朱美は4人の奴隷たちの狼狽する姿をさも楽しそうに眺めていたが、自らの惨めな姿を恥じるように裸身をくねらせる美紀夫人の隣りに立ち、夫人の顎に手をかけてぐいと顔を引き上げ、「京子は初対面でしょう、改めて紹介するわ。村瀬美宝石店の美紀夫人よ」と言う。
「あ、朱美さん、こ、これはいったいどういうことなの?」
京子が憤怒に顔を赤く染めながらそう言うと、朱美は平然と
「どういういこともこういうことも、見ればわかるでしょう。小夜子と文夫が性の奴隷になったことを知ったお母様が、愛する子供たちと同じ屋根の下で暮らすために、自らも奴隷になることを決心したのよ」
と答える。
「ば、馬鹿なっ」
京子の美しい眉が恐ろしいほど吊り上がる。
「そんなこと、あるはずがないでしょう。どうせまたあなたたちが卑劣な手段を使って、村瀬の奥様を罠に落としたんでしょう」
「あら、随分なことを言うじゃない」
朱美の目が冷たく光る。
「奴隷の分際でそれだけのことを言うからには、覚悟は出来ているわね、京子」
「わ、私はもうどうなってもかまわないわ。でも、何の関係もない人たちをこれ以上地獄に落とすのはやめて頂戴っ」
京子は朱美の目をきっと見据えながらはっきりとそう言い放つ。
その京子の凛々しささえ感じさせる紅潮した顔を見ている朱美は、いかに汚辱の責めを受けようが、そして静子、美津子、そして小夜子といった女たちと倒錯の交わりを強制されようが、決して折れない精神の強靭さを京子の中に改めて確認させられたような思いになるのだ。
(でもそれももうすぐ終わりだわ。恋人の山崎が捕らえられて、奴隷に落とされたら京子の心の最後の砦も崩されるに違いないわ)
山崎の誘拐に消極的だった朱美は、京子が反発する姿を目にして気持ちが変わって行くのだった。
「ふん、なかなか良い覚悟だけど、この奥様のことに関しては、私たちが仕組んだという京子の想像は間違っているわよ。村瀬夫人がこんな姿になったのは京子の恋人の山崎探偵の責任なのよ」
「山崎さんの責任ですって?」
京子の顔に衝撃が走る。
「それはどういうことなの?」
「もっと正確に言うと山崎とその妹の久美子の責任かしら」
「久美子さん? どうして久美子さんが」
山崎の妹である久美子の名を耳にして、京子はさらに動揺する。
「久美子はあたいたちを騙して、この奥さんたちと一緒に田代屋敷にもぐりこんで、山崎やサツの連中を呼び込もうとしたんや」
義子が憎々しげに口を挟む。
「京子が葉桜団に潜入してあたいたちをあげようとしたことの二番煎じやけど、この村瀬夫人や美沙江の母親まで囮にした大胆な手口やった上に、土壇場で悦子まで裏切ったんであたいたちも危ないところやったわ」
「美沙江さんのお母さんって……」
「もちろん、千原流の家元夫人のことや」
義子が楽しそうに答える。
「それでもギリギリのところで作戦は失敗。この美紀夫人だけでなく、千原流の家元夫人も森田組の女奴隷にさせられて、あたいたちをはめようとした久美子は昨日からずっときつい折檻にかけられているところよ」
「辛子責めにお尻の穴の糸通しが終わって、今頃は姫輪責めの真っ最中かしら。気の強いお嬢さんだったけど、おしっこの穴にまで辛子を塗られた時は、さすがに子供みたいにヒイヒイ泣いていたわ」
マリもまたさも楽しげにそう京子に告げる。
「な、何てことを……」
「まあ、久美子の場合は自業自得よ。お兄さんの山崎探偵があまりへぼなのを見るに見かねて、自分から率先して協力したあげくそんな目にあったんだから」
朱美はそう言うとせせら笑いながら美紀夫人を見る。
「お気の毒なのは千原流の家元夫人と、ここにいる美紀夫人ね。山崎と久美子にそそのかされて危ない橋を渡らされたあげく、素っ裸の奴隷におなりになったのだから」
京子はもはや言い返す気力も失い、呆然と立ち尽くしているばかりだった。
そんな女たちのやり取りをニヤニヤ笑いながら見守っている津村に、義子がビール瓶を片手で持ち上げて声をかける。
「津村はんも一杯どうでっか」
「いいね。ちょうど喉が渇いていたところだ」
津村は美紀夫人の縄尻を引きながら女たちの間に座る。美紀夫人も縄に引っ張られ、津村の隣りに腰を下ろすことになる。
「それじゃ、あらためて乾杯」
惨めさにすすり泣く奴隷たちの声を聞きながら、朱美、義子、マリ、そして津村の4人はグラスを鳴らす。
「ああ、セックスの後の一杯は最高だ」
グラスのビールを飲み干した津村がそう言うと三人の女たちはどっと笑いこける。
「奥様のお味はいかがだったの」
マリの問いに津村が「最高だったね」と即答したので、三人のズベ公は再び声を上げて笑う。
「いや、真面目な話40を過ぎているとはとても思えない味の良さだ。肌も吸い付くような弾力があるし、襞が肉棒に絡み付いてくるような感触がたまらないね。娘の小夜子が名器なのは母親譲りだと良く分かったよ。村瀬社長は幸せ者だね」
自分の身体についてのそんな卑猥な論評を聞かされている美紀夫人は恥ずかしさに身体を縮めるようにしている。
「へえ、そりゃ大したものだわ」
「津村はんがそれほど褒めるってことは本物やね」
マリと義子が感心したようにそう言い合う。
「それでこの奥様、何回気をおやりになったの?」
朱美がニヤニヤ笑いながら尋ねると、津村は
「さあ、何回だったかな」
と美紀夫人の方を見る。
美紀夫人はいっそう赤く頬を染め、津村から懸命に顔を逸らすようにする。
「僕に抱かれながら何度気をやったか、朱美たちに教えて上げるんだ、美紀」
「つ、津村さん……」
美紀夫人が恨めしげに津村を見てそう言うと、津村はぴしゃりと「僕のことは『あなた』と呼べといったろう」と言い放つ。
「僕は美紀の腹の中に入っていた、亭主にも見せたことのない汚いものもすっかり目にしただけでなく、排泄の後始末までしたんだ。今さら他人行儀な口のきき方をするんじゃない」
津村が美紀夫人に、情婦に対するような態度を取っていること、そして勝ち気で気位の高さを見せていた美紀夫人がはっきりと従順さを示していることに朱美たちは驚くのだった。
「あなた……」
美紀夫人は潤んだ瞳を津村に向ける。その妖艶なまでの美しさに朱美は息を呑む。
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