村瀬美紀、フランソワーズ・ダミヤ、そして山崎久美子、三人三様の見事な裸身が舞台上に開陳されたのを目の当たりにした観客のやくざたちからは、改めて溜息のような声が漏れる。
三人の美女はともに伸びやかな足をぐっと拡げ、肉付きの良いヒップをこれ見よがしに晒している。大きく開かれた股間からは、ふっくらした花唇までがちら、ちらと顔を出しており、やくざたちの好色な視線をいっそう集めることになるのだ。
三人の美女は、息が止まりそうな羞恥をぐっと歯を食いしばりながら堪えている。女奴隷の中でも新米である三人にとっては、衆人環視の前で裸身を晒すということだけでも、耐え難い屈辱なのだ。まして、これから演じなければならない人間性を否定するような汚辱の演技のことを思うと、今この瞬間天地が裂けて、何もかもが消えてなくなってしまえばいいと願うほどであった。
三人にとって何よりも辛いのは、実演の介添え役として、それぞれにとってかけがえのない人間が配されていることである。美紀夫人には娘の小夜子、ダミヤには無二の親友である静子夫人、そして久美子には兄の恋人であり、自らも姉のように慕っていた京子――。
実社会では血縁者、友人、または師弟の関係を調教の際に利用するというのは、これまでの調教でも何度も行われたことである。静子夫人は日本舞踊の弟子である小夜子や、親友である珠江夫人の調教を無理矢理強いられたし、小夜子は弟である文夫を、ともに森田組のポルノスターとして歩んでいくように説得した。京子に至っては実の妹である美津子に、レズビアンのコンビを組むことを納得させたのである。
責める側も地獄なら責められる側も地獄。静子夫人、小夜子、そして京子は、三人の新人をともに地獄を歩んでいくよう、身体を使って説き伏せなければならないのである。
小夜子も、そして京子も、この田代屋敷で静子夫人とレスボスの契りを交わしている。それはもちろん悪鬼たちに強制された行為であるが、美しい夫人と情を交わす妖しい悦びに夢中になり、今では二人とも静子夫人のことを姉と慕うようになったのも確かである。小夜子にとって実の母親を、また京子にとって恋人の妹を淫らに責めるのは非情な抵抗を伴う行為だったが、思慕と憧憬の対象である静子夫人に導かれることで何とかその責め役を演じているのだ。
小夜子と京子は静子夫人を挟んで、いわば恋敵とも言える間柄だったが、本日のショーの演出を担当する川田と鬼源は、皮肉にもこの後のステージで二人によるレズビアンショーを予定しているのだ。
それは本来の恋人同士である文夫と美津子の白黒ショーの後に、その姉同士である二人が演じるというものである。小夜子と京子にとってはとても普通の神経では耐えられないものだったが、それを何とか耐えさせているのは、静子夫人を中心とした奴隷同士の連帯感だとも言える。
しかしながら、嗜虐者たちは地獄の中で生まれたそんな奴隷同士の絆をも、責めの中で徹底的に利用しようとする。悪鬼たちにとっては奴隷たちの感情は、ショーでの演技をリアルなものにするスパイスに過ぎないのだ。
頃はよしと見た静子夫人は小夜子と京子に目で合図し、二人はコクリと頷く。三人はそれぞれダミヤ、美紀夫人、そして久美子の双臀の肉に両手をかけ、白桃を断ち割るようにぐっと開くのだった。
「ああっ」
三人の新人の喉から同時に悲鳴が迸り出る。双臀の奥に秘められた三人の菊蕾がいっせいにさらけ出されたのだ。
「さ、さあ、皆さま、菊比べですわ。どの花が一番見事か、近くに寄って御覧になって下さい」
静子夫人がことさらに声を弾ませて観客に呼びかける。すると観客のやくざ達は我先に舞台下に押しかけるのだ。
「皆さま、危ないですわ。そんなに押し合わないで」
