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33.人間花器(1)

 田代屋敷の二階にある菊の間と呼ばれている八畳の和室では、珠江夫人が「まんぐり返し」の姿で緊縛された裸身を、大塚順子と、美沙江のお付き女中であった友子と直江の目の前に堂々とばかりに晒していた。
 珠江夫人の女の部分を縁取っていた繊毛は、菊門の周囲のあるかなしかといった産毛にいたるまですっかり剃り取られ、まるで童女のような趣きを示している。三人の悪女たちの視線を受けたその部分は、まるでそれ自身が生き物であるかのようにフルフルと息づいているようだ。
 三日三晩にわたってチンピラ部屋に浸けられ、精力の有り余った若い男たちから凌辱の限りを尽くされた珠江夫人の裸身からは、荒淫の果てのやつれとともに、以前は見られなかった一種の貫禄を伴った色気が伺えるのだ。
「素晴らしい格好ね、折原夫人。ご気分はどうかしら」
 順子は満足げな微笑を浮かべながら珠江夫人の太腿をぴしゃぴしゃ叩く。珠江はぐっと唇を噛み、身が焼かれるような羞恥と屈辱に耐えている。
「憎い敵の前におマンコも、お尻の穴も丸出しにした気分はどうなの、と尋ねているのよ」
 順子は急に冷たい声でそう言うと、夫人の羞恥の丘をいきなりぴしゃりと叩く。
「あっ!」
 そんな順子の乱暴な行為に、珠江夫人はさすがに小さな悲鳴を上げる。
「――し、死ぬほどはずかしいですわ」
 順子からしつこく迫られた珠江夫人は声を震わせる。
「そう、こんな大胆なポーズをなさっているから、恥ずかしさなんて感情はもう超越したのかと思っていたのだけれど、まだ羞恥心は残っているのね」
 順子はそう言ってさも楽しげに笑うと、友子と直江の方を見る。
「でもこんなのは序の口やで、奥さん」
「もっともっと、恥ずかしい目に合わせてやるから覚悟しいや」
 不良の本性をすっかりあらわにした二人の少女はそんなことを言いながら、珠江夫人の白く滑らかな内腿や、柔らかな尻の肉を指先でつねる。夫人はそんな淫靡な玩弄を必死で耐えている。
(ああ、いったい、どうしてこんな目に合わなければならないのか)
 湖月流の大塚順子がここまで千原流華道を憎む理由は一体なんなのか。順子は千原流が湖月流を妨害してきたというが、千原流の家元、元康の健康不安や娘である美沙江の後継者としての資質についてことさらに騒ぎ立て、千原流の会員を横取りしようと仕掛けて来たのは湖月流の方である。
 伝統と格式を持ち、関西の富裕階層を中心に多くの会員を有する千原流にとって、前衛華道の一派に過ぎない湖月流など元々眼中にない。しかしながら後援会長である珠江が湖月流の主張を順々に否定して行くと、順子は珠江と元康の根も葉も無い醜聞に言及した怪文書までばらまき出したのだ。
 ここにいたって珠江がついに弁護士を通じ法的措置をとることを通告すると、湖月流側の妨害活動はいったん終息したのである。
 しかしその際の珠江に破れたという口惜しさや、そして千原流に象徴される上流階層に対する恨みが順子の心の中で澱のように沈み、時間をかけて発酵していたのである。
「さすがに三日三晩も若い男にやられっぱなしになったせいか、少し腫れているみたいね」
 順子は珠江の秘奥を楽しげに覗き込む。
「でも、まだまだ綺麗なピンク色だわ。やっぱり子供を産んでいないせいかしら」
 順子はそう言いながら珠江の花びらを指先でつまんでひっぱったり、延ばしたりしている。友子と直江は真剣な顔付きで珠江のその部分を点検する順子の様子と、顔を真っ赤に染めて言語に絶する屈辱に耐えている珠江の様子の対比がおかしいのか、肩を震わせながら笑いをこらえている。
「それとも、ご主人があまりお使いにならなかったのかしら?」
 じっと黙っている珠江の花蕾を順子が指先でつつく。
