49.姉と姉(13)

 京子の妹の美津子は、この生き地獄の中で被虐の業火に焼かれながら、ひたすら文夫を慕っている。ただでさえ生木を引き裂くように文夫と別れさせられた美津子をこれ以上苦しめるわけにはいかない。それはいわば自分の過失から美津子を巻き添えにしてしまった、京子のせめてもの償いでもあった。
しかしそれでも京子が小夜子よりも早く敗北を宣言したのは、小夜子と文夫の姉弟を畜生道に落さないためなのだ。
実の姉と弟が男女の関係になるなどという恐ろしいことを許してはならない。そんなことになったら文夫は回復し難いほどの心の傷を負うことだろう。
(美っちゃん……あなたの文夫さんをこれ以上苦しめるわけにはいかない……そのためにはお姉さんはどんなことだって)
「お願いっ、桂子さんっ。もう京子、負けましたわ。ですから京子を、早くおトイレへいかせてっ」
裸身をゆすりながら訴える京子を、桂子は冷ややかな目で見つめていたが、やがて口元に皮肉な笑みを浮かべながら京子に近寄る。
「ふふ……わかったわ。京子さんったら、そんなに文夫さんとセックスがしたいのね」
桂子はそう言うと京子の豊満なヒップを撫でさすると、京子の耳元に口を寄せて囁く。
「京子さんの狙いは分っているわよ。小夜子さんと文夫さんを姉弟で絡ませたくないのでしょう? でも、その自己犠牲の気持ちが美津子さんに届くかしら」
桂子に心のうちを指摘された京子は狼狽して顔を背ける。そんな京子を楽しげに見ながら桂子は声を改めてる。
「排泄したければこんな風に言うのよ」
桂子は再び京子の耳元に口を寄せ、何事か囁く。
「そ……そんな……」
京子は赤らめた顔を背ける。
「言わないと、小夜子さんの方が先に音を上げちゃうわよ。さあ、早くしなさい」
「ああ……」
京子は苦しげに目を閉じていたが、やがて目を開けると、床柱に縛り付けられている文夫を見る。
「ね、ねえ、ふ、文夫さん。きょ、京子の身体を見て……」
そう言うと京子は緊縛された裸身をぎこちなくくねらせる。
「美津子の身体と比べてどちらが魅力的かしら、ね、ねえ、よくご覧になって」
京子が文夫を色仕掛けで誘惑し始めたので、座敷を埋めたやくざやズベ公たちはわっと沸きかえる。
「よく見て、文夫さん。お、おっぱいも、お尻も素敵だと思わない? きょ、この身体に比べたら美津子なんて、まだまだ子供でしょう?」
いつしか文夫は、そんな京子の言葉に引き込まれたように、くなくなとうねる京子の裸身に視線を向けている。そんな文夫の反応に調子づいた桂子は、京子の耳元に次々と卑猥な誘惑の言葉を囁く。切羽詰まった京子はまるで腹話術の人形のように桂子が吹き込む言葉を繰り返していくのだ。
「文夫さんって、ま、まだ女は美津子と、桂子さんしか知らないんでしょう? きょ、京子が文夫さんに、成熟した女の身体はどんなものか教えて上げるわ。た、楽しみにしていてね」
京子は徐々に自らが吐く卑猥な言葉に酔ったように、妖しい視線を文夫に向け、微妙な笑みさえ口元に浮かべている。
「きょ、京子、前から文夫さんのことを可愛い、って思っていたの。美津子の恋人だから遠慮していたけれど、本当はずっと、文夫さんのことが好きだったのよ」
そんな京子の言葉を聞いた美津子はぐっと猿轡を噛み、苦しげな表情で顔をうつむかせる。
それが姉の本心でないことは美津子にも分っている。しかし、強制された行為だとは言え、信頼していた姉が文夫を誘惑する――そのことが美津子をたまらなく不安にさせるのだ。
思わず京子の裸身に見取れていた文夫は、京子と視線が合うと慌てて目を逸らす。そんな文夫の様子を楽しげに眺めていた義子とマリが立ち上がり、床の間に近づく。
「ほらほら、お坊ちゃん、せっかくああやって京子が頼んでいるんや、しっかり見てやらんかい」
「お互いにちゃんと目と目を合わせてお見合いするのよ」
義子とマリは文夫の太腿を抓ったり、玉袋を軽く握って揺すったりしながら、そんな風に文夫を促す。
「でも、本当にこのお坊ちゃんってハンサムやわ。一回でいいからお相手させて欲しいわ」
義子がため息をつきながらそんなことを言い、やくざたちを笑わせると、銀子が呆れたような声を出す。
「このお坊ちゃんは小夜子や美津子とショーの稽古で忙しいんだから、義子なんかが相手をしている暇はないよ」
「そやけど、森田組の男たちは竹田はんや堀川はんまで、女奴隷の身体を抱いているっていうやないの。あたいたち葉桜団に何もご褒美がないのは不公平やわ」
「しょうがないよ、女奴隷は静子夫人を始め七人もいるけど、男奴隷は一人しかいないんだから」
マリはそんなことを言いながら文夫の肉棒をゆっくり扱き上げる。
「あ、マリ。どさくさに紛れて何をええことしてるんや」
「ここんところは早い者勝ちだよ」
義子とマリがそんなことを言い合いながら文夫の肉棒の取り合いを始めたので、銀子は再び呆れたような声を出す。
「何をやってるんだい」
再び銀子が呆れたようにそう言う。
「そんなことよりも文夫と京子にお見合いをさせてやらないかい」
「了解!」
マリは嬉々として文夫の肉棒を片手で持ち上げ、空いた手で背中をどんと叩く。
「ほらほら、京子の方をじっと見るんだ。そうしないと京子も小夜子も、いつまでたっても苦しみから解放されないよ」
一方の義子は京子の下半身に近づき、秘奥に指をかけるとぐいと拡げる。
「ああっ!」
さすがにうろたえ、悲鳴を上げる京子の尻を義子はパシッと平手打ちする。
「男と女はここの相性が一番大事なんや。文夫さんが気に入るかどうか、しっかりと見ていただくんや」
「で、でも……こ、こんな……」
強烈な羞恥と屈辱に身悶える京子を桂子が嵩にかかったように責め立てる。
「小夜子さんのここは巾着って名器だそうじゃない。文夫さんはどうせだったら実の姉とはいっても、そんな名器を味わってみたいと思っているんじゃないかしら?」
「うっ……」
京子は口惜しげに目を閉じ、言葉を詰まらせるが、
やがて決心したように再び目を開ける。
「ね、ねえ……文夫さん。京子の身体の奥の奥まで、よく見て頂戴……」
京子はしっかりと文夫の目を見ながら、甘えたような声を出す。
「京子のお、おマンコは、春太郎さんや夏次郎さんに鍛えられて、バ、バナナを切ることが出来るようになったのよ。後でゆっくり味見をさせて上げるから、楽しみに待っていてね」
そんなことまで口走る京子に、文夫の視線は釘付けになっている。文夫の目は明らかに欲情に潤み、身体はじっとりと汗ばみ、はあ、はあと息は荒くなっている。

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