最初はのらりくらりと盗撮の意図を否定していた脇坂から、裕子はいきなりビデオカメラを取り上げると目の前で映像をチェックした。美少女達のはちきれんばかりの太腿やショートパンツを突き破りそうに発達したヒップのアップばかりが撮影されているのを観た裕子は瞳に軽蔑の色を浮かべ、無言でテープを取り上げたのだ。
そのときの屈辱ははっきりと覚えている。特に裕子は、脇坂が目をつけていた東中でもとびきりの美少女、小椋里佳子の母親でもあるのだ。
視線を感じた裕子は脇坂に気づき、ひっ、と口の中で小さな悲鳴をあげる。裕子も脇坂が運動会のときの盗撮男であることをはっきりと思い出したのだ。
「こちらはそこで奮戦している殿方の奥様よ。主人が他の女の人とどんな風にセックスをするのか、是非観たいというのでおいでいただいたの」
「そりゃあいい趣味だ。夫婦の倦怠期解消には持って来いじゃないか」
脇坂は仲間たちと顔を見合わせ、どっと笑いこける。裕子はすっかり混乱して、おろおろと周囲を見回していたが、脇坂達が裕子を座らせようと場所を空けると、人影に隠れていた舞台の様子が目に入り、ひいっと壊れた笛のような悲鳴をあげる。
「あっ、あなたっ!」
舞台の上では全裸で横たわった道夫の上にやはり素っ裸のしのぶが馬乗りになり、下半身をしっかりと結合させながら激しく上下させていたのだ。
「ああ、あーん、し、しのぶ、もう、いっちゃう」
「ぼ、僕もいっちゃうよっ」
2人は恍惚とした表情を浮かべ、互いに絶頂が近づいたことを告げあっている。素肌に浮かんだ汗がライトに照らされてキラキラ光っている。とんでもない光景を目にした裕子の全身は瘧にかかったように震え出す。
やがてしのぶが電気に触れたようにブルブルッと全身を震わせ「イ、イクっ!」とつんざくような声を上げると、道夫もそれに引き込まれたように「ぼ、僕もっ」と叫ぶ。
道夫にまたがったしのぶの裸身が弓なりにのけぞり、2人の結合部がはっきりと裕子の目に飛び込んで来た。裕子はあまりの衝撃に目の前が暗くなり、思わず脇坂のとなりにへたり込む。
「わあ、ついにやっちゃった」
香織は歓声を上げて携帯に内蔵されたカメラのレンズを、いきりたった肉棒からドクドクと白濁をしのぶの体内に送り込んでいる道夫に向け、続けざまにシャッターボタンを押していく。2人を取り囲んだ観客も香織を真似るように一斉に携帯を取り出し、2人の痴態を収めていくのだ。
「奥様、何をしているの。記念写真を撮るのなら早く撮らないと駄目よ」
道夫としのぶは快楽の余韻に浸りながら互いの口を熱っぽく吸いあっている。それを放心状態で見つめていた裕子が手に握り締めていたカメラ付き携帯電話を香織は乱暴に取り上げると、同じように2人の破廉恥な姿態を撮影する。
「ああ……」
舞台の上のしのぶは長い接吻を終えると、うめくような声を上げて失神する。香織に薬物を盛られた道夫もしのぶと同じく気を失ったようで、力なく横たわっている。
「まあ、2人揃って失神するなんて仲のよろしいこと、本当のご夫婦みたいね。よほど気持ちが良かったのね」
香織が手を叩きながらけたたましい笑い声を上げると、観客からどっと哄笑が湧き起こる。
「あ、あなたっ、しっかりしてっ」
はっと我に帰った裕子は、舞台の上で倒れている道夫の方に駆け寄ろうとするが、脇坂の馬鹿力に引き止められる。
「何をするのですかっ、離してっ」
脇坂に羽交い絞めにされ、手足をばたつかせている裕子に香織は冷たい口調で言い放つ。
「勝手なことをしないでよ。まだショーは終わっていないのよ」
「ど、どういうこと……」
裕子の瞳にはっきりと恐怖に色が浮かんでいるのを、香織は小気味良く感じる。
「いい、今度は奥様が見せていただく番よ。ご主人や加藤さんの奥様に負けないくらい、お客様を楽しませて頂戴」
「な、何を……ば、馬鹿なことを言わないでっ」
裕子は必死で香織を睨みつける。
「こ、こんなことが許されると思っているのっ。け、警察に連絡しますからっ」
「あーら、どっちが馬鹿なことをいっているのかしら」
香織はさもおかしそうに笑い出す。
「大学の国文学の講師で東中のPTA会長を務める小椋裕子女史とも思えない頭の悪さだわ。いい? あなたのご主人はお酒に酔ったあげく、私の店でバイトをしていたこちらのご婦人といきなりことにおよんだのよ」
「い、いわないでっ!」
自分の本名や身分を口にしたので、裕子は悲鳴に似た声を上げる。
「ここのお客様が証人よ。ねえ、そうでしょう、皆さん」
「そうだ、そうだ」
「かおりママの言うとおりだよ」
「この男が舞台で踊っていた女に絡みだしたかと思うと、いきなり押し倒して本番ショーをはじめたのさ」
客達は口々に香織に同調する。裕子はおろおろとあたりを見回すが、脇坂だけでなく、他の客の何人もがPTAの席で見覚えのある東中の父兄だということに気づいて、新たな衝撃を受ける。
「ご主人を公然猥褻罪で警察に突き出されたくなければ、その汗臭いジョギングウェアをさっさと脱いじゃいなさい。黒田さん、沢木さん、手伝ってあげて」
「よし来た」
カウンターに座ってニヤニヤ笑いながら成り行きを見つめていた黒田と沢木がのっそりと立ち上がると、裕子に近寄り両側から肩を押さえる。
「な、何っ、あなたたちっ」
「ママに言いつけられた通り、さっさと脱がんかいっ」
黒田がいきなり裕子のトレーナーをめくり上げる。滑らかな裸の腹部から下乳までが露出し、裕子は悲鳴をあげる。
「な、何をするのっ!」
「おおっ、この奥さん、ノーブラやで!」
黒田は歓声を上げて裕子の豊満な乳房を両手で掴み、揉み上げる。
「嫌っ、やめてっ! やめてよっ!」
「おとなしくしないかっ」
沢木がいきなり裕子の頬に往復ビンタを食らわせる。パシッ、パシッと小気味良い音が鳴り響き、抵抗が一瞬弱まったところを、沢木が裕子のジョギングパンツに両手をかけ、一気に引き下ろす。
「いやあっ!」
裕子は必死で身を揉み、2人の男から逃れようとするが、黒田と沢木はしっかりと裕子を抑え込み、身動きを封じている。面白がって歓声を上げ、野次を飛ばしていた周囲の観客達は裕子の激しい抵抗に次第に不安げな表情を浮かべ、互いに顔を見合わせ始める。
「おい……これ……」
「ちょっと、やばくないか」
店内を覆っていた熱気が冷め始めたのを察した香織が裕子の前に進み出ると、滑らかな頬に平手打ちを浴びせる。びっくりしたような表情を香織に向ける裕子。
「往生際を良くしなさいよ、小椋夫人。いつまでも手間をかけると、ご主人の写真を携帯に登録されたアドレス全部に送っちゃうわよ」
香織はこれ見よがしに裕子の前に、道夫と裕子の携帯を突き出す。
「まったく、携帯ほど危ないものはないわね。その人の交友関係が全部わかっちゃうんだから」
香織は道夫の携帯電話を操作し、素早くアドレス帳をチェックする。
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