「あっ!」
 突然敏感な箇所に触れられた珠江夫人はうろたえたような声を出す。
「ご主人とのセックスは週に何度くらいだったの? 言いなさい。珠江夫人」
「そ、そんなことまで答えなければならないのですか」
「何を寝ぼけたことをいっているの」
 順子はくすくす笑い出す。
「奥様はもうみんなの前で、森田組の奴隷として生きて行くことを誓ったのでしょう? 奴隷なら奴隷らしくご主人様の質問には素直に答えるのよ」
 順子はそう言うと夫人の花蕾を指先でつまみ、コリコリと揉みほぐし始める。
「大きなお核ね。ここが奥様の泣き所かしら」
「あ、あっ……ああっ」
「さあ、答えなさい。毎日なの? 2日に一度くらいなの?」
「そ、そんなにはしておりませんわ」
 順子の巧みな責めにたちまち快感をかき立てられた珠江が思わずそんなことを口走ったので、3人の女たちは声を上げて笑い合う。
「そんなにしていないのならどれくらいなんや? 週に一度か?」
「いくら何でもそれより少ないってことはないやろう」
 友子と直江が順子に調子を合わせて、珠江の乳房や太腿のあたりを揉み立てながら尋ねる。
「ひと月か、ふた月に一度くらいです」
「何ですって?」
 順子が思わず手を止める。
「本当にそんなに少ないの?」
「は、はい……」
「ひょっとして新婚のころからずっとそうなの?」
「い、今ほどではありませんが……ひと月に二度を超えることはありませんでした」
「へえ、呆れたわ」
 三人の女はおおげさに驚く。
「こんな美人の奥様をもらいながら、それだけしか愛してあげへんなんて、なんて情けない男やろ」
「珠江夫人にはどうして子供が出来へんのやろと不思議に思てたけど、それやったらも無理ないわ」
「やることやってへんのやからね」
 友子と直江はそんなことを言い合うと顔を見合わせて笑いこける。
 珠江夫人は自分だけでなく、夫までもが嘲弄の対象とされていることに、肩を震わせながら耐えている。
 確かに友子と直江の言う通り、大学教授であり、かつ医師である夫の源一郎はセックスに対して消極的であった。源一郎はそれを多忙のためとしていたが、むしろ仕事をバリバリやる男が性に対しても貪欲なことが多い。
 珠江は性に対しては保守的な考え方を持っており、快楽のためにセックスを楽しむといった欲求は少なかったため、夫が淡泊であるということに対しては特に不満はなかった。しかしながらそのせいで子供がいつまでもできないことは珠江にとって悩みの種だった。
 源一郎は珠江とは一回り以上齢が離れており、70歳を越えた源一郎の母親に早く孫の顔を見せてやりたかった。しかしながらそもそもの回数が少ないし、それがうまく受精のタイミングにぶつかることはさらに少ない。珠江は源一郎に対して、せめて計画的なバースコントロールをするよう提案したのだが、源一郎はあいまいに笑うだけだった。
 チンピラたちの疲れを知らぬ肉棒に貫かれながら、幾度も幾度も気をやった珠江。あれは果たして現実の出来事だっただろうか。あれが本当のセックスだとしたら、に比べれば夫との営みは子供の遊びのようなものだったのではないか。
 珠江はふと、チンピラ部屋での若い野獣のような男たちとのセックスと、夫のそれを比較している自分に気づき愕然とする。

32.不良少女たち(4)

「せいぜい30歳そこそこやと思ったわ」
「そやな」
 マリと義子が感心したようにそんなことを言い合っている。久美子は、マリと義子がどうにか話に乗って来た様子にほっと胸を撫で下ろす。
 実際は夏子こと美紀は45歳、冬子こと絹代は42歳だからそれぞれ6つずつさばを読んでいる。二人の貴婦人の若々しさから、義子とマリはすっかり久美子の言うことを信じたようである。
