
 美沙江はマリと義子の恐ろしい言葉に失神しそうな恐怖を覚える。
「まあお嬢さんは今はそんなことは気にしないで、お道具で膣圧計を締め付けることだけを考えていればいいのよ」
 マリはそう言うと、おぞましい器具をしっかり呑み込んだ美沙江の下腹部のあたりをポン、ポンと叩く。
「あんたたちはもう、その女の武器を使って生きていくしかないんや。さあ、誰が一番お道具のできがええか競争や」
「さっきも言ったけど、一番出来の悪かった奴隷にはきついお仕置きが待っているわよ」
 義子とマリはそんな風に三人に嘲笑を浴びせると、「それじゃいくわよ。緊め方始めっ!」と声をかける。その声を合図に桂子、美津子、そして美沙江の三人の美女は、滑稽かつ酸鼻な闘争を開始するのだった。

 三人の美女の必死の闘争は終わった。女奴隷としての経験の長い桂子や美津子にとって、美沙江はまだまだ敵ではなく、測定の結果は桂子、美津子、そして大分離れて美沙江の順となった。
「桂子と美津子はだいぶコツを覚えてきた様や。それに比べて美沙江はまだまだやな」
 三つの膣圧計のメーターを見比べながら、義子がそう言うと、桂子と美津子は白い頬を真っ赤に染めて眼を伏せる。
 美津子は隣に縛られている美沙江をちらと眺めた。透き通るような白い肌を持つ京美人の美沙江は、19歳の若さで有名な華道の家元だったという。自分が勝ったために、この世間の汚れとは隔絶して育てられたような繊細な美女はお仕置きと称しておぞましい責めを受けることになるだろう。そう考えると美津子の胸の中に自責の念と、美沙江に対する同情が生まれてくる。
(……どうにもならないことよ。この地獄屋敷では同情したってなんにもならないわ)
 美津子は自分に言い聞かせるように、胸の中でそっとつぶやいた。
 悪鬼たちは奴隷同士の同情に付け込み、苛酷な責めを加えてくる。静子夫人も京子も、桂子や小夜子、美津子といった他の奴隷たちをかばおうとしたが、その自己犠牲の精神はなんら事態の改善には役立たなかった。現に姉の京子が身を挺して妹を庇おうとするたびに、美津子はより深い陥穽に落ちることになったのだ。
 地獄のような田代屋敷では、それぞれが自ら悪魔や鬼のような嗜虐者達と対決し、彼らの執拗な責めを悦びに変える強靭な精神と肉体を持つしかないのだ。
「約束どおり美沙江はお仕置きや」
 がくりと首をたれる美沙江に追い打ちをかけるようにマリが言い放つ。
「大塚先生がたっぷりお仕置きしてくれるわよ」
 大塚順子の名前を聞いて美沙江ははっと顔を上げた。
 湖月流華道の家元で、自分と珠江の誘拐を森田組に依頼した張本人の順子。美沙江にとっては最も憎むべき存在である。
 森田組のやくざ達も、葉桜団のズベ公達も、美沙江が順子に責められるのを最もつらく感じるのを良く分かっているので、ことさらに順子に美沙江の調教を任せようとするのだった。
「いや、あの人はいや……」
 美沙江は首を振るが、すでにマリに室内電話で呼ばれていた順子が、やがて土蔵の扉を叩く。
「ふふふ。美沙江さん。お仕置きですって?」
 扉が開き、派手な色使いのサリーを身につけ、ターバンのように頭にスカーフを巻いた大塚順子が登場する。
 義子とマリは順子の珍妙な姿を見て笑いをかみ殺す。順子は前衛華道の家元というが、義子とマリはその奇怪なセンスを見るたびに、順子が自称するような芸術家だとはとても信じられないのだ。
「あれ? 友子と直江やないか」
 順子の後ろに隠れるように、友子と直江が立っているのを義子が見とがめる。
