「小椋先輩のお母さんってPTA会長をしているし、以前は自治会の副会長もしていたそうだし、おまけにモデルみたいに背が高くて奇麗じゃない。香奈がさっさと通り過ぎちゃうんで私はわからなかったけれど、うちの学校でも何人か気づいた人がいるみたいよ」
昨日、2人の美しい女性が目を疑うような扇情的な扮装でティッシュ配りをしていたことは、東中でも香奈が思った以上の早さと広がりで噂になっていたのだ。
香奈はすでに美しいバニーガールの正体が母親のしのぶと小椋里佳子の母の裕子だということに気づいていたが、香奈の友人でしのぶの顔をよく知っている留美でさえ、バニーガールの一人がしのぶだということはわからなかったようだ。
「小椋先輩のお母さんがあんなことをするはずがないわ。た、他人の空似ってこともあるんじゃない」
「それはあまり考えられないわよ」
留美はおおげさに首を振った。
「なんて言うか……ちょっと外人っぽい個性的な美人だもの。そんなにどこにでもいる顔じゃないわ」
「そうかしら……」
「きっとそうよ」
留美は楽しそうに一人でうなずく。
「でも、どうしてあんな格好をしていたのかしら。そういえば、あの人たちが配っていた宣伝ティッシュ、駅前の『かおり』っていうスナックのものなんだって」
「えっ」
香奈は思わず驚きの声を上げる。
『かおり』は香奈と同学年の世良史織の母親が経営するスナックである。史織は香奈や小椋里佳子と並び称されるような美少女だったが、中学1年とは思えないその悪魔的な狡智により3年生までも従え、いわば東中に君臨する女王のような存在だった。
史織の気まぐれにより執拗な苛めの標的にされ、苦しんだあげく登校拒否、果ては自殺未遂まで図った生徒は一人や二人ではない。
母のしのぶや小椋裕子が信じられないような姿でティッシュを配らされていたのは、史織の母親になんらかの弱みを握られているのだと想像出来る。母に降りかかった災難は史織を介して、当然香奈に飛び火してくることが予想されるだろう。
「どうしたの? 香奈。顔色が悪いわよ」
留美が香奈の顔をのぞき込む。
こうやって今は香奈を心配している風な留美でさえ、一度史織グループによる香奈に対する苛めが開始されれば、たちまちその尻馬に乗るだろう。そうしないと自分が史織たちの標的にされる恐れがあるのだし、まして香奈の母親であるしのぶの破廉恥な行動が露見すれば、それは一層遠慮のないものとなるだろう。
香奈は恐ろしい予感に身を震わせ、不安に押し潰されそうな思いをこらえるのに必死だった。
その日の授業を終えた小椋里佳子が、美樹に呼び出されて彼女と誠一の待つマンションに向かったころ、母親の裕子は加藤しのぶとともに、ラブホテルの一室にいた。
特別室と呼ばれるそこは、キングサイズのダブルベッドが2つ置かれた4P用の部屋である。2人の美熟女は高いハイヒールを履き、上質だがスカートの丈が極端に短く、身体の線がはっきりと見えるスーツを着て部屋の中央に立たされている。
本来20代の女が着るものであり、38歳のしのぶや42歳の裕子がいかに年齢に比し若々しい体型を保っているとはいえ、不自然さは否めない。
薄いスカートの生地は熟女らしい巨大なヒップに押し上げられ、ぴったりと張り付いている。また大きく開いたジャケットの胸元からは、豊満な乳房の谷間がくっきりと顔を覗かせているのだ。
さらに2人ともおそろいの赤いガーターベルトに網タイツをはかされており、濃い化粧もあいまって本物の娼婦にさえ見える。
即席の娼婦に相対し、まるで観客席のような位置で上等なソファに腰をかけているのは脇坂とその仲間の赤沢である。2人の男は裕子としのぶにあれこれと指示を出し、胸を強調したり尻を突き出したりの扇情的なポーズを取らせ、それを嬉々としてデジカメに収めているのだ。
「2人ともなかなか似合うじゃないか」
「これなら立派に客引きも出来そうだ」
ひとしきり2人の美熟女の姿態を撮り終えた脇坂と赤沢は顔を見合わせて笑い合う。
「いいな、奥さん。これからお二人は『出張ソープ』のソープ嬢として客をとらされる。異存はないな?」
「い、異存はございませんわ……」
「私も……異存ございません」
裕子としのぶは俯きながら答える。このラブホテルに連れ込まれるまでに、香織や黒田、そして沢木まで交えて散々因果を含まされたことである。様々な弱みを握られ、おまけに逆らったら可愛い子供たちにまで魔の手を伸ばすと脅された哀れな2人の美しい人妻にいまさら抵抗の余地はなかった。
金曜から日曜までの2泊3日にわたる徹底した調教に、裕子としのぶはすっかり骨抜きにされていたのである。
香織はさすがに調教疲れのためか、2人の人妻を脇坂と赤沢に預けると黒田たちと共に帰って行った。沢木もたまには会社に顔を出さなければと、眠い目をこすりながら出社したようである。
「今撮影した写真が奥さんたちの営業用ってわけだ。俺の腕は自慢じゃないがセミプロ級だ。特に写りの良いのを選んでやるから安心しな」
裕子としのぶは脇坂の言葉にがっくりと俯く。今までも散々卑猥な写真やビデオを撮られたとはいっても、それは強制されたプレイの最中のものであったり、そうでなくとも少なくとも「素人」としてのものであった。
今回の写真は露出度ははるかに低いが、今までのものと違うのは2人の「商売女」としての姿を撮影されたということである。これを家族や知人に見られればどんな言い訳も無意味であろう。
いや、2人の美熟女、特に裕子の場合はすでに駅前での扇情的なバニーガール姿が噂になり、すでに彼女を取り返しのつかない破滅の道へと追い詰めているのだ。
「しっかり客がとれるように、今日は特に俺と赤沢さんが、ソープ嬢の基本的なテクニックを教えてやろうっていうんだ。どうだ、有り難いだろう」
裕子としのぶが恥辱に肩を震わせて黙り込んでいると、赤沢が苛立ったように裕子の頭を押さえ付け、ぐいぐいと揺さぶる。
「聞かれたことに答えないか、ええ、なめた態度を撮ると承知しないぞ」
脇坂の仲間の赤沢はチビ、デブ、禿げという女に嫌われる三要素がそろっており、そのために特に裕子やしのぶのような育ちの良い美人に対しては激しいコンプレックスを抱いている。
赤沢が痴漢行為をやめられないのもそれ以外にコンプレックスを解消するすべがないからなのだが「かおり」の店内や朝の露出ジョギングで2人の美女に対する責めに参加出来るようになってからは、それまでの小心な性格が打って変わって強気なものになっているのだ。
「あ、有り難く思っています」
裕子が髪を引っ張られる痛みに耐え兼ねてそう答える。
「そっちはどうだ」
「私も……有り難く思っておりますわ」
裕子としのぶはあまりの惨めさに、嗚咽し始めるのだ。
「メソメソするんじゃねえ、辛気臭い」
「まあまあ、赤沢さん、そんなにポンポン責めるんじゃない。この奥さんたちはまだ新人なんだから」
脇坂がニヤニヤ笑いながら割って入る。


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