田代屋敷の二階にある菊の間と呼ばれている八畳の和室では、珠江夫人が「まんぐり返し」の姿で緊縛された裸身を、大塚順子と、美沙江のお付き女中であった友子と直江の目の前に堂々とばかりに晒していた。
珠江夫人の女の部分を縁取っていた繊毛は、菊門の周囲のあるかなしかといった産毛にいたるまですっかり剃り取られ、まるで童女のような趣きを示している。三人の悪女たちの視線を受けたその部分は、まるでそれ自身が生き物であるかのようにフルフルと息づいているようだ。
三日三晩にわたってチンピラ部屋に浸けられ、精力の有り余った若い男たちから凌辱の限りを尽くされた珠江夫人の裸身からは、荒淫の果てのやつれとともに、以前は見られなかった一種の貫禄を伴った色気が伺えるのだ。
「素晴らしい格好ね、折原夫人。ご気分はどうかしら」
順子は満足げな微笑を浮かべながら珠江夫人の太腿をぴしゃぴしゃ叩く。珠江はぐっと唇を噛み、身が焼かれるような羞恥と屈辱に耐えている。
「憎い敵の前におマンコも、お尻の穴も丸出しにした気分はどうなの、と尋ねているのよ」
順子は急に冷たい声でそう言うと、夫人の羞恥の丘をいきなりぴしゃりと叩く。
「あっ!」
そんな順子の乱暴な行為に、珠江夫人はさすがに小さな悲鳴を上げる。
「――し、死ぬほどはずかしいですわ」
順子からしつこく迫られた珠江夫人は声を震わせる。
「そう、こんな大胆なポーズをなさっているから、恥ずかしさなんて感情はもう超越したのかと思っていたのだけれど、まだ羞恥心は残っているのね」
順子はそう言ってさも楽しげに笑うと、友子と直江の方を見る。
「でもこんなのは序の口やで、奥さん」
「もっともっと、恥ずかしい目に合わせてやるから覚悟しいや」
不良の本性をすっかりあらわにした二人の少女はそんなことを言いながら、珠江夫人の白く滑らかな内腿や、柔らかな尻の肉を指先でつねる。夫人はそんな淫靡な玩弄を必死で耐えている。
(ああ、いったい、どうしてこんな目に合わなければならないのか)
湖月流の大塚順子がここまで千原流華道を憎む理由は一体なんなのか。順子は千原流が湖月流を妨害してきたというが、千原流の家元、元康の健康不安や娘である美沙江の後継者としての資質についてことさらに騒ぎ立て、千原流の会員を横取りしようと仕掛けて来たのは湖月流の方である。
伝統と格式を持ち、関西の富裕階層を中心に多くの会員を有する千原流にとって、前衛華道の一派に過ぎない湖月流など元々眼中にない。しかしながら後援会長である珠江が湖月流の主張を順々に否定して行くと、順子は珠江と元康の根も葉も無い醜聞に言及した怪文書までばらまき出したのだ。
ここにいたって珠江がついに弁護士を通じ法的措置をとることを通告すると、湖月流側の妨害活動はいったん終息したのである。
しかしその際の珠江に破れたという口惜しさや、そして千原流に象徴される上流階層に対する恨みが順子の心の中で澱のように沈み、時間をかけて発酵していたのである。
「さすがに三日三晩も若い男にやられっぱなしになったせいか、少し腫れているみたいね」
順子は珠江の秘奥を楽しげに覗き込む。
「でも、まだまだ綺麗なピンク色だわ。やっぱり子供を産んでいないせいかしら」
順子はそう言いながら珠江の花びらを指先でつまんでひっぱったり、延ばしたりしている。友子と直江は真剣な顔付きで珠江のその部分を点検する順子の様子と、顔を真っ赤に染めて言語に絶する屈辱に耐えている珠江の様子の対比がおかしいのか、肩を震わせながら笑いをこらえている。
「それとも、ご主人があまりお使いにならなかったのかしら?」
じっと黙っている珠江の花蕾を順子が指先でつつく。
「あっ!」
突然敏感な箇所に触れられた珠江夫人はうろたえたような声を出す。
「ご主人とのセックスは週に何度くらいだったの? 言いなさい。珠江夫人」
「そ、そんなことまで答えなければならないのですか」
「何を寝ぼけたことをいっているの」
順子はくすくす笑い出す。
「奥様はもうみんなの前で、森田組の奴隷として生きて行くことを誓ったのでしょう? 奴隷なら奴隷らしくご主人様の質問には素直に答えるのよ」
順子はそう言うと夫人の花蕾を指先でつまみ、コリコリと揉みほぐし始める。
「大きなお核ね。ここが奥様の泣き所かしら」
「あ、あっ……ああっ」
「さあ、答えなさい。毎日なの? 2日に一度くらいなの?」
「そ、そんなにはしておりませんわ」
順子の巧みな責めにたちまち快感をかき立てられた珠江が思わずそんなことを口走ったので、3人の女たちは声を上げて笑い合う。
「そんなにしていないのならどれくらいなんや? 週に一度か?」
「いくら何でもそれより少ないってことはないやろう」
友子と直江が順子に調子を合わせて、珠江の乳房や太腿のあたりを揉み立てながら尋ねる。
「ひと月か、ふた月に一度くらいです」
「何ですって?」
順子が思わず手を止める。
「本当にそんなに少ないの?」
「は、はい……」
「ひょっとして新婚のころからずっとそうなの?」
「い、今ほどではありませんが……ひと月に二度を超えることはありませんでした」
「へえ、呆れたわ」
三人の女はおおげさに驚く。
「こんな美人の奥様をもらいながら、それだけしか愛してあげへんなんて、なんて情けない男やろ」
「珠江夫人にはどうして子供が出来へんのやろと不思議に思てたけど、それやったらも無理ないわ」
「やることやってへんのやからね」
友子と直江はそんなことを言い合うと顔を見合わせて笑いこける。
珠江夫人は自分だけでなく、夫までもが嘲弄の対象とされていることに、肩を震わせながら耐えている。
確かに友子と直江の言う通り、大学教授であり、かつ医師である夫の源一郎はセックスに対して消極的であった。源一郎はそれを多忙のためとしていたが、むしろ仕事をバリバリやる男が性に対しても貪欲なことが多い。
珠江は性に対しては保守的な考え方を持っており、快楽のためにセックスを楽しむといった欲求は少なかったため、夫が淡泊であるということに対しては特に不満はなかった。しかしながらそのせいで子供がいつまでもできないことは珠江にとって悩みの種だった。
源一郎は珠江とは一回り以上齢が離れており、70歳を越えた源一郎の母親に早く孫の顔を見せてやりたかった。しかしながらそもそもの回数が少ないし、それがうまく受精のタイミングにぶつかることはさらに少ない。珠江は源一郎に対して、せめて計画的なバースコントロールをするよう提案したのだが、源一郎はあいまいに笑うだけだった。
チンピラたちの疲れを知らぬ肉棒に貫かれながら、幾度も幾度も気をやった珠江。あれは果たして現実の出来事だっただろうか。あれが本当のセックスだとしたら、に比べれば夫との営みは子供の遊びのようなものだったのではないか。
珠江はふと、チンピラ部屋での若い野獣のような男たちとのセックスと、夫のそれを比較している自分に気づき愕然とする。
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