「あんたら、謹慎中やなかったんか」
 友子と直江はばつが悪そうに首をすくめる。酔っ払った友子と直江が歌舞伎町の終夜営業の喫茶店で男たちといざこざを起したことで、二人は銀子からしばらくの間謹慎を言い渡されていたのだった。
「調教の人手が足らないんでしょう? 見逃してちょうだい。銀子さんには私が後からよくお話しておくわ」
 義子は仕方がないといった顔つきでうなずくマリを見ると「大塚先生にそう言われると断れんな」と答える。友子と直江の顔がぱっと輝く。

24.激しい調教(5)

「教えてほしかったらお道具をお腹の中にしっかりと呑み込むんや」
「ああ……」
美津子は切羽詰まったような声を出すと、突然大胆に身体をぐっと反らし、その部分を義子につき出すようにする。すると美津子の女の箇所は、まるで生き物のように膣圧計を呑み込んでいくのだ。
「こりゃ驚いた」
義子はそんな美津子の技に目を見張る。
「いつの間にか美津子も成長したのね。大したものだわ」
マリは笑いながら美津子の乳房を揉みほぐす。美津子は「ああ……」と切なげに悶えながら、身体をくねらせる。
「の、呑み込みましたわ。ですから、文夫さんのことを……」
「ああ、そやったな」
義子はわざとらしく頷く。
「文夫にもあんたらと同じく人事異動があったんや。これまでの桂子とのコンビは解消し、新しいパートナーとポルノショーのコンビを組む」
「パートナー……いったい誰ですか?」
少なくともここにいる3人ではなさそうだ。静子夫人は人工授精を受けたそうだから違うとして、美沙江とコンビを組んでいた珠江夫人か――。
それとも姉の京子か。美津子の頭が嫉妬で熱くなる。
(もし姉さんが文夫さんとコンビを組むことになったら――許せない)
父母を早く失った美津子にとって五つ違いの姉の京子はずっと親代わりであった。夕霧女子高校に入学することができたのも、美津子の成績が抜群だったこともあるが、京子が大学在学中から探偵事務所助手のアルバイトでかなりのお金を稼いでいたおかげでもある。
田代屋敷に誘拐されてからも姉の京子が自らの身体を張って美津子を守ろうとして来たのは事実である。しかしながら悪鬼たちの狡智は常に京子のそんな思惑を上回り、京子の抵抗が空しく失敗するたびに、美津子の運命は結果として悪化の一途を辿ったのだ。
美津子は今や京子に対して愛憎半ばした複雑な感情を抱くに至っている。それは桂子が、何かにつけて自分を守ろうとしてくれた静子夫人に対して軽蔑めいた思いを向けているのに似ている。遅い反抗期が田代屋敷の美津子にも訪れたようなものだが、美津子は自分の醜い感情を持て余してもいた。
「文夫と新しくコンビを組むのは、お姉ちゃんの小夜子や」
美沙江の前に座り込み、膣圧計を操作している義子の言葉を聞いた美津子は衝撃に息を呑む。
「な、なんですって……」
腰部をうねらせながら膣圧計を緊め付けていた桂子も思わず身体の動きを止める。
「ち、血の繋がった姉と弟をコンビにしようというのですか……」
「何言ってるの。美津子と京子だって血の繋がった姉と妹じゃない」
マリが美沙江の乳首をくすぐり、うなじに軽い接吻を施しながらそう言う。
「で、でも……」
美津子は道具を使って姉の京子とからませれるうちに思わず真剣な気持ちになることもあったが、真性の同性愛者ではないため、たとえば文夫に対する感情と同じものを姉に対して抱くことはなかったし、それは恐らく今後も変わらないだろう。
