291.無残千原流(7)

「駄目ですわ、お嬢様。女奴隷には恥ずかしいなんて感情は許されないのです。さ、もっとお尻を振って、お客様を誘うのです」
 珠江夫人はそう言って美沙江の尻を軽く叩く。すると美沙江は甘くすすり泣きながらもコクリと頷き、未だ幼ささえ感じられる尻をゆらゆらと揺らす。
 時造によって純潔を散らされて間もない十九歳の美沙江の裸身は、女と言うよりも美少女という表現の方がふさわしい。そんな美沙江が女の秘苑から、双臀の狭間に秘められた菊蕾まで露わにして、男を誘うように尻を振る姿に観客の男たちはすっかり魅せられ、美沙江のその部分に目を釘付けにさせられているのだ。
「絹代様、さ、お嬢様に負けないようにお尻を振って、殿方の機嫌を取るのです」
「は、はい」
 絹代は捨て鉢な気持ちになって、静子夫人に命じられるまま優美な腰部をくねらせる。華道の家元夫人のそんな淫らな仕草に観客はどっと沸き立つのだ。
「ああ、お、お母様……」
「美沙江……」
 娘と母は涙に濡れた瞳を向け合い、互いを励ますように呼び合っている。そんな哀切な声音とは裏腹に、美貌の母娘は羞恥の部分に向けられた男たちの視線を火のように感じ、その肉体を熱く燃え立たせていくのだ。
 絹代夫人と美沙江の秘園が、朝露のような蜜にキラキラと輝いているのに静子夫人は、気づく。
(ああ……これで絹代様も私たちと同じ……)
 衆人環視の前で辱められ、痴態を晒すことに倒錯的な悦びを感じる女になったのだと思うと、静子夫人は胸がふさがるような痛ましいような思いとともに、何か不思議に安堵したような気分になるのだ。
 この地獄屋敷で生き抜くためには、悪鬼たちの責めを悦びに変える心と肉体を持たなければならない。
 静子夫人はこれまで、桂子、小夜子、珠江、そして美沙江にそんな女奴隷としての心構えを教えさせられてきた。今、それを絹代夫人にも伝えるときが来たのだと、静子夫人は感じるのだった。
 静子夫人は心を鬼にして、絹代夫人に命じる。
「絹代様、お嬢様の口を吸ってあげて」
「えっ」
 絹代夫人はさすがに驚いて目を見開く。
「母と娘で口を吸い合い、互いに立派な女奴隷になるように誓い合うのよ。さ、早くしなさい」
 静子夫人はことさらに冷たい声で、そう言い放つ。珠江夫人もまた静子夫人の意図を察したように、美沙江に対して「お嬢様、さあ、お母様に口を吸ってもらいなさい。早くするのよ」と命じる。
「はい」
 美沙江は頷くと、潤んだ瞳を絹代に向け、「お母様、お願い。美沙江の口を吸って」と甘えるように言う。
 情感の籠もった視線を実の娘に向けられた絹代は恐ろしさに駆られ、思わず顔を背けるが、すかさず静子夫人が「駄目よ、絹代様」と絹代の太腿をピシャリと叩く。
「お嬢様がせっかく、そ、その気になっているのです。お答えになってあげて」
「わ、分かりました」
 絹代夫人は頷くと、美沙江に顔を向ける。美しい母と娘はしばしその瞳と瞳を見交わしていたが、やがてどちらからともなく目を閉じ、顔を寄せ合う。
 絹代夫人と美沙江の唇がそっと触れ合う。その瞬間、二人の裸身は背徳の畏れからブルッと震えるのだ。
「絹代様、そんな真似事のようなものではお客様は満足なさいませんわ。もっと情熱的にお嬢様の舌をお吸いになって」
 静子夫人がそうやって絹代夫人を叱咤すると、珠江夫人もまた
「そうですわ、お嬢様。もう、母娘なんて思っては駄目。恋人同士だと思って、舌を吸い合いなさい」
 と言って美沙江の尻を軽く叩くのだ。
 二人の美夫人からからそう急き立てられた絹代夫人と美沙江は、次第に我を忘れたように、互いの舌を強く吸い合う。母と娘の間で演じさせられるそんな倒錯の行為が、二人の身体に火を点けたのか、絹代夫人と美沙江はともに白い裸体を薄桃色に染めながら、官能に痺れに酔い痴れたかのように、ゆらゆらと形の良い尻を揺らすのだった。
 絹代夫人と美沙江の、母娘相姦とも言うべき絡み合いを見守っている静子夫人は、かつて義娘の桂子との間で強制された背徳の交わりを思い出している。義理の関係でさえ耐え難いほどの辛さだった行為を、絹代夫人と美沙江は血の繋がった関係で強要されているのだ。
 静子夫人はふと珠江夫人に目をやる。珠江夫人は絹代夫人と美沙江が熱い接吻を交わしあっているのを見ながら、腰に双頭のディルドオを装着させているのだ。
「いいわ、お嬢様、いらして」
 珠江夫人が美沙江の背中を軽く叩くと、美沙江はようやく絹代夫人との長い接吻を終え、とろんとした視線を珠江夫人に向ける。
「こ、今度はおば様が愛してあげるわ。いらして」
「はい……おば様」
 美沙江は珠江夫人に抱かれて、舞台中央に敷かれた布団の上に連れて行かれる。
「お嬢様、今日は上になる、それとも下が良い」
「ど、どちらでも良いわ。おば様の好きなようになさって」
「それなら、お母様の方を向いて四つん這いになって……犬のように」
 珠江夫人がそう言うと、美沙江はコクリと頷き、絹代夫人の方に顔を向けて四つん這いの姿勢になる。
「そ、そうすればおば様に愛されているお嬢様の顔が、お母様にはっきりと見えるでしょう」
「ああ……そ、そんな」
 恥ずかしさのあまり顔を逸らせる美沙江。
 そんな娘の姿を呆然と眺めている絹代夫人の、観客席に向かって突き出された双臀の狭間に、静子夫人が手にした張り型をそっと当てる。
「ああ……し、静子様、何を……」
「お嬢様と珠江様が愛し合っているのをただ眺めているのもお寂しいでしょうから、こうして楽しませてあげるわ」
 静子夫人はことさらに冷静な口調でそう告げると、張り型を静かに絹代夫人の中に沈め込ませていく。
 淫具をゆっくりと呑み込まされていく絹代夫人は切なげに腰をくねらせる。身体の裡から込み上げる快感に絹代夫人が思わず「ああ……」と切なげな声を上げたとき、珠江夫人が装着した張り型に背後から貫かれた美沙江が「はあっ」という呻き声を上げる。
「お母様によく聞こえるように、良い声でお泣きなさい」
 珠江夫人はそう言いながら、美沙江をゆっくりと犯し始める。度重なる調教によって、すっかりレズビアンの悦びを身体に沁み込まされている美沙江は、母親の目の前で痴態を晒すことを激しく羞じらいながらも、珠江夫人に導かれてたちまち快感の坂を駆け上がっていくのだ。
「ああ……お、お母様……見ないで」
 美沙江は思わずそう口走るが、珠江夫人は「駄目よ、お嬢様」と言って腰の動きを止める。
「お母様にしっかり見て頂くのよ。お嬢様がどんな淫らな娘かと言うことを」
「ああ……ひ、酷いわ。おば様。どうしてそんな意地悪を言うのっ」
 美沙江はシクシクとすすり泣きながらも、中断された快感にむずがるように優美な腰部を蠢かせるのだ。

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