200.肉の狂宴(13)

左:野島京子(女探偵)
右:野島美津子(京子の妹、女子高生)

山崎は驚いて美津子を見る。美津子は静かに目を閉じると「ねえ、キスして、お兄さん」と囁く。
「何をぼうっとしてるんや。女に恥をかかせる気かっ」
美津子の大胆な行為に戸惑う山崎の背中を義子が思い切り叩く。なおも山崎がためらっていると美津子は目を開き、一瞬悲愴な表情になるとその唇をいきなり山崎の唇にぶつける。
「うっ……」
美津子の唇に口をふさがれた山崎は気圧された表情になる。美津子は山崎の舌を引き抜くほどの勢いで吸い上げると口を離し、「お兄さん、美津子を愛してっ」と叫ぶように言うと自らの下半身を山崎の下半身に密着させていく。
「お兄さん、もっと、もっと堅くして……」
美津子は喘ぐような声で山崎にねだる。その可憐さと妖艶さ、そして一途さに引き込まれた山崎の肉棒はいっそう高ぶりを示して行く。
その時、隣りで互いに腰をくねらせていた京子と文夫が、同時に「あっ!」という声を上げる。ようやく文夫は京子への侵入を果たしたのである。
「そ、そのまま……、ね、文夫さん」
京子は興奮してやたらに腰部を動かそうとする文夫を宥めるようにそう囁くと、秘奥を微妙に伸縮させて文夫を深々と飲み込んで行く。まるでそれ自身が軟体動物となったような京子のその部分の感触に、文夫は思わず陶然となる。
「見事に繋がったやないか」
「もうすっかり息の合った夫婦コンビじゃない」
京子と文夫が深々とつながりあったことを確認した義子とマリは顔を見合わせて笑い合う。
「ほらほら、お姉ちゃんと恋人はしっかり繋がってるで。何を愚図愚図しているんや」
義子にパシッと尻を打たれた美津子は興奮に泣きながら「ねえ、ねえ、お願い、お兄さん……美津子に頂戴」と甘いねだりの声を上げながらその部分を山崎の下半身に擦り付けていく。
「美、美っちゃん……」
そんな健気な美津子の仕草に魅了された山崎は、思わず美津子の動きに同調させる。その瞬間美津子の肉門が山崎の先端を捕らえる。すかさず美津子は山崎に腰部を押し付けていく。
「ああっ! お兄さんっ」
ついに山崎との結合を果たした美津子は歓喜に似た声を上げる。恋人と妹が結ばれたことを横目で確認した京子の顔が一瞬歪む。しかし京子はすぐに目を逸らし、自らの鬱憤をぶつけるように文夫に激しい接吻を注ぎ込む。
京子と文夫、そして美津子と山崎という、恋人同士を交換させられた二つのコンビは、田代屋敷に巣くう淫鬼たちの思惑にすっかり乗せられて、互いの肉体を貪るような激しい行為を続けている。
ジョニーとボブはそんな二組の華々しいショーを見物し、時折指さしながら何事か言葉を交わし、笑い合っていたが、やがてそんな激しいショーに自分たちも興奮させられたのか、立ち上がると小夜子の両脇に立つ。
「な、何を……」
戸惑う小夜子の裸身の両側から、ジョニーとボブは同時に繊細な愛撫を注ぎ込み始める。耳元、うなじ、腋の下、乳房の麓、腰骨のあたり、そして太腿から臑にかけて指先と舌を使ってまるでマッサージを施すような二人の技巧に、小夜子の身体はあっけなく燃え上がっていく。
「ああ……そ、そんな……駄目よ、ジョニー、ボブ」
小夜子は自らの裸身を海草のようにゆらゆらと揺らめかせながら甘い喘ぎ声を上げ始める。それはもう拒絶ではなくて消極的な受容を示すものにほかならなくなっているのだ。
京子と美津子、そして小夜子。三人三様の痴態を鬼源は何度も頷きながらさも満足そうに見つめいる。最初は気乗り薄だった撮影班の井上も今は夢中になって、複数のカメラ担当や音響、照明係を叱咤しながらこの淫靡なショーの一部始終を記録しようとやっきになっている。
「美津子のやつ、すっかり色っぽくなったじゃないか。清次たちに預けて荒療治したのがかなり効いたみたいだな」
吉沢は舌なめずりするような顔付きで、美津子が山崎にすがりつき、しきりに甘える様子を眺めている。
「ああいう美津子を見ていると、なんとしても抱いてみたくなったぜ」
