変身(12)

 私は回復したモノを妻にしゃぶるように命じました。妻はある程度予想していたのか抗いもせず、私のモノをアイスキャンディのように嘗め始めました。
 妻にフェラチオされるのは初めてではありませんが、いつもなら少ししゃぶっただけで「もう、おしまい」と恥ずかしそうに口を離すのが常でした。しかしその時の妻は私のモノをさも愛しそうに、延々としゃぶり続けるのでした。
 先程放出したばかりの私のそれは、たちまち回復していきます。
 鈴口を舌先でくすぐるように嘗めたり、玉袋をくわえ込んで舌の上で転がしたりしていたかと思うと、いきなり喉に届くほどに深く呑み込み、まるで口が性器になったように激しく上下させます。
 風俗の女顔負けのテクニックに私は耐えられなくなり「出すぞっ」と妻に告げました。
 妻は口を離すかと思ったのですが、うん、うんと頷くようにすると口の動きを速めます。私は2回目とは思えないほどの量を妻の喉奥に注ぎ込んでいました。
 その後、2人で夕食を取りました。妻は料理が得意で、その日は子供が外食するということでしたので、食卓の上には私の好物ばかりが並びました。
 妻とのセックスも最後だが、妻の手料理を味わえるのも恐らく今日が最後だろうと思うと、私は暗澹たる気持ちになりました。
 妻はそんな私の気持ちに気づかぬ風で、今日久しぶりに会った友人たちの近況を明るく話します。
 間もなく子供達が帰って来ました。私は内心の動揺を必死で隠し、子供たちの前では出来る限り普通に振るまいます。
 夜、私達は同時にベッドに入りました。妻は流石に疲れたのか、すぐに「お休みなさい」といって目を閉じます。
 私の中に妻を滅茶滅茶にしてやりたいという暴力的な衝動が生まれて来ました。私はベッドを出ると、パジャマを脱ぎ捨てて妻のベッドには入り込みます。妻は「えっ」というような驚いた表情をしましたが、私に抱きすくめられると無言で抱き返して来ました。
 温泉旅行で8回イったという妻。私は妻を一晩中嬲り抜いた男に挑戦するような気持ちで責め上げました。しかし舌や指先を使って2回イカせたところで私は我慢できなくなり、妻の中に押し入りました。妻が3回目の絶頂を私と同時に迎えた後、私は妻を抱いたまま力尽きたのです。

 翌日の朝、妻が実家へ帰った後、私は自分の部屋のPCの前で腑抜けのように座り込んでいました。
 一日で3回も射精したのはいつ以来でしょうか。ソープでもほとんど経験できなかったことです。私は妻を責め抜こうとして、逆に妻に精気を吸い取られたような思いでした。
 2人の息子はそれぞれクラブと、友達と映画に行くと言って外出しています。中学生や高校生の男の子にとって母親の一時的な不在は寂しいというよりも開放的な気分になるのでしょう。
 しかしこれがずっといなくなるとどうでしょうか。妻が男と暮らすために家を出たとすると、2人の息子はおそらく家族を裏切った妻を許すことはないでしょう。妻と子供たちの絆は永遠に断たれてしまうかも知れません。子供たちが負うであろう心の傷を思うといたたまれない気持になります。
 私も妻の裏切りを到底許すことはできませんが、子供たちのために何か出来ることはないか、という気持も湧いて来ました。
 私はようやくマウスに手を伸ばし、バックアップしてあったメールソフトを立ち上げます。最初は例の温泉旅行のビデオファイルをチェックしようと思っていたのですが、気力が出ないのです。それに昨日、妻が本当に男と会っていなかったのかということも気になります。さらに今日、実家に帰ると言って出て行ったことも信用できません。たとえ本当に実家に帰るのだとしても今日と明日は休日ですから、途中どこかで男と落ち合うことは簡単にできます。いや、先月のように一泊してくるかも知れません。
 もしそうなら、男と連絡した痕跡がメールソフトに残っているでしょう。「健一(この時点では私は男の名前をどんな漢字で書くのか認識していませんでした)」という男の素性を探る手掛かりもあるはずです。妻と男は本気なのか遊びなのか、男は独身なのか、それとも妻子もちでいわゆるW不倫なのか、それによって対処の仕方も違うと思いました。
 ソフトはライセンスがPCに紐づけられていないようで、すんなり起動画面が立ち上がりました。
 しかしその途端ダイヤログボックスが開き、IDとパスワードを要求して来ました。
(……)
 二重にロックがかかっているのです。随分念入りだと感じました。
 妻はPCに関してはごくごく初歩的な知識しかもっていません。専用のPCを買い与えた当初、オフィスやIE、メールソフトの使い方はすべて私が教えました。
 PCやメールソフト起動時のパスワード設定を、妻が自力で行ったのでしょうか。
 画像やビデオのファイルについても変と言えば変です。ファイルはもともと男がもっていたと思われますが、どうやって妻のPCに移動させたのでしょうか。
 デジカメのファイルだけでも一日分が200メガバイトはあります。
 ビデオは大きなファイルが2ギガバイトです。ネット経由でやりとりするのは困難です(今なら光ファイバなどの高速ブロードバンドを使えば可能ですが、2004年の夏から冬にかけてはブロードバンドの普及期で、高画質・長時間のビデオファイルのやり取りはまだ一般的ではありませんでした)。
 おそらくビデオも写真も、男のPCと妻のPCを直接接続させて移したのでしょう。妻のPCの設定も男が行ったに違いありません。私が買い与えたPCに刻印を残すように自分の名前をパスワードとして設定する男、それを笑顔で見ている妻の姿が目に浮かびました。
 私は起動時と同じく、IDに「kimiko」、パスワードに「0715」と入力しました。当然解除されると思っていたロックはそのままです。
(あれ?)
 私はふと思いつき、パスワードに男の名を入力して見ました。やはり解除されません。妻の名、男の名、妻の誕生日、そして男の誕生日を使ったあらゆる組み合わせを試して見ましたがやはり解除されません。
 念のために私や子供たちの名前や誕生日を入力してみましたが、同じことでした。
 疲れた私は、メールソフトのロックを解除するのをとりあえず諦めました。やはり覚悟を決めてビデオをチェックする必要があります。それも最も長く、最も過激と思われる温泉旅行のビデオを。その中に男の素性を示す手掛かりがあるのかもしれないのです。
 私はふと思い立ってリビングルームへ行くと、棚をチェックしました。やはり妻のノートPCはなくなっています。義父の介護をするために実家に帰るのにどうしてPCが必要なのでしょう。男と連絡を取るためとしか思えません。
 携帯での連絡は便利ですし、着発信履歴を消してしまえば通話の痕跡は残らないように思えますが、電話会社から送付される通信料が明らかに増えますし、発信記録を取り寄せればある程度のことはわかってしまいます。
 携帯メールもパケット通信料が増えることに加え、入力を容易にするために変換辞書に過剰なまでの学習機能がありますから(たとえば「あ」と入力すれば「愛してる」、「け」と入力すれば「健一」と変換されるなど)、男との浮気の連絡に使うのは危険です。
 私は気持を落ち着けるためにインスタント珈琲をいれ、部屋に戻ります。一口飲んでから深呼吸をして「20041204a」というビデオファイルをクリックします。
 メディアプレイヤーが起動し、画面に妻の姿が現れました。場所は昨日見たデジカメの画像と同じ公園の脇のベンツの前です。この冬私が買ってあげたグリーンのコートを着た妻はビデオカメラの方を見て、困ったような微笑みを浮かべいます。

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