176.ダミヤの涙(3)

「そりゃそうさ。ずいき製の褌だからね」
「お、お願いですっ。は、外してくださいっ」
「ハハハ、あんたの花婿さんに優しく外してもらうんだね」
「は、花婿ですって?」
ダミヤの顔色がさっと青ざめる。
「な、なんのことですかっ」
「いけばわかるさ」
義子とマリは代わる代わるダミヤの体を小突きながら、一階の廊下の突き当たりにある座敷の前まで連れて行く。
「ここがあんたと花婿さんが新婚生活を送るためのスイートルームさ」
マリがニヤリと笑いながらそう告げると、義子もまた「あんたのお友達の静子夫人も、しばらくここで暮らしたことがあるんや」と笑う。
「さ、入るんだ」
マリが引き戸を開けると汗と体液の臭いが入り混じったなんとも言えぬ臭気が鼻孔を刺激する。ダミヤが思わず顔をしかめた時、突然、部屋の中から素っ裸に褌一本の大男が現れ、ダミヤにしがみつく。
「い、嫌あっ!」
男はヘラヘラ笑い、涎を垂らしながらダミヤに抱き付くと、その豊満な乳房や滑らかな腹部をごつごつした指先で撫で回す。ダミヤは懸命に逃れようとするが万力のような男の腕で抱えられ、ろくに身動きも出来なくなっている。
「紹介するよ。あんたの花婿、江川捨太郎さんだよ」
マリはそうダミヤに告げると、義子と顔を見合わせてプッと吹き出すのだった。
捨太郎は鬼源が浅草から実演ポルノのスターとして連れてきた大男である。子供の頃、脳膜炎を患ったために精神はやや異常を来しており、常にだらしなく涎を流し続け、目は焦点を失ったようにとろんとしている。
しかしながら捨太郎の精力は正に絶倫であり、毎日生肉と生ニンニクを喰らい、朝2回、夜3回は射精しないと身体の調子が悪いとうそぶくほどであった。
捨太郎の実演の相手は、この奇怪な大男と強制的に結婚させられた静子夫人がもっぱら務めていたが、夫人が妊娠してからは捨太郎は特定の相手を持つことが無かった。
というよりも森田組に囚われている美女の中で、この絶倫の大男の相手が出来るものがほとんどいなかったのである。
若い桂子や美沙江、美津子では捨太郎の本格的な相手は到底無理であった。静子夫人に代わりうる美女としては珠江夫人がいたが、いかんせん調教不足である。かろうじて京子と小夜子が調教の合間に交代で捨太郎の夜の相手を務め、この絶倫男の獣欲の発散を図っていたが、とてもそれでは間に合わない。
ようやく調教の目処がたった珠江夫人が正式に捨太郎の相手として指名されたが、夫人は何かというと人間花器の調教を持ち出す大塚順子に独占され勝ちで、捨太郎は常に欲求不満気味であった。
そこに丁度良く現れたのがダミヤである。
静子夫人を上回る肉体美を誇るフランス美女、ダミヤと絶倫男の捨太郎を組合せようという森田のアイデアは田代の賛成を得て早速実行に移されることとなったのだ。
捨太郎が静子夫人との婚姻関係を解消し、フランス留学時代の親友であったダミヤを新しい妻に娶るという痛快なアイデアは、田代屋敷にたむろする女愚連隊達に歓呼の声で迎えられた。
葉桜団の義子とマリが、ずいきの股縄に股間を締め上げられたダミヤを捨太郎が待つ座敷に連れこむと、ここ数日、女体に触れていないことによって欲求不満の塊となっている捨太郎はダミヤの白い肌を見るなり興奮の極に達したのである。
「やめてっ、やめてくださいっ」
捨太郎はダミヤの股縄をひきちぎるようにして脱がせると、全裸になったグラマーな白人女を、座敷の中央に敷かれた薄い布団の上に押し倒し、組み敷いていった。必死で抵抗するダミヤだったが、絶倫の大男の怪力の前ではまさに大人と子供といった有り様であり、捨太郎は余裕たっぷりといった風に、ダミヤにのしかかって行くのだった。
「お願い、やめてっ! わっ、私は、結婚しているのですっ」
切羽詰まったダミヤが血を吐くような声で悲鳴を上げる。
「なに寝ぼけたこといってるの」
義子とマリは顔を見合わせると、ぷっと吹き出す。
「この捨太郎さんが、あんたの新しい夫だっていったでしょ」
「案外頭の悪い女やね」
葉桜団の悪女達が、捨太郎の巨体の下から逃れようと、必死で抵抗しているダミヤを嘲笑するようにいう。
「そ、そんなっ――ううっ」
ダミヤはバラの花びらのような唇をいきなり、捨太郎のニンニク臭い分厚い唇によってふさがれ、呻き声を上げた。
ダミヤが乗る車を体当たりで止めてあばら骨が二、三本折れた捨太郎の腹部には包帯が幾重にも巻かれているが、捨太郎は全く気にする風でもない。
「嫌っ! この人とは、死んでも嫌っ!」
ダミヤは既に自分を組み敷いている捨太郎が、ダミヤと山崎による久美子の救出を阻んだ張本人だということに気づいている。そんな仇敵とも言うべき男に犯される屈辱にダミヤは気が遠くなりそうになる。
そんなダミヤの思いをまったく意に介さないといった風に捨太郎は、ダミヤの豊かな乳房を意外なほど繊細な手つきでやわやわと揉み上げ、舌先を強く吸い上げる。
「ああっ、嫌っ!」
捨太郎の手はダミヤの腹部から下半身に伸び、腿の付け根のあたりを愛撫する。
ずいきの股縄で敏感な個所を刺激されていたダミヤの下半身は痒みで痺れきっている。そこに捨太郎の無骨だが巧妙な愛撫を加えられ、たちまち官能を刺激されていくのだった。
「ああっ! 駄目っ! やめてっ!」
そんな妖しい感覚を振り払うかのように、ダミヤは必死で身悶えする。
「余計なことに首を突っ込んで、森田組と葉桜団を敵に回したことをゆっくり後悔させてやろうよ」
マリが勝ち誇ったような顔でそう言うと義子は「そやねえ」と頷くが、「そやけどこの女、捨太郎に抱かれて案外気分を出してるんやない?」と首を傾げる。
「そう言えば……」
マリもまたダミヤの悲鳴が徐々に艶を帯びてきているのに気づく。
「あっ、そっ、そこはっ、そこは駄目っ!」
突然ダミヤが狼狽えたような悲鳴を上げる。何事かと覗き込んだ義子とマリは、捨太郎が節くれだった指先でダミヤの隠微な菊花をまさぐり始めていたことに気づき、歓声をあげる。
「さすがは捨太郎や。もうこの金髪女の急所を見つけたみたいや」
そう言った義子の方を捨太郎が振り向き、黄色い歯を見せて笑う。
「ああ、ああっ!」
捨太郎は片手の指すべてを駆使して、ダミヤの菊花から秘奥、そして敏感な花蕾までをリズミカルに愛撫する。そしてもう一方の手でダミヤの豊かな乳房をやわやわと揉み上げる。ダミヤはもはや抗うことも忘れたかのように捨太郎の技巧に翻弄され、官能の嵐に飲み込まれて行くのだった。

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