第133話 砂の城(7)

村松は苦虫を噛み潰したような表情になる。美樹の友人と言うことなら仕方がない。健一は元々美樹が捕まえた獲物である。村松自身は美樹と同様の趣味をもちながら、自らの社会的地位を失うのがこわく、これまでは自分の欲望に忠実に生きることが出来なかったのだ。
しかしそれでも誠一という見知らぬ男に対する奇妙な対抗心が沸いてくるのを村松は感じる。これからは自分の方が健一と接する時間は多いだろう。この美少年を徹底して犯し抜き、少なくともこの東中の中では自分の可愛いホモ奴隷にしてやる。村松はそんな風に心に決めると健一をいたぶる手を強め、哀れな美少年に悲鳴を上げさせるのだ。

健一が村松からホモセクシュアルの玩弄を受けているころ、小椋里佳子は教室の中でぽつんと孤立したように座っていた。
昨夜母と姉と共に6人の女達から一晩中責め上げられ、始めての酒まで飲まされた里佳子はいまだ頭が朦朧としている。かつては忙しい中でも母の裕子が、そして母が不在がちになってからは姉の貴美子と里佳子が交代で用意していた昼食の弁当も今日は持って来ていない。とてもではないが今朝は作る時間も気力も、また食欲すらなかったのである。
「里佳子」
急に声をかけられて里佳子は顔を上げる。同級生の山崎有美が心配そうな表情を里佳子に向けている。
有美は香奈の親友であった山崎留美の姉である。ソフトボール部でピッチャーの有美は、その印象の通り快活な美少女だが、意外に気配り上手な面もある。
「どうしたの? 食欲なさそうね」
「え、ええ……ちょっと」
「理英や瑞希は?」
「え……っと」
里佳子は口ごもる。
最近の里佳子は昼休みも小塚美樹に呼び出されてレズの調教を受けることも多く、これまで昼食を共にしていたクラスメートの理英や瑞希とは疎遠になっている。
しかも今朝は史織に強制されて、香奈とともに極端に丈の短いスカートで登校したことがすでにかなりの生徒に知れ渡っている。理英や瑞希はそんな里佳子の様子に剣呑な気配を感じ、明らかに距離を置こうとしているのだ。
しかもスカートの丈は史織に指示されて今も短いままである。里佳子が休憩時間中も席を立たないでいるのはそのこともあるのだ。部活動の朝練をしていたため里佳子より遅れて教室に入ってきた有美などは、未だ里佳子の異変に気づいていない。
「何か困っていることがあるんじゃない? 里佳子」
有美は真剣な目を里佳子に向ける。
「いえ……何にもないわ」
里佳子は首を振る。
すでに山崎有美の妹の留美までが、世良香織と史織の母娘に引き込まれ、嗜虐者の一員となっていることを有美はまだ知らないのだろうか。屈託のない顔を向けている有美からは邪まな気配は感じられない。しかし、信頼していた父親の道夫が家族を裏切り、香奈の母であるしのぶと関係していたことを文字どおり見せつけられた里佳子はもはや誰も心から信じることが出来なくなっているのだ。
昼休み終了のチャイムが鳴り、生徒たちが席に着く。学年主任で国語担当の桑田が教室に入る。
ニュータウンにある東中は生活水準が高めで揃っており、親たちも教育熱心なせいか学級崩壊の兆しはこれまで殆ど見られない。これはPTA会長である里佳子の母親の裕子の熱心さとリーダーシップによるものも大きい。
しかし裕子がいまやPTA会長としての機能を失い、香織の娘の史織と、香織と手を組んだ英語教師の美樹が、確実に水面下で影響力を増しつつある現在、教室の中にはこれまではなかった退廃的な気配が漂い始めている。
「起立!」
学級委員の掛け声で生徒たちが立ち上がる。里佳子も同時に立つが、昨夜「しのぶ」の客として現れ、その前でさまざまな痴態を繰り広げさせられた桑田の視線を感じると、思わず背筋がぞっと寒くなるのだ。
「礼!」
極端なミニスカートになっているため、あまり深くお辞儀をすると後ろの席の生徒にパンティが丸見えになってしまう。里佳子はへっぴり腰で礼をする。
「着席」
里佳子は慌てて腰を下ろす。どうにかやり過ごせたと思った途端、桑田の鋭い声が飛ぶ。
「小椋、何だ、今のお辞儀は!」
(ひっ……)
里佳子は蛇に睨まれた蛙のように身体を竦める。
「お前は教師を馬鹿にしているのか!」
クラス全員の注目が里佳子に集まる。
「立て」
桑田の指示に里佳子はおずおずと立ち上がる。超ミニスカートの里佳子の姿がクラス全員の前に晒される。それまで里佳子の異変に気づいていなかった生徒たちも、その異様な姿に驚きの声を上げる。
山崎有美もその一人である。普段の慎ましい里佳子の変貌ぶりに、有美は驚きを禁じえない。PTA会長の小椋女史の娘、優等生で美少女の里佳子にいったい何が起こったのか……。
「前へ出ろ、小椋」
「はい」
里佳子は教室の前に進み出る。今にもスカートの裾からパンティが覗きそうである。男生徒の熱っぽい視線が里佳子の尻に集中する、
桑田は、里佳子を生徒たちに背を向けたまま教壇の横に立たせると「そこでお辞儀をしてみろ」と命じる。
里佳子は哀願の交じった瞳を桑田に向ける。口元に冷たい薄笑いさえ浮かべている桑田を見た里佳子はあきらめて目を伏せると、言われた通りお辞儀をする。
「おおっ」
男生徒たちからどよめきの声と、女生徒たちから悲鳴に似た声が同時に上がる。里佳子が深く腰を折った時に、純白のパンティがはっきりと見えたのである。
「もっと深く腰を折れ」
里佳子は泣き出しそうになるのを堪えながら腰を折る。今度は里佳子の尻のほぼ全体が露出する。教室のざわめきが一層大きくなる。
「まだだ、もっと深くやるんだ」
桑田は里佳子に何度もお辞儀を繰り返させる。
「いやだわ、あんな……」
「恥ずかしいと思わないのかしら」
女生徒たちの非難めいた声が背後から聞こえるのを、里佳子は身が切られそうな思いで聞いている。教室での淫靡なショーが終わり、里佳子はようやく席に着くことを許される。
男生徒たちの好奇の視線と女生徒たちの軽蔑の視線を浴びながら、里佳子は席に戻る。
(ああ……このまま消えてしまいたい……)
里佳子は死にたくなるほどの恥ずかしさに身を縮めている。しかしその日の里佳子の受難はまだ始まったばかりなのだ。今夜は「かおり」で里佳子主演による「処女喪失ショー」が控えているのだ。

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