それに女同士のコンビと、男と女のコンビでは違う。初めての時は身体に棒を呑みこまされたような痛みしか感じず、あっという間に終わってしまった文夫との行為――それは不思議なことに、回を重ねるうちに美津子に深い陶酔と、狂おしいばかりの快感を与えることになった。
愛する男と肉と肉で繋がっている――それは人間の本能である性欲に直接響く満足感であり、他のどんな行為でも得られない深い悦びを美津子に与えた。そして文夫の精の迸りを子宮に浴びた時、たとえこの地獄の底であっても、文夫の子を産みたいと真剣に願ったほどである。
しかし悪鬼たちはそんな美津子にとってかけがえのない相手である文夫を、実の姉である小夜子とコンビを組ませるようというのだ。
美津子にとって恋人の姉である小夜子とは、この地獄屋敷に捕らわれる前も何度か会ったことがある。両親を早く失い、その後は姉の京子と二人で生きて来た美津子にとって、村瀬宝石店の社長令嬢で音楽コンクールの優勝歴もあり、またミス宝石にも選ばれた才色兼備の小夜子は眩しい存在だった。
しかし小夜子は、そんな気後れを吹き飛ばすような気さくさで美津子と接してくれた。
「私、こう見えても結構不良なの。美津子さん、驚かないでね」
美津子は、文夫と三人で青山の喫茶店でお茶を飲んでいた時、ハンドバッグから煙草を取り出し、悪戯っぽい視線を美津子に投げかけた小夜子のことを思い出す。
「でも、弟は私と違って堅物だから心配いらないわ」
小夜子はそう言いながら柔らかい笑みを、隣に座る文夫に向ける。
「美津子さんなら文夫とはお似合いだわ。美津子さん、弟のことをよろしくお願いします」
「そんな……」
そう言って小夜子が頭を下げると美津子は顔を真っ赤にしながら手を振ったものだ。そんな光景を美津子は昨日のことのように思い出す。
映画女優のような華やかな美貌を持つ小夜子と、ギリシャ神話に登場する美青年のような文夫、美貌、知性、そして環境とすべてに恵まれた姉弟が、おぞましいポルノショーのコンビを組まされるというのだ。
「まあ、鬼源さんも当分はあの二人には本番行為はさせんというてたから、そんなに不安そうな顔をせんでもええ。実の姉弟の間に子供が生まれたらややこしすぎるからな」
義子はニヤニヤ笑いながら美津子の顔を見る。
「でも、昔の皇族なんかには、特に珍しくなかったとも言うわよ」
「マリはなかなか物知りやな」
義子とマリはそう言いながら笑い合う。
「まあ、あんたたちはそんなことは気にせんでもええ。奴隷同士、それぞれコンビの相手が決まったんやから、しっかりお稽古に励むんや」
美沙江に膣圧計を装填し終えた義子はそう言い放つと、改めて三人の美女に言い放つ。
その時、おぞましい責め具を取り付けられ、屈辱と不快感に身悶えしていた美沙江が口を開く。
「おば様は……珠江おば様はどうされているのですか」
「ああ、珠江か」
義子はマリと顔を見合わせ、ぷっと吹き出す。
「もう2日になるかしら」
「いや、3日目や」
そんなことを言い合うマリと義子に、美沙江は不安そうな目を向ける。
「珠江夫人はここ何日かチンピラ部屋に浸けられて、若い男たちとセックス三昧や」
「え、ええっ」
美沙江は驚愕に目を見開く。
「な、何てことを……おば様にはご主人がいらっしゃるのに……」
「何を寝ぼけたことをいっているの。これだからお嬢様育ちは困るわ」
マリはうんざりした声を上げる。
「まさかお嬢様は奴隷のお勤めが、お道具を使って悪戯されたり、女同士でレズショーを見せるだけだとは思っていないわよね?」