 静子夫人を始めとする美女たちの失踪事件の最大の謎は、彼女たちの監禁場所だった。誘拐されているのは一人や二人ではない、文夫を含め8名もの人数が捕らわれているのである。8名の美男美女がいまだ生かされ、日々性の地獄にのたうち、怪しい写真や映画への出演を強制されているのだ。
 それだけのことを実行するためには、かなり大きな場所が必要なはずである。少なくとも一目につきやすい都心部や住宅密集地では不可能だと山崎は考えていた。
 そこがいったいどこなのかをつきとめれば、その土地建物の所有者や居住者が判明するだろうし、それを手掛かりに事件は一気に解決に向かうに違いない。
 美紀と絹代はそのための囮である。美紀と絹代を久美子とともに静子夫人達の監禁場所に送り込み、久美子が隙を見て抜け出し、山崎にその位置を知らせる。それが山崎の立てた計画だった。
 久美子にはもちろん、美紀と絹代の身にも大きな危険が伴う行為である。しかし今の山崎には久美子と葉桜団の間に生まれたわずかなつてを最大限に生かすしか方法がないのだ。
 美紀も絹代も、むしろ母親の自分たちが愛する息子、娘の身代わりになることが出来るのなら、命を投げ出しても良いとまで思い詰めていたこともあり、囮となることを進んで引き受けてくれた。久美子も兄の名誉を回復するためならと、危険な役割を自ら志願した。それだけに山崎としては今回の作戦では絶対に失敗は許されないのである。
 山崎と久美子、そして美紀や絹代との接点を敵に悟られないよう、山崎が他の3人と接触することは最小限に抑えた。久美子が山崎の妹であることや、美紀や絹代の正体を敵に悟られたらその時点で失敗である。
 かなりきわどい作戦だったが、山崎には勝算があった。その最大のポイントは美紀と絹代の、年齢を感じさせない美貌である。美紀が39歳ということを信じさせれば、少なくとも22歳の小夜子の母親ということは、あり得ない話ではないが不自然である。
 そうは言っても母と娘だから顔立ちは似ているし、いずれ気づかれる可能性は大きい。しかし、このかなり無理のある囮作戦もほんのわずかの間――そう、半日でも機能してくれれば良いのである。それだけの時間があれば、久美子が山崎と連絡をとることは十分可能だろう。
「この写真、預かっていってもええかな?」
「いいわよ。でも、絶対に外には出さないでね」
「わかってるわ」
 義子は写真をカバンの中にしまい込む。
「ところで、今日はまた早くから盛り上がっているのね」
 久美子はテーブルの上に並んだビールの空き瓶に目をやる。
「ああ、仕事が思ったよりも早く片付いたんで、一杯やっていたんや」
「仕事って?」
「久美ちゃんにも前に見せたやろ。写真の販売や」
 久美子は心臓がドキリと鳴るのを感じる。以前このスナックで見せられた静子夫人が複数の男と絡み合っている写真を思い出したのである。山崎は森田組が売りさばいている写真を一部入手していたが、久美子にはあえて見せていなかったのだ。
「もっとも最近は売れ行きが良くて、あっという間に焼き増ししたものがあっという間に捌けるから、楽をさせてもらっているけどね」
「あれは、売り物だったの?」
「そうや、写真だけやない。映画なんかも随分高い値段で売れるんやで」
「映画――」
「それも普通のからみの映画だけやないで」
 義子はカバンの中からけばけばしいカラーのチラシを取り出す。そこには山崎の助手で恋人でもある野島京子と妹の美津子の緊縛された裸のバストショットが並び、「京子と美津子 姉妹浣腸合戦!」という大きな字が記されていた。
(き、京子さん、美津ちゃん――)
 ピンク映画のポスターを思わせるそんな淫らなチラシの中の、京子と美津子の無残な姿を目にした久美子は一瞬、気が遠くなるのを感じる。
「どう、なかなかお金がかかってるやろ?」
 義子は久美子の顔を伺うように見る。
「え、ええ」
