78.地下室の三人(3)

 また、それは美紀や絹代がこの地獄屋敷で、小夜子や美沙江たちと無残な邂逅を果たし、その結果互いに心の傷を負うのを避けたかったためでもある。
しかしながら葉桜団の銀子は、無慈悲にも昨日までの仲間であった悦子を酸鼻な私刑にかけることで、そんな久美子の意図を完全に挫いたのだ。
「全員、裸になりな」
朱美が三人の美女に命令する。
「お願い、その前に二人をお手洗いに――」
久美子も先程からかなり切迫した尿意を覚えていたが、極力水分を控えていたのでまだしばらくは我慢することが出来る。しかしながら昨日久美子の分まで紅茶を飲んだ美紀と絹代、特に絹代の尿意はすでに限界に達しているだろう。現にいまも時折苦しそうに身体を小刻みに震わせているのだ。
「トイレに行かせてほしいのなら言うことを聞いて、さっさと裸になるんだ。もっと痛い目にあいたいのかい」
「……わかったわ」
ここでこれ以上粘っても絹代の苦しみを増すばかりだ。久美子は覚悟を決めてピンクのペチコートを脱ぎ、パンティ一枚の裸になる。美紀と絹代も久美子に倣う。
「一枚残っているよ。パンティも脱ぐんだ」
「えっ」
久美子は思わず顔を引きつらせる。
「私たちを素っ裸で引き回そうというの?」
「そうしたいところだけど、始めから丸裸じゃあ興が殺がれるからね、こんなものを持って来たよ」
銀子が義子に目配せすると、義子が手に提げて来たカバンから色のついた布を取り出す。
「これは何だか分かるか」
義子はピンク色の布を久美子に突き付ける。久美子の戸惑いの表情を面白そうに眺めていた義子は「わからんか、六尺褌や」と言う。
「そ、それを私たちにさせようというの」
「そうや、お転婆な久美子にはこれから心を入れ替えて色修行に励むという意味で、ピンクの褌を選んであげたんや」
義子はそう言うと、マリと顔を見合わせて笑う。
「ちなみにこれは京子が身につけていたのと同じものや」
義子のその言葉に久美子は衝撃を受ける。
「そっちの奥さんはこれよ」
朱美が水色の褌を美紀に見せびらかすようにする。
「これはあんたの娘の小夜子がつけていたものよ。母娘仲良くお揃いの色を選んであげたのだから感謝するのよ」
朱美の言葉にズベ公たちはキャッ、キャッと笑い合う。
「最後に奥様はこれよ」
マリが紫色の褌を絹代に見せつける。
「これは最初は静子夫人、次に珠江夫人が身につけた由緒正しいお褌よ。二人のような立派な奴隷になれるように奥様に身につけてもらうわ」
ズベ公たちの笑い声が一層高まる。三人の美女は屈辱に唇を噛み締め、俯いている。
「丸出しのままで屋敷を引き回される方がいいのかい? こっちはそれでも一向にかまわないんだよ」
三人の美女は無言で首を振る。
「分かったらさっさと素っ裸になるんだ。時間がもったいないよ」
久美子は憤怒に燃える視線を銀子にちらと向けたが、やがて諦めたようにパンティを脱ぐ。
美紀と絹代も久美子に倣い、羞恥に頬を染めながらパンティを降ろす。
素っ裸になった三人の美女に朱美、義子、マリが取り付き、褌を締めさせていく。
「あっ、そ、そんな」
「ちゃんと股ぐらに食い込ませるんだ。変にズレると肌が擦りむけるよ」
「い、嫌っ」
「もっと股を開かないと締められないやないか」
「もう、許して」
「思い切り締めないと途中で解けちまうよ。我慢するんだ」
ようやく久美子たちは揃って褌姿にされる。双臀を丸出しにした三人の姿はエロチックであると同時になんともユーモラスである。
その時、地下室倉庫の扉が開き、チンピラの竹田と堀川が入ってくる。
「何をぐずぐずしているんだい。上で社長や親分がお待ち兼ねだぜ」
そう言って部屋の中に入って来た竹田と堀川は、褌姿の三人の美女を目にして棒立ちになる。
「どうしたのさ、あんたたち。この屋敷にいるといい加減裸の女を見るのは慣れただろう?」
「い、いや」
銀子の声に竹田が我に返ったように首を振る。
「こればっかりはなかなか慣れねえや」
「それも、こうやって三人並ぶと迫力だもんな」
「そんなことを言うのはまだまだ子供の証拠だね」
二人の言葉に朱美が噴き出す。
「なんでえ、朱美だって俺たちと齢はそんなに変わらないだろうに」
「そうだけど、齢といえば、そこの久美子はともかくとして、後の二人はあんたたちの母親くらいの齢だって知っているのかい?」
「え?」
「本当かい?」
竹田と堀川は同時に頓狂な声をあげる。
「本当さ、そっちの紫の褌の絹代は42歳、赤い褌をした美紀は45歳になるんだよ」
「なんだって、そいつは驚いた」
竹田と堀川は二人の美夫人を改めてしげしげと見つめる。
「とてもそんな齢には見えねえぜ」
「よほど良いものを食ってやがるんだろうな」
二人のチンピラが脂ぎった顔を近づけて来たので、美紀と絹代はおもわずおぞましさに顔を背ける。そんな様子を見ていた銀子が苦笑しながら口を開く。
「母親くらいの女の裸を見てそわそわするんだから、まだ子供だって言うんだよ」
「ちっ、そんなことを言ってるが、その二人だって他の女奴隷みたいに売り物にすることになってるんだろう」
「そりゃあそうさ。これからじっくりその品定めをしようってんじゃないのかい」」
「おっと、そうだった」
銀子の言葉に竹田が我に返ったような顔になる。
「社長と親分がお待ち兼ねだ。急いでくんな」
「わかったわ。義子、縄を出しな」
銀子が指示すると、義子がカバンの中から麻縄を取り出す。
「また暴れられたら厄介だからね、縛らせてもらうよ」
そう言うと銀子が久美子を、朱美が美紀を、そしてマリが絹代を後ろ手に縛り上げる。銀子は余った縄を久美子の胸の上下に回し、柔らかな乳房がくびれ出るほど強く締め上げる。
「うっ……」
一瞬、痛みとともに身体が痺れるような感触を知覚した久美子は小さなうめき声を漏らす。

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