美沙江が硬い表情を見せているのを見たマリは桂子と美津子の方を見る。
「あんたたち、ここ何日か同じ檻に入れておいてあげたけど、その間にこのお嬢様に教えてあげなかったの? 美津子はともかく、桂子はもう経験もあるでしょう」

23.激しい調教(4)

 田代屋敷の庭、竹藪の中にある土蔵は鬼源の指示によって改造を施され、秘密ショーの会場となっている。その土蔵の舞台の上では遠山桂子、野島美津子、千原美沙江の三人が緊縛された裸身を立位で並べらていた。
 桂子は21歳、美津子は18歳、そして美沙江は19歳である。31歳の折原珠江と26歳の遠山静子が年長組、23歳の京子と22歳の小夜子が中堅とすると桂子以下の3人はいわば森田組の美しい女奴隷の若手組といってよい。
「すっかり待たせてごめんね。奴隷が多くなりすぎて調教の手が足らないんだよ」
 葉桜団の義子とマリが笑いながら土蔵に入ってくると、それまでじっと項垂れていた三人の美女たちは、はっと顔を上げる。
「しかし壮観や。森田組所属ポルノスターのフレッシュトリオが勢揃い、ってところやな」
 手に大きな鞄を提げた義子が三人の裸身を比較するように眺めながら嘲笑する。
 桂子の弾力のあるピチピチした若鮎のような裸身、美津子の未だ幼さが残る清純な裸身、美沙江の細い線で囲まれた優雅な裸身、いずれも若々しい魅力と新鮮な色気に満ちている。
 流行の衣服を身に纏って街を歩けば、3人とも若い男の熱い視線と同世代の女の嫉妬の眼差しを集めるに違いない容姿の持ち主だが、今は彼女たちの美貌も、優美な裸身も、ただこの地獄のような田代屋敷の悪人、悪女たちを楽しませるだけにだけ存在するといって良い。
 いや、そればかりではない。彼女たちをモデルにした卑猥な秘密写真や8ミリ映画は、森田組やその友好関係にある熊沢組他の暴力団の手によって、アンダーグラウンドの世界で大量にばらまかれているのだ。
 遠山財閥の令嬢であった桂子、名門の夕霧女子高の生徒であった美津子、千原流華道の家元であった美沙江。いずれも輝かしい経歴を持った3人の美女はその肉体を蹂躪されただけでなく、社会的な地位も、そして未来への無限の可能性までも奪われてしまったのだ。
「桂子、あんたと文夫のからみの映画はえらい評判やそうや」
 義子の言葉に桂子は思わず頬を薄赤く染め、恥ずかしげに眼を伏せる。
 同時に美津子も悲しげに目を背ける。美津子は恋人であった村瀬文夫と組まされたコンビを強引に解消させられ、新たに桂子と文夫のコンビが誕生したのだ。
 美津子の胸中には悲しみと同時に激しい嫉妬の感情がある。すべての希望が失われたこの田代屋敷の生活で、美津子のたった一つの安らぎが恋人の文夫とともに過ごす時間だったのである。
 文夫と一緒ならどこまでもこの地獄を耐えていける。そんな美津子にとっての唯一の生きる張りさえが悪鬼たちによって奪われたのである。
「美津子と京子のレズの秘密写真も大変な売れ行きよ」
 マリがガムをクチャクチャ噛みながら美津子の顎に手をかけ、追い打ちをかけるように言う。
「美津子も、文夫のことはいい加減に忘れてもらわないと困るわ。あんたの新しい恋人は京子なのよ」
 マリの言葉に美津子は口惜しげに唇をかむ。
 桂子に文夫を奪われた美津子だが、再び文夫をその手に取り戻すことを諦めていない。文夫こそ美津子にとって唯一の生きる希望なのだ。
 しかし、血を分けた姉妹で変質的な関係に落とされた自分のことを、文夫と再会した時にどう言い訳をしたら良いのか。