 久美子は必死で動揺を抑えながら頷く。
「これも、あなたたちの斡旋の仕事の一つなの?」
「まさか」
 義子はマリと顔を見合わせて笑い合う。
「この女は以前、あたいたちの葉桜団のメンバーだったんだけど、仲間を裏切ったから妹と一緒にヤキを入れてやったんや」
 義子はチラシの中の京子の顔を指さす。
「その様子を映画に撮ったってわけ。今じゃすっかり素直になって、葉桜団のために汗水流して働いているわ」
「……」
 久美子は改めて「浣腸合戦」という毒々しいまでに鮮やかな文字に目をやる。それがどのような責めなのか、久美子には想像が出来ない。しかし、義子とマリの冷酷な口調から、京子と美津子はとんでもなくおぞましい責め苦にあえいでいるのではないかという思いが、久美子の頭を満たして行くのだ。
(浣腸――まさか――)
 そんなことはありえない。久美子は思わず首を振る。そのような行為を見世物にするなど考えられない。
 久美子には女に浣腸して、強制的に排泄させることを悦ぶ人間がいることなど想像も出来ない。「浣腸合戦」という言葉から、京子と美津子の姉妹を並べて浣腸にかけ、どちらがより排泄を我慢出来るか競争させるというような状況はとても浮かばないのだ。
 しかし何かとても、口に出せないほどのおぞましい手段で責められているのではないかということだけがぼんやりと認識出来るだけなのだ。
(兄さんはこのことを知っているのかしら)
 誘拐犯の手に捕らえられた京子は、すでにその純潔は奪われているのではないかということまでは覚悟していたとしても、いまだ女学生である妹の美津子と共に変質的な責めを加えられていることまでは知らないのではないか。
(もしも知っていたら、到底耐えられないだろう)
 このことは兄には話せないと久美子は思い定める。
「自由恋愛を仲介するのは犯罪でもなんでもないという話をしたやろ、久美ちゃん」
「え、ええ……」
「かといって、甘く見たらあかんで」
「甘く見るって……」
「あたいらを裏切ったり、騙したりしたらあかん、ていう意味や。さもないとこの女みたいな目にあうで」
 義子の目にキラリと冷酷な光が宿る。
「まさか、脅かさないでよ」
 久美子は作り笑いを浮かべる。
「私は仲介料がほしいだけよ。学費をずっと滞納していて、このままじゃ大学を追い出されそうなのよ」
「それならええけど」
 義子はにっこり笑う。
「直江や友子を助けてくれた恩もあるし、もちろんたっぷりお礼をするわ」
 義子がそう言うと、マリが付け加える。
「この話が本当やったらね」

31.不良少女たち(3)

 田代の申し出た条件とは、新たに作る屋敷を森田組に提供するとともに自分もそこに住まい、森田組が集めた女を田代の享楽のために提供することである。
 この後、いくつかの偶然が重なり、田代は自らが理想の女性とする静子夫人を手に入れることになったのである。
 嗜虐趣味を持ち森田を支援するための財力を有する田代と、秘密写真や映画といったいかがわしい事業の才能を持つ森田、そして生きるために自分たちをモデルにしたポルノ写真を売り歩いていた葉桜団の少女たちの出会いが、今回の静子夫人誘拐に端を欲する一連の美女失踪事件のきっかけになったとも言えるだろう。

 義子とマリが2本目のビールを半ば以上空けたところで店の中に女が入って来た。
「あれ?」
 入り口の当たりできょろきょろと当たりを見回している女を見て、義子が声を上げる。
「久美ちゃんやないか」
 その声に気づいた久美子は一瞬緊張した表情になるが、すぐに微笑を浮かべ、義子とマリの方へ近づく。
「義子さん、だったっけ。久し振りね」
「久し振りって程でもないけど。あれからどうしてたんや」
「別に、いつも通りふらふらしていたわ」
「そうか」
 義子は久美子を、自分たちと同じボックス席に座るよう促す。
