「た、珠江様っ、あ、あんまりですわっ」
珠江夫人の手によって、衆人環視の前で究極の羞恥の姿を晒されている美沙江を目にした絹代夫人が、耐えられなくなったように声を上げる。
珠江夫人は顔を上げ、困惑したような視線を絹代夫人に向ける。
その時、それまで舞台の後方で控えていた静子夫人が絹代夫人に近寄り、隣にしゃがみこむと「何があんまりですの。絹代様」と尋ねる。
「だ、だって……」
絹代夫人は声を詰まらせる。
「美沙江はまだ年端もいかない子供なのです。それを、こ、こんな淫らな真似をするなんて」
「お嬢様は19歳。もう子供ではありませんわ。それに、そこにいらっしゃる岩崎親分様の弟、時造様の愛を受け入れて立派な女になったことを、絹代様もご存知でしょう」
静子夫人が絹代夫人に諭すように語りかける。
「そ、それは……」
「それよりも絹代様、お嬢様と珠江様があのような恥ずかしい姿をお客様の前に晒しているのに、一人高みの見物を決め込むなんて、どういうおつもりなの」
「え、えっ」
思いも寄らぬ静子夫人の言葉に、絹代夫人は当惑の表情を浮かべる。
「お嬢様が可哀想と思うのなら、絹代様もここに来て、お嬢様と並んで自分の恥ずかしいところをお客様にご覧に入れたらいかがですか。そうしたらお嬢様の辛さも少しは和らぐというものですわ」
「そ、そんなこと……」
絹代夫人は頬を朱に染めて顔を伏せる。静子はそんな絹代夫人の顎に手をかけ、ぐっと引き上げると自らの柔らかい唇を、絹代夫人の花びらのような唇にぐっと押し付ける。
「あっ……」
絹代夫人の裸身がブルッと震える。ひとしきり絹代夫人の舌を吸った静子夫人はようやく唇を離す。とろんと瞳を潤ませている絹代夫人に静子夫人が語りかける。
「絹代様、よくお聞きになって。千原流華道はもう完全に崩壊してしまったのです。絹代様が守るべきものはもう何もないのですわ」
「えっ」
絹代夫人は驚いて静子夫人の顔を見る。
「だ、だってそうでしょう。家元令嬢の美沙江様も、後援会長の珠江様も、森田組の女奴隷として新たな人生を出発させたのですわ」
絹代夫人の顔がみるみるうちに絶望の色に染まっていく。
「奥様もご存知でしょう。午前中のショーで、美沙江様は淫らな卵割りを演じ、そ、そして珠江様は捨太郎さんという逞しい殿方と、白黒ショーを演じたことを」
「もう、お二人とも二度と日の当たる場所には出られない女になっているのですわ。お、お分かりでしょう」
静子夫人の言葉に、改めて自分たちの惨めな境遇が見に沁みたのか、珠江夫人と美沙江は小さくすすり泣きを始める。
「この上は奥様も覚悟を決めて、珠江様と美沙江様のように、身も心も森田組の女奴隷になると心を決めてください」
静子夫人が絹代夫人にそう告げたとき、美沙江が涙に濡れた目を絹代夫人に向ける。
「お母様、静子おば様の言うとおりになさって。珠江おば様や、美沙江だけに恥ずかしい思いをさせないで」
美沙江のその言葉に衝撃を受けた絹代はしばらく逡巡していたが、やがて「わ、わかりましたわ」と頷く。
「で、でも、いったいどうすれば……」
絹代夫人が改めて気弱な視線を静子夫人に向けると、夫人は正座している絹代夫人の肩に手をかけ、「お立ちになって、絹代様」と声をかける。
絹代夫人は言われるまま、その場に立つ。
「お腰のものを、ご自分でお解きになって」
「それは……」
「絹代様、女奴隷には恥ずかしがる資格はございませんわ。ほら、このように」
静子夫人はそう言うと自らの腰を締め付けている紫色の褌の結び目に手をかけ、ゆっくりと解き始める。
「こうして、腰を悩ましく振りながら脱ぐのです」
静子夫人は優美に腰をくねらせながらゆっくりと褌を外していく。日本舞踊を取り入れた静子夫人の妖艶な踊りに、観客はたちまち目を奪われる。
妖艶な微笑を湛え、紫色の布で覆った自らの秘部を焦らすように観客にちら、ちらと見せながら踊る静子夫人。そんな静子夫人の淫らな姿にたちまち観客の目は釘付けになる。
「さ、絹代様、一緒に」
静子夫人に声をかけられた絹代夫人は「わ、分かりました」と頷くと、褌の結び目を解き始める。
美夫人二人のストリップダンスに、観客の興奮は高まる。ともに腰をくねらせ、形の良い乳房を突き出すようにしながら踊る静子夫人と絹代夫人。静子夫人の日本人離れしたグラマラスな肉体と、絹代夫人の浮世絵の美女を思わせる繊細な裸身が舞台の上でもつれ合う様は見事の一言であり、座を埋めたやくざ立ちは一様に陶然とした表情になっているのだ。
二人の美しい人妻はついに舞台上に全裸を晒す。静子夫人はまるで観客の視線を受け止めるように、静かに目を閉じて直立不動の姿勢を取っていたが、やがて静かに目を開けて絹代夫人の方を向く。
「絹代様、美沙江様と並んで四つん這いの姿勢になって」
「えっ」
「聞こえなかったの。娘と並んで、四つん這いになってお客様にお尻を見せなさい」
静子夫人はわざと冷たい声を出す。絹代夫人は「は、はい」と頷くと、美沙江の隣に観客席に尻を見せる姿勢で跪く。
静子夫人はそんな絹代夫人の傍らに座ると、珠江夫人の方に目を向けて「さ、珠江様」と声をかける。
「は、はい」
珠江夫人は頷くと、再び美沙江の肉襞に指をかけ、大きく割り開く。同時に静子夫人も絹代夫人のその部分をぐっと開く。
「さ、皆さま、もう一度ご覧ください。こ、これが千原流華道家元夫人と令嬢の、花園ですわ」
静子夫人が吐く淫らな言葉に煽られたように、珠江夫人もまた「さ、皆さま、母親のものと娘のもの、どちらが形が良いか、どちらが味が良さそうか、よくお比べになって」と観客を誘う。
「あ、ああっ、お母様っ、美沙江、死ぬほど恥ずかしいわっ」
母親と並ばされて言語に絶する淫らな姿態を晒している美沙江は、シクシクとすすり泣きながらそんな言葉を吐く。しかし、そんな美沙江の哀切な声に、どことなく甘く淫らな響きが潜んでいることに気づいた絹代夫人は、愕然とした思いになるのだ。
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