183.静子夫人の絶望(7)

「さすがは静子夫人だわ。短い時間であの上品な奥様たちがまるで犬みたいにおしゃぶりをするようになるまで仕込むなんて」
「そうそう、村瀬宝石店夫人が田代社長のキンタマまで口に含んでなめ回し始めたのには驚いたわ」
銀子と朱美はそう言ってケラケラ笑いながら素っ裸の静子夫人を引き立て、地下の廊下から階段へと向かって行く。
「家元夫人だって決して負けていなかったわ。静子夫人に教え込まれて、最後には森田親分のお尻の穴にまで舌を這わせていたじゃない」
「ここの奴隷たちの調教は全部静子夫人に任せた方が良いかもしれないわね。だけどそうなると鬼源さんも商売上がったりだわ」
そう言うと銀子と朱美は皮肉っぽい視線を静子夫人に向ける。二人のズベ公に引き立てられている静子夫人の股間は赤白だんだらの鈴縄によって締め上げられており、一歩歩むたびに夫人の媚肉をえぐるのだ。
「ぎ、銀子さん、お願いですから鈴縄を外してください。このままでは歩けませんわ」
「あら、何を言っているの。奥様の大好きなものじゃない」
「そうよ、奥様の指導であの二人がが、見事に社長と親分を発射させたご褒美に締めて上げたのよ。何も遠慮することないわ」
銀子と朱美はそういうとゲラゲラ笑う。二人の言う通り美紀夫人と絹代夫人は、静子夫人によって巧みに導かれながら必死の努力を注ぎ込み、ついに口唇による愛撫で田代と森田を陥落させたのだった。
白い毒液を飲み込んだ二人の美夫人は凄艶なまでに美しく、先輩奴隷の指導によって新たな段階へと踏み出したことが、銀子と朱美にもはっきりと見て取れたのだ。
そして年上の友人二人を見事に調教した静子夫人もまた、奴隷として一段と成長したといえる。銀子と朱美はそんな静子夫人に新たな試練を与えようとしているのだ。
「どうなの、奥様。調教されるよりも調教する方が楽しいとは思わない?」
銀子にそう詰め寄られた静子夫人は苦しげに顔をしかめる。
「そ、そんなことはございませんわ。あんなことをするくらいなら、まだ自分が責められた方がずっとましですわ」
「そうなの、奥様は責めるよりは責められるのがお好きって言う訳ね」
朱美にからかわれるようにそう言われた静子夫人は「そんな意味ではありませんわ」と首を振る。
「まあ、それはどちらでもいいわ」
朱美はそう言うと銀子の顔を見て、どうする? と言うように首を傾げる。
「大丈夫じゃない? 奥様も大分度胸がついて来たみたいだし」
「そうみたいね」
顔を見合わせて意味ありげな微笑を浮かべあう銀子と朱美に、静子夫人は不安げな視線を向けている。
「実はね、奥様。奥様に調教をつけて欲しい女奴隷がもう一人いるのよ。さっき、森田組には五人の奴隷が入荷したといったでしょう。その五人目の奴隷のことよ」
「……」
「あら、そんな不安そうな顔をしないでも大丈夫よ。今度の女奴隷は日本人じゃないの。奥様がショーに出られないもんだから金髪の凄いグラマー美人を調達して捨太郎の相手をしてもらおうと思っているのよ」
「金髪の、ということは外国の女の方ですか?」
「もちろんそうよ。日本人で金髪は変でしょう?」
銀子と朱美はそう言ってくすくす笑い合う。
外人の女奴隷ということは、ジョニーかブラウンが誘拐でもしてきたのだろうか、と静子夫人は鈴縄の刺激による被虐的な快美感に痺れた頭でぼんやりと考える。
「実は次のショーにはこの外人女と捨太郎のコンビでの出演を考えているのよ。間に合わなければ当初の予定どおり、美紀夫人や絹代夫人が捨太郎の相手をしなくちゃならなくなるわ」
銀子のそんな脅しめいた言葉を聞いた静子夫人は思わず顔を歪ませる。
また同じ手口か――そうは思っても夫人は再び彼女たちの術中にはまらざるを得ない。
「私は――何をすればよいのですか」
「そう言ってくれると話が早いわ。さっきの美紀夫人や絹代夫人にしたように、調教してもらえば良いのよ。相手が外人女だから、奥様ご自慢の語学力を生かして、早く奴隷として一人前になるように説得もして欲しいわ」
「わかりました――」
美紀夫人や絹代夫人に対する調教を経験して、ある意味開き直りといった心境に至った静子夫人は、いわば毒食らわば皿までと言った気持ちで頷く。
「そう、よかったわ」
銀子が朱美と顔を再び見合わせ、ぷっと吹き出す。
「参考までにその金髪女の写真を見せてあげるわ。さっき井上さんから届いたばかりのものよ」
怪訝そうな顔をする静子夫人に、銀子は数枚のポラロイド写真を突きつける。捨太郎に背後から突き通されて口の端から泡を吹き、かっと目を見開いている若い外人女の顔を見た夫人は驚愕の声を上げた。
「ダ、ダミヤさんっ!」
静子夫人の顔がみるみる引きつっていくのを、銀子と朱美はさも楽しげに眺めているのだ。
「ど、どうして……」
夫人は自分の目が信じられない。フランス留学時代の親友であるフランソワーズ・ダミヤ。尊敬する指導教授であるドクター・ジャン・バルーと結婚し、幸せな生活を送っているはずのダミヤが、いったいなぜこんなことに……。
「結婚式の招待状を出したのに奥様から何の返事もなかったので心配して、わざわざ日本までやってきたそうよ。そこで奥様が行方不明になっていることを聞いてびっくり仰天。山崎のところへ行って無謀にも奴の協力をして、私たちに対抗しようとしたのよ」
「この女のお陰で山崎の妹の久美子には危うく逃げられるところだったわ。そんなことになったら私たち、警察に一網打尽よ。だけど今一歩のところで阻止されて、山崎兄妹ともどもこうやって奴隷修行に励むことになったわけ」
銀子がペラペラと得意げに話すと、静子夫人は「ああっ!」と悲鳴のような声を上げる。
やはり自分が原因――自分のせいでまたひとりかけがえのない友人、素晴らしい女性を地獄に落としてしまったのだ。
静子夫人を救援に来て捕らえられた京子、京子をネタに誘拐された美津子、美津子を使っておびき寄せられた小夜子と文夫姉弟、そして夫人に会わせるといって拉致された千原美妙江と折原珠江。そして今また、村瀬美紀と千原絹代とフランソワーズ・ダミヤが鬼達の手に落ちてしまった。
いったいこのおぞましい連鎖はいつまで続くのか。静子夫人は我が身の因果を呪いたくなるのだった。
いっそ自分が命を断てばこの連鎖は収束するのか。そう思い詰める静子夫人だったが、胎内に宿った新しい命のことを思うとそれすら出来なくなっている自分自身を改めて気づくだけだった。
「すごいグラマーで、しかも金髪の美女と来ているから性の奴隷としての商品価値は抜群よ。捨太郎とからませても迫力満点だわ。でも、ただのセックスと違ってこれから色々な珍芸を仕込んでいくためには、どうしても言葉の点が問題になるのよ」
「ダミヤって女は随分日本語は達者なようだけど、ここで使うのはちょっと特殊な言葉だからね」
銀子と朱美は顔を見合わせて笑った。

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