150.懊悩の限界(12)

「そ、そんなことをさせられては私、い、生きていることは出来ませんわ」
美紀夫人が朱美の恐ろしい言葉に顔を真っ青にして震え始めると、義子が「おおげさなことを言うんやないで」と笑う。
「小夜子なんか大勢の客の前で静子夫人とレズビアンの契りを結んだだけやなくて、夫人と二人並んで立ち小便まで演じたんやで。それに比べたら鈴縄踊りや糸通しくらい、どうってことはないやろ」
「そうよ、文夫だってそこにいる美津子と、お互いに処女と童貞を奪い合う前代未聞の白黒ショーを演じたのよ。お色気踊りくらいで怖じけづくなんて、母親として恥ずかしいとは思わないの」
義子とマリはそんな風に揶揄の言葉を投げかけると、自分たちの言ったことがよほどおかしかったのか、顔を見合わせてゲラゲラ笑い合う。
美紀夫人はそんなズベ公たちのからかいの声を信じられない思いで聞いている。
そんな美紀夫人に京子と文夫の甘い睦言めいた会話が聞こえて来る。
「あ、ああっ、ふ、文夫さん、姉さん、とても素敵な気分よ……文夫さんはどうなの?」
「僕も、気持ち良い……姉さんのマンコに吸い込まれるようだよ」
「ああ……そんなに良いの……文夫さんのチンポも硬くて……大きくて……素敵だわ」
京子と文夫はズベ公たちに強いられるまま、そんな卑猥な会話を交わしながら、我を忘れたように腰を振り合っているのだ。
(ああ……文夫……)
すっかり自分を失ったように、京子の肉体に溺れている息子の姿に茫然としている美紀夫人の耳に、続いて小夜子の切羽詰まった声が聞こえて来る。
「ああっ、あ、あなたっ。さ、小夜子、もう、いきそうっ」
「遠慮しないでいい。小夜子。思い切りいくんだ」
「で、でも……ママが見ている前で……ああ……小夜子、は、恥ずかしいっ」
「お母さんに小夜子がすっかり大人になったところを見せつけてやるんだ。小夜子はもう恥ずかしいなんていう感覚は許されないんだぞっ」
「ああ……そ、そんな……ひどいわ、あなたっ……」
(小夜子……)
小夜子もまた文夫と同様に、この倒錯の世界の中にすっかり浸り切っている。もはや二人を救うには、自分自身も同じ世界に飛び込むしかないのか。美紀夫人の心の中にそんな悲愴な思いがこみ上がって来る。
「いずれにしてもタイム・イズ・マネーって言うじゃない。早速練習してもらうわ」
朱美はそう言うとひとり取り残されたようにぽつんと立っている美津子の方を見る。
「美津子、ちょっとこっちへ来なさい」
声をかけられた美津子はびくんと身体を震わせ、脅えたような目を朱美に向ける。
「何をびくびくしているの。さっさとこっちへ来るんだよ」
美津子は朱美にせかされて片手で乳房を、もう一方の手で股間を隠しながら美紀の方へ近づく。
「馬鹿ね。いまさら何を隠しているのよ」
朱美は呆れたような声を出すが、マリが「まあまあ、この方が女学生らしい恥じらいがあって良いじゃない。開き直ってどこもかしこもおっぴろげ、というよりは客にも受けると思うわ」と口を挟む。
「そんなものかね」
朱美は首を捻るが「まあ、どっちでも良いや」と言うと、赤白だんだらの鈴縄をポケットから出し、美津子に渡す。
「これを美紀夫人の身体にかけてやるんだ」
朱美の命令に美津子は凍りつくような表情になる。
「そ、そんな……出来ません」
「出来ないってことがあるかい。美津子も小夜子や京子がこの葉桜団特製の鈴縄をかけられて、お色気たっぷりの踊りを踊ったのを見ていただろう」
「そうそう」
義子が頷くと美津子の肩をポンポン叩く。
「夕霧女学園に在籍する才女の美津子やから、この大きな鈴縄と小さな鈴縄が女の身体のどこを責めるのかわかるやろ? わかったらしっかりと奥様のお股をこれで締め上げてやるんや」
そう言われても美津子は脅えたような表情で首を振り、その場に崩れ落ちて行く。
「何を遠慮してるんや。さっさとせんかい」
義子はそう言うと美津子の背中をどやしつける。そこにマリが「義子、そんなことを言われても美津子が遠慮するのも無理はないよ」と宥めるように声をかける。
「どうしてや」
「考えてもご覧よ。美紀夫人は美津子にとって愛する旦那様のお母様、つまりはお姑様じゃないの。どこの世界に姑の股に遠慮なく鈴縄をかける嫁がいるんだい」
「なるほど。そう言われてみたらそうやな」
義子は感心したように頷く。
マリと義子の会話の流れから美津子は、美紀夫人に対する淫らな行為を強要されることからは逃れられるのではないかという希望が湧いたのか、愁眉を開いたような顔付きになるが、次の義子の言葉を聞いたとたん再び表情を曇らせる。
「しかし、そやからといってこのままにする訳にはいかへんで。今は美津子もこの奥様も森田組の奴隷なんやから」
「そりゃそうさ。だからこの場合は奥様の方から誘ってもらわないとね」
マリはそう言うと座敷の押し入れを開けると、電気アンマの器械を取り出し、美紀夫人に近寄る。
「な、何をするの……」
脅えたような顔付きになる美紀夫人に、マリはニヤニヤ笑いながら「そんなにびくつくことはないよ。小夜子だって楽しんだものだよ」と声をかける。
マリが電気アンマのスイッチを入れ、美紀夫人の柔肌に押し当てると、夫人は「ああっ!」と絹を引き裂くような悲鳴を上げる。
「おおげさな声を出すんじゃないよ。硬くなった身体をほぐしてあげるだけじゃないか」
マリはそう言いながらブルブル振動する電気アンマの先端を美紀夫人の裸身のあちこちに押し当てる。
「あ、ああっ!」
乳房や太腿、腋の下、鳩尾と言った身体の柔らかい箇所を立て続けに責め立てられた美紀夫人はたちまち激しい狼狽の声を上げながら、成熟した裸身を悶えさせる。
「小夜子のときもそうだったけど、まったくこの電気アンマは効果抜群だね」
美紀夫人の狂態ともいうべき悶えぶりを満足そうに見ながら、マリは責め続ける。
「あたいも手伝うよ」
義子は冷酷そうな笑みを口元に浮かべると、コールドクリームの瓶を手に取ると蓋を開け、指先でクリームを掬う。
「この奥様、こっちも満更じゃないんやって?」
義子はそう言うと片手で美紀夫人の尻たぼをぐいと押し開き、露わになった菊蕾にクリームをべったりと塗り付ける。
「い、嫌っ! そ、そこはっ!」
思わぬ箇所を責められ、一層激しく狼狽える美紀夫人の尻を義子はパシッとひっぱたく。
「ガタガタ騒ぐんやないっ! 小夜子や文夫はもうここんところの調教を受けてるんやっ。娘や息子が出来ることを母親が出来へんで恥ずかしくないんかいっ」
「すごい理屈だね」
怒声を上げる義子に朱美がたまらずぷっと噴き出す。

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