「マリは初対面やったね。この前悦子や直江たちを助けてくれた久美子はんや」
「ああ、あんたが」
 マリは頷くと、久美子に微笑みかける。
「マリです、よろしく」
「はじめまして、久美子です」
 マスターが新しいビールとグラスを持ってくる。
「あ、私……」
 ためらう久美子にグラスを持たせると、義子がビールを注ぐ。
「遠慮せんでええ。この店はあたいら、つけがきくんや」
「そうそう、溜まったら身体で払ったらいいし、ね、マスター?」
「マリちゃんはだいぶ溜まってますよ。最低4回は抱かせてもらわないとね」
 マリとマスターのきわどい会話にどぎまぎしている久美子を、義子が楽しげに見る。
「久美ちゃんはあれだけ腕っ節が強いのに純情なところがあるんやな。きっと育ちがええんと違うか」
「そ、そんなことないわよ、からかわないで」
「そう言えばマリも歌舞伎町で久美子みたいな強くて綺麗なお姉さんに助けられたことがあったな」
 義子の言葉に久美子の肩がピクッと震える。
「そう言えばそんなこともあったわね」
「あのお姉さんにもたっぷりお礼をして上げたけど、今頃どうしているかな」
「さあ、綺麗な女の人だったからきっと素敵な旦那さんと結ばれているんじゃないかしら」
 義子とマリはそんなことを言いながら笑い合う。
(ひょっとして私の正体に気づいているのでは?)
 久美子は二人の意味ありげな会話に緊張する。
 二人は明らかに久美子の兄、山崎探偵の助手で恋人であった京子のことを話している。そうやって久美子にカマをかけているのだろうか。
(ここは平静を保たなければ)
 久美子と葉桜団の出会いが、京子のそれと似てしまったのは実際、全くの偶然である。ここで動揺すれば義子たちの不審を招き、折角つかんだ手掛かりへの糸が断ち切られてしまう。久美子は必死で落ち着こうとする。
「マリはレズっ気があるから、あの時のお姉様に惚れてたんやないか」
「うちの姉さんと一緒にしないでよ」
 マリとそんな軽口を交わしながらしばらく久美子の表情を観察するように眺めていた義子が話題を変える。
「ところで久美ちゃんはこのあたりはよく来るの?」
「いえ、そうでもないわ」
 久美子は一瞬考えると首を振る。実際、歌舞伎町に足を踏み入れたのは兄の仕事を手伝い始めてからのことである。よく来ると言って突っ込まれたらすぐにボロが出かねない。
「ふうん、そんならこの前といい、今日といい、えらい偶然やね」
「実はあなたたちに会えればいいな、って思っていたのよ。前に、ここが溜まり場だって聞いたから、覗いてみたの」
「あたいたちを探していた? それはどうしてなの」
 義子が訝しげな表情で久美子に尋ねる。マリはじっと黙って久美子の顔を見つめている。
「ほら、この前銀子さんが言っていたじゃない。暇を持て余して刺激を求めているお金持ちの奥様なんかをある屋敷で男に紹介する仕事」
「ああ、あれか」
 義子は微笑を浮かべ、マリの方をちらりと見る。
「あの話を聞いた時は、そんなことを望む女の人なんかいるのかしらって疑問に思ったけれど、試しに色々とあたってみたの。そうしたら、二人ほどそういったことに興味があるってご婦人が現れたのよ」
「へえ」
 じっと話を聞いていたマリが思わず身を乗り出す。
「どんな女なの? オカチメンコじゃ相手は現れないわよ」
「その点はたぶん問題ないわ。二人とも品の良い美人よ。一人は着物が似合う和風美人、もう一人はプロポーション抜群の洋風美女よ」
「それが本当の話やとすごいけど」
「そう言われると思って写真をもって来たの」
 久美子はカバンの中から二枚の写真を取り出す。
 一枚は村瀬小夜子と文夫の母、美紀を撮ったもの。もう一枚は千原美沙江の母、絹代を写したものである。品の良いスーツを身につけた美紀の華やかな美貌と、清楚な和服姿の絹代の淑やかな美しさに、義子とマリは思わず息を呑む。
