第91話 3匹の牝馬(4)

「あっ……」
酸素を求めて喘いだ貴美子の口に香織はあっと言う間にボールギャグを噛ませると、マスクを元通りに戻す。貴美子はこれで声を発することも出来なくなったのだ。
貴美子と共に走っていた女2人は、男たちに囲まれ、小突かれるように自治会集会所の裏手に移動する。「お前も一緒にくるのよ」
貴美子は香織と朽木に両方から抱えられるようにして2人の後に続く。集会所の掲示板に張り出されているA3版の大きなポスターを見た貴美子は思わず息を飲む。
「……」
ポスターは2枚あり、いずれも屹立した男性器のクローズアップだった。ここ数日龍に徹底したセックス調教を受けた貴美子にとっても、成人男性のそのような状態の写真を、早朝の往来、青天井の下で見るのは異様な経験である。
(いったい誰が……)
このようなおぞましい趣向を考え出したのか。貴美子は何かとんでもない陥穽へと落ちて行く感覚に、ふと気が遠くなるのだ。
「どう、ユウコ2号。あなたにも見慣れたものがあるんじゃないの?」
香織が貴美子の耳元で囁く。貴美子は背筋に寒気が走るような感触に、思わず香織の顔を見る。
整ってはいるが、何か表情に人間として重要なものが欠けている。そしてこの目の色は一体どう表現すれば良いのか――貴美子は香織の目の奥にある悪意、情欲、残酷さなどの様々な負の感情を見つけたような思いになるのだ。
「今日から場所を交代だ。お前はこっち、それにお前はそっちだ」
貴美子の前を走っていた、鍛え上げられた身体に豊満な乳房とボリュームたっぷりのヒップを乗せた、ユウコ1号と呼ばれた熟女が、一方の性器の写真の前に立たされる。もう一人の、ユウコ1号ほど背は高くないが、やはり見事なプロポーションをもつ女が、もう一方の性器の写真の前に立たされる。ユウコ1号の前のポスターに写された男性器の方が、大きさでは勝っているようである。
「今日は初日だからユウコ2号は許して上げるわ。その代わり先輩の牝馬たちが発情している様子をしっかりと見ているのよ」
香織は貴美子にそう言うと、2人の女に「はじめなさい」と命令を下す。
女達は驚いたことに、命令を聞くや否やマイクロビキニの上下を脱ぎ、素っ裸になると足を大きく開いて写真の方へ突き出すようにする。呆気に取られている貴美子をよそに、女達は一方の手で自らの乳房を揉みほぐし、もう一方の手を股間に当てる。
2人の女は剃毛を施されているようで、羞恥の部分は童女のように青々としている。女達が同時に腰をくねらせると、無毛の陰裂の間からピンク色の筒の丸いものが排出されるのを見た貴美子は再び驚きに目を見開く。
「あんな露出症みたいな格好で走っているうちに、もう普通のジョギングじゃ物足らなくなったみたいね。最近は2人ともああやってあそこにローターを入れたまま走っているのよ」
女達の行為を呆然と見ている貴美子の耳元に、香織が囁きかける。
「そうすると身体が燃えてどうしようもなくなるでしょう? それで終点のこの公園でオナニーショーを披露するってわけ。本当は男に犯されたいとうるさく頼むんだけれど、そこまでやったら協力した殿方までが猥褻物陳列罪になってしまうわ」
香織はそこまで言うと、貴美子の強ばった表情がおかしいのか、クスクスと小さく笑う。
「ああ……あなた……」
「うう……」
貴美子の前を走っていた「ユウコ1号」がことされに腰をくねらせるようにしていたのはそのせいだったのか。ジョギング中に十分肉体を刺激されていたためか、2人の女はすでにギャラリーの目も気にならなくなったかのようで、妖しく身体をうねらせ、熱い吐息を吐きあっている。
「どう? あの破廉恥な姿、同じ女として恥ずかしくならない?」
香織は朽木とともに貴美子を後ろから抱きかかえるようにしてそう言うと、指を貴美子の水着のボトムの隙間に滑り込ませ、若草をかき分けるようにする。
「うっ、うーっ……」
貴美子は抵抗しようとするが、意外に香織と朽木の力が強いことに加えて貴美子の体力が消耗していること、そしてヘリウムガスと一緒に嗅がされた媚薬の影響で何とも力が入らないのだ。
「あら……濡らしているじゃない、お嬢さん」
人差し指を貴美子の陰裂に沈めた香織は、そこが既にじっとりと潤いを見せているのを知覚する。
「あなたもあの女達と同じ、発情した牝馬ということかしら?」
「うー、うーっ」
貴美子は否定しようと首を振るが、香織にボタンを押すような微妙な手つきでクリトリスを愛撫され、抵抗心は泡のように消えて行くのだ。
香織に目配せされた朽木が、震える指先で貴美子の水着の紐を解いていく。やがて2人の女同様素っ裸にされた貴美子は、香織の指先に玩弄されながら身も心もどろどろに溶かしていくのだ。
「なかなか順応が早いわ。やっぱりお母さんの血かしら」
香織はからかうように声をかけるが、貴美子の耳には入ってこない。
「明日から2人の先輩と同じように、ローターを咥えて走るのよ。わかった?」
わけがわからなくなっている貴美子は香織のそんな問いかけに対しても、意思のない人形のようにこっくり頷くだけである。
「ああ……ミチオさん……早く……」
ユウコ1号は切羽詰まったように、目の前の卑猥な写真に向かって呟く。貴美子が正気を保っていれば、もしかして母かもしれないと疑っている「ユウコ1号」が無意識のうちに夫の名を口にしたのを聞きとがめるところである。しかし、既に没我の境地に浸っていると言って良い貴美子はそんな言葉も耳に入るらない。
「こら、その写真はミチオのチンチンじゃないぞ」
久しぶりの美夫人の淫奔な艶技に目を奪われていた脇坂は、「ユウコ1号」の睦言のような言葉を聞きとがめ、逞しいばかりに張り出した夫人のヒップをパシリと平手打ちする。
「お前の亭主のチンチンはそんなに立派じゃないだろう。それはタツヒコのチンチンだ。わかったらタツヒコの名前を呼びながら上り詰めるんだ」
「そんな……」
裕子は嫌々と首を振る。悪魔たちの罠にはまり、様々な淫虐な調教を受け、ここ1週間はソープ嬢にまで身を落としたが、それはひとえに愛する家族を守るためである。
そのためには身体は他の男に任せても、心は夫に捧げたままであるという、たった一つ譲れない貞操を心のより所としてきたのである。
脇坂や沢木の名前を呼べと言われるならまだしも、同じ性奴隷の境遇に喘ぐ友人の夫の名を呼びながら上り詰めるなど、絶対に出来ないことだ。
「出来ません……」
「いまさら何を格好つけているんだ。ここでマスクをひん剥いて正体をばらしてやってもいいんだぞ。この変態女は東中のPTA会長をしている小椋裕子だということを大声で言ってやろうか」
脇坂は裕子の耳元に口を寄せて囁く。
「やめてっ」
裕子は悲鳴のような声を上げる。
「しのぶを見ろ。素直に言うことをきいているじゃないか」
裕子はすぐ隣で自分と同様、自らの身体を慰めているしのぶに眼を向ける。
「ああ……ミチオさん……しのぶのおマンコを犯して……目茶目茶にして……」
うっとりとした表情で道夫の名を、まるで自分の愛人のように呼ぶしのぶの姿に、裕子は衝撃を受ける。

Follow me!

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました