21.懊悩(2)

「先にお風呂にします?」
「ああ……」
私はスーツとワイシャツを脱ぎ、脱衣所へ行きます。妻はすでに下着とタオルを用意していました。
軽く身体を洗い、湯槽に浸かっていると妻が「いいですか」と声をかけます。「ああ」と答えると、全裸の妻が前を隠しながら入ってきたので、私は驚きました。
恥ずかしがり屋の妻は私と一緒に風呂に入ることなどめったにありません。私が何度誘っても小さく微笑して「また今度ね」と断ってきます。これまでその「今度」があった試しはないのですが。
「どうした、珍しいな」
「たまには良いでしょう」
妻はそういって微笑むと、身体を流しスポンジで軽く洗います。湯を浴びて輝く妻の裸身に私は思わず見とれてしまいました。
「あなた、背中を流しましょうか」
「そうか、すまないな」
私は湯槽から上がり、妻に背中を向けて座ります。妻はスポンジでゆっくりと私の背中を洗い始めました。
長尾の背中もこうして洗ってやったのだろうか、そして、西伊豆ではコンパニオンたちと一緒に役員の男たちと混浴して、ソープ嬢まがいのことをさせられたのかもしれない。私の頭にふと残酷な思いつきが浮かびました。
「オッパイを使って洗ってくれ」
「え……?」
妻の手が止まります。
「聞こえなかったか? スポンジじゃなくて、絵梨子のオッパイを使って背中を洗ってくれ」
「あなた、冗談を言っているの?」
「冗談じゃない。絵梨子のオッパイを背中に感じたいと思っただけだ」
妻はしばらく無言でいましたが、やがて「いいわ」と答えました。
妻は私の背中に身体を寄せ、大きくはありませんが年の割には形の整った乳房を押し付けてきます。妻の乳房の柔らかい感触を背中に感じながら、私はなぜか腹立たしい思いに駆られていました。
それは私の突飛な要求を呑んだ妻に対する理不尽な怒りでした。私の望みを断っていたらそれはそれで腹を立てていたでしょうが。この程度のことは妻にとってなんでもないことなのかも知れません。
「前に回ってくれ」
「あなた、どうしたの? 今日はちょっと変よ」
「変なのは絵梨子もだろう」
妻は不承不承といった風に前に回りました。石鹸に濡れた全裸像が私の前に露わになります。妻はしばらく私の視線を避けるように顔を逸らせていましたが、いきなり抱きついてきました。
「どうした?」
「だって……恥ずかしい」
「恥ずかしい?」
犬山達の前ではとんでもない破廉恥な姿を晒しておいて、なにをカマトトぶっているんだと私はますます腹立たしい気持ちになりました。夫である自分に対してはもったいぶった態度をとりながら、他の男たちに娼婦のようなサービスをする妻に私は馬鹿にされたような気持ちになり、妻の裸身をぐいと押しのけます。
「ここを洗うんだ」
私は妻の手を取って、自分でも驚くほど隆々と屹立しているペニスに添えさせます。妻は恥ずかしげにもじもじしていましたが、やがてこくりと頷きました。
妻は掌で石鹸をあわ立て、私の肉棒をゆっくりとこすりあげます。妻はちらとそれに目をやるとほんのり頬を染め、「大きい……」と溜息をつくように言います。私はそんな妻の姿を見ていると、ますます嗜虐心が高まってくるのを感じます。
「手で洗うのはもういい。今度は絵梨子のここで洗ってくれ」
私は妻の股間に手をやり、秘苑に指を差し入れました。
「駄目……」
その部分からは既に熱い愛液が溢れんばかりになっていたので私は驚きました。
(こんな淫らな身体にされやがって……)
これも長尾や、犬山達の調教のせいか。私は湧き上がる凶暴な気持ちに駆り立てられながら、妻の身体を抱き上げると膝の上にのせあげます。
「こんな格好で……」
石鹸で滑りやすくなっているせいか、私のペニスは妻の蜜壷に中にするりと入っていきました。いわゆるソープの「壷洗い」というプレイです。
「あ、ああっ……」
妻は私の膝の上で腰を上下し始めます。その動きは次第に速くなり、はあっ、はあっという喘ぎ声も大きさを増していきます。40歳を過ぎた妻ですが、むしろ最近の方があそこの締まりは良くなってきたような気がします。そんなことすら他の男たちからの調教の成果なのかと思うと腹立たしくなり、私も激しく下から突き上げて応戦します。
「どうだ、イキそうか」
「ああっ……」
「イクときはイクというんだ」
「……は、はいっ……あ、あっ……イクっ!」
妻は引きつったような声をあげると私にしっかり抱きつき、豊かな双臀を小刻みに震わせました。私はもう少しで中に出しそうになるのをなんとかこらえました。
妻は快楽の余韻に浸るように、うっとりとした顔を私の肩先に押し付けてきます。私は妻に、
「絵梨子、俺はまだ出していない。口でやってくれないか」
といいました。
妻は一瞬戸惑ったような表情を浮かべましたが、すぐにこっくり頷くと自分の愛液で濡れた私のものを咥えます。犬のように舌を出し、ペロペロと鈴口を舐めたり、大きく口を開いて玉を含んで舌の上で転がすような技巧を見せる妻に、私は内心驚きを禁じえません。以前の妻なら考えられなかったような行為です。
「随分うまくなったじゃないか、絵梨子」
そうからかうと、妻はちらりと上目遣いで私を見ました。
「どこかでこっそり練習しているんじゃないのか」
思い切ってそんな風にカマをかけてみましたが、妻はゆっくりと首を左右に振るだけです。
(とぼけやがって……今に見ていろ)
こんな風に長尾のものを何度も愛撫し、その迸りを口の中で受け止めていたのか。他の男に汚された妻の口を自分のもので犯すという倒錯的な快感に、じっと堪えていた私の欲望は遂に爆発しました。
「うっ……ううっ……」
私の精液を舌に感じた妻は、眉をしかめて顔を引こうとしますが、私は頭を押さえつけるようにして最後まで妻の口の中に射精しました。いつもとは違う私の乱暴な行為に妻は恨めしそうに私を見ますが、口の中のものを吐き出そうともせず、ごくりと喉を鳴らして飲み込んでいきました。
妻はしばらく恥ずかしげに横を向いていましたが、やがて立ち上がります。
「先に上がって、食事の用意をしてきます」
「ああ……」
妻はくるりと私に背を向けて、浴室を出て行きました。私は妻の逞しいばかりに張り出した尻をぼんやりと眺めていました。

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