「美沙江と珠江奥様のレズ写真もなかなか評判がええみたいや」
 義子の声に今度は美沙江が羞恥に表情を歪める。千原流華道の後援会長であり、姉のように慕っていた美しい珠江と強制された屈辱と羞恥の行為、あの時の写真がすでに世の中にばらまかれている。もうこれで自分は二度と陽のあたる場所を歩くことは出来ないだろう。
「ところで、今回奴隷の間でちょっとした人事異動があったから、連絡しておくわ」
 マリがポケットから一枚の紙を取り出す。
「えーと、なになに……まず、遠山桂子」
「名前を呼ばれたらハイと返事をせんかい!」
 義子は青竹を手に取ると、桂子の丸い尻をパシッと叩く、
「は、ハイっ!」
 桂子は反射的に姿勢を正す。
「村瀬文夫とのコンビは解消、今後は千原美沙江とレズビアンのコンビを組むものとする」
「え、えっ?」
 桂子は驚いて目を見開く。同時に美津子の顔色もさっと変わる。
「何がえ、えっ、や。奴隷らしく『わかりましたっ』と返事をせんかっ!」
 再び桂子の尻に青竹が炸裂する。桂子は「わかりましたっ!」と叫ぶように返事をする。
「次に、千原美沙江、折原珠江とのコンビは一時中断、遠山桂子とコンビを組むこととする」
 引きつった表情を見せている美沙江を義子が「返事はっ!」と怒鳴りつける。美沙江は青ざめた顔のまま「わかりました……」と答える。
「それぞれ、男や女とからむのは随分慣れてきたけど、実演スターというのはそれだけじゃ駄目や」
 義子が得意げに胸を反らせながらいった。
「そうそう、セックスくらい誰だってできるわ」
「静子夫人みたいにお道具を使って色んな芸が出来るようにならんと一人前とはいえん。特に美津子や美沙江はまだまだ修行が足らん」
 義子の言葉にマリが思わず噴き出す。
「大変な修行もあったもんね」
 義子は鞄の中から奇妙な器具を取り出すと、3人の美女に突きつけた。
「これは見たことがあるやろう。膣圧計といってあそこの緊める力を測定するもんや。これを3人で使って競争する。一番成績の悪いもんにはきついお仕置きや」
 義子はマリとともにその奇妙な器具を桂子たちに順に取り付けて行く。
「あっ、あっ……」
 森田組の奴隷の中で最も古株である桂子は、奴隷と弾力のある乳房をマリに揉まれると、すぐに鼻を鳴らしながら喘ぎ出す。
「こんな風に可愛く悶える様子を見てると、桂子が以前は葉桜団の団長やったなんて信じられんくらいや」
 義子は皮肉っぽく笑うと、桂子の身体の中に膣圧計を装填していく。
「ああ……義子さん。そんな昔のことはもう言わないで。桂子はもう森田組の忠実な奴隷なのです」
「なかなかええ心掛けや」
 器具を取り付けた義子は、桂子の太腿をパシンと叩くと、次に美津子に向かう。美津子は覚悟を決めたように目を閉じ、マリと義子の玩弄を受け始める。
 桂子がいよいよ器具を取り付けようと美津子の内腿に手をかけると、美津子はむずがるように腰を振る。
「よ、義子さん……」
「なんや、おとなしく膣圧計を呑み込まんかいな」
「教えてください。文夫さんは、文夫さんは今どうしているんですか」
「ああ、文夫か」
 義子は美津子の形の良い乳房を揉み上げているマリと目を合わせる。
「やっぱり恋人のことは気になるのね」
 マリはさも楽しげにくすくす笑う。

22.激しい調教(3)

 小夜子は早くも呼吸を荒げながら、赤く染まった頬を右に向けたり左に向けたりしている。文夫はいつしか、そんな姉の痴態から目を離せなくなっている。
「そろそろ糸を繋ぐところを可愛がってあげようか」
 朱美が耳元で囁くと、小夜子はさも恥ずかしげにこっくりと頷く。
 銀子が朱美と意味ありげな視線を交わし、羽箒を小夜子の花蕾に使い出す。触れるか触れないか、というような微妙なタッチで愛撫され、小夜子は思わず「ああっ!」と悲鳴に似た声まで上げる。そんな小夜子の匂うばかりの妖艶さに、責める銀子と朱美もすっかり酔い痴れたような気分になってくるのだ。
 葉桜団のメンバーは互いにレズビアンの関係で結ばれており、特に団長の銀子と副団長の朱美は、同性愛の経験は深い。小夜子はそんな言わば百戦錬磨の銀子と朱美さえ虜にするような魅力を放っているのだ。
「あ、朱美お姉さま……小夜子、おねだりしていい?」
 小夜子はとろんと潤んだ瞳を朱美に向け、甘えるような声をあげる。その凄艶なまでの色気に、朱美は背筋がぞくっとするような興奮を覚えるのだ。
「なんだい、何でも言ってみな」
「お、お尻も一緒に……虐めて欲しいの」
「なんだって?」
 朱美は小夜子の大胆な言葉にさすがに驚き、聞き返す。
「いや……何度も言わせないで……お尻を……お願い」
「前と後ろを一緒に責められたい、っていうのかい?」
「ああ……だって、だって……小夜子、そこがすっかり感じるようになったのですもの」
 そう言うと小夜子はなよなよと腰部を振りながら、文夫の隣で呆然とした顔を向けているマリや義子の方を向く。
「お願い……弟も責めてあげて……私ばかりがこんな……恥ずかしいわ」
「わ、わかった」
 義子は慌てて頷くと文夫の前に跪き、早くも硬化を見せている肉棒を両手でそっと包み込む。同時にマリが文夫の背後に回り、美少年の引き締まった双臀をぐいと押し開くのだった。
「あ、ああっ!」
「ううっ!」
 朱美の指とマリの指が、小夜子と文夫の菊蕾を同時に貫く。その瞬間美しい姉弟は電流に触れたように全身をブルッと震わせるのだった。

「ああっ……」
「う、ううっ……」
 調教室に男と女の甘いため息と、むっとするような淫臭がたちこめている。六畳ほどの狭い部屋を葉桜団の不良少女たちが埋め尽くし、コップ酒を酌み交わしている。誰かが気を利かして持ち出したのか、スルメなどのつまみも並べられ、朝からすっかり宴会ムードとなっているのだ。
 ズベ公たちの酒の肴となっているのは、部屋の真ん中の2本の調教柱に全裸のまま縛り付けられた小夜子と文夫の姉弟である。深窓に生まれ育った姉弟が、社会の最下層というべきズベ公たちの見世物になっている。不良少女たちはそんな倒錯した快感にすっかり身も心も痺れさせている。
 小夜子には朱美が、文夫には義子が取り付き、淫らに責め上げている。それを銀子とマリが楽しげに眺め、時々野次をを飛ばしている。
 悦子はもっぱら銀子に酌をしたり、つまみの準備をしたりしながら、時折銀子たちを真似るように小夜子と文夫にからかいの言葉を投げかけている。
「少し元気が出て来たじゃないか、悦子」
 銀子は悦子に近寄り、空いたコップに酌をする。
「……すみません。銀子姐さん」
「お前が最近、調教に気が入らない理由は分かっているよ」
 銀子はそう言うと口元に笑みを浮かべる。
「お前、静子夫人に惚れたんだろう」
「そんな……」
「隠してもお前の態度から見え見えだよ。それで、静子夫人や他の奴隷たちを責めるのが後ろめたくなったんじゃないかい?」
「それは……」
 銀子の問いに悦子は俯く。
「特に小夜子は静子夫人の踊りの弟子で、静子が実の妹のように目をかけていた娘だからね」
「でも見てごらん、悦子。小夜子は朱美の責めを嫌がっているように見えるかい?」