「これは……すごい美人や」
「大丈夫かしら?」
「大丈夫どころか、これだったら希望者が殺到するわ」
「いったいどこのご婦人なの?」
 マリが興奮した面持ちで久美子に尋ねる。
「こっちの洋風美女が、ある名門レストランの社長夫人。こっちの和風美女が有名な小説家の奥様」
「名前はなんていうの」
「本名は勘弁してほしいそうよ。洋風美女の方が夏子さん、和風美女の方が冬子さんってことでどうかしら」
「夏子と冬子か。まあ、本名を知らない方が後腐れがなくてええわ。齢はいくつ?」
「夏子さんが39歳、冬子さんが36歳よ」
「意外といってるんやね」
 義子が頷く。

30.不良少女たち(2)

 森田組の発展は組長の森田幹造と、不動産業を営む実業家の田代一平の出会いに端を発する。
 田代の屋敷は東京の郊外、といっても名ばかりは東京都だが10分ほど車を走らせればすぐに隣県に着くほどの辺鄙な場所にある。鉄道の便も悪く廻りには住宅は殆ど存在しない。昭和30年代の後半を迎えた現在でも全くの田舎といって良い。
 田代はこの場所に鉄筋3階建て、地下室付きのまるで城のような屋敷を拵えた。
周囲は鬱蒼とした林に囲まれており、少し離れた場所から眺めると、そこに屋敷があるなどとは思えないほどである。
 場所が場所なので土地は思いきり安く買い叩いた。また田代の本職が土建屋でもあり、屋敷の建造費も最少限でおさめることが出来た。
 もちろんこの場所では本業の事務所とするわけにはいかず、田代は週に3日ほどは東京の事務所に寝泊まりして仕事を片づけ、そして週の後半になると屋敷に帰って書類仕事の整理をするといった日々が続いている。
 田代は現在は妻もいない孤独の身である。その彼が何故、こんな田舎に大きな屋敷を構えたのかと、仕事仲間の中には訝しげに思うものも多かった。
 実は田代はこの屋敷を家族でも会社関係者でもない人間に提供していた。それが森田幹造を組長とする暴力団、森田組である。
 田代は商売柄その筋の人間との付き合いも多い。しかし田代がその中でも組員がチンピラと呼ばれる準構成員を入れても10人程度という暴力団としては最弱小の森田組のスポンサーになっているのには理由がある。
 森田組は一応土木業を看板に掲げ、かつては暴力団としてもそれなりの勢いがあった。田代との付き合いも昔、田代が若い頃に工事代金の支払いに行き詰まったとき、下請業者として付き合いのあった森田が岩崎組という関西の広域暴力団に口を利き、援助を取り付けたことに発する。
 その後、森田の組は徐々に落ち目になったが、田代はその時の森田の好意を恩義に感じ、ずっと援助していた。
ある日森田は田代を、下請けとして受注した工事のお礼という名目で小料理屋に誘った。大して旨くない料理が一巡した後、料理屋の個室で森田はポケットに入れていた封筒を取りだした。
「ところで田代の旦那」
 森田はこういういかにも田舎やくざといった、時代がかった話し方をする。
「最近はこっちの方が儲かるんで、もうちょっと大々的にやろうかと思っているところですが――」
 森田が取りだしたのはいわゆる秘密写真と呼ばれるもので、男女のそのものずばりの交接図だった。
「ふん」
 田代もそんな写真は以前にも何度も見たことがあり、見たところぱっとしない森田組の事業(シノギ)が、今や秘密写真やポルノフィルムの制作が主なところであると聞いてもさほど驚かなかったが、その卑猥な写真には新鮮な印象を抱いた。
「こういう写真のモデルは普通は、一線を引いたストリッパーやら温泉芸者なんかのふやけた身体をした玄人崩れの女が多いんですが、うちの写真は違うでしょう、どうです?」