一様に目を血走らせて、押し合いへし合いしているやくざたちを静子夫人が微笑を浮かべながらたしなめる。
「ご順に御覧になって。まずはこちらの菊の花からどうぞ」
今度は小夜子が、美紀夫人の双臀を断ち割りながらやくざ達に呼びかける。
「この花の持ち主は私の母でございます」
小夜子がそんな言葉を口にしたので、やくざたちからどよめきの声が上がる。しかしながら小夜子は動揺も見せず、美紀夫人を見上げるようにしながら「さ、お母様、お客様にご挨拶をなさって」と語りかける。
「み、皆さま、お客様に対してお尻を向けたままで失礼いたします。わ、私、そこにおります村瀬小夜子の母親で美紀と申します。ね、年齢は45歳でございます」
やくざたちから、こんな大きな娘がいるなんて驚きだ、とかそんな年齢《とし》には見えねえぜ、といった賛嘆の声が上がる。
「あ、ありがとうございます。こ、このような中年女のむ、むさくるしいお尻の穴をお見せするのは心苦しいのですが……よ、よろしければ、じっくりとご覧になって下さいませ」
美紀夫人が激しい羞恥に声を震わせながらそう口にすると、小夜子がそれに被せるように観客たちに語りかける。
「皆さま、母もこう申しておりますから、ど、どうぞお近くにお寄りになって、じっくりとご覧下さいませ」
小夜子の言葉に煽られたやくざたちはいっそう美紀夫人の下に詰めかける。
「ねえ、お母様。お客様がみんな、お母様のお尻の穴をご覧になっているわよ。ねえ、どんなお気持ち。おっしゃって」
小夜子はそんな事を言いながら、美紀夫人の臀肉をさらに広げる。
「は、恥ずかしいわ。し、死ぬほど恥ずかしいわ」
「本当に恥ずかしいわね。ふふ、お母様ったら、お尻の穴が丸見えよ」
小夜子はクスクス笑いながら美紀夫人の菊花の中央辺りを指先でつつく。その瞬間、美紀夫人は豊満な臀部をブルッと震わせる。
「お母様のこんな姿をお父様がご覧になったら、いったい何とおっしゃるかしら」
「ああ、小夜子さん、お母様を、い、虐めないで」
美紀夫人は、実の娘によって言葉責めにされる辛さに身悶えする。
娘が実の母親を辱める――そんな倒錯の光景に、観客のやくざ達は夢中で見入っているのだ。
そんな小夜子と美紀夫人のやり取りに冷静な視線を送っていた静子夫人は、次に京子の方に顔を向け、目で合図を送る。京子はコクリと頷くと、観客席に向かって呼びかける。
「皆さま、いつまでそんな年増女のお尻を眺めていらっしゃるの。ここにむっとピチピチしたお尻があるのよ。ねえ、ご覧にならない」
京子はそう言って、久美子の臀肉を開いたり閉じたりする。可憐な菊門が見え隠れする悩ましい光景に引き寄せられ、半分ほどの観客が久美子の下に集まる。
「よくご覧になって。この菊の花の持ち主は山崎久美子。つまりは私、野島京子の恋人である山崎探偵の妹ですわ」
「つまり、京子さんの義理の妹になったかも知れない娘さんということね」
静子夫人が微笑みながらそう言うと、京子は「そ、その通りですわ」と答える。
「久美子さん、さ、あなたもお客の皆さまにご挨拶をなさって」
京子にそう命じられた久美子は、「ハ、ハイ」と頷き、首を捻って観客席の方を向くと、「み、皆さま、先程ご紹介にあずかりましたとおり、私、山崎探偵の妹で久美子と申します。○○女子大に通っており、年齢は21歳でございます」と口上を述べる。
「きょ、京子お姉様、久美子のお、お尻の穴を思い切り開いて……お客様に久美子の腸の中まで見えるように、遠慮しないで開いて」
久美子はそう言ってモジモジと尻を振る。京子は「分かったわ」と頷くと、改めて久美子の双臀の肉に両手をかけて、思い切り開く。
294.美女菊くらべ(2)

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