第174話 幼い贄(4)

「あの身体は、まだ中学生くらいじゃないのか」
羽田がそう声を上げると、同じロリコン趣味の成田が頷いて続ける。
「それなら東中の生徒って可能性も」
「可能性というよりは、現に小椋と加藤がうちの生徒なんだから、そう考えるのが自然だろう」
「それはそうだ――桑田先生、何か聞いていますか」
成田に問われた桑田は首を捻りながら「いや」と答える。
「小塚先生は?」
「さあ、知らないわ」
桑田に尋ねられた美樹は思わせ振りな表情を見せる。
「でもひとつ言えるのは、あの娘は愛しい男の童貞を奪うために、自分の意志でこのステージに上がったということよ。自分の顔は出さないことを条件にね」
「そんな子がいるんですか? まだ中学生みたいに見えるのに」
羽田が驚きの目で、舞台上の少女を改めて見つめる。
「いよいよ健一の童貞喪失、そして少女Lの処女喪失の瞬間です。皆様、ご注目ください」
香織のアナウンスが店内に響く。少女は健一の上に跨がるような格好になると、ゆっくりと身体を沈めて行く。史織が介添えをし、健一の鉄のように硬化したペニスを少女の淡い繊毛に縁取られた膣口にあてがう。
「ああ……」
健一の熱い先端を敏感な箇所に感じた少女は、思わずうめき声を上げる。先程から唖然とした表情をステージに向けていた奈美の喉から「ひっ」と小さな悲鳴が漏れる。
(あれは……まさか……)
金髪のウィッグとマスクによって顔は分からないが、その身体つきは確かに奈美には見覚えがある。それでもまさかという思いはあったが、今しがた少女の口から発せられた声から奈美の疑いは確信に変わった。
(留美だわ……)
しかしどうして留美がこんなことを……。先程香織は、強いられたのではなく自分の意志でステージに上がったと言った。それは本当なのか。もしそれが事実だとしたら……。
(なんてこと……)
母親の自分が香織たちの奴隷に堕とされる一方で、娘の留美もまた悪鬼たちの毒牙にかかっていたというのか。自分たちもまた加藤しのぶや小椋裕子のように、母娘そろって性の奴隷にされるというのか。
それにそもそも留美は、母親である自分が香織たちの奴隷の身分に堕ちていることを知っているのだろうか?
山崎奈美がそんな懊悩に苛まれる中、留美と思われる金髪の少女はゆっくりと健一の上に腰を下ろして行く。
「うっ、ううっ……」
少女は激しい痛みを耐えるように眉をしかめる。それでも長い時間をかけて、ようやく健一のそれを身体の中に納めた少女の顔には、苦痛と共に微かながら至福の表情が浮かんでいる。
「入ったの?」
「はい……」
留美はこくりと頷く。息を呑むようにその瞬間を見守っていた観客は想わず手を叩く。
「そうやってじっとしていても埒があかないわよ。ゆっくりと腰を上下に動かせなさい」
「はい……」
史織の命令に少女ははっきりと頷き、腰をぎこちなく上下に動かし始める。少女と少年の結合部にはっきりと破瓜の血を認めた観客はため息ににた感嘆の声を上げる。
「射精までもって行って初めて童貞を奪ったことになるのよ。頑張りなさい」
「はい……あ、ああ……」
史織の声に少女は再び頷き、腰の動きを速める。少女は痛みだけではなく快感めいたものも知覚し始めたのか、そのうめき声の中には何か甘ったるい響きも混じり始めている。
そんな少女と健一の交合の様子を、ステージ上の加藤家と小椋家の女達は、それぞれ複雑な思いで見つめている。
加藤香奈の顔に表れているのはもっぱら恐怖であった。初めて目撃する男女のまぐあいは香奈にとって恐ろしいものでしかない。兄の健一が強いられているその行為を、いずれ自分自身が同じステージで演じなければならないというのは、恐怖以外の何ものでもなかった。
小椋里佳子の思いは香奈よりもやや複雑である。里佳子は美樹によってじっくりレズビアンの調教を施され、健一と並んで恥ずかしい肛門責めまで経験していたことから、この舞台の上で処女を散らすことについてはもちろん恐ろしくはあったが、どちらかというと諦めに似た気持ちで受け入れていた。
里佳子にとっての懸念はいったい誰が「初体験」の相手になるのかということだった。自分たちと同じ奴隷に境遇に堕とされている異性は健一しかいない。奴隷の身分に堕とされ、自らは美樹によってレズビアンの快感を教え込まれ、健一もまた荏原誠一によってホモセクシュアルの契りを結ばされた今、里佳子は正直に言って以前と同じような甘い感情を健一に対して持ってはいない。
しかしどうせ散らさなければならない純潔ならば、せめて初恋の相手である健一に捧げたいとは思っていた。しかしながらその里佳子の僅かな望みも今、香織たちによって打ち砕かれたのだ。健一の童貞喪失の相手が自分ではないと分かった以上、自分の処女喪失の相手も健一ではないだろう。健一が少女との行為を終えた後、里佳子の相手もするという可能性はなくもなかったが、現実にはゼロに近い。そのような刺激の少ない出し物を香織たちが選ばないだろうということを、賢明な里佳子は理解していたし、また健一にもそんな気力も体力は残っていないだろう。
(すると私は一体誰に……)
里佳子は先程から自分の裸身に注がれる淫靡な視線を感じている。それは桑田、成田、羽田といった東中の教師たちが集まるボックスからのものである。日頃から自分や加藤香奈、そして山崎有美や留美といった少女達に情欲に満ちた視線を注いでいる彼らロリコン教師の誰かの餌食になるのかと考えると里佳子はさすがに身の毛がよだつ思いである。
(それにしてもあの子、一体誰?)
里佳子は健一と繋がったまま淫らに腰を上下させている「少女L」と呼ばれる謎の娘に視線を向ける。
(あの子、自分から志願したと言った。こんなことになるのなら、私が志願すればよかった)
里佳子は苦い悔恨が胸の中から湧き上がってくるのを感じる。奴隷の心にそんな嫉妬や競争心が生じるのは香織にとっては思う壷であることに、里佳子自身はまだ気づいていない。
加藤しのぶは息子の健一が童貞を散らして行く様を、悲しみと諦め、そして若干の安堵と嫉妬の交じった複雑な思いで眺めている。
しのぶにとって最悪のシナリオは、健一が妹の香奈との交わりを強制されることであった。そんな目にあえば健一も香奈もショックのあまり自殺しかねないと考えたしのぶは、それだけはこの身を呈してでも阻止しなければならないと考えていた。
しかしながらその一方で、さすがの香織たちもそこまではしないだろうとしのぶは考えていた。健一はともかく香奈についてはまだまだ調教は進んでいない。一気にやり過ぎると香奈の精神を壊しかねないことを、冷静な香織は計算しているだろうと思っていたのである。

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