「東山さん、落ち着いて。今日は連中がやっていることをしっかりと確認してこれからの作戦を立てるのが目的だから、くれぐれも早まったことをしないでね」
里美は私を宥めるようにメッセージを送って来ます。
ディスプレイの中の妻はますます頬が赤くなり、口は半開きになって「あ、あ……」と小さなうめき声まで上げているようです。
「そろそろイキそうになっているみたい……」
里美のメッセージが画面上に現れます。私は妻とのセックスの際は常に電気を消しており、このような明るい場所で妻が快楽にあえぐ顔をじっくりと見たことはありません。PTAの役員会の会議システムでこのような行為を演じるにあたっては、犬山たちからなんらかの理由で強制されているに違いなく、もちろん怒りは覚えるのですが、なぜか股間のものが熱くなってくるのも感じていました。
「それにしても東山さんの奥さんって、奇麗な人だね」
そんな里美からのメッセージが画面に現れた時、いきなり会議室に犬山がログインしてきました。
「おやおや、奥さん、またオナニーですか。お盛んですね」
犬山はいかにも精力のありそうな脂ぎった顔をニヤニヤさせています。続いて副会長の一人、毛塚がログインしてきます。
「まったく、助平な奥さんですね。いちいちマンズリに付き合わされるこちらもたまったもんじゃありませんな」
橋本、道岡もほぼ同時にログインしてきます。
「おお、何とか間に合った」
「東山さんの奥さん、まだイッてないでしょうね」
4人の男たちのにやけた顔がディスプレイに並びます。私はあまりの怒りに気分が悪くなりそうなほどです。すると4人の顔が左一列に寄り、妻の姿が残りの画面に大写しになりました。
「ううっ……もう……お願い……」
妻はもう限界まで来ているのか、眉を苦しげにしかめて呻き声をあげますが、犬山は妻の切羽詰った状況を楽しむように、開会を宣言します。
「それじゃあ皆さん揃ったところですので、役員会をはじめましょう。それじゃあ、奥さん、今日の議題を発表して下さい」
「ああ……その前に……」
「どうしたんですか、一度イキたいんですか?」
「違います……ローターを、ローターを止めさせて下さい」
妻はもう息も絶え絶えといった様子です。
「ほら、やっぱりローターでしょ」
「黙ってろ」
「だから黙っているじゃない」
里美が膨れたような調子でメッセージを送ります。
妻は頬を赤く上気させて、瞳を潤ませながら必死で訴えています。私ははじめて目にする妻のそのような艶っぽい表情に、思わず怒りを忘れて見とれていました。
「おや、奥さん、様子がおかしいと思ったら、ローターなんかを使っていたんですか?」
「さすがに西伊豆の旅館で自分から変態人妻と宣言しただけある。驚いたもんですなあ」
「まったく、こんな淫乱女が伝統あるB高校のPTA役員を務めるなんて、外部に分かったら大変なことになります。学校の恥さらしですよ」
男たちは好き勝手なことを言って妻を言葉で辱めますが、私は「西伊豆の旅館」という言葉に反応しました。やはり旅館で妻は4人から何か屈辱的な仕打ちを受けたようです。
「そ、そんな……皆さんがそうしろとお、おっしゃんたんじゃ……ううっ……」
妻は恨めしそうな表情をカメラに向けます。ディスプレイに映し出される妻の姿は極めて鮮明で、まるで目の前に妻がいるようです。私は下田の会社の開発力はたいしたものだと、妙なところに感心しました。
「他人に責任転嫁してはいけませんな、東山さん。そういうところがあなただけでなく、婦人役員のよくないところですよ」
「そうそう、自分ではろくな稼ぎもないのに、思うように贅沢な生活ができないのを旦那のせいにする。そういう主婦たちの社会性のなさを我々が徹底的に鍛え直してあげようというのです」
「何のとりえもない主婦がわれわれと肩を並べて役員づらが出来るのを感謝しなければなりません、わかりましたか?」
「は、はい……わかりました」
妻は口惜しげに声を震わせていますが、男たちの理不尽なまでの侮辱的な言葉にはっきりと服従の意思を見せたことに私は驚きました。
妻は穏やかで優しい性格ですが、その反面芯の強いところもあり、特に男女差別的な発言や行動に対しては明らかな嫌悪感を見せるのが常でした。その妻がこのように主婦を侮蔑するような言葉に対して反発しないのは、逆にいえば4人の男たちから余程酷い目に合ったのではないかと想像されます。
「こいつら、女を馬鹿にしている。聞いているこっちの方が腹が立ってきたわ」
里美までが怒りを露わにしたメッセージを打ち込んできます。
「里美、お前が早まったことをするなと忠告したので、俺も耐えがたいところを耐えている。だからあまり俺を煽るようなことを言ってくれるな」
「わかっているけど……口惜しいわ」
里美にはそうたしなめましたが、私はなぜか怒りとともにこれからの展開をどこか楽しみにしているような気持ちになっているのが不思議でした。
今見ているストリーミングの映像はほぼ完全といってよいコピーガードがかけられているため、画像も音声も保存することが出来ません。ディスプレイを写真で撮ることも考えましたが鮮明なものは期待できず、証拠としてどれだけ役に立つかは分かりません。そこで私は4人の会話の中から手がかりを突き止めて、別にしっかりと証拠を固めるつもりでいました。
「そ、それでは本日の役員会の議題をご報告いたします……」
妻ははあ、はあと荒い息を吐いています。
「ま、まず……私、変態で露出症の人妻、東山絵梨子のオナニーショーをご鑑賞いただきます。続きまして同じく絵梨子のストリップ、最後に前回に引き続き絵梨子のセックス体験告白でございます……」
「どれも全く代わり映えのしない議題ですなあ」
犬山が気乗り薄げな声を出します。
「どう思います、皆さん。こうやって多忙な役員が集まっているのに書記の東山さんはあいも変わらず黴の生えたような議題を提出する。これではせっかく我々が貴重な時間を割いて役員会に集まっている意味がないと思いませんか?」
まったくだ、議長のおっしゃる通りですというような声が聞こえます。
「何を言っているの、こいつら」
「だから黙っていろと言っているだろ、里美」
里美はますます激高しますが、どこかこれからの展開を期待している自分がいるのに私は正直、驚いていました。
「それじゃあ、どうすれば……ああっ……」
妻は必死で快感をこらえていますが、時折上半身はピクッ、ピクッと痙攣のような動きを見せており、もはや絶頂は近いものと思われます。
「そうですな……よくあちらのポルノ写真で胡瓜やトウモロコシをあそこに突っ込んでいるのがあるじゃないですか。異物挿入ってやつです。ぜひあれをやってもらいたいですな」
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