 銀子はそう言うとちらと小夜子を見る。
「相変わらず上手いもんだね、朱美姐さん。あんな風に責められるのを見ていたらこっちまでおかしくなっちゃうわ」
 朱美にゆさゆさと豊かな乳房を揉み上げられ、甘い吐息をついている小夜子を見ながら、マリがからかいの声をかける。
「見なよ、悦子。小夜子ったら、今にも気をやりそうってな顔をしているじゃないか。小夜子が恋人の内山って医者に抱かれて、あんな風な気持ちになれると思うかい?」
 悦子は、もはや陶酔の極にあるような小夜子の表情を改めて見る。確かに銀子の言う通り、そこにはもはや嫌悪や躊躇いの感情は見られない。小夜子はむしろ積極的に、未知の快感に自ら飛び込もうとしているように思えるのだ。
「小夜子のとんでもない写真を、青葉学園の同窓生や小夜子の知り合い全部にばらまいたのを覚えているだろう? 悦子も一緒にやったことだよ」
 銀子の言葉に悦子の胸がズキリと痛む。
「小夜子も静子夫人も、外の世界で暮らすことなんて一生出来ないようになっているのさ。それならこの屋敷の中でせいぜい楽しく過ごした方がいいじゃないか」
 銀子はさらに念を押すように悦子に囁く、
「もし悦子があたいたちを裏切るようなことがあったらどうなるかわかるかい? 桂子と同じようにリンチを受けたあげく、森田組の女奴隷に落とされるんだよ」
 銀子の冷たい言葉に悦子は背筋を震わせる。
「あたいは悦子をそんなふうにしたくないんだよ、わかるだろう?」
 銀子はそう言うと、卑猥なショーを演じている姉弟の方へ向き直る。
「義子もなかなかだよ。お坊ちゃん、もうビンビンにさせているじゃないか」
「へへ……」
 義子は照れたように笑う。
「お坊ちゃん、姉さんと同じで最近はすっかりこっちの方も感じるようや。やっぱり姉弟っていうのはこんなところも似るんかいな」
 義子はそういいながらマリが差し出すコールドをたっぷりと指で掬い、文夫の菊蕾に塗りつける。
「ああっ……そ、そこは嫌ですっ」
 いきなり隠微な箇所をまさぐられた文夫はうろたえたような声を出し、義子の指を避けようと双臀を振る。その様子はまるで男を知らぬ乙女が恥らっているような色気を醸し出しており、見ているマリは陶然とした気分になる。
「往生際が悪いわね、このお坊ちゃん。この前、散々ガラス棒で口を広げてあげたのに、もう元に戻っちゃったのかしら」
 マリは思わずうっとりと文夫の媚態めいた姿に見とれていたことの照れ隠しをするかのように、そんな風に文夫をからかいながらひきしまった太腿や尻をピシャピシャと叩く。
「そんなことはないみたいや、ほら、もうあたいの親指をしっかりと咥えこんだで」
 義子はニヤニヤ笑いながら文夫の肛門に深々と含ませた指をゆっくりと抽送し始める。すると文夫の若茎はますますその雄渾さをまし、腹部につかんばかりにそそり立っていくのだ。
 小夜子もそんな文夫に煽られるようにはあ、はあと荒い息を吐き、柔肌はほんのりピンク色に染まっていく。
「そろそろいいだろう。マリ、糸をつなぐのを手伝ってやんな」
 銀子はマリに声をかける。小夜子と文夫の姉弟に瓶吊り芸の調教を開始しようというのだ。
「あ、ああ、そんなっ……」
「ううっ……ね、姉さんっ」
 小夜子と文夫の口から同時に悲鳴が迸り出る。最も敏感な箇所に糸を巻きつけられ、そこにジュースの空瓶をくくりつけられる恐怖と苦痛。姉と弟の身に加えられる想像を絶する淫靡な責め。これがいったい現実に起こっていることだろうか。