198.肉の狂宴(11)

「おっ、ついに持ち上げたぜ」
吉沢が頓狂な声を上げると部屋の中のやくざとズベ公たちはいっせいに哄笑する。
「なかなかやるじゃねえか、探偵さんよ。ポルノスターの素質は十分だぜ」
川田はそんな風に、歯を食いしばりながら肉棒で銚子を持ち上げている山崎にからかいの声をかけると、次に部屋の隅にうずくまり、兄の惨めな姿から必死に目を背けている久美子の方を向く。
「おい、久美子。そんなに照れてねえでしっかり見るんだ。これが明後日、お前を女にしてくれる逸物だぜ。どうだ、なかなかたくましいとは思わねえか」
そんな川田の言葉を耳にした久美子は、あまりの恐ろしさに裸の肩を小刻みに震わせるのだった。
「いっそここでつながらせてあげればどうなの」
マリがそう言うと川田は「何を馬鹿なことを言ってるんだ。せっかくの貴重な処女だぜ。そんなもったいないことが出来るか」と首を振る。
「ふん、何よ。川田さんはその処女の京子を食べちゃった癖に。男ってまったく勝手なんだから」
そう言ってマリは頬を膨らませる。
「まあ、あの時とは事情が違ってるさかいな。今は何しろ天下の岩崎一家がバックにおるんや。何事も商売優先や」
義子に宥められたマリは「そんなことわかっているわよ」と口を尖らせる。
「それよりも見事に銚子を吊り上げた名探偵にみんなで拍手しようやないか」
義子がそう言いながら手を叩き出すと、マリや川田、吉沢、そして井上他のやくざたちもいっせいに手を叩き出す。
「どや、京子。恋人の逞しい姿を見ることが出来て、感激したか、ええ? ぜひ感想を聞かせて欲しいわ」
あまりに悲惨な山崎の姿をそれ以上正視することが出来ず、顔を背けてすすり泣いていた京子だったが、義子に何度も迫られてようやく「す、素晴らしいと思いますわ……」と囁くように答える。
「ええ? よう聞こえんなあ。いつもの京子みたいに、はっきりと大きな声で答えてもらおか」
義子が邪険に京子の髪を引っ張り、マリもまた京子の肩に手をかけて空いた手で乳首をひねり上げる。そんなズベ公たちの陰湿ないたぶりにたまりかねた京子は「す、素晴らしいと思いますわっ」と開き直ったように言う。
「美津子はどうや、お兄ちゃんのオチンチンを見て逞しいと思ったか」
義子はそう言って次に美津子に迫る。美津子は羞恥に顔を伏せながらも「は、はい……」と頷く。
「ちゃんと顔を上げて、お兄ちゃんの顔を見て答えんかい」
義子にパシッと尻を打たれた美津子は言われるまま顔を上げ、山崎の方を見る。
「はい、と、とても逞しいと思いました」
そう答える美津子に義子は「そうかい、なかなか正直でええやないか」笑うと、さらに嵩にかかって「文夫のチンポと比べてどうや」とたずねる。
「そ、そんなこと……わかりませんわ」
美津子は首を振る。
「わからんのならわかるように、比べてやろうやないか」
義子はニヤニヤ笑いながら山崎に近づき、足元にしゃがむ込むと肉棒にくくりつけたタコ糸を外して行く。
「ありゃりゃ、こりゃあ肉に食い込んでなかなか解けへんで」
義子はそんな頓狂な声を上げてやくざたちを笑わせる。ようやく義子は糸を外し終えるとマリと共に、小夜子と並んで部屋の隅に立たされている文夫を挟むように立つ。
「こっちに来るんや、お坊ちゃん」
義子とマリが同時に文夫の肩に手をかけると、
不安に駆られた小夜子が「ふ、文夫に何をするのですかっ」と悲痛な声を上げる。
「心配せんでもお仕置きにかける訳やない。探偵さんが約束どおり銚子を吊り上げたさかいな」
義子はそう言うとマリと共に文夫を追い立てるように文夫を歩かせ、山崎の隣りに並ばせる。
次に天井の滑車から垂れ下がる鎖に文夫の縄尻を固定した義子とマリは、山崎と文夫、二人の男の裸身が並んだ様子を改めてまじまじと眺める。
「こう見ると二人ともなかなか良い身体をしているやないか」
「そうね。男奴隷も二人いると色々なことが考えられそうで愉快だわ」
姉の小夜子に似た美少年の文夫と、精悍な山崎の容姿は対照的だが、それだけにこうして比べるとその違いが互いのの魅力を引き立てるようで興味深い。義子とマリはそう言うと楽しげに笑い合う。
「ねえ、鬼源さん、いっそこの二人を恋人みたいにからませてみたら面白いんじゃないかしら」
「馬鹿なこと言ってるんじゃねえ」
マリの思いつきに鬼源はさすがに苦笑する。
「そんな気持ちの悪いもの、誰が見たいもんか」
「あら、少なくとも私たちは見てみたいわ。ねえ、義子」
「そやな。美男二人のホモショーも悪くないかもしれんな」
義子はそう言って山崎と文夫の裸身を楽しげに見比べている。
「お前たちを楽しませてどうするんだ」
鬼源は呆れたような声を出すが、川田は「いや、それは案外面白えかもしれねえぜ」と口を挟む。
「なんだ、川やん。お前、ホモに興味があったのか」
「そうじゃねえ」
川田は苦笑いして首を振る。
「岩崎親分と一緒に例の妾二人、ほら、何と言ったかな。葉子と和枝って女も一緒にやってくるだろう。この屋敷には他に大塚先生や千代もいるし、そんな女たち向けの余興もあっていいんじゃないかと思っただけだ」
「ふん、そういうもんかな」
鬼源はあまり気乗りしない顔で山崎と文夫を見比べる。
「この二人はそれぞれ京子と美津子の恋人だ。てことは、ひょっしたら義理の兄弟になってたかも知れない間柄だ。そんな二人がホモの夫婦ショーを演じるってのも悪くねえ」
「少なくとも俺はそんな気持ちの悪いショーの調教は願い下げだ」
「何も鬼源さんに仕込んでくれなんて言ってねえぜ。この屋敷にはその手のショーの調教にはうってつけの奴らがいるじゃねえか」
「春太郎と夏次郎のことか」
鬼源はそう言うと首をひねる。
「どっちにしても社長と親分に相談するんだな」
そんなおぞましい会話を聞きながら言語に絶する屈辱を必死に耐えている山崎の肩にマリが手をかけ、面白そうにその顔をのぞき込む。
「ねえ、探偵さん。あんた、こんな目にあってもまだ、私たちの裏をかいてここから抜け出して反撃しようなんて考えているでしょう?」
マリがニヤニヤ笑いながらそう言うと、山崎はふと眉をしかめて顔を背ける。
「あら、図星だった? やっぱり油断も隙もないわね」
マリはくっ、くっと声を上げて笑い出す。
「言っておくけど、あんたが妙なことをしたら、美紀夫人や絹代夫人、それにダミヤや久美子がどうなるかわからないわよ」
マリのその言葉に山崎はびくっと肩先を震わせる。

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