「美津子は親分も公認した吉やんの女だからな。なぜか肝心なところでいつも逃げられてばかりだが」
「それを言わないでくれ」
川田の皮肉に吉沢は苦笑する。
「まあ、岩崎親分の滞在が終わるまでは我慢だな」
「ふん、こうなると山崎の野郎がうらやましいぜ。田代屋敷の男奴隷はいい女を抱き放題だからな」
「それじゃあ代わってみるかい」
「冗談言うんじゃねえ」
再び苦笑する吉沢に、川田が「美津子もそうだが、京子もまるで人が代わったみたいだぜ。よほど文夫と相性がいいみたいだな」と言う。
「まったくだ」
吉沢が頷くと鬼源が「いや、それだけじゃねえ」と口を挟む。
「恋人の山崎の前だからあれだけ燃えているんだ」
「どういうこってす?」
鬼源の言葉に吉沢は首をひねる。
「美津子への対抗心もあるが、自分が乱れているところを山崎に見てもらおうと思っているんだろう」
「そりゃおかしいぜ、鬼源さん。京子は山崎の前で文夫と絡まされるのを嫌がってたじゃないか」
川田が異議を挟むと鬼源は「それは絡む前の話だ」と首を振る。
「いったん開き直りゃあ女は強いぜ。見な、京子も美津子も相手が繋がっている自分の恋人を思い切り挑発してるんだ。見りゃあわかるだろう」
鬼源の言葉に川田と吉沢は改めて二人の美しい姉妹を見る。確かに京子と美津子は官能の極致に激しく乱れながらも、京子は美津子と絡んでいる山崎を、美津子は姉と繋がりあっている文夫をしきりに意識しているのがわかる。京子は文夫を恋人の山崎であるかのように、また美津子は山崎を愛しい文夫であるかのように、一途な感情をさも切なげにぶつけているのだ。
恋人同士を入れ替えて交わりを強制することで四人の男女を苦しめようと目論んでいた義子とマリだが、京子と美津子が開き直って、強いられた行為を楽しんでいるかのような大胆さを見せ始ていることに苛立ちを示し始める。
「こうなったら四人仲良く呼吸をそろえて気をやるんや。ええなっ」
義子のそんな声も全く耳にはいらないかのように、京子と文夫、そして美津子と山崎は二つの火柱となったかのように燃え上がり、頂上へと向かって駆け登って逝く。
「あ、ああっ、もう、美津子、いきそうっ!」
山崎の反撃によってついに官能の頂点近くに追い上げられた美津子は切羽詰まったような声を上げる。
「ま、待って、美っちゃん!」
京子は悲鳴のような声を上げると薔薇の花びらのような唇を文夫の唇にぶつけ、その舌を吸い上げながら腰部を激しく前後させる。
そんな京子の勢いに引き込まれたかのように文夫は「きょ、京子さん、僕、もう、いきそうですっ」と呻くように言う。
「京子じゃないわっ。文夫さん」
京子はそう言うと文夫の首筋やうなじにチュッ、チュッと音を立てて接吻する。
「こうしている時は姉さんと呼んでくれるといったでしょう。ねえっ」
京子の甘えるような声に引き込まれるように、文夫は「ね、姉さんっ!」とほざくような声を上げる。
「ああっ、文夫さんっ。わ、私もいくわっ」
京子はそう言うと美津子の方を向き、「美っちゃん、いっしょにいきましょう、ねえっ」と呼びかける。
「わ、わかったわ。ああっ」
必死でこらえていた美津子はそこで一気に官能を解放させる。美津子の新鮮な女肉が激しく収縮し、山崎はこれまで経験しなかったほどの鋭い刺激に耐え切れず、十八歳の少女の膣内に精を放つ。
「ね、姉さんっ」
「文夫さんっ」
文夫と京子もその後を追うように断末魔の声を上げ、密着させた裸身を同時に痙攣させる。
「ああっ、いっ、いくっ」
ほぼ同時にジョニーとボブによって責められていた小夜子もまた、弟とタイミングを合わせるように頂上に上らされる。
そんな淫獄ともいうべき光景を井上たち撮影班は目をギラギラさせながら記録していく。部屋の隅に座らされ、一部始終を目撃させられている久美子は、恐怖とともに妖しい情感めいたものを知覚し、ひとり裸身を小刻みに震わせているのだった。

Follow me!

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました