「教えてほしかったらお道具をお腹の中にしっかりと呑み込むんや」
「ああ……」
美津子は切羽詰まったような声を出すと、突然大胆に身体をぐっと反らし、その部分を義子につき出すようにする。すると美津子の女の箇所は、まるで生き物のように膣圧計を呑み込んでいくのだ。
「こりゃ驚いた」
義子はそんな美津子の技に目を見張る。
「いつの間にか美津子も成長したのね。大したものだわ」
マリは笑いながら美津子の乳房を揉みほぐす。美津子は「ああ……」と切なげに悶えながら、身体をくねらせる。
「の、呑み込みましたわ。ですから、文夫さんのことを……」
「ああ、そやったな」
義子はわざとらしく頷く。
「文夫にもあんたらと同じく人事異動があったんや。これまでの桂子とのコンビは解消し、新しいパートナーとポルノショーのコンビを組む」
「パートナー……いったい誰ですか?」
少なくともここにいる3人ではなさそうだ。静子夫人は人工授精を受けたそうだから違うとして、美沙江とコンビを組んでいた珠江夫人か――。
それとも姉の京子か。美津子の頭が嫉妬で熱くなる。
(もし姉さんが文夫さんとコンビを組むことになったら――許せない)
父母を早く失った美津子にとって五つ違いの姉の京子はずっと親代わりであった。夕霧女子高校に入学することができたのも、美津子の成績が抜群だったこともあるが、京子が大学在学中から探偵事務所助手のアルバイトでかなりのお金を稼いでいたおかげでもある。
田代屋敷に誘拐されてからも姉の京子が自らの身体を張って美津子を守ろうとして来たのは事実である。しかしながら悪鬼たちの狡智は常に京子のそんな思惑を上回り、京子の抵抗が空しく失敗するたびに、美津子の運命は結果として悪化の一途を辿ったのだ。
美津子は今や京子に対して愛憎半ばした複雑な感情を抱くに至っている。それは桂子が、何かにつけて自分を守ろうとしてくれた静子夫人に対して軽蔑めいた思いを向けているのに似ている。遅い反抗期が田代屋敷の美津子にも訪れたようなものだが、美津子は自分の醜い感情を持て余してもいた。
「文夫と新しくコンビを組むのは、お姉ちゃんの小夜子や」
美沙江の前に座り込み、膣圧計を操作している義子の言葉を聞いた美津子は衝撃に息を呑む。
「な、なんですって……」
腰部をうねらせながら膣圧計を緊め付けていた桂子も思わず身体の動きを止める。
「ち、血の繋がった姉と弟をコンビにしようというのですか……」
「何言ってるの。美津子と京子だって血の繋がった姉と妹じゃない」
マリが美沙江の乳首をくすぐり、うなじに軽い接吻を施しながらそう言う。
「で、でも……」
美津子は道具を使って姉の京子とからませれるうちに思わず真剣な気持ちになることもあったが、真性の同性愛者ではないため、たとえば文夫に対する感情と同じものを姉に対して抱くことはなかったし、それは恐らく今後も変わらないだろう。
それに女同士のコンビと、男と女のコンビでは違う。初めての時は身体に棒を呑みこまされたような痛みしか感じず、あっという間に終わってしまった文夫との行為――それは不思議なことに、回を重ねるうちに美津子に深い陶酔と、狂おしいばかりの快感を与えることになった。
愛する男と肉と肉で繋がっている――それは人間の本能である性欲に直接響く満足感であり、他のどんな行為でも得られない深い悦びを美津子に与えた。そして文夫の精の迸りを子宮に浴びた時、たとえこの地獄の底であっても、文夫の子を産みたいと真剣に願ったほどである。
しかし悪鬼たちはそんな美津子にとってかけがえのない相手である文夫を、実の姉である小夜子とコンビを組ませるようというのだ。
美津子にとって恋人の姉である小夜子とは、この地獄屋敷に捕らわれる前も何度か会ったことがある。両親を早く失い、その後は姉の京子と二人で生きて来た美津子にとって、村瀬宝石店の社長令嬢で音楽コンクールの優勝歴もあり、またミス宝石にも選ばれた才色兼備の小夜子は眩しい存在だった。
しかし小夜子は、そんな気後れを吹き飛ばすような気さくさで美津子と接してくれた。
「私、こう見えても結構不良なの。美津子さん、驚かないでね」
美津子は、文夫と三人で青山の喫茶店でお茶を飲んでいた時、ハンドバッグから煙草を取り出し、悪戯っぽい視線を美津子に投げかけた小夜子のことを思い出す。
「でも、弟は私と違って堅物だから心配いらないわ」
小夜子はそう言いながら柔らかい笑みを、隣に座る文夫に向ける。
「美津子さんなら文夫とはお似合いだわ。美津子さん、弟のことをよろしくお願いします」
「そんな……」
そう言って小夜子が頭を下げると美津子は顔を真っ赤にしながら手を振ったものだ。そんな光景を美津子は昨日のことのように思い出す。
映画女優のような華やかな美貌を持つ小夜子と、ギリシャ神話に登場する美青年のような文夫、美貌、知性、そして環境とすべてに恵まれた姉弟が、おぞましいポルノショーのコンビを組まされるというのだ。
「まあ、鬼源さんも当分はあの二人には本番行為はさせんというてたから、そんなに不安そうな顔をせんでもええ。実の姉弟の間に子供が生まれたらややこしすぎるからな」
義子はニヤニヤ笑いながら美津子の顔を見る。
「でも、昔の皇族なんかには、特に珍しくなかったとも言うわよ」
「マリはなかなか物知りやな」
義子とマリはそう言いながら笑い合う。
「まあ、あんたたちはそんなことは気にせんでもええ。奴隷同士、それぞれコンビの相手が決まったんやから、しっかりお稽古に励むんや」
美沙江に膣圧計を装填し終えた義子はそう言い放つと、改めて三人の美女に言い放つ。
その時、おぞましい責め具を取り付けられ、屈辱と不快感に身悶えしていた美沙江が口を開く。
「おば様は……珠江おば様はどうされているのですか」
「ああ、珠江か」
義子はマリと顔を見合わせ、ぷっと吹き出す。
「もう2日になるかしら」
「いや、3日目や」
そんなことを言い合うマリと義子に、美沙江は不安そうな目を向ける。
「珠江夫人はここ何日かチンピラ部屋に浸けられて、若い男たちとセックス三昧や」
「え、ええっ」
美沙江は驚愕に目を見開く。
「な、何てことを……おば様にはご主人がいらっしゃるのに……」
「何を寝ぼけたことをいっているの。これだからお嬢様育ちは困るわ」
マリはうんざりした声を上げる。
「まさかお嬢様は奴隷のお勤めが、お道具を使って悪戯されたり、女同士でレズショーを見せるだけだとは思っていないわよね?」
美沙江が硬い表情を見せているのを見たマリは桂子と美津子の方を見る。
「あんたたち、ここ何日か同じ檻に入れておいてあげたけど、その間にこのお嬢様に教えてあげなかったの? 美津子はともかく、桂子はもう経験もあるでしょう」
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