98.酒の肴(20)

「このおまるは京子も使ったもんだ。しっかりと当ててやったから伸び伸びと排泄しな」
そんな言葉をかけられた久美子は恨みを込めた視線を川田に向ける。しかしそこにはもはや反抗心というよりは、女が本能的に男に対して見せる甘えや媚といったものすら含まれているようである。
「川田さん、こ、これから抱こうとする女の醜いものを見ても平気なの」
「ああ、もちろんだ。言っただろう。女を抱くことよりむしろこっちの方が楽しみになっているってな」
「こ、後悔しても知らないわ」
久美子はそう言うといよいよ覚悟を決めたように目を閉じ、首をのけぞらせる。
次の瞬間、露わに晒け出していた久美子の肛門が膨張し、茶褐色に染まったグリセリン溶液がどっと吹きこぼれ始めたのである。
「ああっ」
久美子は絶望の悲鳴を上げるが、堰を切って迸った濁流はそんな久美子を嘲笑うかのように下品な破裂音を立てながらチンピラの持ち添えるおまるの底を叩く。ホームバーを埋めた客たちはついに久美子が排泄行為を展開し始めたのに気づき、わっと歓声を上げるのだった。
「とうとう始めたじゃない。ざまあないわ」
「こんな大勢の人間が見ている前でウンチをもらすなんて、恥を知ったらどうなのよ」
崩壊に追い込まれた久美子を見ながら、義子とマリが手を叩いて笑いあう。
「ほらほら、もっと派手にひりだすのよ」
マリが久美子の柔らかい腹部を押さえつけるようにすると、久美子は「や、やめてっ! く、苦しいわっ!」と絶叫する。そんな風に刺激された久美子は菊花を激しく収縮させると、一際大きな塊を押し出し始める。
「ほらほら、でっかいのが出てきたわ。久美子ったら、やっぱり便秘していたのね」
「それにしても立派なウンチや。さすがは柔道の達人だけあるで」
マリと義子はそんなことを言いながら久美子に嘲笑を浴びせ続けるのだ。
「うっ、ううっ……」
言語に絶する辱めを受けている久美子は激しく嗚咽しながらもその硬く大きな塊を絞り出す。次に久美子は隠微な菊花を激しく収縮させながら黄土色の汚物をうねうねと流し始める。
「わあ、健康的なのが出てきた、出てきた」
「さっきのぶっといのが栓になっていたんやね」
排泄物まで批評されるという屈辱に、ついに声を上げて泣き始めた久美子の尻を義子とマリはパシッ、パシッと叩きながら、「こうなったらお腹の中のものを全部出して、皆さんにお見せするのよっ」とわめき立てる。
「ああっ」
「も、もう駄目っ」
その時、汚辱の極限で号泣しながら排泄行為を展開している久美子をまるで擁護するかのように、美紀と絹代がほぼ同時に排便を開始したので、ホームバーの客たちはどっと沸き立つ。
「まあ、三人そろって始めたわ」
「なんて恥知らずな女たちかしら」
銀子と朱美、順子と葉子、和枝といった女たちも顔をしかめて嘲笑う。三人の美女の落花無残の崩壊劇を眼にした女たちは何とも痛快な表情になり、立ち込める臭気さえ気にならないようである。
「あ、ああっ、ど、どうしようっ」
哄笑の渦の中で久美子の腰部が突然ブルブル痙攣したかと思うと、激しい放水を始める。恥の上塗りといった汚辱の行為を展開する久美子を見た悪鬼たちの哄笑が一段と高まるのだ。
そんな久美子に追随するように美紀、そして絹代が放尿を始める。三人の美女は気が遠くなるような羞恥の限界で、意味のない言葉をうわ言のように口走りながら必死で汚辱に耐えているのだった。

豆吊り、そして浣腸という極限の折檻を受けた久美子、美紀、そして絹代の三人は入念に後始末をされるとようやくベッドからおろされる。美紀と絹代は激しい責めにまるで腰が抜けたようになっている。
「おやおや、しっかりしてくださいよ、奥様。これからが本番なんですからね」
津村はふらふらと崩れ落ちそうになる美紀を抱きとめるようにすると、うなじや胸元に接吻を注ぎ込む。
「ああ……津村さん。おやめになって……」
美紀は嫌々と力なく首を振るが、もはや強く抵抗する気力も体力も残っていないのか、津村にされるがままになっている。絹代もまた美紀以上に疲労し、ホームバーの床に思わずへたり込むようになるのを大塚順子と友子、直江の三人に引き起こされる。
「腰を抜かすのは早いわよ、絹代夫人」
「これから人間花器の修行をたっぷり受けてもらわなきゃならないのよ」
友子と直江はそう言って笑いあいながら絹代を両側から抱えるようにする。
川田によってベッドから引き起こされた久美子は、豊満な乳房を掴もうとする手を振り払うようにして立ち上がるが、すぐに腰砕けになって床に膝をつく。抱き起こそうとする川田を再び振り払うと、美紀と絹代の後姿に声をかけるのだ。
「み、美紀さんっ! 絹代さんっ。希望を捨てないでっ。か、かならず兄が助けに来てくれますわっ!」
血を吐くような久美子の言葉に美紀と絹代は振り向くと、悲痛な表情で頷く。
「大丈夫よ、久美子さん。私、負けませんわ」
「私もです。ですから、久美子さんも……」
そこまで口にした美紀と絹代の尻を順子が交互にパシッと平手打ちすると「二人とも、さっさと歩くのよっ」と苛立たしげな声をかける。
「さ、お嬢さんも早く立ちな。お床入りをすませようじゃねえか」
改めて肩を抱く川田を久美子はきっと睨み付けると、「か、川田さん。私、あなたに身体を汚されても、心は決して負けないわ。か、必ずいつの日か兄と一緒に、ここに誘拐されて人たちを助け出して、あなたたちを牢屋に送り込んでみせるわ」と口走る。
「糞までひり出したのに大層な啖呵をきるじゃねえか」
「ひょっとして京子以上のじゃじゃ馬かも知れねえな」
川田はさすがに吉沢と顔を見合わせて苦笑するのだった。
そんな久美子の様子を見ていた鬼源は、田代と森田と何事か話し合っていたが、やがて川田のほうを向いて口を開く。
「川やん、悪いが久美子の水揚げは中止だ」
「何だって?」
川田は目を剥いて頓狂な声を上げる。
「ここまで期待させてそいつあ殺生だぜ。久美子もさっき俺の女になることを承知したじゃねえか」
「申し訳ないが社長と親分と話して決めたことだ。その代わりと言ったら何だが──」
鬼源は川田と吉沢を手招きすると、耳元で何事か囁きかける。
「まあ、そういうことなら仕方ないが──」
川田は顔をしかめながら不承不承頷くと、顔を背けている久美子の方を見る。
「久美子、水揚げはしばらく延期だ。当分処女のままでいてもらうぜ」
久美子ははっとした顔で川田を見る。その表情に微かな安堵の色を見た川田は残酷そうに唇を歪める。
「それまでじっくり時間をかけて、俺と吉沢の兄貴でお嬢さんのそのひねくれた根性を叩き直してやれってのが社長の命令だ。自分からすすんで男に抱かれる素直な女になれるようみっちり教育してやるから覚悟するんだな」
川田はそう言うと吉沢と顔を見合わせ、さも楽しげに笑うのだった。

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