「嬉しいわ。ああ、あんな美少年を自分のものに出来るなんて夢みたいだわ」
和枝は陶然とした表情で話し出す。
「今夜はあなたの息子さんに、女の身体の素晴らしさをたっぷりと味あわせてあげるわ。一晩中、腰が抜けるまで可愛がってあげたいわ」
そんなことを言う和枝に葉子がくっ、くっと笑いを堪えていたが、堪らなくなったように笑い出す。
「な、何よ、葉子。笑うなんて失礼じゃない」
「だって、和枝が女の身体の素晴らしさを教えるなんておかしくって」
「どこがおかしいのよ」
「だって、あそこにいる静子夫人に京子、小夜子が教えるなら分かるわよ。あの極上の女たちが教えられないものを、どうして和枝が教えられるって言うのよ」
葉子がそう言うと、和枝は憮然とした表情になって黙り込む。
「ほら、文夫と絡み合っている美津子って女学生を見てご覧なさいよ。可愛い顔をしているけど、男の楽しませ方はしっかりと心得ているわ」
葉子はそう言って、舞台の上で文夫と絡み合っている美津子を指さす。
美津子は「ああ、ふ、文夫さんっ、素敵よっ」と甘い声を上げながら、可憐な乳房を文夫の胸に押しつけるようにしている。
そんな積極性を見せながらも一方で、若さゆえの未熟さからともすれば美津子を置いたままで上り詰めようとする文夫の興奮を鎮めるかのように、腰の動きは緩やかに、宥めるような動きを見せている。
しかしながら、美津子の甘い媚肉に断続的に絞め上げられている文夫は、もはや自分の意志では押さえきれないところまで来ているのだ。
「み、美っちゃん、ぼ、僕、もうっ」
自らが絶頂に近づいていることを切羽詰まったような声で訴える文夫に美津子は、
「駄目よっ、文夫さんっ。一緒にいかないとっ」
と、叱咤するような声を上げるのだ。
「あらあら、美津子って娘は息子さんはギブアップ寸前ね」
葉子は楽しそうにクスクス笑うと、岡田に向かって「白黒ショーで、男役者が先にいったらどうなるの」と尋ねる。
「そうですな。女をいかせるのならともかく、自分が降参するなんざ男役者にとっちゃ恥以外の何ものでもありませんからね。後でこっぴどく仕置きされてもおかしくはありませんね。それからみっちりと再教育ってところですかね」
「まあ、それは可哀想」
葉子はそう言うと今度は和枝に向かって「このままだとあのお坊ちゃんは、今夜あなたのベッドに来るどころじゃないかもね」と告げる。
「まあ、それは困るわ」
和枝は顔色を変えると美紀夫人に「あんた、何とかしなさいよ」と迫る。
「な、何とかって……どうすればいいんですか」
「どうもこうもないわよ。あなた、母親でしょう。母親なら息子がしっかりするように応援しなさいよ」
和枝がそんな事を言い出したので、葉子はぷっと吹き出す。
「何がおかしいのよ、葉子」
葉子は笑いを堪えながら、「いや、何でもないわ」と首を振る。
「確かに和枝の言う通りね。母親なら息子を応援すべきだわ」
葉子はそう言うと、美紀夫人の肩に手をかける。
「ほら、舞台の息子を応援するよの。文夫、しっかりってね」
「そ、そんなこと……言えません」
大勢の前で汚辱の極致とも言うべき行為を強制されている文夫に対して、そのような声をかけるなと、出来るはずがない。美紀夫人は激しく頭を振るのだ。
「言えないじゃすまないわよ。息子さんが粗相をして、お仕置きをされても良いというの」
葉子がそう迫ると、千代夫人が「お仕置きですめばいいけどね」と口を挟む。
「あら、千代さん、どういうこと」
「ショーが不出来に終わりました。男役者にはあとで仕置きをしますからご勘弁をでは観客が納得しないわよ。やり直せってことになるでしょうね」
「やり直すって、もう一度美津子と?」
「同じ相手とじゃそれこそ観客は納得しないわ」
葉子がそう言うと、美紀夫人は不気味な予感にブルッと裸身を震わせる。
「京子とはお昼のショーで絡んだところだし、静子夫人は妊娠中。珠江夫人はさっき美沙江と絡んだところとなると、残るは一人しかいないわね」
「さ、小夜子は駄目ですっ」
美紀夫人は再び激しく首を振る。
「小夜子と文夫は血を分けた姉弟なんです。そ、そんな恐ろしいことをさせたら、あの子たち、気が狂ってしまいます」
「そうさせたくなければ応援するのよ、さあ」
葉子に迫られた美紀夫人は顔を引きつらせながら、文夫に向かって声を掛ける。
「ふ、文夫さんっ」
「声が小さいわよ。それじゃあ息子さんに聞こえないわ」
葉子に叱咤された美紀夫人は「文夫さんっ」と声を張り上げる。
母親の声を耳にした文夫は、はっとした顔つきになり、美紀夫人の方を見る。母と息子の視線が合い、文夫は始めて、動物的な姿を母にずっと見られていたことに気づき、苦しげに歪めて顔を背ける。
美紀夫人もまた反射的に顔を逸らすが、和枝と葉子に交互に乳首を捻られる。
「い、痛いっ」
「何、顔を逸らしているのよ」
「応援しなさいって言ったでしょう」
敏感な乳首を捻り上げられる苦痛に美紀夫人は耐えかねて、「文夫さんっ、しっかりっ」と声を上げる。
美紀夫人が、白黒ショーを演じる息子に声援を送るのを聞いたやくざたちは、どっと笑い声を上げる。
「こいつは傑作だ」
「まるで小学校の運動会だな」
そんなやくざたちの嘲笑を耳から振り払うように、美紀夫人は「文夫さんっ、頑張るのよっ」と声を上げるのだ。
「もっともっと、こんな風に言うのよ」
葉子と和枝は残酷そうな笑みを浮かべ合うと、美紀夫人の耳元に両側から囁きかける。
「まだまだ腰の振り方が足らないわっ」
「もっと、もっと、思い切って突くのよっ」
自棄になったようにそんな淫らな言葉を吐く美紀夫人に、やくざたちは一瞬呆気にとられたような顔をしていたが、再びどっと笑いこける。
舞台上の文夫は、美紀夫人の声援に励まされたかのように、また、愛する母親をこれ以上笑いものにはさせないとばかりに、ぐっと歯を食いしばりながら、美津子の腰に自らの腰を叩きつけるようにする。
「あっ、あっ、すっ、凄いわっ、文夫さんっ」
人が変わったような激しい文夫に圧倒され、美津子もまた快楽の頂上へと駆け上がっていく。そして、文夫がついに限界に達し、「ううっ」と断末魔の声を上げた瞬間、美津子も「文夫さんっ、いくっ」と絶頂を告げる声を上げるのだ。
見事に絶頂の瞬間を合致させた文夫と美津子は、互いの舌を吸い合いながらぴったりと重ね合わせた裸身をブルブルと震わせている。そんな二人の姿を美紀夫人は痴呆のような顔つきで眺めているのだった。
300.姉妹と姉弟(5)


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