 森田の言う通り、確かにどの写真のモデルも若く、初々しささえ感じられた。モデルの女たちは決して美人ではない。いや、どちらかというと不美人の部類が多いが、素人っぽさを感じさせるそれらは他の同種の写真では見られないものだった。
「このモデル達は誰だ? どうやって集めたんだ?」
 田代は渡された写真を一枚一枚丁寧に見ながら森田に尋ねた。
「川田という新宿を根城にしている愚連隊崩れのスケコマシと、うちの井上がひょんなことで知り合いになりましてね」
 井上は吉沢と並ぶ森田組の幹部の一人で、主に森田組の秘密写真やポルノフィルム制作事業を担当している。機械に強く、実際の撮影にあたってはカメラマン兼監督の役割を勤め、さらに準構成員であるチンピラを指揮して繁華街や温泉街の酔客に売りさばいていた。
「この川田が葉桜団の女たちと付き合いがありまして」
「葉桜団?」
「やはり新宿を根城にしているズベ公達です。ほとんどは戦争で片親か両親を亡くした、いわゆる戦災孤児ってやつですわ。こいつらが寄り集まって生きていくうちに次第に悪さもするようになって、今はやっていることは男の私達も顔負けでさあ」
戦争が終わって約15年、葉桜団の女たちは大部分が10代後半から20歳前だそうだから終戦時にはほんの幼児である。年頃から見て彼女たちの世代の父親の大部分は徴兵され、その多くは帰ってこなかったろう。そしてあの東京大空襲――。
「このスベ公達が田舎出の女を言葉巧みにだまくらかして、うちに送り込んでくる、ってわけでさあ――」
「するとやはりこの卑猥な写真のモデル達は素人か。不良少女の集団にしちゃあなかなか大胆なことをするもんだ」
「なに、適当に稼いだらモデルの女たちには小遣いを持たせて返してやります。サツにたれこむようなことがあれば、田舎の親や親戚に写真を送るぞと脅しつけてやれば、恥ずかしいのと恐ろしいので後で面倒なことになることはありませんや」
「成る程な。それにしても自分たちのことを葉桜団と名乗るとはユーモアを解する連中だ」
田代は感心したように頷く。
「これとこの写真は、その葉桜団のズベ公たちがモデルでさあ」
森田は何枚かの写真を指さす。それは二人ずつの若い女が素っ裸で絡み合っているもので、同性愛を思わせる妖しい雰囲気が目を引いた。
「適当な女が見つからなければ自分たちがモデルに早変わりってわけか。なかなか度胸のある連中だ」
 田代は手に持ったビールのグラスをあおる。
「で、大々的にやるってのは、どうするんだ?」
「そこなんで」
 森田はすかさず田代の空になったグラスにビールを注ぐ。
「写真やポルノフィルムを撮影するにも、今の事務所は機材の置場所にも困るし、撮影場所も連れこみ旅館ばっかりじゃあ変化がありません。第一、モデルの女を監禁……いや、泊めておく場所にも不自由してます」
「ふん――」
 田代は再びビールをあおる。
「スポンサーの力を、ってことだな」
「へへ、まあ、そういうことで」
 田代はやや卑屈な笑みを浮かべる森田の顔を眺める。
(随分、年齢を食ったもんだ)
 森田との付き合いももう何年になるだろう。やくざものとしては二流以下のこの男とは妙にウマが合う。田代がいつか酒に酔って自分の変質的な嗜好を話したときも、森田は、へえ、社長もそうですかい、実はあっしもその気があるんで、と興味津々の様子で話に乗ってきた。
 そのころから田代は森田に対して、人には言えない趣味を話すことが出来る貴重な存在になっている。もっとも田代の見たところ森田自身には、プロデューサーとしての才能はあるが、嗜虐趣味の方はそれほどでもない。もちろん人並み以上の女好きであることは否定出来ないが。
「わかった、親分のその新しい事業、応援してやろうじゃないか」
「本当ですかい? そりゃあ有り難い」
「ただし、条件といっては何だが……」
 田代は誰にも聞こえる心配のない座敷で声を潜めた。