第41話 悪夢(1)

「いくの、小椋先生」
「は、はいっ」
「いくときはいく、っていうのよ」
「はいっ」
ガクガクと頷いた裕子はそのすぐ後に身体を大きく弓なりにして「いきますっ」と声を張り上げる。
ブルブルと全身を痙攣させて絶頂に達したことをはっきりと告げた裕子。しかし香織たちはそれで手を緩めることなく、裕子の身体が弛緩するや否や激しい責めを再開する。
「あ、ああっ。ま、またっ」
「あらあら、またいくの? ホントに貪欲な女ねえ。ちゃんといくっていうのよ、今度は自分の名前も一緒にね」
「ハイッ!」
もう何がどうなっているのかわからない。身体の芯から熱の塊のようなものがこみ上げ、裕子は再び「ゆ、裕子、いっ、いきますっ」と甲高く悲鳴のような声を上げ、絶頂に達する。
「ああっ、ま、またっ。またですっ!」
こうなれば一種のセックスによるリンチといえようか。4人の男女は裕子を再び激しく責め立て、くたくたなった裕子を引き摺るように何度も何度も絶頂へと押し上げていくのだった。

裕子が沢木の車で送られて、家にたどり着いたのは、その日の午後遅くだった。
車の中ではしのぶも一緒だったが、2人の人妻は互いに一言も口をきかなかった。時折しのぶがすまなそうな視線を送ってくるのを裕子は感じていたが、心身ともに疲労困憊した裕子にはそれを受け止める余裕はとてもなかった。
裕子は鍵を開けて誰もいない家に入り、がらんとしたリビングのソファに崩れるように腰を下ろす。道夫はなんとか出勤したようだ。
朦朧とした頭で裕子は何も知らない娘たちのことを思う。長女で今年から大学に通う貴美子は、びっしり詰まったカリキュラムをこなすのに忙しく、夕飯に間に合わないことも多い。次女で中学3年の里佳子は、伸びやかな肢体を生かしたバレーボールのクラブ活動からようやく足を洗い受験勉強に専念し始めているため、これも塾や図書館通いで夜遅くなることがしばしばである。
夫は商社マンとしての仕事、自分は非常勤の大学講師と東中PTA会長としての多忙な日々、そして娘たちも独立心をもって暮らしている。家族がそれぞれの世界をもって互いに過度に依存・干渉することなく生きて行くことが裕子の理想とする家庭だったが、昨夜の悪夢のような出来事に見舞われて以来、裕子は理想であったはずの家庭が、砂上の楼閣のように頼りないものに思えるのだ。
(どうして夫は……こんな時に会社に行けるのだろう)
裕子はこの場にいない夫の道夫を恨みがましく思う。妻が悪魔たちの生け贄に捧げられている時、なぜ救いに来てくれなかったのか。いや、少なくとも心に深い傷を負ってようやく帰り着いた自分をなぜ抱きとめてくれないのか。
もともと裕子が道夫に対してしのぶのことを調べてほしいと頼んだのがこの災厄の発端であり、責任の大半は自分にある。それはわかっているのだが、それでも道夫には妻を守るため、香織や黒田たちに対して勇敢に立ち向かってほしかった。
(疲れた……どうしようもなく眠いわ)
壁にかけられた時計は午後6時近くを指している。
裕子は翌朝5時に店に来るよう、香織たちから言い渡されている。来なければ香織や道夫の痴態を収めた写真を、家族や知人へ一斉に送付すると脅されているため、従わざるを得ない。
(駄目……きちんと考えることが出来ない……)
裕子は気力を奮い起こして浴室へ向かう。ジョギングウェアを脱いだ自分の全裸身が脱衣所の鏡に映る。42歳という年齢が信じられないほどのきめ細かな肌のあちこちに、赤い痣や斑点のようなもの浮かんでいる。
(……)
裕子はそれが昨夜以来身体に施された緊縛やキスマークの痕であることに気づき、昨夜の屈辱と羞恥が蘇る。
しかしその暴虐の嵐の中、これまで経験したことのないような激しい性の感覚に、香織に強いられながらも何度も絶頂の声を上げたのは自分ではなかったか。
裕子はそんなおぞましい記憶を振り払うようにかぶりを振ると浴室に入り、裸身に熱いシャワーを浴びせる。悪魔たちの痕跡を拭い落とすべく、裕子は念入りに身体をマッサージする。
ようやく縄痕やキスマークが目立たなくなると、裕子はアラームをセットしてベッドに入る。帰って来る貴美子や里佳子は心配するかもしれないが、顔を合わせたら合わせたで、裕子は娘たちの前で平静でいられる自信もなかった。疲労の限界に達していた裕子はすぐに泥のように眠りに入っていった。

素っ裸の裕子の身体中を気味の悪い触手のようなものがはい回っていた。
表面がぬるぬるとしたそれらは、裕子の穴という穴に侵入して来る。口を、鼻孔をふさがれて呼吸が出来ない苦しさにもがく裕子の手足に触手が絡み付く。
両足を極限まで開かれたところで、触手は裕子の秘園へと侵入を開始する。少し入っては退り、退っては入り、触手はじっくり時間をかけて裕子を犯していく。
(やめて……やめて……)
必死で許しを乞おうとするが、言葉にならない。子宮の奥まで届くような執拗な攻撃。必死で押さえようとしても裕子の官能は高ぶり、抵抗はおざなりなものとなり、知らず知らず腰部は淫らにうごめき出す。
(あなた、やっぱりこんなことが好きなのね)
触手の根元に香織の顔が浮かび、裕子に意地悪く囁きかける。
(違う、違うわ……)
(どこが違うの)
触手がずんと裕子の子宮口を突く。裕子はオオッと咆哮のような声を上げる。
(血は争えないものね、あなたの娘達もこんなふうにされるのがお好きなようよ)
香織の声に狼狽した裕子は周囲を見回す。裕子から少し離れた場所で、裕子同様全裸の貴美子と里佳子が、無数の触手に激しく犯されながら、苦痛と喜悦と声を交互に上げていた。
(あ、ああっ、いいっ)
(あっ、あはんっ)
貴美子の若々しくしなやかな肉体と、里佳子の幼さの残る新鮮な肉体が、気味の悪い触手に絡み付かれて激しく跳ね踊っている。
(貴美子っ、里佳子っ)
絶叫する裕子の双臀の狭間に秘められたアヌスを、細い触手が一気に貫く。
(ああっ!)
(気分はどうだい、小椋夫人)
聞き覚えのある陰気な声の方に顔を向けると、風船のように太った脇坂がニヤニヤしながら裕子を見つめている。脇坂の手足は以上に長く伸び、途中から緑色の触手に変化し、貴美子と里佳子の女陰を犯しているのだ。
(2人とも母親譲りの良いお道具をしているぜ。おおっ、こりゃ凄い締め付けだっ。たまんねえっ)
脇坂が絶頂に達したのか触手が痙攣したようにブルブルと震え出す。それに合わせて2つの女体もガクガクと震える。
(や、やめてっ。娘たちを許してっ)
(もう遅いわよ)
再び香織の勝ち誇ったような声が響く。

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