73.地獄巡り(11)

(この辛さと苦しさを悦びに変えるのよ――それが美沙江さんや絹代さんを救う道のはず)
珠江はひたすらそう念じ、絹代たちが目の前にいることを必死で頭の中から払いのけようとする。
その願いが叶ったのか、または珠江の懸命な努力の賜物なのか、珠江の心はいつしかその身体から離れ、忘我の境地へと入り込んで行くのだ。
「ああ――」
珠江は切なげに呻くと豊満な双臀を悶えさせる。いつの間にか珠江の菊花は久美子の指を二本も咥え込み、その抽送に合わせて生き物のような収縮を見せているのだ。
久美子は珠江の秘奥がすっかりほころび、生々しいばかりの果肉を見せながら、キラキラと露を光らせているのに気づき、顔を赤らめる。
(嫌だわ……)
久美子は、女の生々しい生理をあからさまに見せつけられたような思いになる。熊沢に強制されての行為なのに、珠江の肉体は明らかに悦びの徴候を示していることに久美子は何か裏切られたような気持ちになるのだ。
(こんな下劣な男に淫らな行為を強いられているのに、興奮出来るものなのかしら)
男性経験のない久美子には心では嫌がっているのに身体が応じてしまうという感覚が分からない。従って珠江が示している豊かな反応が、久美子には夫を持つ身である珠江の背信であるように思え、腹立たしくさえ感じるのだ。
(時間稼ぎをするために自分を犠牲にしているのだと思っていたけれど、珠江さんったら、案外この状況を楽しんでいるのではないかしら)
久美子の心の中には珠江に対する疑念さえ浮かんでくる。久美子はそんな苛立ちや猜疑心をぶつけるように、空いた手でいきなり珠江の秘奥をくつろげる。
「ああっ!」
女の最奥の羞恥を開示させられた珠江は、白いうなじをはっきり見せて悲痛な呻き声を上げる。久美子はかまわず指先を珠江の蜜壷に差し入れると、ゆっくりとかき回す。
ピチャ、ピチャという湿った音が座敷に響く。そんな羞かしい音をかき立てられている珠江は「ああっ、ああっ」とむせび泣きながらますます激しく身を悶えさせる。
「なかなか巧いやないか」
熊沢が感心したように久美子の手管を眺めている。銀子と義子もまた、久美子の意外な一面を見たような思いに顔を見合わせている。
「二人ともだいぶ調子が出てきたようね。そうだわ、夏子さん、珠江夫人のおっぱいを揉んで上げてくれない?」
「えっ?」
いきなり銀子に指名された美紀が顔を引きつらせる。
「あんな風に下半身ばかり責められて、珠江夫人ったら可哀想に、とてももどかしそうにしているじゃない。おっぱいをやさしく揉んで差し上げて、落ち着かせて上げるのよ」
「で、でも……」
「これもお酒の席の余興よ。夏子さんは久美子だけを見世物にしていて平気なの?」
銀子が叱咤するようにそう言うと、美紀は「わかりました」と腰を上げる。
「よっ、待ってました」
「がんばって二人掛かりでいかせてやんな」
美紀が珠江の背後に回って膝立ちになると、平田と大沼が手を叩いて囃し立てる。
「おいおい、手前ら、静かに見物しねえか。この奥さんの気が殺がれちまうだろう」
熊沢が二人の男をたしなめる。美紀は珠江の耳元で「珠江様、ご、ごめんなさい」と囁くと背後から手を回し、珠江の豊かな乳房を持ち上げるようにする。
「うっ……」
珠江はそれだけで軽いエクスタシーを感じたのか、裸身をヒクヒク痙攣させる。最初のうちは躊躇っていた美紀だったが、珠江のそんな反応に煽られるかのように、徐々に強く乳房を揉み上げていく。
「あっ、ああっ!」
上半身を美紀に、下半身を久美子に責め上げられている珠江は次第に悩乱の極といった状態に陥り、激しく乱れ始める。熊沢組の男たちは珠江が発散する妖気にも似た凄艶な色気に引き込まれ、その痴態に声もなく見入っているのだ。
銀子と義子はそんな珠江を頼もしげに見つめながら、何やら話し合っている。
「最初はいかにも冷たそうな、ツンとした感じの女やったけど、さすが鬼源さんは目が高いわ。珠江夫人ったら、立派に静子夫人の後継者が勤まりそうやないか」
「確かにあの珠江がこんな風に情感たっぷりに燃え上がる姿をお座敷で見せるようになるとはね。これだけでも絹代を手にいれた甲斐があるというもんだよ」
「それはどういう意味なん? 銀子姐さん」
「わからないかい? 珠江は絹代を守るために、男たちの目を自分に引き付けようとしているんだよ」
「なるほど」
義子が感心したように頷く。
「今までも珠江は美沙江を守るために、時には進んで調教を受けてきた。まあ、その努力は結果的には無駄になったんだけどね」
銀子はそう言うとさも楽しげにクスクス笑う。
「これからは珠江にとっては守るべき人が一人増えたって訳さ。こういった自己犠牲の精神は大いに利用すべきっていうのがあたいたちのやり方だろ?」
「確かにそのとおりや」
「それじゃあ義子、わかっているね?」
「もっと本格的に責めさせるんやね」
義子は心得たように頷くと、座敷の隅の箪笥から桐の箱を取り出す。その箱の蓋には墨で黒々と「村瀬小夜子、調教用」と書かれている。
「ありゃ、これは小夜子専用のお道具やわ。なくなったと思って探してたんやけど、こんなところにあったんか」
義子が頓狂な声を出す。
「ちょうど良いじゃないか。これを美紀と久美子に渡して珠江を責めさせるんだ」
「すると美紀は娘を泣かせたお道具を、それとは知らずに使わされる訳か。へえ、そりゃあ愉快やわ」
義子はそう言うとクスクス笑い出す。
「美紀にはいずれこれで、娘の小夜子も責めさせてやろうじゃないか」
銀子と義子はそう言って邪悪な笑みを交わし合う。義子は桐箱の中から大小張り型を取り出し、床の間の前で珠江の乳房を責め立てている美紀に近づく。
「そのへんで選手交替や。冬子はん、夏子はんに替わって珠江夫人のおっぱいをモミモミしてあげるんや」
大沼の隣りで身を縮めるようにして珠江の痴態から目を逸らせていた絹代は、義子のその言葉に電気に触れたように身体をびくっと震わせる。
「ここは私と夏子さんが……」
久美子が慌てて口を挟もうとすると、義子はぴしゃりと「あんたたちはこれを使って、珠江夫人を一度天国に行かせてやるんや」と言い、張り型を一本ずつ久美子と美紀に押し付ける。
「これは……」
男根を模した巨大な責め具が美紀に、全体が螺子のようになった細い責め具が久美子に渡される。美紀も、久美子もそんなおぞましい淫具を目にするのはもちろん初めてで、そのあまりの禍々しさに二人は声を失っている。
「どこに使うのかはわかるやろ。夏子はんが持っているので珠江の前を、久美子ので肛門を責めてやるんや」
「そ、そんなこと……」
久美子と美紀はあまりのことに顔を引きつらせる。その時、珠江が熱っぽい声で二人に呼びかける。

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